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介護保険法の改正後の動向について 第1回 24年度改正は「なぜ、地域包括ケアシステムなのか」

2 社会保障制度改革の方向性(医療から介護へ、施設から在宅へ)

 事業は、数値や財源で表現されます。では、具体的にはどのような数値目標が設定されているのでしょうか。税と社会保障一体改革(途中から「社会保障・税の一体改革」へ)で示された資料で数字を拾うと次のようになります。
 表3にあるように、高齢人口の伸びに合わせて施設等を整備すれば、必要となる見込み数(現状投影)が出ます。その数字に対して「改革」を行うことで、 改革後の数値が出てきます、両者を比較すると、現状の伸びに比べ、入院・入所者定員の改革後の数値は約20%の削減です。後期高齢者の数が、1.5倍になりますが、一般病床は、現在の実数よりも減少します。75歳以上の人口が、1,472万人から2,179万人に、約700万人増加する。これに対応させると一般病床が22万床増の129万床が必要になるところを、逆に今より3万床削減し、かつ一般病床について、103万床にするというものです。(103万床も急性期病床へ再編される。)現状と比較し、入院の形の変化が見込まれます。

表3 施設等の将来整備見込み
    (千人)   (伸び率)
    平成37年度  
  平成23年度 現状投影A 改革B B/A
一般病床 1,070 1,290 1,030 0.80
介護保険施設 920 1,610 1,310 0.81



特養ホーム 480 860 720 0.84
老健施設 440 750 590 0.79
介護療養型医療施設 約10万床 0    

 介護施設も、現状投影(現状のまま伸ばしたら必要となる数)に対して、約20%程度の抑制です。また、24年3月末で廃止予定であった 「介護療養型医療施設(現在約10万床弱)」は平成30年3月末をもち廃止予定となっています。どのような形で入院・入所施設の抑制を行うのでしょうか。 それは国民の生活に大きな影響をもたらすのではないでしょうか。どう考えればいいのでしょうか。
 入院・入所の抑制の方法としては、

  1. ベッド整備を抑制(認可しない)
  2. 入院・入所の基準で抑制
  3. 報酬を下げ経営を困難にする、等が考えられます。

 抑制するということは、施設に入れなかった人や、退院した人たちが、在宅で生活することを余儀なくされるということです。 あるいは、これまでは在宅での暮らしや「在宅での死」が難しかったけれど、今後は、サービス等の充実により、在宅で生活が可能になるということです。どちらになるかは今後の施策の展開及び人材次第ともいえます。
 医療が必要な人、重度の要介護者、一人暮らしの要支援・要介護者が地域で暮らすためには何が必要なのか、高齢多死社会をどう迎えるのか、 グループホームや介護施設での看取りも必要になります。かつて言われた家族の「介護地獄の再来」はないのか。 それらに対応できる「地域社会の構築」が求められているということです。ここには「そんなの無理」という回答はありません。その場合は、制度創設前状態に戻ってしまうからです。
 地域包括ケアシステムは、思想として「ノーマライゼーション」や「ソーシャルインクルージョン」の下に、このような状況下で、 「高齢者を在宅で暮らし続けることができるよう支援する仕組みの構築」をめざしたひとつの答えといえます。
 そこでは、その地域の特性に応じた施設と住宅と在宅、公私の役割分担、コーディネーターの役割等が強く求められます。 そして、要介護者や家族のQOL(生活の質)が低下しないで、働き、最後を迎える仕組みが必要ということになります。
 地域包括ケアシステムが、そのような状況の受け皿としての役割を担うとすれば、それが実体化できる様々な仕掛けが必要ということになります。