1. 福ナビホーム
  2. 特集記事
  3. 介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果等について
  4. 介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果について

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

第1回(前半)介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果等について

3.介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果について

1)「働きやすい職場」「働き続けられる職場」「働きたい職場」への変革”

 介護ロボットの導入により介護者の身体的・精神的な負担が軽減されれば、施設に「働きやすい職場」としての魅力が創出されます。特に介護職員の退職理由において頻出する “腰痛” につながる身体的な負担の軽減は「働き続けられる職場」としての魅力を高めてくれます。施設が「働きやすい職場」「働き続けられる職場」へと変革することにより、職員の定着(離職防止)効果が期待できます。
 また、介護ロボットを用いた新しい介護スタイルを施設の内外に発信することにより、介護現場を魅力的で「働きたい職場」へと変革することが可能です。「働きたい職場」は、導入施設だけのメリットではなく、介護業界のイメージにも影響します。介護ロボットの活用が業界全体に進み、業界全体の “魅力” が向上すれば、人材確保の効果を業界全体で相乗的に高めることも期待できます。

2)“超副次的効果” としての「働きがいのある施設」への変革

 施設における介護ロボットの導入は、入手した機器を効果的に活用するためにPDCAサイクルを回して “使い方のルール” を継続的に更新していく “組織的な改善活動” です。建設的に試行錯誤を繰り返すその過程において、職員は小さな成功体験の積み重ねることになります。小さな成功体験とは、例えば、現場の介護職員であれば機器を活用することで利用者に生じる良い変化に出会える体験や、リーダー職員であれば考え抜いて定めたルールが上手く機能して活用が前進する体験であるなど、機器の活用を通して職員が “実感” する効果や成果のことです。これらの体験から得られる個人や組織の成長や進化の “実感” は、介護ロボットを活用することの合理性を確信することを経て “自信” となり、自律的に次の課題や目標に向かう “意欲” に発展して大きな改善を引き起こします。改善に伴う変化を恐れないチャレンジングでアクティブな職員が育成される組織風土は「働きがいのある職場」そのものです。この様な ”変革力” が備わった組織では、次々とアイデアが生まれ提案が飛び交い、介護ロボットの活用に限らず連続的に成果を上げ進化することができるのです。成長の機会に溢れた「働きがいのある職場」は、先の定着(離職防止)効果に輪を掛けて、福祉(介護)人材不足の激化といった施設運営の危機に対しても事業の持続可能性を発揮します。この “変革力” を備えた持続可能性の高い組織風土の醸成こそ “超副次的効果” と言うべき、介護ロボット導入が施設運営に及ぼす最大の効果と言えるでしょう。

図2:介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果

【図2:介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果】



 今回は、「介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果について」をテーマに、介護ロボットの導入が ”変革力” を備えた持続可能な組織を育む仕組みを解説しました。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」とは、彼のダーウィンが残したとされる名言です。介護ロボットの導入は、職員の負担軽減やケアの質の向上だけでなく、激化の一途を辿る福祉(介護)人材不足の時代を生き残るための条件を獲得する “介護現場改革” の究極の手段となるのです。
 次回、第2回(後半)では、「介護ロボット導入により、施設運営で考慮すべき点について」をテーマに執筆します。