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介護保険の動向と実際例 第2回 地域包括ケアシステムの構築に向けて

2.制度改正の動向

 平成27(2015)年度の介護保険制度改正の方向について、大きく「制度改正」、「しくみづくり」、「区市町村の機能強化」の3つに分けて整理してみます。なお、この他、利用者負担の改正も行われる予定です。

1 制度改正

 今回の制度改正の目玉は、大きく3点です。1要支援1・2の対象者について介護保険本体の給付(予防給付)から、訪問介護と通所介護を外し、対応するサービスについて地域支援事業を再編成するということ、地域支援事業を再編成するということ、2個別のサービスでは、通所介護の機能の改革、特に定員10人以下の小規模型については、地域密着型サービスへ移行させ、今後新たな事業所開設については保険者の管理下に置くということ、3特別養護老人ホームの入所対象者を原則要介護3以上にすること等です。これらの改正を実際に実施するためには、区市町村、行政トップの力量・考え方が問われることになると思われます。一所管課の対応を超えています。厚生労働省では、10月に各局長を構成員とする局横断の検討会が立ち上がりました。

1.要支援1・2の軽度者について、訪問介護・通所介護の予防給付の対象から除外へ
  •  介護予防でのサービスの利用は、介護予防通所介護と介護予防訪問介護が中心です。それぞれのサービスの内容は、前者では機能訓練が大半で、後者では買い物が中心となっています。
  •  全国平均で介護予防の利用者は全体の約27%(平成25年4月末。地域によっては30%強、あるいはそれ以上。)ですが、そのうち57%が利用している訪問介護と通所介護が介護保険の本体給付から外れます。市町村による要支援者の占める割合の凸凹に加えて、同一市町村内でも地域により格差があります。これまで利用している者の相当数が、介護保険の本体給付から外れることになりますので、これまで訪問介護と通所介護を利用していた人たちへの対応が極めて重要な課題となります。その人たちへの対応をどうするのか。地域支援事業の再編成による対応が必要となっていますが、訪問介護・通所介護利用者の具体的なニーズ、またその利用によりどのような改善が図られていたかを把握し、どのような提供体制を構築していくか、区市町村の力量が問われます。また、介護予防サービスの事業所との関係も出てきます。厚生労働省によれば、制度廃止に当たっては、現在給付している財源を、新たな事業に移すので、サービスの利用は継続できると説明していますが、財源的に手当てされるのか、費用の伸びに上限を設けるとのことであり、対応への課題があります。また、それを「新しい総合事業」に移して、同様に実施するとのことですから、利用者のニーズ・満足度等を高めながら地域支援事業を再編し新たな事業へどのように移すのかが課題となります。自治体によっては、それらを踏まえた準備を始めているところもありますが、まだ認識できていない区市町村もあると思います。
  •  なお、要支援サービスのうち訪問介護と通所介護の給付費が、介護保険の事業費に占める割合は3.3%(要支援全体では5.7%)程度です。
  •  また、要支援サービスの廃止については、平成27年度当初からではなく、自治体の準備状況等に応じて、27年度から3年以内に完了という日程設定になっています。改正法案成立後に具体的に示されるものと思われます。

      図1 要支援者の訪問介護、通所介護の総合事業への移行 図1 要支援者の訪問介護、通所介護の総合事業への移行
    *第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「要支援者の訪問介護、通所介護の総合事業への移行(介護予防・生活支援サービス事業)」

  •  全国一律のサービス内容であった訪問介護や通所介護については、新しい総合事業に移行することにより、介護事業所による既存のサービスに加えて、様々な主体により、多様なサービスが提供されることにより、利用者の選択の幅が広がることとなる。

      図2 要支援者に対する訪問介護・通所介護の多様化(イメージ) 図2 要支援者に対する訪問介護・通所介護の多様化(イメージ)
    *第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「要支援者に対する訪問介護・通所介護の多様化(イメージ)」

2.通所介護の改正
  •  目的を明確にした通所介護への区分変更
     通所介護サービスについては、わかりにくい面もあります。例えば、主として預かりサービスの場合、介護保険施行前に行われていた、高齢者福祉センター等の利用とどのあたりが違うのかがよく見えません。また認知症対応型通所介護のプログラムと認知症高齢者を受け入れている通所介護の、高齢者のそこでの過ごし方の具体的な違いなどはっきりしない部分もあります。
     通所介護が非常に増加している、そのことへの危機感があったようです。そのために、今回の通所介護の改正は、機能の分化の明確化や増え続ける通所介護事業所のうち特に10人以下の小規模型への対応が主となります。
     現在の通所介護は、認知症対応型通所介護と一般の通所介護に別れており、そこのメニューの中に機能訓練等があり、短時間型も増えてはいますが、長時間型が主流となっています。これらについて、通所介護の機能を分けるという考え方です。機能訓練対応、認知症対応、療養対応の通所介護へ改正するということが考えられているようです。このようになった場合は、単に長時間のデイサービスを提供し、その中で一部機能訓練プログラムを実施しているような通所介護の介護報酬は、下がることが予想されます
  •  小規模型通所介護の地域密着型への移行と再編
     小規模型については、地域密着型サービスへ移行する、その他として、小規模多機能居宅介護のサテライトや大規模型・通常規模型の通所介護のサテライト型事業所という位置づけが記されています。
     地域密着型サービスに移行することにより、その指定は当該市町村になり、整備目標数は、介護保険事業計画において管理されることになり、それを超える開設は事実上困難になります。
     なお、通所介護の事業所数は平成24年度末現在35,453ヶ所で、そのうち小規模型は17,963ヶ所で、事業所数全体の50%を超えています。

      図3 図3 小規模型通所介護の移行イメージ(案)
    *第48回社会保障審議会介護保険部会資料1「在宅サービスについて」

  •  また、会計検査院は、平成25年10月22日、厚生労働省に対して、地域密着型サービスのうち、認知症対応型通所介護と小規模多機能型居宅介護の利用について、利用率が50%を下回る事業所が多くあることを指摘した上で、その改善について処置要求を行いました。これについても、今後何らかの対応が示される筈です。
3.特別養護老人ホームへの入所対象を、原則要介護3以上へ

 実質的には事実上要介護3以上の利用が多いと思われますが、単身の認知症の高齢者等のように一部には在宅では生活が困難な高齢者等がいることも事実です。要介護2以下の在宅生活困難者の居場所の確保(例 認知症であればグループホーム等)と、一般論としての、施設ではない高齢者の住まいの確保が求められます。その一つの選択肢として「サービス付き高齢者向け住宅」もありますが、利用料負担等のこともあり、それで全ての解決には至りません。保険者による「在宅での生活継続のしくみ」づくりやさらに一歩進んで「在宅での看取り」も視野に入れた対応が求められます。
 なお、第51回社会保障審議会介護保険部会において、「軽度(要介護1及び2)の要介護者」や「特別養護老人ホーム入所後に要介護1又は2に改善した高齢者」についても、やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、特例的に入所を認めることとしてはどうか、という取扱が示されました。



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