現在位置 : 福ナビホーム > 特集記事 > 「とうきょうの地域包括ケアを考える」 > 第1回 『東京の地域包括ケア〜みんなでつくり出す365日24時間の安心〜』

『東京の地域包括ケア〜みんなでつくり出す365日24時間の安心〜』

4.地域ケア推進会議報告書のポイント

(1)東京の地域包括ケア実現に向けた理念及び基本方針

 地域包括ケア実現に向けた理念として、「みんなでつくり出す365日24時間の安心」を掲げています。

  「加齢に伴い身体に障害が生じても、住み慣れた地域で暮らし続けることを多くの都民が願っている。限られた担い手で安心した生活を送るには、地域の住民が自ら考え実践することが重要である。」として、行政、事業者だけでなく、都民全体で地域包括ケアの実現に向けて、取り組むことを求めています。 また、この理念を実現するため、次の3つの基本方針を掲げています。

方針1 既存のサービスを活かしきる
 地域には様々な社会資源が存在しているが、既存のハード・ソフトが十分活用されていないことから、既存のサービスを活かしきることを求めています。
方針2 「地域の力」「民間の力」によるサービス需要の増加への対応
 介護保険サービスだけでは365日24時間の在宅生活に対応できません。民間事業者による介護保険外サービス(混合介護)の普及を図ること、近隣住民によるゴミ出しの手助けのような互恵的なサービスの創出などにより、需要の増加への対応を求めています。
方針3 都民一人ひとりが老後に対して主体的に臨む
 加齢に伴う疾病等により、心身の機能は確実に衰え、時を経て死に至ります。誰にも避けては通れない現実です。たとえ要介護状態になっても、失った機能を嘆くのではなく、病気や障害を抱えながら、主体的に生きていく準備を都民一人ひとりに求めています。

 

(2)東京の地域包括ケアの特徴

 東京の地域包括ケアは、大都市東京の特性を反映したもので、単に医療・介護・福祉が一体的に提供される地域包括ケアにとどまらない3つの特徴を有しています。

  • 身体的なケアのみならず、生きがい、楽しみ、ふれあいといった精神的な要素を重視しています。
  • 身体的には概ね元気で、現時点では介護を必要としない高齢者も広く対象とした生きがい・ふれあいを重視した活動が、介護が必要な状態になってもそのまま継続してつながっていくことを目指しています。
  • あるべき姿の実現のため、高齢者自身が主体となり、積極的に自らの望む生活を作り上げていくような住民参加を強力に求めています。

 

(3)高齢者の地域生活のイメージ

 高齢者の多くは元気であり、65歳以上の高齢者で要介護認定を受けている方の割合は、約16%、そのうち、要支援1から要介護2の軽度の認定者が約6割を占めています。

  そこで、高齢者像を、まだまだ元気な「元気さん」、さりげないサポートが必要な「さりサポートさん」、介護が必要な「サポートさん」の3類型に分けて、その特徴と高齢者自身が準備すべきことを提案しています。

高齢者像の3類型〜「元気さん」「さりサポートさん」「サポートさん」〜

 「元気さん」とは、身体的には概ね元気であるが、これまでの勤めの場の喪失等によって、人とのつながりに変化が生まれるため、自分を活かせる場を探すことが必要になる人々、「さりサポートさん」とは、ある程度のサポート(さりげないサポート)があれば、自立した生活を送ることができる人々、「サポートさん」とは、身体が徐々に不自由になり、状況に応じて医療・介護サービスを受けている人々のことを表しています。

  「元気さん」は地域でできるだけ暮らし続けるための助走期間、「さりサポートさん」は自分らしく暮らし続けるための準備期間、「サポートさん」は自分らしく最期を迎える準備期間であるということもできます。

生き方、死に方の意向表明

 人生の最終場面に向けて、「さりサポートさん」の時期に最期をどう過ごしたいかをイメージし、可能であれば、その意思を伝えられるよう書面としておくこと、「サポートさん」の時期には、最期について自分の意思を明確に記載し、状況の変化によっては内容を更新しておくことが重要であるとして、エンディングノート等の準備を提案しています。

 

(4)地域生活に必要なサービス

 「元気さん」「さりサポートさん」「サポートさん」が地域生活していく上で、必要なサービスを「住まい」「在宅医療」「介護保険サービス」「生活支援」「楽しみ・生きがい、ふれあい」に分けて提案しています。

  住み替えについては、「サポートさん」になった時にはサポートを受けやすい住まいに居住している必要があるため、「さりサポートさん」の時期が最後の転居を決断する時期であるとしています。在宅医療については、「元気さん」のうちに、かかりつけ医を地域に確保することが必要であるとしています。生活支援サービスについては、地域には様々な社会資源が存在しているが、既存のハード・ソフトが十分活用されていないことから、日中使用されていない通所介護事業所の送迎車両の活用、介護保険施設等の厨房を活用した在宅の高齢者への食事提供などの提案を行なっています。

  また、高齢期になると心身機能の低下とともに、引きこもりがちになることから、地域に高齢者の居場所をつくることを提案しています。人とのふれあい、他者との関係を構築することができる居場所は、新たな生きがいを生み出します。

高齢者の地域生活のイメージ
元気さん さりサポートさん サポートさん
地域で暮らし続けるための助走期間 自分らしく暮らし続けるための準備期間 自分らしく最期を迎える準備期間




