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介護保険法の改正後の動向について 第3回 医療・介護の連携

4 在宅で生活するということ

 その原因の如何に関わらず、在宅での生活が今後の大きな流れになるとすれば、 生きる意欲が持てて、 在宅での死と向き合える生活を可能にする「ケアプラン」が求められる。サービスは暮らすための手段であり、目的ではない。医療と介護の連携も、在宅で暮らすための手段に過ぎない。地域包括ケアにしても、ある条件下の「在宅生活を支える」仕組みに過ぎない。
 問題はそれによって実現される暮らしの水準がどの程度のものかということである。生活するのは介護保険給付やその他のサービスを利用する要介護者なので、要介護者の自分の生活への意識等が前提となる。その上で、その人の在宅での生活が「尊厳の保持」、「自立」というにふさわしいレベルであるかということである。大事なのは、一人ひとりの多様性がある高齢者の生活、様々な環境の下での高齢者の生活、それが在宅でどのように実現されているかを、本人・家族・ケアマネが共有することである。
 地域包括ケアシステムは、施設等の持つ「総合的な医療を含む介護体制」を、地域の様々な介護保険を含む社会資源や、近隣・ボランティア等の人の関係を活用して実現することで、在宅で生活できる限界(幅)を広げようとするものだろう。そのための社会資源や人的ネットワークを調整する機能を、地域包括ケアセンターでの保険者の機能強化により実現し、要介護者に直接向き合うケアマネジャーを「地域ケア会議」の場などを通じて支援することによって実現しようとしている。
 そこで24年度の介護保険法改正では、「自立支援型ケアマネジメント」や既存のサービスの見直しが行われた。また、現在、「介護支援専門員のあり方」等の検討が行われている。その改正により、介護給付で実現しようとする高齢者支援の方向は、施設から在宅へと大きく転換したが、それを支える仕組みが、全体として調整されていないままの状態が続いていると言うこともできる。
 医療と介護の連携強化は、ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョンという思想(考え方)の実現に向けた取り組みとして位置づけられてもいる。在宅での暮らし方についての共通認識は、これからつくられて行くと思う。自己主張が強いと言われている団塊世代などが、高齢多死時代の担い手として終末期のQOLと向き合うことで大きく変わっていくことを期待したい。自分の死のイメージと向き合うことで在宅での暮らしは、よりリアリティを持ちうるのではないだろうか。

 (参考)

  1. 第5回介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会(平成24年8月29日)資料
  2. 「医療と介護の連携シート」世田谷区ホームページから
  3. 平成22・23年度介護保険委員会答申「地域を支える医療と介護の連携を目指して/平成24年3月」日本医師会介護保険委員会