現在位置 : 福ナビホーム > 特集記事 > 「介護保険法の改正」について > 第2回 2 平成22年12月24日介護給付費分科会での認識

「介護保険法の改正」について 第2回 平成24年度介護保険制度改正と介護報酬について

2 平成22年12月24日介護給付費分科会での認識

24年度の介護保険制度改正に合わせて、介護報酬についての議論が社会保障審議会介護給付費分科会で行なわれています。そこでは、介護報酬についてどのように認識されているかを、24日の資料を用いて確認しておきます。

段落1 処遇改善交付金の効果

全体として87%強の事業者が、本交付金の申請を行ない、その結果、表5のとおり、給与の改善に結びついたと評価されています。介護職員処遇改善交付金を申請した事業所における介護職員の平均給与額は、平成21年と平成22年を比較すると約15,000円増加しており、本交付金の対象外である介護職員以外の職種についても、約8,500円から約12,000円増加していたと評価されています。
表5 介護職員処遇改善交付金の影響
  平成21年6月 平成22年6月 差額 改定率
介護職員 241,520 256,680 15,160 1.063
看護職員 342,040 350,540 8,500 1.025
生活相談員・支援相談員 301,320 313,560 12,240 1.041
PT.OT.ST又は機能訓練指導員 368,840 379,180 10,340 1.028
介護支援専門員 326,880 337,880 11,000 1.034
注1)平成21、22年とも在籍者の平均給与 *国資料を一部加工
注2)平均給与=基本給+手当+一時金(4~9月給与額の1/6)に常勤換算

段落2 介護報酬改定による介護事業所の収支改善効果

12月24日の会議において、表6のように、事業所の収支改善状況も併せて示されました。一部の事業を除いて全般的に改善傾向にあります。特に22年調査時の改善は他の年と比べて改善率が高くなっています。
事業の継続・存続という観点から見れば、この数字からは、一部の赤字事業を除いて介護報酬の引き上げの必要性は乏しいといえるのではないでしょうか。収支の改善率が単年度で10%を超えている事業については、ことさらそういえるのではないでしょうか。
財政状況が厳しく、新たなニーズへの対応が必要となっている現在、18年度を100として、120を超えている事業所については、場合によっては据え置きか、さらに一歩進めるという考えも出てくると思います。
表6 事業所の収支率の改善状況 調査単位=%
  19年調査 20年調査 22年調査 18年を100
老人福祉施設 4.4 3.4 10.7 119.5
老人保健施設 4.3 7.3 5.7 118.3
療養型医療施設 5 3.2 11.4 120.7
グループホーム 7.7 9.7 13.0 122.6
訪問介護 3.3 0.7 2.4 106.5
訪問入浴介護 -3.5 1.5 6.3 104.1
訪問看護 -3.4 2.7 6.0 105.2
通所介護 5.7 7.3 8.4 122.9
認知症通所介護 -3.3 2.7 0.1 99.4
通所リハビリ 1.6 4.5 2.7 109.0
短期入所生活介護 -1.8 7.0 0.7 105.8
居宅介護支援 -15.8 -17.0 -5.3 66.2
福祉用具 3.1 1.8 16.6 122.4
小規模多機能 -18.5 -8.0 4.4 78.3
*国資料を一部加工
一方、赤字事業としては、居宅介護支援事業は毎年赤字で、18年比で66.2となっています。22年調査では黒字ですが、18年比で赤字の事業として小規模多機能があり、そのほか認知症通所介護もわずかに赤字となっています。
「ペイアズユーゴ-の原則」、財政逼迫という状況から見ると、先の従事者の改善状況からは、一部を除き、積極的な介護報酬の引き上げについての必要性は難しいように思えます。

段落3 介護報酬の引き上げの可能性

ここまでのところで、介護報酬引き上げの必要性があると思われる事業は、ア 居宅介護支援、イ 小規模多機能、ウ 認知症通所介護でしょうか。それに新たに創設されるものについては、政策誘導の観点からの引き上げが行なわれると思われます。それは、エ 24時間巡回型訪問介護・訪問看護、オ 小規模多機能と看護の連携の複合型事業、それと、11月30日の報告書で触れた、カ 「看護」「有償診療所」関係でしょうか。
一方引き下げの可能性は、特養ホームの多床室タイプ、グループホーム、通所介護あたりでしょうか。以上は単純に、24日の部会資料の主要数字からみた執筆者の偏見と独断に基づく推測で、実際はその他目に見えない事情等も配慮され、決定されるものと思われます。
なお、例えば、生活支援サービスの相当部分が介護保険の本体給付からなくなったり、保険料の引き上げが手当てできれば、また別の展開もあるかと思われます。
しかし、見せかけの報酬アップはあっても、実態としての報酬アップは容易ではないと思われます。