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「介護保険法の改正」について 第5回 介護保険制度改正と利用者及び事業者への影響について

改正法案が国会に提出されない現状(平成23年3月31日現在)で、利用者及び事業者への影響を述べることは乱暴ではありますが、これまで公表された資料等を参考に考えてみます。
その際、制度改正を積極的に推進する立場からは、バラ色の制度イメージが描かれますし、逆の立場からは暗いイメージが描かれることとなります。
図1 制度改正(使い勝手)よりよくなる⇔あまりよくならない この範囲
それは、利用者等によって、あるいは置かれている環境・立場によって現れ方や受け止め方が異なると考えることができます。

段落関心事

今回のテーマの関心事を粗くくくると、利用者からみれば、1.使い勝手は良くなるのか、2.費用負担は増えるのか、であり、事業者からみると、1.介護報酬が上がるのか、2.経営は楽になるのか、あたりでしょうか。
結論からいうと、利用者の費用負担は増加傾向、使い勝手については居住している地域により幅が出る可能性が多いということです。事業者からみると、1.介護報酬の引き上げは、財源の制約下にあり極めて厳しい、2.運営についても、よりメリハリのついた対応が求められるのではないでしょうか。それらの理由は、以下のとおりです。

段落前提条件 I (地域包括ケアシステムが機能すること)

24年度以降の介護保険サービスは、第1回で説明をした「地域包括ケアシステム」の構築を前提にした介護サービスの提供であり、また事業者指定を含む事業者の事業環境にあるということです。

そこでは、日常生活圏域という中学校区程度のエリアを単位とした比較的狭いエリアの中で、ソーシャルインクルージョンと表現されている「地域の人々の支え合い」を基本として、その上に立って、介護保険サービスや医療保険、シルバービジネス、ボランティア、見守り等の地域の社会資源を活用して生活することが志向されています。

事業者については、それを前提に、医療が必要とする者・重度の要介護者については、24時間の看護・介護の一体的又は連携したサービス提供が求められ、その他小規模多機能と訪問看護の組合せなどの「複合型サービス」が期待されています。また、在宅生活の継続支援(財政的には、介護保険会計上の税負担の抑制にもなりますが)のために、新たにバリアフリーの住宅である「サービス付き高齢者住宅」の設置促進が図られることとなっています。

加えて、従前の指定の要件が一部変わって、自由に参入できるという介護保険創設時の考え方の転換により、事業者指定の公募制や従前の指定要件を満たした居宅サービス事業者であっても、都道府県が指定するに当たっては区市町村の意見を聴く必要も出てきます。

このような「地域包括ケアシステム」の展開と、より細かな高齢者のニーズ把握の上で、算定したサービス必要量に見合う事業者確保という形になります。

では、次にそれぞれの影響について、より具体的に考えてみます。