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「とうきょうの地域包括ケアを考える」第2回:おおた高齢者見守りネットワーク「みまーも」

6 「専門」について考える・・・

 この会に携わる中で、「専門」というものについて改めて考える機会が多くあったように思います。

 この医療・介護の業界には、様々な分野の専門職が従事しています。今の複雑な社会の中で、専門の分化が進み、専門性は向上していると思います。

 しかし、一方で、専門の分化は、専門の中だけで解決するという流れに落ち着いてしまうことも少なくありません。しかし、専門を追及していけばいくほど、自分の専門だけでは限界があることに気付くはずです。

 介護が必要になっても自分では助けを求められない、手を挙げることのできない一人暮らしで認知症の高齢者・・・。近隣・地域との関係を閉ざし、人との絆が断ち切れている人たち・・・。このような人たちに、本当の意味で専門職として手が届くことが、現状で可能なのでしょうか。

 生命の安心とは何か。このことについては、「おおた高齢者見守りネットワーク」の活動を通して、地域に暮らす人たちの痛切な思いを受け止めてきました。この間、地域住民と専門職が顔を向き合わせ、高齢者が、「患者」や「利用者」でなく、「住民」として暮らし続けることができる地域を創造していく第一歩を確実に踏み出すことができました。

 医療や介護が必要になった時、相談できる専門職が身近にいること。そして、その身近にいる専門職たちが、つながりあっていること。この思いこそが、「おおた高齢者見守りネットワーク」発足へ揺り動かせた原動力だったと感じます。

 私たち地域包括支援センターの役割は、地域に暮らしている方々、各専門職に、「ここは、○○をしているところ、だからこういうときに気軽に相談していいところ」、「ここへ行くと□□さんや△△さんがいて、話しをよく聞いてくれるから安心」という地域の一部にとけ込んでいくことが大切だと感じています。

 自転車で私が訪問に出ると、商店街では弁当屋、肉屋、八百屋に、路地に入ると、民生委員、ケアマネジャー、高齢者本人、家族などから声をかけられたり、呼び止められたりして、なかなか目的地につけない。このような出来事の一つひとつが私の誇りであり、喜びです。

7 「おおた高齢者見守りネットワークの、決してブレることのない支点」

 この活動を始めてみて、地域には認知症に限らず、高齢者を見守ってくれている人が、たくさん存在することに気づかされました。それは町会や老人会であったり、マンションの管理人であったり、友人や隣人であったりと様々です。

 都会には「お互い様」や「近所づきあい」が薄れていると言われますが、その様な人たちは当然のように、ごく自然に高齢者を見守り、支えているのです。しかし、急激に進む高齢化の中、全国的に「地域での支え合い」の重要性が地域課題として挙がっています。

 本来の意味での「地域での支え合い」とはどういうものでしょうか。私たちは、「家族や住民同士の見守り、支え合いに、専門機関が適当な時期に、適切な関わりをもつことにより初めて実現するもの」だと考えています。それを実現するためには、住民と地域の専門機関は介護が必要となる以前から、お互いの存在を知り、情報を交換し、顔の見える関係を築いておくことが重要であると考えます。

 私たちの活動は全てこの考えに基づいて行われており、これこそが、活動の目的とするところです。

 私たちが生み出した「おおた高齢者見守りネットワーク」の支点(理念、原点)、それは、医療・介護の専門職と地域に暮らす人たちが、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、顔の見える一歩踏み込んだ、あたたかいつながりを創りあうこと。地域と、医療・介護従事者の垣根をなくすこと。地域と、専門職、専門機関がつながりあう関係を築いていくことなのです。

 私たちは、あくまで専門職として地域に暮らす人たちと関わっていきます。

 地域とのつながりをつくるからといって、地域住民と同じことをする必要はないのです。高齢者を見守り、支え合うネットワーク(つながり)は、地域に暮らす人たちが考え、築いていくべきものです。私たちは、この地域住民のネットワークで支えている高齢者が、適切な時期、つまり地域住民のネットワークの中では支えられない、見守ることに限界がきた時に、専門職につながることができる。そして、住民とつながった多くの専門職同士が連携し合っている、それを築くことに力をかけるのです。それこそが、地域に暮らす人たちの安心につながるのです。

※最後に、以前から親睦のあった大石弁護士に、おおた高齢者見守りネットワークの発足にあたってメッセージを書いていただきました。このメッセージが、私たちの変わることのない活動の理念となっています。

     
 

地域本来のつながりを、この見守りネットワークでつくりましょう!

 
   最近、「プライバシーの侵害」とか「個人情報の保護」という言葉がよく聞かれる。また、「自己決定・自己責任」ということもよく言われる。確かに、自分のことは自分が一番よくわかっている。「放っておいてくれ!」という気持ちは誰にでもある。
 プライベートなことまで見られてしまうかもしれない不安は耐えがたいものだ。でも誰かの少しだけの手がさしのべられれば、見える世界が変わる、気持ちも変わる、したいことも変わる、自分のことをもっとよく知ってもらいたくなる、ということもある。  
  とくに、今のせちがらい社会の中で、弱い位置、弱い立場、不自由な状態、どうにも抜けられないつらい状態に押し込められてしまい、動けないでいる人たちは、誰かが積極的に手をさしのべなければ、そこから抜け出して、違う景色を見ることはできない。そのような人が近くにいるとき、手をさしのべると、自分の幸せも何割か増になる。近くに幸せの火がともれば、その分、自分もあたたかくなる。もしも そのような人たちが、誰かの手を借りて、違う景色を見れるようになれば、今度はその人たちが、他の誰かに手をさしのべることもできるかもしれない・・・。きっと、そうしようと思うだろう。  そのように手をさしのべるとき、手をさしのべなければと思うとき、「プライバシーの侵害」や「個人情報の保護」や「自己決定・自己責任」といった小難しいことは飛ぶ。さしのべた手が気持ちと力を伝え、その手から気持ちと力を受け取る。 そして見える景色が、世界が変わる。それをどんどん伝え合う。これ以上に価値のあることはないから、小難しいことは飛ぶ。出過ぎた真似だったら、あやまればいい。そして、また、手をさしのべる。
 そして、手をさしのべるためには、相手に手が届く距離にいなければならない。手が届く距離にいる人しか、手をさしのべることはできない。手をさしのべることは「地域」で しかできない・・・。
 
 
東京弁護士会 ・ 日本弁護士連合会高齢者障害者委員会所属
法テラス消費者事件相談員 ・ 川崎市知的障害者施設苦情解決第三者委員
大石弁護士事務所 弁護士 大石 剛一郎