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  3. 介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果等について
  4. 介護ロボット導入に伴う “組織的な改善活動” について

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

第1回(前半)介護ロボット導入が施設運営に及ぼす効果等について

2.介護ロボット導入に伴う “組織的な改善活動” について

1)継続的に更新する ”使い方のルール”

 介護ロボットを導入して効果的な機器の活用を目指し、より生産性の高い “介護現場改革” に発展させるためには、活用によって表出してくるルールの不具合を適時修正し、再構築してまた活用するという “使い方のルール” の更新活動が必要になります。この “使い方のルール” は、性質の違いから「運用上のルール」と「共用上のルール」に分けて考えることができます。
 「運用上のルール」は、導入した機器をいつ・どこで・誰が・誰に・どのように使うのかといった運用する条件についての決め事です。これらの条件を調整することによってより効果的な活用を目指します。できるだけ早い時期の定着を実現するためにも、初めは少数の利用者や職員を選定してスタートし、使い方を覚えながら機器の特性や適用となる対象についての理解を深め、それに応じて運用の規模や進め方を拡げていきます。
 「共用上のルール」は、機器を設置する場所やその方法、清掃や充電のタイミングなど、職員の動線や作業環境等を考慮した決め事です。使いやすさを工夫することによって職員のモチベーションを保ち活用の促進を図ります。職員同士がお互いにストレスなく円滑に機器を使い合うためのアイデアを次々と創出できるかどうか、現場の実態に即した想像力に基づく提案力が問われることになります。

2)介護ロボットを動かす組織体制

 介護ロボットを運用する施設内の組織体制は、実際に機器を活用する現場職員層、現場職員層を束ねるリーダー層、リーダー層を指揮する管理者層の三つの層として捉えられます。前段のPDCAサイクルを回して “使い方のルール” を継続的に更新していく活動は、現場職員層とリーダー層の間で、リーダー層を軸として行われます。具体的には、リーダー層がルールを発出し【P:計画】、発出されたルールに基づき現場職員層が機器を活用し【D:実行】、活用した結果をリーダー層にフィードバックすることでリーダー層が効果を評価し【C:評価】、評価に従ってルールを更新(再構築)し【A:改善】、新たに更新したルールを発出し【P:計画】、新たに更新されたルールに基づき現場職員層が機器を活用し【D:実行】、といった活動を繰り返すことになります。
 現場職員層がフィードバックした活用の結果(主にルールの不具合)をリーダー層が速やかに評価、改善し、新たなルールとして計画(更新)できなければ、職場職員層による機器の活用は滞り、いつしか介護ロボットが倉庫に眠る原因となります。リーダー層の役割と機能は、この活動の軸であり生命線なのです。

3)管理者層の役割

 現場職員層からリーダー層にフィードバックされる内容は、特に導入初期においては、機器の使い難さや活動自体への不満といったネガティブな事柄がほとんどです。体制が脆弱なこの時期にネガティブな反響ばかりと向き合うことになるリーダー層の心理的な負担は計り知れません。責任感のある前向きなリーダー職員であっても、頼りの現場職員からマイナスな声ばかり聞いていれば「やっぱり介護ロボットはダメなのか」「忙しいからできなくても仕方がない」と活用の目的を見失いがちになります。管理者層は、推進チームを立ち上げ活動の進捗を管理しますが、チーム内でリーダー層の心理的な負担を定期的にサポートすることも機器の活用に不可欠な “組織的な改善活動” の一つです。機器の入手にとどまらず活用ビジョンを示し、施設内外に向けた発信やリーダー層のエンパワメントを含め、活用ムードを創出したり演出することは、“介護現場改革” を指揮する管理者層に求められるリーダーシップと言えるでしょう。

図1:組織的な改善活動と各層の役割

【図1:組織的な改善活動と各層の役割】