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特集記事

介護保険法の改正後の動向について 第3回 医療・介護の連携

2 新たな仕組みとしての「地域包括ケアシステム」構築の必要性

  1 これまでの取組みと今後の方向性

 これまでも、医療・介護の連携は図られていた。これまでの取組みで何が問題なのか、二つの課題が考えられる。

  1. 仕組みはできていたが、連携の実態ができていなかった(地域格差がありすぎた)
  2. 仕組みそれ自体が不十分であった。

 今回の改正は、このような課題があり、この現状のままでは、地域包括ケアの実現に赤信号が灯るので、その克服のための改正と考えるべきだろう。
 その克服の方向性は、
 第一に、地域包括ケアがめざす、「施設入所・病院診療所入院」ではなく、施設等で提供される「安心・安全」を、「日常生活圏域という地域」で実現する仕組みが必要となる。施設での「安心・安全」を、医療と介護の連携体制を作ることで「地域で確保」し、実現することである。
 そのために、サービス付き高齢者向け住宅等の新たな住まいの場を確保し、その上で、地域で24時間活動する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を創設し、通所、訪問、宿泊がセットとなった小規模多機能型居宅介護に看護を連携させた「複合型サービス」を創設した。
 第二に、施設や病院からの退院・退所を円滑に行うために、在宅と施設・病院の連携を強化することである。そのために「入退院時情報連携加算」を創設(再編)した。必要な入所・入院の確保とその後の円滑な退院・退所の確保である。加算、介護報酬や診療報酬で誘導し、連携を図る。これにより、入所・入院と在宅との往き来を円滑にし、医療が必要な高齢者等が在宅に戻った場合の医療対応を円滑にして、在宅生活の限界点を高めようとしている。
 第三に、在宅での看取りが、課題となったことである。少子高齢社会となり、高齢者の死亡数が年間100万人を超え、将来的には150万人を超えることも想定されている。
 病院での死が追いつかないという見込みや、終末期のQOL(生活の質)等の観点から、在宅で迎える死がテーマとしてあがってきた。これらの課題への対応として、介護保険の領域では、医療と介護の新たな連携の仕組みが必要になったのであろう。
 現状を振り返ると、医療・介護の現場同士が相手をよく理解していなかったり、双方共に多忙等であったりすることにより、連携の仕組みが一部を除きできていなかったのも現実である。医療・介護の連携の必要性が言われても、それぞれの事業者が個別に努力すればできるものではない。仕組み作りは、地域の調整ができる自治体や団体が行わないと難しい。

  2 医療連携のそれぞれの領域

 図1に即して、医療・介護の連携を考えると、
 医療介護の連携の基盤が作られていることが前提となる。具体的には、⑤の入退院に際しての医療介護の連携である。入院後の治療、退院後の在宅での受皿及び⑥の連携の基盤が作られていることである。
 次に、その上にのって、目指す主な方向としての①~④がある。
 ①は、IADLの改善等を図り、個人でできる生活領域を拡げるような支援である。場合によれば、要介護・支援状態からの自立・脱却も起こる。そうでなくとも、介助が必要な部分の減少に繋がる。ケアプランは、そのような視点に立って検討される。
 ②は、主に中度者を対象に、在宅継続、軽くも重くもなるが、改善の可能性を探る。
 ③は、重度者を対象にして、医療・介護連携による給付により現状の維持・改善を目指す。
 ④は、在宅での看取りを視野に入れた在宅サービスの展開である。
 それぞれの過程の中で、入退院・入退所が行われ、短期入所も行われる。

図1  利用者の属性からのイメージ
図1 利用者の属性からのイメージ

 そして、これらに大きな影響を与えるのが、第一に、個人の問題(年齢や意思)である。当事者の年齢による制約は確かにある。65歳と95歳では心身の機能も相当違っているのではないだろうか。また、本人の「生活への意欲」も重要であろう。ケアプランは、意欲を高めることも重視して作成される必要がある。次に、一人暮らしか否か、介護者の有無、利用できる社会資源の有無、住まいの状態等、利用者を取り巻く(周辺の)環境が重要である。周辺環境の調整、特に社会資源の活用等については、地域包括ケアセンターの調整力が期待されている。