特集:福祉における「経営」を考える



社会福祉法人至誠学舎立川 至誠第二保育園は昭和34(1959)年の開設。現在の高橋紘園長が着任したのは昭和43(1968)年です。財政面で潤沢とはいえない時代から運営してきたこともあって、当初から経営感覚を持つように努めてきました。

「人・モノ・金」とされる経営資源のなかで、保育所が自らの努力で強化できるのは、とくに「人」の部分です。至誠第二保育園では職員の成長を促す仕組みの1つとして、職務基準表を活用しています。これは1等級から3等級まで、具体的な職務内容を明確化したもので、たとえば勤務経験の浅い1等級の職員は、2等級の職務内容を見ながら、自分がどのようなスキルを身につけるべきかがわかります。 成長指標が示されることで、モチベーション高く仕事に取り組むことができるわけです。

職務基準表づくりは民間企業で先行していますが、同園の特徴は、あくまでも園児の成長を基本に置き、0歳児から5歳児以上まで、年齢層別の職務基準表を作成している点です。高橋園長は「子どもたちの成長発達に合わせて、職員がどのような関わり方をすればよいか、そこを見極めることが基本。子どもと職員の成長を一体で考えていきたい」と言います。

この職務基準表は、簡素なひな形をもとに約10年をかけて今のかたちに練り上げてきたものです。それは、職員個人がもつノウハウを情報化し、これを取りまとめて全員で共有する作業の積み重ねでもありました。「個人の能力を高めていく一方で、個人が持つ属人的なノウハウは積極的にオープンにしてもらい、組織全体の財産にしていく。 こうしておけば、たとえ職員の出入りがあっても、サービスの質が揺れ動くことはないのです」と言う高橋園長。今は、職務基準表のさらなる改定や人事制度を緩やかにリンクする方法を模索しているところです。