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「介護保険法の改正」について 第2回 平成24年度介護保険制度改正と介護報酬について

3 別な観点から

段落1 職員の給与の推移

同じく24日の会議で「平成22年介護事業者経営実態調査」が示されました。その資料から職員給与関係を抜粋すると、次のとおりになります。
19年、20年、22年を比較していますが、元になった事業所は同一事業所ではなく、規模も数も違うので、必ずしも比較できるかについては問題があるということを前提としています。
○対20年度比上昇した職種
サービス種別 職種
老人福祉施設 介護職員
グループホーム 介護職員
訪問介護 介護職員
居宅介護支援 常勤ケアマネ
通所介護 介護職員
*平成22年度介護事業経営概況調査結果を一部加工
しかし、全体の流れとしては、19年から20年にかけて給与額が上昇した後、22年度は給与額が下がっています。
20年調査と比べて上昇しているのは、右表のように居宅介護支援の常勤のケアマネを除けば、介護職員に限定されています。常勤の介護福祉士も下がっている調査結果となっています。
表7 介護老人福祉施設の職員給与  月額単位:円
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
看護師 433,787 453,236 419,435 0.93
准看護師 377,339 362,652 359,004 0.99
介護福祉士 335,082 340,464 321,873 0.95
介護職員 297,296 290,289 300,783 1.04
非常勤看護師 342,079 344,956 269,147 0.78
非常勤准看護師 331,786 301,046 251,105 0.83
非常勤介護福祉士 218,822 276,568 201,968 0.73
非常勤介護職員 243,476 219,350 193,042 0.88
表8 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
看護師 300,710 332,088 311,638 0.94
准看護師 310,167 264,615 228,046 0.86
介護福祉士 274,471 280,949 252,078 0.9
介護職員 229,301 219,970 234,412 1.07
非常勤看護師 238,174 267,355 208,659 0.78
非常勤准看護師 147,162 198,866 181,890 0.91
非常勤介護福祉士 219,492 209,330 149,961 0.72
非常勤介護職員 196,973 201,567 174,055 0.86
表9 訪問看護
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
看護師 449,504 412,271 370,802 0.9
准看護師 393,581 312,475 201,072 0.64
理学療法士 525,148 408,977 298,542 0.73
作業療法士 383,890 385,108 298,542 0.78
非常勤看護師 382,895 305,112 224,205 0.73
非常勤准看護師 296,230 279,034 253,056 0.91
非常勤理学療法士 542,106 428,135 384,409 0.9
非常勤作業療法士 218,859 447,843 384,409 0.86
表10 訪問介護
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
介護福祉士 245,329 264,107 249,775 0.95
介護職員 214,019 223,124 224,527 1.01
非常勤介護福祉士 219,688 230,476 200,948 0.87
非常勤介護職員 211,317 212,046 189,904 0.9
表11 居宅介護支援
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
常勤 348,899 365,007 389,289 1.07
非常勤 336,011 306,070 273,212 0.89
表12 通所介護
  19年調査 20年調査 22年調査 20年比
看護師 332,693 321,745 307,947 0.96
准看護師 303,228 285,565 276,157 0.97
介護福祉士 279,954 287,805 265,219 0.92
介護職員 212,751 233,913 237,536 1.02
非常勤看護師 306,727 272,269 231,386 0.85
非常勤准看護師 247,394 261,624 208,812 0.8
非常勤介護福祉士 219,787 219,646 171,773 0.78
非常勤介護職員 194,528 199,379 168,401 0.84
*22年調査結果を加工
事業経営の常識としては、赤字が見込まれる事業は、撤収が原則です。生活するのに必要なサービスで、事業を行なう主体がいない場合は、公費をつぎ込んだ行政サービスでの対応が一般に行なわれます。
介護保険では、各事業者が自己責任で参入するわけですから、利用者の都合もありますが、赤字経営を続けることは事実上できません。
従って、介護保険では、公定価格である介護報酬をもとに、収支計算を行ない、その枠内で事業を行なうことが必須となります。黒字が見込めなければ、介護保険の指定を辞退することになります。
ただし、介護保険の利用料負担1割の他に、個人負担を徴収できる場合は、その個人負担を含めて収支の計算を行ないます。
例えば、認知症のグループホームであれば、利用料負担1割のほかに、家賃や個人使用する光熱水費、食材料費等の徴収が可能で、平均負担額は17~8万円以上ともいわれています。その個人負担を合算すると経営が可能となるわけです。それを含めて事業所主体は収支計算を行ないます。脱線しますが、建前として、介護保険の利用者負担は1割といわれていますが、入所系施設やグループホームなどでは、事実上3~4割程度の個人負担ができないと利用できないということも生じてきます。それへの対応が、また課題となっています。経営という観点でいえば、以上のことから事業主体は黒字化を目指します。その結果が表6のような各事業所の収支の改善につながったと思われます。

