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介護保険の動向と実際例 第1回 介護保険制度の利用までの道のり

施設を見に行った

 施設の選択としては、頻繁に見舞いにいく都合から、自宅の近くであることを優先した。また、特別養護老人ホームについては、入居の見込みがないとのことなので、老人保健施設1カ所と認知症対応型高齢者グループホーム3カ所を見学することにして、自転車で廻った。
 老人保健施設については、1カ所なので見学と入所申し込みを行った。やはり待機が多く、すぐには入れないとのことであったが、退院が間近なこともあって、とりあえず申し込みを行った。
 次にグループホームを3カ所廻った。最初のホームは、定員9人であり、訪問すると玄関に鍵が掛かっていて、呼び鈴を押すと2人の職員が出てきたが、玄関から中には入れず、見学は拒否された。見学を拒否されたこと、とても印象が暗かったので、対象外とした。2番目のホームは、とても気さくな職員さんで見学オーケー、これから利用者と外出(公園等)とのことでばたばたしていた。入居者の年齢も比較的若い様子。入居者は18名で、ホームとしては良かったが、母の状態には不向きと思いつつ、3番目のホームへ。
 見学オーケーですぐに見学をさせてくれた。また、その後、丁寧な説明があり、全体で18人が二つに分かれて暮らしていた。悪く言えば放任状態で、勝手に屋内を歩いている。しかし、本人から外出の希望があれば、ホームで対応、通院等もホームで対応するとのことであった。(通院への対応は家族というホームも多い。入居前に確認するとよい。)
 母は、一緒に行動すると言うよりもマイペースなので、このホームが母には一番合っていると思い、申し込むことにした。入居待機は9番目とのことであった。先が遠い。

施設利用の場合は、とにかく現地を見る。可能なら利用予定者も一緒に
・施設の雰囲気
・入居者の状態 いきいきしている? 年齢、要介護度
・具体的サービス内容を聞く
・入居予定者との相性を見る
・利用料金の確認
・その他気になることを尋ねる

入所から死へ

 ひょんなことからグループホームの入所が繰り上がり、5畳くらいの個室(洋室)に入居が決まった。母の身の回り品、よく見る写真アルバム等を揃え入居した。母はあっという間に適応し、訪問すると「まだ今日は下の仏様に線香をあげてないから、1階の仏壇に線香をあげておいて」とよく頼まれた。母の意識では、自宅で暮らしている様子であった。(入居系施設にいるのだが、自宅で暮らしているように思っていた。)
 近所にあったこともあり、とにかくお見舞いには行くようにして、子どもと孫でローテーションを組み、母に会いにいった。

図4 グループホーム
1グループホームに入居
2自宅と誤認した暮らしの継続
3室内での足の負傷 ホームで病院に受診→化膿止めを処方→ホームで投薬をせず
傷が化膿
入院・改善せずに悪化 *ホームを責める気にはならなかった。よく対応したと感謝している。
4生きる力が失われていく 病院のベッドでの点滴の生活が続き、退院を強く希望。そのうち生きる力が落ちたように感じた。
5突然の死 唐突であった

 

 母は91歳を過ぎ、92歳に近づいていた。しかし、グループホームではマイペースの生活を続けていた。
 あるとき、ホームを尋ねると、施設長と生活相談員が最敬礼で「申し訳ありません」と謝罪。けがをしたので病院に連れて行き、治療し化膿止め薬を貰ってきたがすっかり忘れている間に化膿してしまったとのこと。きちんと投薬等を行い様子を見ることにしたが改善せず入院することになった。化膿した部分が壊死状態となり黒く変色、治療を継続する。
 3ヶ月くらいして、退院可能だが、グループホームへの復帰は難しいのではとなり、介護療養型への転院の検討をはじめた。
 しばらくして、今まで何も言わなかった母が、「家に帰りたい」、「早く死にたい」というようになった。その度に「もうすぐ帰れるから我慢して」といったが、母の生きる気力が失われていくのを感じた。といって、介護の関係から自宅に戻ることは難しく「介護療養型医療施設」を考えていた。
 突然、八王子に電話、様態が急変したので来て欲しいと連絡があり、急行したが、すでに別の世界に逝った後であった。入院・入所に際し、家族で延命治療は行わない旨を確認し、医師にも伝えてあった。なぜ、本人が帰りたがったのに、自宅に戻せなかったのか今も自問するときがある。

(なお本事例は作者の体験に基づいて再構成した内容です。人物構成等は架空の内容となっており、実際の人物や団体を特定するものではありません。)

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