現在位置 : 福ナビホーム > 特集記事 > 介護保険の動向と実際例 > 第2回 3.より具体的な課題と対応

介護保険の動向と実際例 第2回 地域包括ケアシステムの構築に向けて

3. 地域包括ケアシステムの構築に向けて

 平成26年度の介護保険法等の改正を視野に入れ、保険者の作業としては、平成27年度から始まる第6期介護保険事業計画(「地域包括ケア計画」)の策定に当たって、これらの変更を読み込んだ計画作りを行っていく必要がある。今回のような他の所管を巻き込む改正は、介護予防や地域密着型サービスが導入された平成18年度時の改正以上に大きな改正である。そのことを踏まえた自治体の人事も必要になるかもしれない。
 地域包括ケアシステムの構築のためには、まず現状を知らなければならない。その上で、しなければならないこと、その優先順位や今すぐできること等も勘案し、準備を始める必要がある。やや、ステレオタイプになるが、大都市近郊のA市(人口10万弱)をフィールドに、地域包括ケアシステムの構築の準備について、作業手順を考えてみる(表1、2)。 地域の実態を踏まえ、ここでは当面緊急性の高いc地区を対象地域として、地域包括ケアシステムの構築を試み、その後順次、a地区、b地区へ展開していく。ただし、地域性があるため、c地区モデルはそのままa・b地区へ展開できないことを想定した。c地区での取組みの方法はa・b地区での取組みにも役立てることができるという判断で始めた。

1 取組体制の構築

 まず市長の第一声として地域包括ケアシステムの必要性への理解と指示があり、それを受け、市役所所管課、地域の介護保険事業者団体、地域医師会、それと地元の大学との連携体制を構築した。  
 事業の実施に当たっては、上記関係者による「事務局」を作り、進行管理等を行う体制を作った。

2 必要な事項一覧

 次に、何をしなければいけないかについて、表1、2のような準備一覧表を作成した。これにより全体のイメージを掴み、課題解決のための作業を行う場合に、今の作業が全体のどの部分にあたるのかを確認しながら(全体と部分のバランス)業務を進める。

表1 課題群
  解決すべき課題 備 考
1 現状把握
  • ・人口構成、高齢化率、人間関係、生活手段等の地域差
  • ・要支援・要介護認定率
  • *地域差がある
  • *要支援割合が36%(全国平均は27%)の地域
2 地域ケア会議の運営手法 *見学等を踏まえ構築
3 自立の支援に資するケアマネジメントの周知
  • *連続講座(座学と演習)
  • *要のひとつ
*今後の課題
4 住民の主体的参加による地域づくり *要のひとつ
5 地域支援事業等の再編成
  • *要支援者の割合が相対的に高く重点課題

 上記の表1の課題群を具体的に解決するための、業務項目一覧(表2)を作成した。これを念頭に具体的な作業を行うことになる。実際には、実施していく過程で変更等は起こりうる。実施すれば、必ず変更事項が発生するはずなので、これを固定することなく、適宜柔軟に対応していく。  
 また、作業はできるところから全体を踏まえつつ始める。「できない」ではなく、「どうすればできるか」の視点で対応する。

