夏の終わり、近くの公園で母親と5歳と4歳の男の子が遊んでいました。
兄はジージー鳴く蝉を取ろうと網を両手に構え、必死です。一方、蝉取りを諦めた弟は網を振り回しながら土手の上り下りを楽しんでいましたが、雨上がりで滑る可能性もあるので、心配した母親は兄の側から離れ、弟を追いかけて土手を上ろうとして自分の方が、滑って転んでしまいました。一瞬、弟の顔は心配そうでしたが、大丈夫とわかって二人で大爆笑でした。
そんな二人に、兄は「静かにして!!」と膨れ顔。兄の心境がよくわかります。
二人は「ごめんなさい」と言って兄の蝉取りを見ていました。兄は何回も失敗したようで「よーし、こんどは・・」と息を殺して、ねらいを定め「エイッ」と網を振り下ろすと、何と見事に網の中で、蝉が羽をバタバタさせ、ジージー鳴いているではありませんか。
「ヤッター、兄ちゃんすごいね」と弟の方が大騒ぎ。兄はやっとのことで捕まえた安堵で胸を押さえていました。母親は「よかったね、えらかったね、今日は記念日だね」と褒めるとともに飛び上がって大喜び。
兄は初めて自分で捕まえた喜びと、達成感、満足感でいっぱいだったと思います。私もそばで見ていて思わず「ヤッター」と拍手をしていました。
早速、兄はリュックから図鑑を出して「これ、アブラゼミだよ、ほら、ここ茶色でしょ」と目を輝かせて説明し、そのページに青い付箋をしていました。きっとこの方法は、母親に教えてもらったのでしょう。
弟は「兄ちゃんは虫博士だね」と誇らしげでした。
しばらくして兄は「お母さん、どうしてミンミンゼミはいないの?」「ここはアブラゼミの陣地なの?」等、色々聞いてきます。蝉を取った自信から「なぜ?」「どうして?」と考える余裕が出てきたのでしょうか。
途中で蝉取りを諦めた弟は、今までの兄を見ていて、きっと憧れの気持ちを抱いたに違いありません。
遊びの中で、テレビやゲームなど、バーチャルな世界も子どもにとって、楽しみの一つだと思いますが、子どもの成長には、実際の自分の体で感じる生の体験が欠かせないのです。また、親も子どもと一緒に、見たり触れたり、感じたりして楽しむことが何よりも大切なことだと思います。
さわやかな秋、子どもと一緒に自然の中で、おもいっきり遊んでみませんか?
私は、この親子に出会って久しぶりに、心が温かくなり、心地よさを感じたひとときでした。親子に感謝しています。
福祉保健局 少子社会対策部 保育支援課 石塚君代
※ 当コラムは保育園勤務経験者などの方々に、子育てのヒントとなる小話などをいただいて掲載しています。