1. 福ナビホーム
  2. 特集記事
  3. 介護に関するロボットやICTの活用について
  4. ロボットやICTの普及に向けて国や自治体がやってきたことは?

介護に関するロボットやICTの活用について

4.ロボットやICTの普及に向けて国や自治体がやってきたことは?

 国や自治体では、介護・福祉分野にロボットやICTを普及させるために、これまで支援や施策を次から次と打ち出してきました。国では経済産業省および厚生労働省が普及の旗振り役を担っておりますが、それとは別に各自治体がそれぞれ独自の取り組みを進めています。
 行政の支援や施策を個々に理解しようとすると全体の流れがつかめなくなりがちですので、ここでは過去の3つのターニングポイントと思われる内容に注目して全体の動きを説明します。

4.1 3つのターニングポイント

 1つ目のターニングポイントは平成22年にスタートした神奈川県のモデル事業です。同県では、国や他の自治体に先駆けて介護・福祉分野にロボットやICTの普及推進を図る事業をスタートさせました。当時から介護・福祉分野においては人材を取り巻くさまざまな課題がクローズアップされていましたが、その課題解決の一環としてロボット関連技術などを活かす、行政としては最初の試みでした。

 また神奈川県事業スタートの3年後には国が「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」を発表しました。これが2つ目のターニングポイントです。平成25年6月に第二次安倍内閣が掲げる成長戦略で閣議決定されたのが「日本再興戦略」。そこには安価で利便性の高いロボット介護機器の開発をするために「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」が盛り込まれました。これを機に国が開発支援に本格的に乗り出したということです。

 そして3つ目のターニングポイントは、平成27年度厚生労働省補正予算の「介護ロボット等導入支援特別事業」です。これは介護施設に対する購入補助の制度です。それまでも購入補助の制度はありましたが、自治体単位で行われており、規模・期間・対象地域などが限定されていました。しかし平成27年度の厚生労働省の特別支援事業では約52億円もの税金が投入され、対象は全国。補助率は10/10でした。これを機に平成28年の後半から多くのロボットやICTが介護施設に導入されました。また、この特別支援事業を機に、多くの企業が販売代理店として介護市場に参入してきました。2つ目のターニングポイントとなる「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」では「作り手」向けの支援を本格化させましたが、「介護ロボット等導入支援特別事業」では「使い手」に対する購入補助が本格的にスタートしたのです。

4.2 国や自治体の取り組み

 国や自治体では単年度ごとにさまざまな施策や支援を行ってきましたが、これらの取り組みはいくつかに分類することができます。私は、大きく1)開発支援、2)試験導入・実証事業、3)購入補助、4)リサーチ、それに5)普及推進活動、に分類しましたので、それぞれを簡単に説明します。

(1)開発支援
 「開発支援」は開発する事業者に対して、主に経済面の支援をする取り組みです。開発する企業や団体などに開発資金を補助することです。
 なお、経済産業省と厚生労働省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を公表して、5つの重点分野8項目について開発を進めています(平成29年10月の改訂により、6分野13項目に拡張されました)。

ロボット介護器機の開発重点分野

出典:テクノエイド協会ホームページ

http://www.techno-aids.or.jp/robot/jigyo.shtml

(2)試験導入・実証事業
 「試験導入・実証事業」は、実際にロボットやICTを介護施設などに試験的に導入する取り組みです。数時間程度のスポット的な「お試し使用」のような機会の提供から、半年以上も施設に導入して効果測定を行なう事業もあります。ロボットやICTの活用に際してモデルとなるべき施設を公募し、いくつもの機種を導入してもらう事業も行われています。

(3)購入補助
 「購入補助」は、導入側の金銭的な負担を軽減してあげる取り組みです。先に述べた通り、平成27年度厚生労働省補正予算の「介護ロボット等導入支援特別事業」では約52億円もの予算が計上されました。また地域医療介護総合確保基金を充てた補助制度が都道府県単位で平成27年度から毎年実施されています。当初、補助の限度額が1台に10万円でスタートした制度でしたが、平成30年度にはそれが30万円に増額されました。

(4)リサーチ
 「リサーチ」は、いわゆるロボットに関連するさまざまな調査です。厚生労働省が毎年募集している老人保健健康増進等事業などを通じて行われます。主に、シンクタンクと呼ばれる調査業務などを行う民間企業がこのような事業の委託先として選ばれるケースが一般的です。ロボットの導入・使用状況、今後の導入意思などをはじめ、ロボットの普及に向けて市場の実態を把握するために行われます。リサーチは他の支援と異なり、開発や購入の促進に直接的に結びつくものではありませんが、今後の施策を検討する上で重要な基礎データとなります。

(5)普及推進活動
 「普及推進活動」は、普及や推進を目的に行われるさまざまな活動です。数時間で終了する単発的なセミナー・講演会などのイベント開催や機器の常設展示場の設置など、説明・体験および研修の場を提供する全ての活動が該当します。公費を使って自治体が自ら、あるいは事業者に委託するケースが多いのです。最近では民間企業が自社製品のプローション活動の一環として「普及推進活動」を行なうこともあります。

 以上の通り、介護・福祉分野にロボットやICTの普及推進を図る事業については、大きく1)開発支援、2)試験導入・実証事業、3)購入補助、4)リサーチ、それに5)普及推進活動、に分類することができます。

施策や支援の種類