離れて暮らす孫の運動会は、楽しみであった。しかし、運動会が近づくにつれて「保育園に行きたくないなぁ」「運動会はお休みする」と言って母親を困らせていたという。
日頃の練習もあまりしていなかったようで、担任からは「入場だけで後は参加しないかもしれません」と言われていたようだ。
運動会の種目は、徒競走・障害物競技・組体操・バルーン・よさこい踊り等々であり、次々に出番のある孫に、一喜一憂しながらがんばれと声援や拍手をおくった。
困って目立った姿も見られず、嫌だった運動会の理由もはっきりわからなかったが、しかし、障害物競技の中での跳び箱と縄跳びが、運動会の3日前にやっと跳べるようになったと知らされた。それも、最初は怖くて跳べなかった跳び箱も一回成功したら跳ぶ感覚がわかったようで、本人は「満足した」と母親に伝えたとの事であった。
今回のように練習時に失敗して怖くて跳べなかったことが仲間の中では、はずかしい気持ちとプライドも重なり、「運動会お休みする」と逃げていたのかもしれない。しかし、あるキッカケで「できない、やりたくない」と思っていた気持ちが、がんばろうと思う気持ちに心が動き、挑戦したら「やれた、できた」に結びついていた。その過程には、体操の先生の根気と援助があったからこその結果でもあったと思う。
子どもが苦手意識を持ってしまうと、そこから一歩踏み出すには非常に時間がかかるものである。
保育者は、つまずいて意欲をなくしてしまう子もいる中で、個々の子どもの特性を理解し、その子の能力に添った指導で取り組みやすい方向に導く事が大切である。また、子どもは、キッカケやタイミングで心が動かされると短期間でも驚く程の力を発揮する事もあると思える。
様々な課題に負けずに取り組む心を養い、集団の中で個々が主人公として自信を持って楽しい園生活を過ごして欲しいと願うばかりである。
福祉保健局 少子社会対策部 保育支援課 前澤尚子
※ 当コラムは保育園勤務経験者などの方々に、子育てのヒントとなる小話などをいただいて掲載しています。