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介護保険法の改正後の動向について 第1回 24年度改正は「なぜ、地域包括ケアシステムなのか」

3 地域包括ケアシステムを考える

 以上のような、「財政危機下」の「人口減少下の少子高齢社会」において、高齢者を在宅で支える社会システムとして「地域包括ケアシステム」が構想されています。
 そこでの満たすべき条件を再整理すると、おおむね以下のようになります

     
 
  • 医療が必要な高齢者や重度の要介護高齢者についても、可能な限り在宅で生活できるよう支える仕組み
  • 一人暮らし高齢者や、虚弱な長寿高齢者を在宅で支える仕組み
  • 長寿化に伴い、増加が見込まれる「認知症高齢者」を在宅で支える仕組み
  • 入院しても、円滑に退院が可能となる仕組み
  • 在宅での看取りができる仕組み
  • 利用者や家族のQOLの確保ができる仕組み
 
     

  この構築のためには、公的サービスや地域の助け合い、行政のコーディネートを含め、都市部や地方の特性を踏まえて、仕組みを作る必要があります。
 24時間の入所施設は、その内部のサービスでケアは完結(内部完結型)します。それは「安心できるケアシステム」ともいえます。 ただ、入所すると、集団生活が基本になるので、自宅のような「きままで自由な暮らし」はできなくなります。
 地域包括ケアシステムは、ノーマライゼーションの理念で語るのならば、その施設で得られる「安心」と自宅での「きままで自由な暮らし」を、 地域で支え、実現しようとする試み(地域完結型)ともいえます。在宅で暮らすためには、IADL(外出時に身だしなみを整えるなど日常生活を営む上で必要な動作)の改善、栄養の改善、何よりも利用者の生きる意欲、家族の安心感の確保が大切です。重度の高齢者を支えるためには、家族介護者はもちろん、近所の暮らしの助け合いも必要になるかもしれません。
 24年度改正は、そのような地域社会(地域包括ケア)の実現に向けた改正であり、そのため、次のようなサービスの創設及び再整理を行いました。

  1. サービスの創設
    • 施設と同様に24時間の介護看護に対応するために「24時間定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の創設
    • 通所・訪問・宿泊を行う「小規模多機能型」と「訪問看護」を一体的運営する「複合型サービス」の創設
    • 一定の空きベッドを利用して受け入れを可能にする「緊急ショートステイ」の介護報酬化
  2. 医療と介護の加算による連携の誘導
    • 医療連携加算の見直し
    • 退院退所加算の見直し
    • 緊急時居宅カンファレンス加算の創設 等
  3. 在宅で自立支援のために
    • 自立支援型ケアマネジメントの推進
    • 自立支援型訪問介護(訪問リハとの連携)
    • 機能訓練の充実(通所介護)
    • 短時間型通所リハビリテーションにおける個別リハビリテーションの充実
    • 介護老人保健施設の在宅復帰支援機能の強化 等
  4. 重度化への対応(介護老人福祉施設、グループホーム等)
    • 施設の重点化・機能強化を図る観点からの、要介護度別の介護報酬設定
      サービスの利用者を重度者に傾斜するよう報酬で誘導
    • サテライト型小規模多機能の創設・泊まりの場の拡大
  5. 生活機能の向上を図るためのサービスの重点化(予防給付)
    IADLや生きる力の引っ張りだし
    • 選択的サービス複数実施加算(新規)→複数のプログラムを実施した場合の評価
    • 生活機能向上グループ活動加算(新規)→利用者の生活機能向上を目的に、日常生活に直結したプログラムをグループで行った場合
  6. 入所施設に変わる居宅系の入所の場や、新たな高齢者向け住宅の創設等

 入院・入所施設の抑制を行う一方で、在宅での生活を支援するために、新たなサービスやサービス内容の見直しを行ってきましたが、 在宅系の入所サービスについても次のような拡充を図っています。 表4にあるように、グループホームは、現状投影数の1.37倍の整備を、小規模多機能に至っては、5倍の目標値を掲げています。また、これとは別に「サービス付き高齢者向け住宅の整備の目標」を掲げています。これらの居宅サービスにより、医療介護連携を円滑に実施し、退院退所連携、生活レベル改善のための機能訓練等も効果的に行うことで、全体として「在宅で生活できる限界点」を高めようとするものです。

表4 居宅系施設
    (千人)   (伸び率)
    平成37年度  
  平成23年度 現状投影A 改革B B/A
特定施設 150 250 240 0.96
グループホーム 160 270 370 1.37
小規模多機能 50 80 400 5.00