表2 業務項目一覧(地域包括ケアシステムの構築に向けた具体的準備作業)
  項 目 内 容 特 記
1 地域を知る a地区:
農村部、稲作・果樹栽培等
  • ・高齢化率 35%、後期高齢者数は間もなくピーク、絆強い
b地区:
旧市街地、伝統的小規模製造業と商店が中心
  • ・衰退する伝統産業、高齢化率は30%超だが、絆は残っている
c地区:
新興住宅地、隣接する大都市のベットタウン、団地ではなく戸建てで形成
  • ・ある地区は高齢化率37%、間もなく40%に、成人の流失人口減少、孤独死も起きている
2 c地区対象
  • ・高齢者の人たちの生活ニーズの把握(介護予防の地域支援事業への意向も視野に)
  • ・地域生活ニーズの把握のため、要介護認定資料の分析
  • ・実際のケアプラン等の分析及びケアマネへの聞き取りの実施
3 地域ケア会議の開催のため
  • ・地域ケア会議を実施するための具体的準備
  • → 会議設置要綱の整理
  • → 守秘義務
  • → リスクマネジメント
  • ・先進的取組みの視察
  • ・会議で使う様式等の整理
  • ・社会資源の確認
  • ・地域支援事業の確認
  • ・参加者の確認
  • ・自立の支援に資するケアマネジメントのスキルアップ
4 事業者の育成
  1. ケアマネジャー(ケアマネ)
  2. 介護サービス事業者
  • ・自立に資するケアマネジメントサービスの提供についての共通理解と共有
  • →公開講座の開催
5 医療・介護連携
  • ・医療介護連携の具体的方法等の取り決め
  • →今後煮詰める
6 住民
  • ・住民の主体的活動への参加及び支援
  • ・住民向け説明会の実施
  • ・地元自治会との話合い、課題の共有
  • ・住民の主体的活動の支援
  • ・活動団体の紹介
  • ・市役所による住民支援
7 連続公開講座
(H25.7~26.3)
  • ・ケアマネ等のスキルアップのための講座の開設
  • ・当面、ケアマネ向けの講座(座学と演習)を7回、全事業者及び市民向け講演会を2回、計9回を計画化
8 地域ケア会議の開始
  • ・c地区において具体的事例による地域ケア会議を実施
  • ・利用者のQOL(生活の質)向上
  • ・ケアマネ等研修
  • ・課題の発見と施策化への検討素材
9 地域支援事業の再編成
  • ・地域ごとの現状とニーズの把握
  • ・住民とのコラボ
・たたき台の作成へ
10 中間のまとめ
(年度末)
  • ・年度末に各々の達成状況を評価し、次年度へつなぐ
・報告会の実施

3 より具体的な課題と対応

 地域包括ケアシステムの構築に向けた当面のポイントを絞ると、1~5のようになる。これらについて「現状」を踏まえた上で、確実に構築していく必要がある。


1.自立の支援に資するケアマネジメントの考え方・内容の共有
 主としてケアマネジャーを対象に、地域包括ケアシステムの理解、自立支援型ケアマネジメントの理解と実践、特に介護保険のケアマネジメントは極めて実践的なので、座学による理解に合わせて、事前の演習等を徹底し、体感としての理解を深めることが必要と思われる。
そのための演習講師の確保、様式の確保等を行い始めている。9回の連続講座のうち、すでに3回が終了している。
 自立の支援に資するマネジメントの考え方を共有し、地域ケア会議の開催に臨む必要がある。
2.見守り等への市民などの積極的参加(住民主体のまちづくり)
地域で活動する市民団体の把握や紹介等を行い、地域住民が自分も参加したいといったときに、団体づくりやNPOづくり、コミュニティサービス(ビジネスを含む)等のノウハウの提供が必要(準備中)となる。すでに市が行っている「市民活動支援事業」とリンクさせる。また、まちづくりについては、ハード面の所管局との連携も図る。  
 なお、大学と連携することで、学生と地域の人たちの合同による「傾聴ボランティア活動」等の準備も行っている。地域の社会福祉協議会や社会福祉法人等との調整は、現時点ではできていない。  
 該当地区の住民向けの説明会は別途、企画中である。
3.社会資源の整備
地域支援事業や住民の係わり等を含め、地域の社会資源の再整理と、必要なサービスの洗い出しを行う必要がある。
4.医療と介護の連携のしくみ作り
 地域の医師会も地域包括ケアシステムについては積極的であり、今後、連携のしくみについて具体的に詰めていく。
5.その他
 多忙な中での業務であり、かつ今後につなげる仕事となるので、日程管理(スケジュール管理)は必須であり、会議の効率化も必須である。
      (上記の内容はA市における平成25年9月現在の進捗状況)

▼ご登録はこちら▼メールマガジン

最新記事の掲載をメルマガでお知らせ!