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介護保険の動向と実際例 第2回 地域包括ケアシステムの構築に向けて

2. 制度改正の動向

2 しくみづくり

1.地域包括ケアシステムの構築

 国の資料等で地域包括ケアシステムの狙いは、「在宅で生活継続の限界点を高めること」であり、そのための「制度の再編」として示されています。その完成目標年度は、団塊世代が後期高齢者となる平成37(2025)年度(第9期介護保険事業計画)までとなっています。このことは、このシステムの完成までに、それだけ時間がかかるという、構築の難しさとともに、今後の制度改正を内包したしくみであることを示しているともいえます。換言すると、当面平成37年まで、制度改革(再編)が続くという意味と思われます。
 今回の改正では、医療と介護の連携の強化(医療から介護へ)、自立支援の考え方による介護サービスの提供(機能訓練等により在宅の限界点を高める)、高齢者の住まいの場の確保(施設から在宅へ)、要支援・二次予防対象に対する「生活支援サービスの、自治会・ボランティア・NPO等による提供(介護予防事業者からの転換?)」が、地域包括ケアシステムの内容として示されています。(図4を参照)それぞれ難易度が高い課題ですが、住民やボランティアの参画をいかに行うかが、特に大きな課題と思います。そして、それは、いつか介護予防事業者によるサービス提供と入れ替わるのでしょうか。

 図4 図4 地域包括ケアシステム
  *第46回社会保障審議会介護保険部会資料3「地域包括ケアシステムの構築に向けて」を一部加工
  ※画像をクリックすると拡大します

2.軽度者や生活支援サービスを地域の支えあいの中で受け止めるしくみ

 介護保険制度が発足する前には、住民参加型サービスや有償家事援助サービス団体があり、行政サービスの対象とならないサービスや時間帯にサービスを提供していました。介護保険が実施されたとき、その多くの団体はNPO法人や有限会社等の法人格を取得し、介護保険の指定事業者になりました。
 今回は、住民が主体となって地域で活動する団体やボランティア、そしてNPO法人により、無料もしくは低額な料金で地域の見守り・支え合い等の支援の提供を、地域包括ケアシステムの有力な社会資源の一つとして想定しています。当時の地域活動団体の主力は女性たちでしたが、今回は、退職した元気な高齢男性も想定しているようです。事実、そうしたリタイアした男性たちは、地域に数多くいます。問題は、その組織化です。
 地域ニーズを踏まえ、リタイアした人たちの地域活動を、行政がどのように支援するのかが、各自治体に問われています。


2-2.ボランティア・NPO団体という表記のしかた

 余談ですが、図4にもありますが、無償・低額なサービス提供主体として、「ボランティア・NPO」と一緒に書かれることが多いのですが、NPOは営利企業や社会福祉法人と同様の事業体であり、NPO法人の職員も霞ではなく、普通に食事をし暮らしています。結婚も、子育てもします。NPOとして、事業をより多角的に展開すればするほど、職員の雇用、社会保険、福利厚生等必要です。それなのになぜいつも「ボランティア・NPO」と一括りに表記するのか疑問です。


3.軽度者の受け皿としての地域支援事業を「新しい総合事業」へ再編成

 再編成の課題として、利用者の問題、既存の介護予防事業者の問題、サービスメニューの問題があります。現在のサービス提供をそのまま移行することは考えられません。混乱をさけるために、制度切り替え当初は旧サービスの内容を継続したとしても、利用者にとって本当に必要で、役に立つものは何かを把握して、将来を見据えて再編成する必要があります。
 そのためには、地域の違いや特性に応じた、ニーズの把握をする必要があります。高齢者の地域での生活実態の現状と安心して暮らし続けるためには、何が障害となっているのか、不足しているのかを把握する必要があります。同一区市町村内でも地域差があれば、不足するものは違います。


