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介護に関するロボットやICTの活用について

1.はじめに

 今、介護分野にはロボットやICT(Information and Communication Technology)の活用に大きな注目が集まっています。その理由は大きく2つあります。介護分野の課題解決と新産業の育成です。

 1つ目の介護分野の課題解決については、今後、さらなる人手の不足が予想されるなか、介護人材不足の解消をはじめ、業務に携わる人の負担軽減、それに高齢者の自立支援などにロボットやICTの活用が期待されています。また、女性や高齢者の活用、外国人労働者の受入れ、業界のイメージアップなどの取り組みも並行しています。特に、2019年は改正出入国管理法が4月1日施行されたこともあり、外国人労働者の受入れが大きく注目されました。この法施行で外国人の在留資格に「特定技能」が加わり、介護など14業種を対象に、日本語能力と技能の試験に合格すれば、外国人労働者が日本で最大5年間働くことができるようになりました。特定技能の制度は、外国人労働者を5年間で最大34万人受け入れるという壮大な計画なのです。

 2つ目の新産業の育成については、「経済大国」と言われるまでに経済成長した我が国の製造業で培ったロボット技術や最新のICTを駆使すれば、介護分野の人手不足解消になると同時に、大きな市場が創造されるという期待が寄せられていることです。

 本稿では、「介護に関するロボットやICTの活用について」と題して2回にわたり記事をお届けします。1回目は主に「過去から現在まで」の状況について説明します。そして、2回目は「現在から未来に目を向けた話」として展開します。過去、現在、そして未来へと時間軸を意識しながら、私たちの職場環境がどのように変化してきたのか? あるいは、今後、どのように変化していくのか? また、これからの時代を見据えた上で、介護・福祉分野の人手不足への対応や職員の負担軽減を実現させるために「私たちは何に取り組むべきか?」ということについてお知らせします。

 なお、蛇足ですが、本稿のタイトルには「活用について」とある通り、「介護に関するロボットやICT」に関わるテーマの中でも「使い手」を対象にした内容となります。開発・製造などを担う「作り手」向けの要素技術、ビジネスチャンス、新市場の開拓に向けたマーケティングなどについての内容ではございません。同様に、ロボットやICTを販売する企業の販売促進活動(プロモーション)をサポートすることが目的ではありません。

 また、本稿ではロボットやICTの機種を個別に紹介することはありません。なぜなら、どの機種も機能・仕様面は日進月歩であっという間に変わっていき、執筆時の情報は直ぐに陳腐化してしまうからです。価格についても同様に頻繁に変更されます。そこで、個々の機種の説明や紹介をするのではなく、介護・福祉分野の人たちがロボットやICTを活用していくために不可欠なもっと本質的な内容にフォーカスし、お届けしていきます。

 ところで、以前はIT(Information Technology)という表現が使われていましたが、最近ではITとほぼ同じ意味合いを持つICTという用語がよく使われるようになりました。ITとICTについては、Communicationという単語が入っているか、入っていないかだけの違いですが、コンピューター技術そのものについてはIT、一方のコンピューター技術を活用することについてはICTを使い、それぞれを使い分けるケースが多くあります。本稿では「活用すること」を前提にしていますので、ITではなくICTという用語を用いて説明していきます。