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介護保険法の改正後の動向について 第2回 24年度介護保険法改正を介護報酬から読む

3 平成24年度の介護報酬改定

  1 本体の介護報酬

    1.複合型(新規)

 重度の者や医療が必要な者の受け皿として、通所、訪問、入所が可能な小規模多機能に訪問看護がついた「複合型サービス」は、入所の抑制の方向の中では、期待されているサービスの一つです。24年2月23日の介護報酬案では、報酬額は特定施設と同額ということで、日額で作成されていました。
 しかし、最終決定では、日額が月額に変更となり、月額も単純に日額に30.5日を乗じたものではなく、要介護度の重い者に傾斜した配分となっています。要介護1ですと、日数換算で23.7日分、月額ではマイナス22.4%です。一方、要介護5ですと、38.1日分、約25%のプラスになります。これに加えて加算が用意されています。これは政策的意図が働いた分かりやすい一例と思われます。

 表4 複合型サービス費 新規
  当初案A 修正案B B/A 日額×30.5C B/C
要介護1 560単位/日 13,255単位/月 23.7日分 17,080単位/月相当 0.776
要介護2 628 18,150 28.9 19,154 0.948
要介護3 700 25,111 35.9 21,350 1.176
要介護4 768 28,347 36.9 23,654 1.198
要介護5 838 31,934 38.1 25,559 1.249
*その他小規模多機能型居宅介護及び訪問看護に準拠した各種加算を創設する

 介護報酬で見る限り、複合型サービスを普及させたいという意思、また、より重度者に対応して欲しいという意思が見られます。施設から在宅へと、より在宅志向を強めるには、居宅系の入所サービス(GH、特定施設等)の充実が必要です。

*定期巡回・随時対応型訪問介護看護は省略
段落新サービスの実施予定状況

 第5期介護保険事業計画に位置づけられた新サービスの実施予定状況は下表のとおりで事業としては苦戦しています。これは在宅での受け入れ体制の充実に黄信号がともっているともいえます。

 表5 新サービス実地予定状況
  平成24年度 平成25年度 平成26年度
複合型サービス
 
110保険者
(0.2万人/日)
186保険者
(0.5万人/日)
234保険者
(0.8万人/日)
定期巡回・訪問介護看護
 
190保険者
(0.6万人/日)
284保険者
(1.2万人/日)
330保険者
(1.7万人/日)
*厚労省・介護保険最新情報から

   2.訪問介護

 表6 身体介護
旧基準A 新基準B B/A割合
   - 20分未満 170単位 0.669
30分未満 254単位 20-30分未満 254 1.000
30分‐1時間未満 402 30分-1時間未満 402 1.000
 表7 生活援助
旧基準A 新基準B B/A割合
30分-1時間未満 229単位 20-45分未満 190単位 0.830
1時間以上 291 45分以上 235 0.808

 訪問介護について、すでにいろいろいわれていますが、時間を短縮することで、提供回数を増やすと共に、1回あたりの単価を約20%弱抑制しています。 

   3.訪問看護(訪問看護ステーション)

 表8
  旧基準 新基準 B B/A割合
20分未満  285単位  316単位 1.109
30分未満  425  472 1.111
30分-1時間未満  830  830 1.000
1-1時間半未満 1,198 1,138 0.950

 訪問看護については、1時間以上1時間半未満は5%の抑制になっていますが、30分未満以下の短時間のサービスについては、訪問介護とは逆に10%程度プラスになっています。在宅看護師の不足がいわれ、また看護介護の連携等在宅での医療ケアの必要性が高まる中での対応と思われます。

   4.通所介護

 表9
旧所要時間3-4時間 旧基準 A 新所要時間3-5時間 B B/A割合
要介護1  381単位  400単位 1.050
要介護2  437  457 1.046
要介護3  493  514 1.043
要介護4  549  571 1.040
要介護5  605  628 1.038
旧所要時間6-8時間 旧基準 A 新所要時間5-7時間 B B/A割合
要介護1  677単位  602単位 0.889
要介護2  789  708 0.897
要介護3  901  814 0.903
要介護4 1,013  920 0.908
要介護5 1,125 1,026 0.912
    新所要時間7-9時間 B B/A割合
要介護1  690単位 1.019
要介護2  811 1.028
要介護3  937 1.040
要介護4 1,063 1.049
要介護5 1,188 1.056