4.自立の支援に資するケアマネジメントの推進

 自立支援型のケアマネジメントの推進が、24年度の制度改正以来言われており、ケアマネジメントの様式変更等が課題となっていましたが、検討過程では、新様式2、新様式5が示されたものの、迷走状態のまま現在に至っています。
 一方で、同改正では、訪問介護と訪問リハビリの連携や、通所介護の機能訓練加算の変更等の機能改善を意識した制度改正も行われました。
 今後、ケアマネジメントの方法については、今後も「正しいこと」を巡る検討が行われると思われますが、利用者の生活の質の向上に向けたサービス提供については、基準を示し得ないとすれば、現場での実践において「事業者間格差」を拡大しながら進むと思われます。
 しかし、放置もできないので、いずれ何らかの考え方、あるいは介護報酬を通じた誘導が行われるものと思われます。

3 区市町村の機能(役割)強化

 区市町村の機能・役割の強化が言われていますが、今回の改正では、区市町村間の格差が顕著になると思われます。

1.地域支援事業の再編の実施、そのためには以下の準備が必要
  •  現状の把握と再評価
  •  地域のニーズとそのニーズに対応できるサービスの創出
  •  将来を見据えた、現要支援者等への新たなサービス体系の構築
  •  利用者の満足度と希望の確保
  •  地域住民の生活支援サービスへの参加の支援・促進

2.制度改正を踏まえ、第6期介護保険事業計画(地域包括ケア計画)策定に向けた事前の準備
  •  実態調査
  •  制度改正を踏まえ、新たな制度設計の準備
  •  人材の確保養成

 上記制度改革や、地域包括ケアシステムの構築に向けた取組を含む第6期介護保険事業計画の策定が平成26(2014)年度に行われます。第6期について名称(愛称?)を「地域包括ケア計画」にするとの報告もあり、その際、地域包括ケアシステムをにらんだ計画、自立支援型サービスやマネジメント等及び事業者のサービスのあり方に一部踏み込むことも想定されます。これは保険者(*1)にとって、高いハードルとなると思われます。
*1 保険者とは、市町村、特別区などの介護保険事業の運営主体のこと


3.住民の地域の生活支援サービス等への主体的参加の組織づくり
  •  義務としての地域貢献活動ではなく、生活の豊かさとしての地域活動の実現
  •  住民の自主的な活動をサポートするしくみ

4.地域密着型サービスの種類の増加にともなう業務体制づくり
  •  小規模型通所介護事業所の指定
  •  居宅介護支援事業所の指定(平成27年度から3ヵ年で移行準備、平成30年度から移行)
  •  事業所の質の確保と集団指導・実地指導等の実施

4 利用者負担の引き上げについて

 今回の改正では、保険料を含む利用者の負担の引き上げ案が様々に示されています。

  •  一定以上の所得がある者の、利用料負担の引き上げ
  •  施設入所者に対する補足給付について、預金による制限、資産による制限等(不動産については除外案が示された。)

5 「医療・介護サービス提供体制改革推進本部」を設置

  •  厚生労働省は、平成25年10月11日厚生労働省の各局局長からなる「医療・介護サービス提供体制改革推進本部」を設置し、局横断で、医療・介護サービス提供体制の推進に取り組み始めました。
  •  本部の下に、二つのプロジェクトチームが設置されました。

  1. 医療機能分化・連携/在宅医療・介護連携推進プロジェクトチーム
    • ○高度急性期から在宅医療・介護までの一連のサービス提供体制の一体的な確保を行うため、医療計画と介護保険事業(支援)計画の連携、医療機能分化・連携や在宅医療・介護を進めるための新たな財政支援制度等について、関係部局で一体的に検討を行う。

  2. 地域包括ケアシステム推進プロジェクトチーム
    • ○地域包括ケアシステムの構築のための自治体支援その他の取組を行う。
    • ○25年度から26年度にかけて、自治体の第6期介護保険事業(支援)計画(中長期の見通しを含む)の策定作業に合わせ、自治体支援の活動を推進する。


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