特集:福祉における「経営」を考える

2 何故、福祉に「経営」が必要なのか

それでは、何故、今、福祉サービスの提供事業者に「経営」が必要なのでしょうか?
現在、多様化する社会状況の変化に伴い、様々な分野で構造改革が進められています。こうした流れは、社会福祉の領域でも例外でありません。
「少子・高齢化」、「家族機能の変化」、「低経済成長」など、福祉を取り巻く社会環境の変化により、これまでの社会福祉の枠組みでは、国民の福祉に対するニーズへの対応が困難となってきました。

こうした状況の中、1998年に厚生省(当時)によりまとめられた「社会福祉基礎構造改革」において改革の基本的な方向が示され、それを受けて、社会福祉関係法令の整備(2000年)、介護保険制度(2000年)支援費制度の導入(2003年)など、抜本的な改革が進められてきています。これらの改革の基本理念を端的に示すキーワードとしては「利用者本位」や「措置から契約へ」などが挙げられます。これまでの福祉は、サービスを提供する側に決定権(「措置」)がありましたが、現在は、サービスを受ける側の利用者が主体となって、サービス提供事業者を「選択」した上で「契約」し、サービスが受けられるようになりました。一方、サービスを提供する事業者間にも「競い合い」が生じ、顧客の獲得に向けての「サービスの質の向上」が求められています。
特に介護保険や障害者の支援費サービスにおいては、民間企業、NPO法人などが続々と参入していますが、今後はさらに規制緩和が進み、競争に一層拍車がかかる方向にあることは間違いありません。