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  4. (1)3.住宅改修における注意点

在宅生活と住宅改修 (1)介護保険制度における住宅改修

3 住宅改修における注意点

 利用者や家族あるいは介護者の要望は、時として必要な住生活基盤の一部分だけの場合があります。しかし住宅改修を有効に機能させるためには、改修の要望が出た箇所だけでなく、利用者の身体状況、家族状況、住まい全般の状況を総合的に評価し、対応をすることが必要です。
 利用者に身体の障害がある場合は、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)等の専門家に日常生活動作能力、生活状況を見てもらい、福祉用具の対応、手すりの配置などを指示してもらいながら効果的な改修を行う必要があります。また、福祉用具の使用のみで対応可能な場合もあり、住宅改修の支援は、改修助成の支給対象にならない場合も含めて、幅広いアドバイスができるように努めます。
 また、住宅改修のアドバイスに際しては当然ですが、住まいの安全性、耐震・耐久性を確認することや、改修建材への配慮にも留意したいところです。
 住宅改修にあたっては、利用者の身体機能の状態や介護の状況はもとより、家族の生活状況や経済状況、改修の範囲や住宅の構造等を考慮し、改修計画立案を行うことです。

(1)身体状況と日常生活動作(ADL)

 加齢による身体の機能の変化は、その人の生活習慣、生活環境や社会的背景など、さまざまな因子に影響され、個人差が非常に大きくなることが特徴です。基本的には、加齢により身体のさまざまな機能が低下し、骨、関節、筋肉が衰え、筋力、敏捷性、持久力、平衡性、柔軟性、全身協調性といった運動機能の低下により、日常生活動作(ADL)の障害につながり、転倒・転落のリスクをいっそう高めるなど、慢性化や障害を引き起こす要因となっています。
 加齢により高齢者になると暑さ寒さに弱くなり、全体的には視覚(老眼、白内障)、嗅覚、味覚、触覚、聴覚など五感の機能が低下していきます。老年看護学では、75歳を境に歩行能力、視力(視野も含む)、聴力が低下し、85歳を過ぎると食事、排泄、衣服の着脱、入浴、会話の各機能が減退してくるといわれています。つまり、身体機能が低下すれば、わずかな段差や小さなスロープにもつまずき、とっさの状況に対応できなくなります。簡単にものにぶつかりやすくなり、バランスも悪くなります。また、多くの高齢者は骨量が減少し、いわゆる骨粗鬆症により膝関節や腰痛を訴える人が多くなり、ちょっとした転倒で容易に骨折してしまいます。住宅改修前には、まず利用者の身体状況と日常生活動作能力(ADL)のチェックを行います(図1)。


図1 身体状況の基本チェック事項

出典:「住宅改修アドバイザーマニュアル」東京都

 利用者の障害に関する原因疾病の理解は重要であり、予後を含め医療機関からの情報提供が必要です。また将来像を見据えた計画を行う際には身体状況のチェックが必要です。

(2)家族・介護状況の把握

 家族状況については、以下に示す項目について把握する必要がありますが、改修に影響を与えるのは最も多くの時間を利用者と共有する人たちの意見です。

  1. 家族構成
     家族人数、子の住居地との距離、家族と改修利用者とのコミュニケーション関係も重要になります。
  2. 介護者は誰なのか
     実質的な介護者は誰か、家族か、それ以外かを考えます。そのことが改修全体に影響します。
  3. 介護者の健康状態
     介護者は配偶者か娘あるいは息子の配偶者が多いです。利用者の配偶者が介護者の場合、老々介護も少なくなく、高齢な介護者の状態をきちんと把握しておく必要があります。
  4. 改修の決定権
     改修相談後、最終的な改修決定は誰が行うのか。基本的には、利用者が中心にならなければならないものの、利用者の意向を踏まえて家族が代替することもあります。

(3)経済状況の把握

 経済状況の把握は重要です。介護保険制度をはじめとする種々の制度により住宅改修が行われるようになってきましたが、制度の範囲内ではまかなえない場合もあります。この際、プライバシーに関わる問題でもあるので注意を要します。介護保険以外の助成制度や、改修支援に関する適切な情報を、早い段階で利用者本人や家族に知らせておく必要があります。

  1. 改修にかけられる費用
     自己負担できる目安をあらかじめ知っておくことが必要です。
  2. 介護保険利用の有無、公的融資助成等
     どのような公的融資を利用するか、介護保険でどこまでまかなうか、市町村の助成をどのように利用するかなどです。