2 概要(後半)
2-(3)在宅医療・介護連携支援センター(仮称)事業の実施
この事業は以下により実施することと、国から示されています。
- 介護保険法の地域支援事業に位置づけ、市区町村が主体となり、郡市区医師会等と連携しつつ取り組む
- 可能な市区町村は平成27年4月から取組を開始し、平成30年4月には全ての市区町村で実施
- 各市区町村が原則としてア~クの全ての事業項目を実施
- ア 地域の医療・介護サービス資源の把握
- イ 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応の協議
- ウ 在宅医療・介護連携支援センターの運営等
- エ 在宅医療・介護サービス等の情報の共有支援
- オ 在宅医療・介護関係者の研修
- カ 24時間365日の在宅医療・介護サービス提供体制の構築
- キ 地域住民への普及啓発
- ク 二次医療圏内・関係市区町村の連携
- 一部を郡市区医師会等(地域の中核的医療機関や他の団体を含む)に委託することができる
- 都道府県・保健所が、市区町村と都道府県医師会等の関係団体、病院等との協議の支援や、都道府県レベルでの研修等により支援。国は、事業実施の手引き書や事例集の作成等により支援。都道府県を通じ実施状況を把握
(平成26年10月9日 厚生労働省 第2回都道府県在宅医療・介護連携担当者・アドバイザー合同会議より)
この事業の実施には、事前に相当の準備が必要です。モデル的に取り組んでいる市区町村を除いて、平成27年4月から実施できる市区町村はかなり限定的になるでしょう。
2-(4)利用者を取り巻く環境
目を転じて、利用者の視点から考えるとどうなるでしょうか。病院改革や介護保険施設の効率化・重点化により、入院期間の短縮や介護保険施設への入所のハードルが高くなることは、この間言われてきました。
病院では機能分化や、退院促進の取り組みが始まりつつあります。平成26年度の診療報酬改定では、退院の促進に向けた措置がとられています。
☆ 在宅復帰の促進
- ◇ 在宅復帰の推進
- ア 7:1病棟の自宅等退院患者割合の導入 → 在宅復帰率 75%以上
- イ 地域包括ケア病棟 → 70%以上
- ウ 在宅復帰支援型老健施設 → 50%以上
- その他の老健は30%以上
- ◇ 療養病棟における在宅復帰機能の評価
- 一定の在宅復帰等の実績を有する病棟に対する評価を新設(在宅復帰機能強化加算)
- *在宅復帰患者(1ヶ月以上入院)50%以上
* 平成26年診療報酬改定から
また、介護保険の分野では、27年度改正により、24時間365日のサービスの確保や、通所介護の機能分化により、重度者対応の通所介護が予定されています。
しかし、それで、医療を必要とする高齢者(一人暮らしを含む)や重度の高齢者を、「尊厳を保持」して支えきれるかと言えば、必ずしも安心まで結びつかない現状もあると思います。
また、特別養護老人ホームにおいても、入所待機者が多い中、平成27年4月から入所対象が原則要介護3以上と、従来と比べて制限されます。
このように、退院の促進や入所施設のハードルがあがる方向では、「在宅での暮らし」を支えるシステムの構築が、行政にとって喫緊の課題になります。制度が変わり、在宅での尊厳のある暮らしを理念として掲げても、実態が伴わなければ絵空事になります。
平成24年度以降積極的に取り組まれ、平成27年度からは最重点施策となる地域包括ケアシステムは、軽度者への住民同士の支え合いの推進と共に、医療の観点からは在宅医療の推進・介護との連携が、必須になるわけです。それがうまく機能しないと、生活基盤が不十分なまま、医療を必要とする高齢者等が地域にもどることになります。退院した後の受け皿作りは、待ったなしです。それは市区町村の役割とされています。