現在位置 : 福ナビホーム > 特集記事 > 平成27年度介護保険法改正に向けて > 第1回 1.地域包括ケアシステムとは何か(前半)

平成27年度介護保険法改正に向けて 第1回 地域包括ケアシステムについて

1 地域包括ケアシステムとは何か(前半)

地域包括ケアシステム
(厚生労働省HPより)http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

 概要は上記の図のとおりですが、今回の介護保険制度改正を踏まえてより実践的にみると、以下のように考えることができます。

1-(1)入院・入所から在宅での暮らしの実現

 医療・介護サービスの利用について、入院・入所は今以上に限定されます。また、要支援者については、訪問介護通所介護(デイサービス)が予防給付の対象から外れ、地域支援事業の対象となります。

  •  病院の入院期間の短縮や、老人保健施設の退所の促進が、医療報酬や介護報酬で誘導される方向なので、病院や施設からの退院・退所は今より増えることが見込まれます。
  •  そこで、その受け皿としての住宅や、在宅での医療・介護の提供及びそれらのネットワーク化等が必要とされています。
  •  制度改正によるその必要性は認識されていますが、どのように展開すればよいかの具体性をもった対応ができている市(区)町村は、きわめて少数と思われます。
  •  医師会サイドでの取組も始まっていますが、介護部門や地域との連携に課題を残しています。医療と介護の連携についての調整は今後となると思われますが、その調整のタイムスケジュールを作っている地域はまだ少数と思われます。

1-(2)介護保険外サービスの利用等

 今回の改正の枠組みでは、地域で暮らすためには、公的介護保険サービスや医療サービスだけではなく、様々な事業者等の提供するサービス、地域の自治会やNPO等が提供する生活支援サービス等も活用することが必要となってきます。

  •  要支援者に対する生活支援サービスは、一部介護保険の事業者が担うことがあっても、介護報酬の対象から外れ、各市(区)町村が定める別の補助単価となるので、従前と同様なサービス提供は困難になることが見込まれます(移行に当たっての経過措置は検討されている模様)。
  •  その代わりとなる主体として期待されているのが、自治会、ボランティア、近隣の助け合いを行っている団体です。そして、それらの団体の組織化を市(区)町村が図ることになります。しかしながら、現時点ではその認識がない自治体もあるようです。

1-(3)住民参加の生活支援サービス等の提供

 上記に関連して、要支援者に対する生活支援サービス等は、市(区)町村の地域支援事業に移行することになります。その担い手としては、2000年の介護保険制度ができる前は、住民団体による「有償家事援助サービス」が多く存在していました。
 それらの多くが法人格を取得し、介護保険サービス事業者へ転換する中で、今回は、自治会等任意団体がサービスの担い手として期待されています。要支援者への訪問介護・通所介護の廃止に合わせて、市(区)町村が中心になって、地域の団体等としくみを構築することになります。

  •  先の「1-(2)介護保険外サービスの利用等」と同様の課題ですが、「高齢化率が50%を超え、冠婚葬祭などの社会的共同生活の維持が困難な限界集落」とまではいかないまでも、地域の支え合い等がうまくできていない地域や、これから新しく作らねばならない地域等も数多くあります。
  •  また、今回の制度改正についての市(区)町村幹部の認識にも大きな格差があるようです。今回の制度改正についての認識ができていないところでは、対応は後手後手に回らざるを得ないでしょう。そのつけは、住民や事業者が引き受けることになります。

1-(4)住宅

入所サービスが抑制される中では、在宅での生活が困難な人については、介護保険施設以外の居宅系の入所施設や、サービス付き高齢者向け住宅等を考える必要が生じます。

  •  平成23年10月から「サービス付き高齢者向け住宅」制度が開始されたことで、自宅から施設ではない新しい住宅への転居という選択肢が出てきました。その課題は、面積は25m2、一部供用があれば18m2という居住水準、利用料金も、住居費に食費を入れると地域差があるが20万円弱、小遣い等を含めると、20万以上の収入が必要となること、また要介護になったときは外部からのサービスを利用しますが、最後まで受け入れてもらえるか等の点です。
  •  また、経営は安定しているか、重度になっても支えてくれるか、特養ホームのように日中活動のサポートは受けられるのか、部屋で閉じこもりにならない仕組みはあるのか等の、新しいがゆえの課題も抱えています

入居者の実態について、若干触れるとつぎのとおりです。

サービス付き高齢者住宅の入居者の要介護度
(サービス付き高齢者住宅の入居者の要介護度(平成24年8月現在 厚労省調べ))
(【PDF】平成24年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 サービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研究 より )

  •  上の円グラフにあるように、要支援、要介護の者が多く入居しています。現在入居定員は15万人程度といわれていますから、推計すると、要介護3以上の人が、28%強、約42500人、要介護1と2で38.4%、57600人程度、要支援1.2で、16.2%、24300人程度になります。自立の人は12.8%、約2万人弱です。
  •  職員配置は、最低相談員1名です。要介護等になったら外部の事業所や医療機関を利用することになります。
  •  入居者の要介護度の分布について、もともと在宅では生活が困難な高齢者等を対象としたサービスなので、この結果は当然かもしれません。
  •  しかし、施設処遇がユニットケア等、小さな単位でのサービス(処遇)向上をめざし、その質の改善を図っている現状と比較すると、ここの入居者たちの日常生活はどのように営まれているのでしょうか。サービス付き高齢者住宅の設置運営者にも、運営に関するスキル・工夫が求められていることが見えてきます。

▼ご登録はこちら▼メールマガジン

最新記事の掲載をメルマガでお知らせ!