身体の状況 概ね元気 在る程度支援してもらえば、自分でやれる だんだん不自由になり、医療・介護のお世話に。しかし、自分でやれる部分も。
特徴 これまでの勤めの場の喪失、人のつながりの変化(自分を生かせる場の模索) 近隣の見守りにより、基本は自分の力で生活する。
公的な支援を受ける場合もある。
介護保険などの公的なサービスの利用を前提に、近隣の助け合いに支えられ生活する。
生き方、死に方の意向表明 (地域・家族・自分を知る時期) 最期をどこで過ごしたいかイメージする 最期について自分の意思を明確に記載し、状況の変化により内容を更新しておく(エンディングノート等)
地域生活に必要な要素 住まい 問題:身体の障害状況により、これまでの住まいにそのまま住み続けることが困難になる。
水周り(特にトイレ)の改修(要介護になっても自宅で住み続ける視点で改修)する時期 早めの住み替えをするか、しないか、決断する時期 サポートを受けやすい住まいに居住する時期
在宅医療 問題:地域で安心して医療を受けるために、近所のかかりつけ医を見つける必要がある。
かかりつけ医の確保 かかりつけ医による診察(通院) 在宅医療(訪問診療・往診・通院)、入院治療
介護保険サービス 問題:地域生活の継続のために必要な、包括的・随時的なサービス提供が十分でない
主に、予防サービス、居宅サービスを利用 施設入所サービスを利用するケースも出現
生活支援 問題:介護保険サービスでは、家事や生活にかかわる支援がまかないきれない。
家族、又は友人や近隣による生活支援サービス(見守り、配食等)による支援、財産管理(地域福祉権利擁護事業)、成年後見 家族、又は生活支援サービス(ヘルパー、配食等)による支援、財産管理(地域福祉権利擁護事業)、成年後見
楽しみ・生きがい、ふれあい 問題:高齢化による体力の低下や、行動範囲・人間関係が狭まることにより、引きこもりになりやすい。
(自分らしく暮らし続けるために生きがいとなる活動が必要)
第2・第3の仕事に従事、サークル活動、サロン活動、自治会、ボランティアの始まり(地域の担い手)、人的ネットワーク構築 地域貢献事業、サークル活動、サロン活動、自治会、ボランティア、人的ネットワーク構築・活用(介護予防や通所介護における人のつながり) サロン活動、通所介護における人のつながり、人的ネットワーク構築・活用、(サークル活動、自治会、ボランティア)
注意事項 ※1 認知症、世帯構成によりさらに類型化される。
____ ※2 世帯構成は、単独世帯又は高齢者夫婦のみ世帯を想定している。
____ ※3 認知症については、東京都認知症対策推進会議の取組による。

 

(5)試行事業

 A部会では、「365日・24時間の在宅介護を支える新たな介護サービス」として、「認知症デイサービスセンター活用事業」を北区の「あかり家」、西東京市の「年輪デイホーム」において実施することとしました。デイサービスの利用されていない時間帯を活用して、早朝・夜間の時間延長サービス、休日デイサービス、夜間宿泊サービスを介護保険外サービスとして提供し、利用者の状態に合わせてデイサービスと組み合わせて利用できることにしました。通い慣れたデイサービスでの宿泊が可能になることで、認知症高齢者の混乱を防ぎ、家族にも安心感を与えることでき、早朝、夜間等の急な利用希望にも柔軟に対応することで、在宅生活の継続を支えること可能になります。詳細については、第4回目(予定)に掲載される事例紹介をご覧ください。通所介護については、介護保険でも2時間の時間延長が認められていますが、都内の通所介護事業所2,157か所中、延長加算届出事業所は596事業所、実績のある事業者は106事業所に留まっています。(平成23年6月1日現在)今後、時間延長を拡大し、認証保育所の13時間保育と同様、最低限「13時間デイサービス」を実現することにより、家族介護者の負担を軽減することができます。

 なお、国においては、今年度、「デイサービス利用者の宿泊ニーズ等に関する調査事業」を実施していますが、都の「認知症デイサービスセンター活用事業」は宿泊を自己目的化したものではなく、認知症高齢者と家族のニーズに対して、自在かつ柔軟に対応することを目的としたものです。

 B部会では、「医療や介護などの機関のネットワークや個々の高齢者のサービスのコーディネートを行う地域ネットワーク」の構築に向けて、「地域連携推進員配置事業」を文京区、小金井市で実施することとしました。病院から退院した高齢者の在宅療養については、地域の医療機関、介護事業者等が緊密に情報交換しながら支援していくことが不可欠です。このため、こうした個別支援のネットワークの中心となるケアマネジャーの活動をサポートするために、地域包括支援センターに、看護師資格を有する地域連携推進員を配置することにしました。地域連携推進員が高齢者やその家族、ケアマネジャー等からの在宅療養についての相談に応じるとともに、医療機関と介護事業者等との個別ネットワークづくりの調整を担うことにより、地域での安心安全な在宅療養環境が整うことになります。 詳細については、報告書をご覧ください。

 なお、本事業は平成23年度から、東京都福祉保健局医療政策部が所管する「在宅療養支援窓口事業」として、継続して実施されています。また、国においては、対象疾病を認知症に限定していますが、市町村認知症施策総合推進事業により地域包括支援センター等に認知症地域支援員を配置することとしています。

 

むすびに

 大都市東京といっても、地域によりその特性は異なり、ひとつの地域として捉えることはできません。そこで、区市町村ごとに産業的要素、所得・世帯構成、住まい方、社会参加の状況等から地域の特性を分析し、53区市町村をその特徴別に6地域に区分しました。

 区市町村は、さらにきめ細かく、日常生活圏域ごとのニーズ調査やそれを踏まえた地域の課題を把握し、住民に明確に示していく必要があります。区市町村と住民とが共通認識に立ち、地域包括ケアの実現を目指して、取り組んでいくことが重要です。

 その参考となる事例を第2回以降、掲載していきます。