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「とうきょうの地域包括ケアを考える」第2回:おおた高齢者見守りネットワーク「みまーも」

社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院 大田区地域包括支援センター入新井センター長 澤登 久雄

筆者紹介

澤登 久雄(さわのぼり ひさお)氏

澤登久雄氏社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院 大田区地域包括支援センター入新井(さわやかサポート入新井)センター長。 社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。 おおた高齢者見守りネットワーク発起人。立ち上げ時からの中心メンバーの一人として活動し、現在に至る。

1 はじめに

 東京大田区大森にある、「地域包括支援センター入新井」。このセンターから、おおた高齢者見守りネットワークは誕生しました。

 「地域包括支援センター」は、平成18年4月の介護保険制度改正に伴って創設されて以来、高齢者の心身の状態に合わせた健康維持や生活の安定、保健・医療・福祉の向上、さらには財産管理、虐待防止といった課題に対し、地域で総合的な支援を行い、課題解決に向けた取り組みを実践していくことを、主な業務とする包括的な拠点です。全国の各自治体で、平成22年4月現在、4,056ヶ所の地域包括支援センターが設置されています。

 高齢者の総合相談窓口として設置された地域包括支援センターですが、年々相談件数は増大し、大田区でも、20ヶ所ある地域包括支援センターで、1ヶ月10,000件の相談に対応しています。

 今後、急速に高齢化が進む大都市部において、この各地域包括支援センターが、介護保険制度の枠組みの中だけで一つひとつの相談に対応するのでは、高齢者が安心して暮らせる地域はできていきませんし、一人の高齢者が抱える問題が多問題化していくことを考えると、今後は個別の対応すら、むずかしくなるのは明らかです。

 地域住民と地域で働く、医療・保健・福祉専門職が、広くつながり合い、高齢者を支え合う、システムづくり、町づくりが、今、求められているのです。

 そんな思いの中、平成20年4月、私たちの地域の社会福祉士・サービス事業者・ケアマネジャー・弁護士・病院・地域包括支援センターと、NPO団体・地域老舗百貨店「ダイシン百貨店」等、様々な企業が協賛し、さらに、大田区・大森医師会・社会福祉協議会の後援のもと、「大田北高齢者見守りネットワークをつくる会」(愛称 みま~も)を発足しました。

 現在は、大田北(大森駅周辺)だけでなく、大田区南部の六郷地域でも活動がスタートし、団体名を「おおた高齢者見守りネットワーク」に変更し、来年度からは大田区全域に広げていくための具体的な話し合いが、行政機関との間で進行中です。

 社会福祉現場は今、さまざまな分野で大きな変革の時期を迎えています。その大きな要因は、一人の方が抱える問題が多問題化しているということにあります。一人の専門家が関わったところで、多問題を抱え、人とのかかわりを拒否している方々の問題解決の扉を開けることはできません。

 私たちはこの会を通して、本当に必要なのは、「地域全体で高齢者を見守ることの重要性を地域の人たちに理解してもらうこと」 そして、「この地域で、私たち専門職も一緒に手をつなぎ合っていくこと」を、地域住民に伝えていくことが必要なのだと考えています。

 そのために、医療・保健・福祉専門職と、地域住民の交流の機会を縦横に設けることで、気軽に連絡や相談ができ、具体的な地域課題を解決していく、地域支援の立場に立った連携の構築を目指しています。