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介護に関するロボットやICTの活用について

6.ロボットやICTを上手に活用するためには?

6.1  定義付けを行おう

 ロボットやICTの導入・活用の事例をいくつか紹介しましたが、「上手くいく」「上手くいかない」という内容の線引きについては導入した施設が判断することであり、私は第三者が決めることではないと考えています。基準や定義は、施設によってそれぞれ異なりますから。全ては「導入する側が、何を目的に、どう活かそうとするか」次第なのです。重要なことは、「なぜ導入するのか?」「導入して何を目指すのか?」と目的や目標を含めた「定義付け」をあらかじめしっかりと行なっておくことです。

6.2 「あるべき姿」へ到達するためのロボットやICTの活用

 また、最も重要なことは、「ロボットやICTありき」「補助金があるから導入する!」「導入したから無理に使う!」という姿勢ではなく、「現状」の課題を把握した上で「あるべき姿」を描くことです。これが先に述べた「定義付け」です。どこへ向かおうとしているのかをしっかりと定義しなければなりません。「あるべき姿」が異なれば、仮に同じロボットを使っていても、それぞれの目指す道が異なるので、やるべきことが異なるのです。

 そして「あるべき姿」に無理なく到達するための手段としてロボットやICTの活用を検討することです。決して使うことや操作方法を習得することが目的ではないのです。活用することは、「あるべき姿」へ到達するための手段にすぎないわけですから。 「あるべき姿」を描き、どうやって、どのタイミングに、そこに達成すべきか? 同時に、どうやって途中経過(成果)を管理・把握するのか? これを描くことがとても重要です。また、それを職員に落とし込んで共有することが欠かせません。

 なお、介護・福祉の現場においては、製造業の現場と異なり、少し難しいことがあるのです。それは、先に述べた生産性の向上が全てではないということです。利用者さんの満足や職員の負担軽減などについても同時によく検討しなければならないのです。施設の経営面でプラスになることであっても、必ずしも利用者さんの満足度向上に繋がらないこともあるのです。かといって、先に述べたように、「おもてなし」を重視するあまり生産性が低いままの運営体制ではマズイのです。このあたりを上手に見極めなければならない点が、工場の経営と異なり非常に難しいのです。

6.3 人の関わりが成果に大きく影響する

 また、ロボットやICTについては導入すれば問題が解決するわけではありません。単に導入するだけで解決するのであれば、早期に導入する、あるいは、多数の機器を導入した方が明らかに有利ということになります。しかし、現実はそうは問屋が卸さないのです。
 ロボットやICTはあくまでツールにすぎず、それを上手く活用するための術と呼ぶべき土台を組織の中にしっかり強化しなければ、何のために導入したのか曖昧なまま、使うことが目的になってしまいがちです。
 さらに、今のところ介護・福祉現場で使われるロボットやICTの多くは「人がどう活用するか?」という「人の関わり」が成果に大きな影響を与えます。介護・福祉分野をはじめとするサービス分野のロボットやICTは、工場で使われる産業用の機器のように、電源をONにすれば人に代わって何かの業務を全て代行してくれるわけではないのです。物流の現場などでは、スイッチを入れると、AI搭載のロボットが自ら判断し、自ら動いてくれることもありますが、介護福祉分野のロボットではそれと同じようにはいきません。
 繰り返しますが、「人がどう活用するか?」という「人の関わり」が重要なのです。このことは、ロボットの機能面の良し・悪しとは別に、組織の中で人(職員)に上手に動いてもらう必要があることを意味します。全て「人が何を計画するか?」「どう活用するか?」という「人の関わり」が影響するのです。そういう点においても製造現場での活用とは大きく異なるのです。

 さて、1回目の今回は「介護に関するロボットやICTの活用について」というテーマにおいて、主に「過去から現在まで」の状況について説明しました。次回は視点を「現在から未来」に向けて話を展開します。また、「私たちは何に取り組むべきか?」ということに関してお届けしますのでご期待ください。