 通所介護の主力である6時間程度のサービスは、時間区分の変更により、それぞれ10%強の抑制となっています。提供時間を7時間以上とすると、 2~6%弱のプラスになります。多くの事業者は7時間を目指して、人員の確保を含めて事業の見直しを行っているようです。ただ、人員確保が困難なため、当面は単価が下がるのもやむなしというところもあるようです。7時間に移行する場合、利用者の希望と心身の状況等についてどのように対処したのか、関心事ではあります。
 その一方、3-5時間の短時間サービスは4~5%のプラスになっています。通所介護の機能改善機能に着目したときは、 必ずしも長時間居る必要はないということかと思います。そのためには、個別性のあるケアプランの作成とケアマネジメントが行われる必要があります。

   5.認知症対応型通所介護

 表10
旧所要時間3-4時間 旧基準 A 新所要時間3-5時間 B B/A割合
要介護1  526単位  589単位 1.120
要介護2  578  648 1.121
要介護3  630  708 1.124
要介護4  582  768 1.126
要介護5  735  827 1.125
旧所要時間6-8時間 旧基準 A 新所要時間5-7時間 B B/A割合
要介護1  967単位  904単位 0.935
要介護2 1,071 1,001 0.935
要介護3 1,175 1,097 0.934
要介護4 1,280 1,194 0.933
要介護5 1,384 1,291 0.933
    新所要時間7-9時間 B B/A割合
要介護1 1,030単位 1.065
要介護2 1,141 1.065
要介護3 1,253 1.066
要介護4 1,365 1.066
要介護5 1,477 1.067

 認知症対応型通所介護は、短時間コースでは12%強のプラスになっています。認知がない人への短時間デイサービスは納得できるのですが、 認知の人に対する短時間デイサービスはどのような利用の仕方となるのでしょうか。
 従来の6時間型は約7%抑制、一方で7時間以上では7%弱のプラスになっています。

   6.認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

 表11
  旧基準 A
 
新基準 B
単独型 B/A割合 2ユニット以上 B/A割合
要介護1 831単位/日 802単位/日 0.965 789単位/日  0.949
要介護2 848 840 0.991 827 0.975
要介護3 865 865 1.000 852 0.985
要介護4 882 882 1.000 869 0.985
要介護5 900 900 1.000 886 0.984

 グループホームは、単独型と2ユニット以上に分かれ、単独型については、介護3以上は現状維持、以下は1~3%程度の抑制、2ユニット以上はすべて抑制されていますが、要介護3以上はマイナス幅が小さくなっています。入所者の重度化、あるいは、新規入所に当たって要介護3以上の人を多く受け入れるよう誘導しているのでしょうか。施設・入院の抑制の方向の中で、必要性が増すサービスです。

   7.介護老人福祉施設(Ⅱ)

 表12 多床室の基準
  旧基準 A 新基準 B B/A割合
要介護1 651単位 630単位 0.968
要介護2 722 699 0.968
要介護3 792 770 0.972
要介護4 863 839 0.972
要介護5 933 907 0.972

 多床室は、すべて3%程度の抑制になっています。

   7-2.ユニット型介護施設サービス費(Ⅱ)

 表13
  旧基準 A 新基準 B B/A割合
要介護1 669単位 659単位 0.985
要介護2 740 729 0.985
要介護3 810 802 0.990
要介護4 881 872 0.990
要介護5 941 941 1.000

 ユニット型については要介護5は現状維持。要介護3と4は1%のマイナス、要介護1と2は1.5%のマイナスと重度者への対応を重視しています。 

   7-3.他床室型とユニット型の比較

 表14
  多床型 A ユニット型 B B/A割合
要介護1 630単位 659単位 1.046
要介護2 699 729 1.043
要介護3 770 802 1.042
要介護4 839 872 1.039
要介護5 907 941 1.037

 現在、新規建設及び大規模改修についての補助は、東京の一部の地域を除き、すべてユニット型となっています。多床室とユニット型の単価差をみると、ユニット型の方が3%強から4%強高く設定されていますが、要介護度別で見ると、軽度者の方が単価差は大きくなっています。しかし、ユニット型の普及を誘導しているということには変わりがありません。