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介護保険の動向と実際例 第2回 地域包括ケアシステムの構築に向けて

2. 地域包括ケアシステムの構築に向けた具体的取組み

 介護保険制度改正等を含む介護保険部会の議論が平成25年8月28日から始まった。そこでの認識として、「65歳以上の高齢者数は2025年に3,657万人となり、高齢化がますます進むうえ、認知症高齢者や世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみ世帯はさらに増加していくと見込まれている」とし、それへの対応として「団塊の世代が75歳以上になる2025年に、各地域で、それぞれの地域の実情にあった地域包括ケアシステム(医療・介護・予防・住まい・生活支援が確保される体制)の構築を目指す必要がある」としている。地域包括ケアシステムが、各地域で簡単にできるとは考えられていない。それほど難易度の高い試みと思われる。2025年がひとつの期限となるが、すでに取り組んでいる自治体は先へ進んでいくが、まだ取り組んでおらず2025年までにやればいいだろうと考える自治体との、自治体間格差は大きく広がっていく。何よりも、制度が変わっていくので、それへの対応が保険者には求められることになる。

1 地域包括ケアシステムについて

 それは、医療・介護・予防・住まい・生活支援が確保される体制であり、「在宅医療・介護連携の強化地域ケア会議の推進ケアマネジメントの見直し総合的な認知症施策の推進生活支援・介護予防の基盤整備」及び「中長期的な視点に立った介護保険事業計画の策定」を、内容として含んだものとして構想されている。特に上記のについて、地域の実態を踏まえ、構築に向けた検討を行う必要がある。  
 例えば、同一市町村でも、大都市近郊では、a地域の絆が残っている農村部、b旧産業地帯である旧市街地、c都市部のベットタウンとしての新興住宅地(その場合でも大規模団地中心と戸建て中心では住民の価値観等も異なる可能性がある。)に大きく分けることができる。同じ市内といってもそれらの特性に応じた施策づくりが必要になってくる。

2 地域包括ケアシステムの構成要素

  地域包括ケアシステムの構成要素について、国の資料(図1)を使ってポイントを説明すると、図の左上には、医療の絵が描かれている。医療機関の機能分化も描かれており、急性期病院、亜急性期・回復期リハビリ病院群があり、次のステップとしての日常の医療(かかりつけ医、地域の連携病院)がある。急性期病院等から地域の病院、在宅診療への移行がある。また、右上の介護の領域では、「介護が必要になったら」として、施設・居住系サービス群と、在宅系サービス群が示されて、それを医療等と連携しながら活用し、生活を継続するイメージである。ここで、医療・介護の連携のしくみが求められることになる。

図1 地域包括ケアシステム 地域包括ケアシステム

 生活の拠点である「住まい」として、自宅とサービス付き高齢者向け住宅が描かれている。人はいずれ死ぬ。夫婦世帯が、やがて配偶者が亡くなり、単身となり、歳を重ねたとき、一人暮らしが困難になったときの「住まい場」のイメージとしてのサービス付き高齢者向け住宅である。なお、サービス付き高齢者向け住宅の生活支援機能を自宅で持てれば、これまでと同様の暮らしは可能と思われる。  
 そして、住まいの下には、いつまでも元気に暮らすためにとして「生活支援・介護予防」が描かれている。注目すべきは、その担い手として「老人クラブ、自治会、ボランティア・NPO等」となっている点である。軽度者が介護保険本体から外れることに伴い、地域の住民等による積極的な取組みにより、これらのサービスが提供されることへの期待が推し量られる。地域支援事業の再構築のイメージも含んでいるものと思われる。
 この地域包括ケアシステムを直接的に支える担い手として、ケアマネジャーや地域包括支援センターが、図の左側の中程に描かれている。このようなしくみを保険者が中心となり構築するのだが、そのしくみの担い手としてのケアマネジャーのスキルアップが期待されている。なお、この図は一つのモデル例であろうから、これらを参考に、制度改正等を踏まえ、住民が可能な限り地域の中で、安心できる生活を続けて行けるようなしくみを作ることである。  
 エリアとして中学校区が想定されているが、このあたりも地域特性によって、より最適なエリア設定が求められるはずである。

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