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『東京の地域包括ケア〜みんなでつくり出す365日24時間の安心〜』

東京都住宅供給公社少子高齢対策部長 狩野 信夫

筆者紹介

狩野 信夫(かりののぶお)氏

東京都住宅供給公社少子高齢対策部長。
早稲田大学第一文学部卒業。 昭和48年に東京都入庁、障害者、児童、低所得者、高齢者福祉に従事、平成23年3月まで、東京都福祉保健局高齢社会対策部長。 東京の地域包括ケアを推進する会議の幹事を務めた。

はじめに

 本年3月、さわやか福祉財団理事長である堀田力氏を委員長とする「東京の地域ケアを推進する会議」(以下、「地域ケア推進会議」という。)から報告書「東京の地域包括ケア〜みんなでつくり出す365日24時間の安心〜」が出されました。

 平成20年から3年間にわたり、高齢者がたとえ要介護状態になっても、地域で暮らし続けることができるために必要な取り組みとその具体策の検討を行い、試行事業の検証結果も踏まえ、東京における地域包括ケアを実現するためのモデルを提案していただいたことについて、改めて委員の皆様に感謝いたします。

1.地域ケア推進会議の設置の経過

 都は、平成19年12月に、「東京都地域ケア体制整備構想」を策定し、国の療養病床再編成に関する都の基本方針を明らかにするとともに、地域ケア体制の整備の基本的な考え方、高齢期の生活を支える医療、介護、住まいと見守り等のネットワークの構築などサービス基盤の充実に向けた施策の方向性を示しました。

 その中で、10年後の東京における高齢者の望ましい将来像を次のように描いています。

10年後の東京における高齢者の望ましい将来像
  • 自らの意思で暮らしの場を選択している
  • 福祉・保健・医療が連携した仕組みにより、地域での生活が継続できる
  • 高齢者自身がサービスの担い手として、地域の中で活躍することができる
  • 健康寿命延伸を目指した介護予防活動に継続して参加している

 また、療養病床の再編成や地域ケア体制の整備の推進は、今後の都民の生活のあるべき姿に関わり、都民の理解と協力が不可欠であるとし、都民、事業者への普及啓発を図っていくとしています。

 本構想を踏まえ、10年後の東京における高齢者の望ましい将来像の実現に向けた基本的な考え方や大都市東京の特性を生かした東京モデルの構築に向けた検討を行うため、平成20年5月に、「地域ケア推進会議」を設置しました。

2.東京で地域包括ケアを進める

(1)地域包括ケアを進める上での東京の特性

 東京は今、本格的な高齢社会を迎えようとしています。団塊世代の高齢化により、急激に高齢者数の増加が見込まれる中、高齢者人口に対する介護保険施設の定員数が全国平均を下回っていること、介護等人材確保が困難なこと、地域のつながりが希薄なこと等、大都市共通の課題があります。一方、東京ならではの強みもあります。人口密度が高い東京では、在宅において医療や介護サービスの効率的な提供が可能です。また、民間企業や非営利団体などの多様な組織体が数多く存在していることから、在宅サービスや住まいの供給等における新たな事業の創設や参入意欲が期待されます。さらに人口が多いことから、地域におけるインフォーマルサービス等を担う人材の確保にも有利であると考えられます。

(2)地域包括ケアとは何か

 国は、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針(案)において、「高齢者が可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を営むことができるよう、高齢者のニーズに応じて、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する『地域包括ケアシステム』の構築を目指す」としています。

  ここで示されている地域包括ケアとは、地域でケアを提供する(care in the community)ということです。コミュニティケア(community care)には、地域が創り上げるcare by the community、地域を育てるcare for the communityという意味も含まれています。地域の連帯感が希薄化し、地域社会の脆弱化が顕著な東京でこそ、本来的な意味でのコミュニティケア(community care)、「地域の、地域による、地域のための地域包括ケア」が求められていると言えます。

3.「地域ケア推進会議」の取り組み

 「地域ケア推進会議」においては、東京で地域ケアを進めていくために必要な取り組みについて、学校教育における福祉教育のあり方まで、広範囲な議論が行なわれましたが、「高齢者がたとえ要介護状態となっても地域で暮らし続けるために必要な体制づくり」については、さらに具体的な方策の検討が必要であることから、二つの専門部会を設けることとしました。

 A部会では、「365日・24時間の在宅介護を支える新たな介護サービスの東京モデル」を、B部会では、「医療や介護などの機関のネットワークや個々の高齢者のサービスのコーディネートを行う地域ネットワークの東京モデル」の構築に向けて、21年度から試行事業を実施することとし、その結果を検証していくこととしました。

 また、地域ケアを推進する会議での検討の過程・結果を広く都民に周知を図るため、地域ケアシンポジウムを3年間で7回開催し、多くの都民に参加いただきました。

全部で7回のシンポジウムが開催されました

シンポジウムの様子1 シンポジウムの様子2 シンポジウムの様子3