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「介護保険法の改正」について 第2回 平成24年度介護保険制度改正と介護報酬について

介護保険制度では、3年ごとの介護保険事業計画の改正とともに、介護報酬の改正が行なわれてきました。これまでの3回の改正は、15年度介護報酬引き下げ、18年度引き下げ、21年度引き上げとなっています。
24年度の報酬改定がどうなるかは大きな関心事です。実際に決まるのは、今年末から来年早々と思われますから、実際は今後の話です。
そこで今回は、昨年12月24日の社会保障審議会介護給付費分科会の資料を用いて、介護事業者の実態がどのように把握されているかについて考えてみたいと思います。

1 はじめに

最初に過去の改定状況を見てみます。表1にあるように、過去3回の介護報酬の改定が行なわれ、2回は引き下げで21年度は引き上げとなっています。21年度の引き上げに際して3%の引き上げといわれましたが、各サービス別に計算すると、下表のように、在宅は1.7%で、施設は1.3%ということで、3%という数字は出てきません。
二度の引き下げが行なわれる中で、コムスンによる不正請求等の発覚をきっかけに、介護サービス従事者の給与が極めて低いということが表面化しました。その結果、高校生の間に「福祉は3K職場で賃金も低い」が定着し、福祉系の大学等においては学生募集が困難になったことは業界では知られた話です。
皮肉なことですが、その結果、介護人材不足がより顕在化し、介護サービス従事者の待遇改善が課題として政府に認識されたことが、21年度の介護報酬改定に結びついたと思われます。

段落過去の介護報酬の改定状況

表1のように、21年度の3%の改善は、在宅系サービス、施設系サービスの個別事業者の面からみると、直接は関係しない数字です。在宅では1.7%の改善があり、それが満額あったとして、以前の水準と比べて0.8%の改善です。21年度の在宅の引き上げは訪問介護等一部を除き、本体ではなく、主として定められた要件を満たした場合に算定される「加算」によって行なわれています。通所介護などは加算を取らないと以前の水準に回復しないという仕組みになっています。
表1 過去3回の介護報酬改定率(全体)
  平成15年度 平成18年度 平成21年度 平成14年度を100
在宅分 0.1 -1.0 1.7 100.8
施設分 -4 0 1.1 100.1
-2.3 -0.5 3.0 100.1
*平成12〜14年度の最初の介護報酬を100とした改定状況は上表のとおりで、21年度の3%の改定後で、在宅分は100.8と0.8%の改善、施設分では0.1%の改善に留まっています。
実際に、各事業者が積極的に加算を算定しているかというと、必ずしもそうではありません。「指定取消」や「返還」がトラウマになっていて、請求に躊躇する事業者も出ています。
○ 加算取得事業所割合 第65回(平成22年3月25日)社保審−介護給付費分科会資料
表2 特定事業所加算
  請求事業所 加算取得事業所数 構成比%
訪問介護 25,639 3,995 15.6
居宅介護支援事業者 31,256 4,771 15.3
平成21年10月請求分
表3 サービス提供体制加算
  請求事業所 加算取得事業所数 構成比%
訪問介護(予防を除く) 7787 3601 46.2
訪問リハ(予防を除く) 3086 2119 68.7
通所介護(予防を除く) 24941 13059 52.4
通所リハ(予防を除く) 6691 5523 82.5
短期入所生活介護(予防を除く) 7538 6634 88.0
夜間対応型訪問介護 92 11 12.0
小規模多機能(予防を除く) 2206 1167 52.9
認知症グループホーム(予防を除く) 9958 6514 65.4
介護老人福祉施設 6157 2194 35.6
介護老人保健施設 3654 3532 96.7
介護療養型医療施設 2063 1733 84.0
*介護老人福祉施設は、日常生活継続支援加算と併せて96.4%
表2及び表3のとおり、在宅系サービスの加算算定率は、特定事業所加算では20%に満たず、サービス提供体制加算でも、相対的に低い状況にあります。
加算を算定した上で在宅系では1.7%引き上げですから、加算を算定していない事業所の場合は、そうはならないわけです。

段落他産業と比較した介護職員の給与水準

次に介護職員の給与は、一般産業の給与と比べて低いということですが、表4のとおりです。
男女別比較では、産業平均を上回るのは、女性の介護支援専門員と看護師のみです。男性は全ての職種で産業計を下回っています。このことが、介護業界の人手不足の一因でもあり、また必要な「人材」の確保が困難な要因でもあると思われます。
また、平成21年度からは「介護職員処遇改善交付金」が介護報酬とは別枠で処置され、一定の効果が上がったと評価されています(後述)。
従事者が安心して働くことができるためには、「生活を営める」、「子育てができる」という条件が満たされていることが不可欠です。安心して働くことができる職場があって、人材は定着し、利用者に対する継続的なサービス向上の取組みが容易になると思われます。
表4 職種別に決まって支給する現金給与額等
  男性 女性
区分 年齢 勤続年数 現金給与額
千円
年齢 勤続年数 現金給与額
千円
産業 計 42 12.8 354.6 39.4 8.6 243.2
職種別内訳            
介護支援専門員 38.3 7 284.6 46.1 7.5 254
(産業計/比率)     0.8     1.04
ホームヘルパー 37.8 3.4 214.6 45.9 5.4 200.2
(産業計/比率)     0.61     0.82
福祉施設介護職員 33.6 5.3 231.5 39.4 5.4 206
(産業計/比率)     0.65     0.85
保育士 31.1 6.3 238.6 33.9 7.6 216.2
(産業計/比率)     0.67     0.89
看護師 35.3 7.3 323.2 36.4 6.8 316.6
(産業計/比率)     0.91     1.3
百貨店店員 40.5 13.9 294.4 39.2 9.9 204.1
(産業計/比率)     0.83     0.84
*平成21年賃金構造基本統計調査(第1回今後の介護人材の在り方に関する検討会資料から)
また、介護人材の不足と雇用環境の悪化を受けて、失業した人や非常勤職員の雇用の受け皿として介護現場が期待されていますが、介護の専門職の水準がそのように認識されていること自体をどのように考えるべきかは難しいところです。
以上のように、24年度介護報酬改正前の介護従事者を取り巻く環境は、依然として厳しい環境下にあると思われます。