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年とともに気配りしたい服のこと

2.きれいなシルエットをめざして

 服のサイズは身体に合っているはずなのに、なぜか身体にしっくりなじまない、見た目がきれいではない、着くずれしやすいなどということはありませんか?
 それはサイズの問題ではなく、体型の変化や、座り姿勢を長時間とっていることで服のシルエットがくずれることが原因です。自分の体型が...と思いこみがちですが、体型が悪いからではなく、服が合っていないことが悪いと思ってください。なぜなら、既製服は個々の人の身体に合わせて作られているわけではないからです。

既製服のシルエットとは

 

 既製服は、人の立ち姿勢の体型を理想化したボディに置き換え、それに合わせて作られているものです。なんといっても既製服の魅力とは、理想のシルエットの服に現実の自分の体型を入れ込むことで美しさが得られることです。服に関する挿絵各サイズは、たんにそのシルエットを変えずに全体的に大きくしたり小さくしたりしています。従って、例えば身体に合わない部分があることでサイズを変えたとしても、当然別の箇所で合わないところが出てくる可能性があります。

 服のシルエットに大きく影響を及ぼすのは、脊柱のカーブや股関節の状態の変化によるもの、座り姿勢によるものがほとんどです。
 ですから、たとえ既製服のシルエットがくずれたとしても、その修正の方法が見つかれば、より良い解決につながることと思います。その修正の方法は一つとは限りません。自分の体型に合わせてパターン(型)修正する原理がわかれば、好きなデザインの服をリフォームしたり、オーダーしたりすることも可能になります。ここではその原理をわかりやすく解説し、解決例をご紹介します。

脊柱のカーブの変化による着くずれ(ワンピース例)

 

 高齢になると、背骨の変化で前屈みになりやすくなってきます。その位置と程度によって服のシルエットのくずれ方にも違いがあります。後首から背にかけて強くカーブしている場合、衿ぐりは後ろに抜ける感じにずれます。その原因は衿ぐりにあるのではなく、背骨のカーブが強くなることで服の後身頃の背丈と背幅が足りなくなることにあります。その位置や程度は様々です。  図1、図2

 図1は、同一人物の背や腰が真っ直ぐな状態と前屈みになった状態の違いを横から重ねた例です。
 図2は、真っ直ぐな姿勢で既製のワンピースをそのまま着た状態です。既製服はこのような体型に合わせて作られているので、ワンピースの脇線はほぼ垂直で裾線はほぼ水平になり、きれいにおさまります。
 図3は、前屈みの姿勢で同じワンピースを着た状態です。衿ぐりや肩線は後方へ引っ張られ、前幅と前丈は余り、それが前裾を下げてしまう結果となります。
 反対に、とくに後ろ背幅はきつく、後丈は背や腰の部分にとられて足りなくなるため、後裾はつり上がってしまいます。それとともにワンピースの脇線の裾は後方へ傾きます。

図3、図4  図4は、図3の問題を悩まれていたご本人が、ご自身の希望で解決させたデザイン例です。肩回りの前後にヨークとギャザーの切り替え線があるものです。後ろは背中の曲線が目立ちにくく、背幅にも充分のゆとりがとれます。ギャザーは前屈みで胸元が寂しくなるのでふくらみを持たせています。いずれもギャザー分量は全体のシルエットを確認しながら決めます。このとき、着丈には充分気をつけてください。なぜなら、体型を隠そうとして前ギャザー分量を多くすると足もとが見えにくくなり、また、前丈が長くなりやすいことで前裾を踏んでしまうこともあるからです。

座り姿勢による着くずれ

 

 図5は、ワンピースを着た状態で(図3)、座り姿勢をして前屈みになったときの着くずれの様子です。図5、図6前は胸から太もも周辺まで服がたるんでしまい、逆に後ろは背から腰にかけて常に突っ張ったままで座っていることになります。ただし、体型が変化したからといって、その状態に服をピッタリ合わせようとしたり、裾線を水平にしようとこだわることで、かえって変化した体型を強調してしまいます。あくまでも全体のシルエットがきれいに見えるための修正を目指します。

 図6は、図5と同様でズボンをはいたときの着くずれの様子です。立ち姿勢に合わせた服で長時間座っているということは、ほとんど着くずれたままで着ていることになります。前股上がたるみ、後股上の寸法が足りなくて引き下がったままになります。このことは見た目の美しさを損なうだけでなく、着心地の悪さの原因にもなります。とくにズボンは、排泄時の動作にも影響してくるので、大きなサイズを選びがちですが、できるだけスマートに見える配慮も忘れないでください。

 体型が変化した時の衣服のパターンは、どちらかというと後身頃は機能性、前身頃は美しさを重視することで、着心地が良くきれいなシルエットが得られるようです。


イラスト作成 : 藤田 侑巳 氏