段落2 事業種別による同一職種間の給与格差

表13 サービスの種類別・資格別給与(22年調査)
  老人福祉施設 訪問介護 訪問看護 通所介護
看護師 419,435   370,802 307,347
准看護師 359,004   201,072 276,157
介護福祉士 321,873 249,775   265,219
介護職員 300,783 224,527   237,536
非常勤看護師 269,147   224,205 231,386
非常勤准看護師 251,105   253,056 208,801
非常勤介護福祉士 201,968 200,948   171,773
非常勤介護職員 193,042 189,904   168,401
*22年調査結果を加工
次に表13を見てみましょう。同じ職種でも事業種別によって給与格差が生じています。例えば、看護師であれば、通所介護の看護師の給与額は、老人福祉施設(特別養護老人ホーム)のそれの約73%です。
介護福祉士も、訪問介護は老人福祉施設の約77%です。その原因についてはいろいろ考えられます。一つは、サービス種別により介護報酬が異なるため、同じ職種であってもそこで働く人たちの給与が異なること、また法人種別により、考え方が異なる傾向が想定されること、最後は個別事業所の経営陣の考え方の違い等が考えられますが、その他の要素もあり得ます。ここではその要因を探ることが目的ではないので、ここで終わります。

段落3 総事業費に占める給与費の割合の推移

22年度事業所の収支の改善が見られましたが、次に介護(医療)サービスの特徴である支出の中心的項目である給与費(人件費)が収入全体に占める割合を見てみます。
ここでは次のとおり、いくつかの塊にグルーピングができます。
     
 

【職員費比率が7~8割以上のグループ】
・訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護・・・訪問系サービス
小規模多機能(22年度になり急激に比率が下がった)

【職員費比率が6割前後のグループ】
・介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、通所介護、通所リハビリ、認知症通所介護(7割に近い)

【職員費比率が5割強のグループ】
・介護老人保健施設、認知症グループホーム(22年調査で下がってきた)

【職員費比率が5割以下のグループ】
・特定施設入居者生活介護、福祉用具(3割台)

 
     
給与費比率が高いサービスにあっては、経営収支の改善の1つの手法としては、給与費比率を下げることにあります。20年調査と比較して、22年調査で比率が上がったのは、介護老人保健施設と認知症通所介護の2業種のみです。その他は軒並み、支出に占める供与費の割合は減じています(表14)。
先に見たとおり、給与額も概ね下がっています。
介護給付費分科会で示された各事業者の収支率の改善は、相当部分この給付費割合の低下、実給与額の減少の結果もたらされたものではないでしょうか。
表14 給与費比率の推移  単位=%
  16年調査 19年調査 20年調査 22年調査
介護老人福祉施設 58 60.7 60.8 56.4
介護老人保健施設 50.4 53.1 53.6 54.3
介護療養型医療施設 58.4 60.1 59.2 56.4
認知症グループホーム 57.3 59.4 57.8 52.9
訪問介護 84.1 82.8 81.5 70.5
訪問入浴介護 81.2 81 78.1 73.9
訪問看護 74.9 86.2 79.4 77.6
通所介護(予防含む) 62.2 64.1 60.7 55.2
認知症通所介護   70.3 69 69.6
通所リハビリ 49.9 62 63.1 58.8
福祉用具   38.7 49.6 33.9
小規模多機能   72.3 72.7 59.8
特定施設入居者生活介護 36.8 46.8 48.7 42.9
*特定施設は、特定施設分以外を含む有料老人ホーム全体
人件費の抑制の手法としてはいろいろありますが、一番大きなものは、常勤職員に変えて非常勤職員を雇用すること、非常勤でも社会保険の加入義務が無い人を雇用することです。
そのほか、賃金体系について、本給を抑え、手当等により総支給額の調整を行なうことです。介護報酬の算定は、職員配置の規制緩和とセットです。