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介護保険の動向と実際例 第1回 介護保険制度の利用までの道のり

はじめに

 第1回は、実際に親族が介護保険サービスを利用したときのことについて記します。介護保険制度は普及していますが、一般の人では名前は知っていても具体的内容や、利用の仕方等知らない人が多いと思います。今回は、経験から学んだ、介護サービスの利用のポイントについて述べてみます。なお、個人的な体験であり、対応は利用者や状態によって異なるので正解はないと思います。正解があるとすれば、複数あるということかと思います。

ひとり暮らしの母親

変化

 母は夫と二人暮らし、夫の死亡により一人暮らしに。生活のリズムは変わらず、一人で生活日用品等は、近所の個人商店で購入し、夫の年金で暮らしていた。長男は神戸、次男は八王子にそれぞれ家庭を持っている。八王子の次男が週末に母親宅を訪れ、健康等をチェック、神戸の長男は、月1回程度母親宅を訪問していた。
 変化は、母親が買物をしていた近所の個人商店が閉店した後に発生した。今まで買物をした商店がなくなり、買物外出(片道約10分、そこでのおしゃべり、支払い等)がなくなった。国道を越えるとコンビニがあるが、慣れないこともあり、買物にいくことを拒否。これで外出とおしゃべりの機会が失われた。
 やむを得ず、次男が毎週買物をして、冷蔵庫に保管し、それを簡単に調理し、食べる形となった。母の唯一の運動は、毎日の家の周りの掃除だけになった。掃除には、他人の家の前も行うので、30分以上の時間を要する。
 88歳と高齢でもあり、家族はデイサービス(通所介護)訪問介護の利用を進めたが、本人はいずれも拒否、そのままになっていた。最後まで頑固で、わがままな親であった。

サービス利用のきっかけ

 週末に訪ねた次男が右手にけがをしている母を発見。外を掃除していて転んでけがをし、自分で包帯を巻いていた。医者に連れて行くと同時に、食事を作れない状態のため、訪問介護の利用を母親に勧めた。いつもは断る母も渋々納得・同意した。

介護保険の事業所を捜す

(1)地域包括支援センター
図1ジェノグラム(家族図) 認知症88歳東京都 単身世帯23区在住 女 男 死亡 長男55歳神戸在住 次男48歳八王子在住

 実際介護保険サービスを利用しようと思っても、事業所や手続きが分からず、区役所に電話をしたところ、「地域包括支援センター」を紹介された。

介護のことで困ったら、
役所か地域包括支援センターへ
電話でいいのですぐ相談する

(2)訪問介護事業所とケアマネ事業所

 すぐに、地域包括支援センターに電話し、近くの訪問介護事業所を教えてもらう。また、介護保険サービスを利用するには、要介護認定が必要とのことで、それは行っていなかったが、「緊急性がある場合は認定前でもサービスの利用ができる、ただし、要介護認定を行った結果が、非該当だったり、サービスの限度額を超えてサービスを利用した場合は、その超過分は全額自己負担となる。」との説明があった。
 なお、要介護認定の申請は、区役所に行かなくても、ケアマネジャーが代行するとのことで、時間がないのでありがたかった。そこで、母宅の近くのケアマネの事業所(居宅介護支援事業者)に連絡した。訪問介護事業所を併設していたのでヘルパーの利用意向も伝えた。
 午前に電話すると、昼過ぎにはケアマネジャーと訪問介護事業所のサービス提供責任者の二人が、母宅に来てくれた。
 ケアマネジャーに申請代行を依頼、見立てでは要介護1程度ではとのこと。調理がすぐ必要なので訪問介護サービスが翌日から行われることになった。
 サービスの内容としては、けがの間は、毎日の調理、食材の買物、週1回程度の入浴介助と掃除と洗濯となった。

ケアマネが母に聞き取りを行ったが補足する形で伝えた。
母の状態をケアマネに伝える
・けがにより調理ができない
・買い物もできていない(次男が実施)
・とりあえず、調理等の支援が必要
・母の日常生活のリズム

 *ケアマネは母の細かな状況を知らない
  • 「介護保険の利用の手続き」(東京の福祉オールガイド内)は⇒こちら
  • 「介護保険のサービス体系」(東京の福祉オールガイド内)は⇒こちら

図2 申請からサービス提供まで
◯母親の怪我
1困って区役所介護保険課に相談→地域包括支援センター紹介
2地域包括支援センターへ電話→ケアマネ事業所と訪問介護事業所の紹介を受ける
3ケアマネ事業所へ電話
4ケアマネジャーと訪問介護事業所の人が母宅に来宅
5母の状況の説明→要介護認定の調査と申請代行→主治医はいなかったが怪我の治療の医師に依頼→見立てでは、要介護1程度→仮のケアプランの作成→怪我が治るまで、翌日から当面昼食時の調理にヘルパーが入ることになる
6要介護認定の申請(代行)
7決定通知(要介護1)
要介護認定後の手続き
1ケアプラン原案に基づく「サービス担当者会議」
サービスの一部削除を言う
2ケアプランの確定とサービスの実施
3モニタリング家族によるモニタリング家族によるモニタリング*家族は毎週本人の状態をチェック
(3)要介護認定の結果とサービス

 認定結果はケアマネジャーの見立て通り、要介護1であった。サービスの利用限度額は、約17万円である。
認定結果が出る頃は、母のけがの状態もよくなってきたので、サービス内容は、母ができない最小限の支援にしたいと考えた。
提案された、ケアプラン原案には、継続して「掃除」、「調理」それと「食材の買物」が記載されていた。それと福祉用具としての「入浴用座椅子の購入」もあった。

ケアプラン原案について修正を依頼
 手厚いサービスでありがたかったが、今本人ができることをやると、すぐに機能が 退化してできなくなってしまう(廃用症候群)。
けがが治り、自分で調理と掃除はできるので、心配な「入浴介助」のみとした。それ以外のサービスを断った。

 本人ができるのにサービスを入れるとすぐにできなくなる。できることは自分でやるということが大事と思い、入浴以外のサービスを断った。
 利用者によって異なるので一概には言えないが、サービスをたくさん利用して得をしたと思っても、余分なサービスの利用は虚弱化を促進する危険がある。一人暮らしなので、家族の支援にも限界があるので、とにかく自分でできることは自分でやって欲しいと考え、本人ができることは全て断った。食材の購入は、毎週次男が行い、母が調理をする。食材の減り具合をみて母親の体調を推測した。食材が食べずに残っている場合は、体調等を確認した。なお、通所介護は引き続き勧めていたが、本人は頑として通所を拒否し続けた。それは最後まで続いた。

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