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● 目次 ●

  • 第2回
    成年後見制度の活用に向けた東京都の取組について(東京都福祉保健局)

※この特集記事は平成18年に掲載されたものです。


区民後見人等の養成について

世田谷区では、現在、人口は約84万人、介護保険制度の要介護認定を受けている方が2万5千人、そのうちの約半数の方が、判断能力の低下を伴っていると推計されています。このため、将来的に事例検討会のメンバーや法人後見だけでは充分に対応しきれずに、受け皿としての後見人がもっと必要になると考えられます。
前回の特集記事で紹介した通り、東京都では、成年後見制度の適切な活用に対する支援等を実施するために、平成17年度の重点事業として「成年後見活用あんしん生活創造事業」を創設し、社会貢献型後見人養成等の事業を区市町村と連携しながらすすめています。世田谷区においても、独自に「区民成年後見支援員」「区民後見人」の養成の取り組みをはじめており、今後、都の事業も組み込みながらすすめていく予定です。平成18年度の4月から開講する「区民成年後見支援員」の養成研修には、68名の応募がありました。

区民後見人等の養成への取り組みをすすめていくようになった理由について、センターの田辺仁重さんにうかがいました。「専門家の後見人が必要なのは、財産や不動産の処理や収入がある場合など、法律に関わる対応や交渉能力が必要なケースであり、成年後見の全てがそのようなケースというわけではありません。身上監護が中心のケースにおいては、特に弁護士などの専門家でなくとも対応は可能です。そのためにも、区民後見人の養成などで受け皿をつくっていくことには大きな意味があると考えています。」
センターで実施する養成事業では、研修と活動実績をふまえたプログラムを組んでいます。基本的には「区民成年後見支援員」の養成研修を修了後、登録し、一定の期間「区民成年後見支援員」として活動した方の中から「区民後見人」の養成研修の受講者を選抜していく仕組みになっています。「区民成年後見支援員」の主な活動内容は、成年後見人が行う身上監護や財産管理などの後見業務のサポートです。地域の被後見人を訪問して、日常生活上の要望の聞き取りや生活費の受け渡しなどを行います。また、「区民後見人」は、センターと協力して被後見人に必要な後見業務を行っていきます。

世田谷「区民後見支援員」および「区民後見人」養成課程イメージ

今後の課題などについて

  • 区民後見人等の養成について

センターでは、利用者のニーズに対応していくとともに制度の普及に向けて、「区民成年後見支援員」「区民後見人」の養成をすすめています。
この「区民成年後見支援員」の養成について田辺さんは、「利用者の状況をよく把握し、適切な対応をはかっていくためにも、近隣の住民を含め、地域における見守りの必要性を感じています。「区民成年後見支援員」には、こうした見守り機能の役割を果たし、利用者とのコミュニケーションをはかっていただくことを期待しています。また、地域における成年後見制度に関するPR役を担ってもらうなど、「区民成年後見支援員」としての活動の場を拡げていきたいと思います。」と区民成年後見支援員の活動内容と支援員への期待について語ります。
一方、「区民後見人」については、「区民成年後見支援員」として一定の実務を経験し選考した人を「区民後見人」につなげてく構想ですが、「正式に後見人になるためには家裁の判断も必要であるし、後見人になることで、法律的、社会的な責任が生じることになります。区民後見人は、一般の区民がなることから、実際にどこまで責任を負っていただけるのか、という課題があります(田辺さん)。」という認識を示し、今後取り組みをすすめていく中で課題を整理していくとしています。



  • 利用に係る手続きや費用について

また、成年後見制度が十分普及していないのは、後見人の体制とともに、手続きの煩雑さや費用面でも課題があると考えられます。そのため、申立の手続きについては、センターでも相談に応じています。費用面については、申立時に鑑定費用などの費用負担と後見開始後の後見人報酬があります。後見人報酬については、確かに弁護士等の専門家の報酬は高いとはいえ、利用者の状況にあわせて家庭裁判所によって判断されるため、生活ができなくなるような報酬設定がされることはありません。ただし、費用面について田辺さんは「例えばこれまで身内が無償でおこなっていたことに費用が発生するということに対して、負担が大きいという意識が働くことがあります。しかし、支払ができる人についてはきちんと負担をしてもらわなければならないと考えます。一方で、収入も貯蓄もない本当に支払えない方や障害者への対応も必要でしょう。」と語ります。そのためにも、一般の市民に十分に制度についての理解を浸透させていくことが必要と思われます。



  • 関係機関との連携について

事業を円滑に推進していくためには、関係機関との連携など地域ネットワークの活用が不可欠であり、センターでは、社協での実績を生かしてネットワークのしくみや体制の整備に関する取り組みをすすめているところです。しかし、社協が実施しているがゆえに直接的なサービスの提供をはじめ、すべて社協で対応してくれるのではないか、との誤解も生じかねないため、それぞれの機関の役割を明確にするなど、関係者に理解をもとめていきたいとしています。そうした点からも、もっと成年後見制度についての正しい理解の普及とともに、センターの役割などを知ってもらう必要があるでしょう。

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