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介護保険法の改正後の動向について 第2回 24年度介護保険法改正を介護報酬から読む

2 介護報酬の改定について

  1 介護報酬改定率の経緯

 過去の介護報酬の改定率は以下のようになります。

表1 介護報酬改定率
  平成15年度 18年度 21年度 24年度 12年度を1とした率
在宅    0.1    1.0 1.7 1.0 1.038
施設 ▲4.0 ▲4.0 1.3 0.2 0.934
*介護保険制度開始の平成12年度を1とすると、在宅系は1.038、施設系は0.934になる。

  2 前提としての介護事業の収益率

 一般的に介護報酬の引き上げは、誘導したいサービスや特に低すぎたため引き上げが必要なサービスについて行われます。引き上げの検討にあたって、事業所の経営実態調査が行われ、各サービス事業別の収支の状況が公表されます。  

 表2 事業所の収支率の改善状況 
      (調査単位:%)
  19年調査 20年調査 22年調査
老人福祉施設  4.4  3.4  12.0
グループホーム  7.7  9.7  14.7
訪問介護  3.3  0.7  3.2
訪問看護 -3.4  2.7  6.0
通所介護  5.7  7.3  13.0
認知症通所介護 -3.3  2.7  0.1
通所リハビリ  1.6  4.5  2.8
居宅介護支援 -15.8 -17.0  -4.0
小規模多機能 -18.5  -8.0  6.5

*厚労省介護保険事業者経営実態調査を一部加工

 経営実態調査の結果は表2のとおりで、赤字傾向は、居宅介護支援と小規模多機能、認知症通所介護となっています。 黒字幅が大きいのは、老人福祉施設、グループホーム、通所介護です。
 以上のように、一部を除いておおむね黒字となっております。そこで「社会保障は儲かるものでない」、「黒字事業の場合は介護報酬を下げることが妥当」という考え方で、経営内容を精査しないで引き下げを行うと別の問題を引き起こします。
 赤字を避けるために、コストの削減を図らなければなりません。それは職員の賃金による場合が多くあります。その結果、介護労働の従事者の賃金は一般産業労働者の6~7割といわれています。介護現場はいつの間にか3K職場と呼ばれ、就労希望者が減り、社会福祉系の大学や専門学校は、学生が集まらず苦慮しています。また介護職等慢性的な人手不足を招いています。振り返って、介護保険が開始される2000年3月までの介護職の賃金は、一般産業労働者の賃金と比べてそんなに差があったのでしょうか。
 介護報酬が安くても、事業体として収支が赤字では事業継続ができません。そこで経費を圧縮したり、黒字の事業の利益を赤字の事業に回して何とか黒字化を図ろうとします。人件費の圧縮のために、常勤ではなく、未経験の非常勤やパートの職員で対応して黒字化を図るなどです。その結果がサービスの質にどう影響するかは自明のことです。

  3 地域区分の見直しによる調整

 国家公務員の地域手当に準じ、地域割りの区分を7区分に見直すとともに、適用地域、上乗せ割合について見直しを行うということで、下表のような見直しが行われました。なお、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、平成26年度末までの経過措置等が設定されました。

表3 
旧基準 特別区 特甲地 甲地 乙地 その他
上乗割合 15% 10% 6% 5% 0%
新基準 1級地 2級地 3級地 4級地 5級地 6級地 その他
上乗割合 18% 15% 12% 10% 6% 3% 0%
改定率 +3 +5 +2 ±0 ±0 -2 ±0
保険者数 23 5 20 27 64 284 1,319
*1 これまでよりも単価アップが48保険者、ダウンが284保険者
*2 保険者とは、市町村、特別区などの介護保険事業の運営主体のこと

 地域区分の見直しにより、収益が改善された事業所も大都市部を中心にあります。しかし、事業体としては黒字化が見込めない事業の場合、撤収するか、例えば、小規模他機能居宅介護のように必要性はあっても、参入できません。
 では次に、具体的に介護報酬をみてみましょう。