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知っておこう福祉用具の給付制度 後半

3 介護保険での福祉用具

 介護保険法では、「心身の機能が低下し、日常生活を営むのに支障がある要介護者などの日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者などの機能訓練のための用具であって、要介護者の日常生活の自立を助けるもののうち厚生労働大臣が定めるもの」と福祉用具を規定しています。
 介護保険制度においては、居宅サービスの一つとして、福祉用具の貸与・購入費の支給が行われます。これは、身体状況、介護の状況変化において、必要に応じて用具の交換ができるとの考えから貸与による方法を原則としています。福祉用具貸与とは、居宅要介護者を原則対象としており、医療保険福祉審議会老人保健福祉部会(第14回)において、考え方が提示され、介護保険制度における福祉用具の範囲が示されています。


  1. 要介護者などの自立促進又は介助者の負担軽減を図るもの。
  2. 要介護者などでないものも使用する一般の生活用品ではなく、介護のために新たな価値付けを有するもの
  3. 治療用など医療の観点から使用するものではなく、日常生活の場面で使用するもの(吸入器、吸引器は対象外)。
  4. 在宅で使用するもの(特殊浴槽などは対象外)。
  5. 起居や移動などの基本動作の支援を目的とするものであり、身体の一部の欠損または低下した特定の機能を補完することを主たる目的とするものではなく、日常生活場面で使用するもの
  6. ある程度の経済的負担感があり、給付対象とすることにより利用促進が図られるもの(一般的に低い価格のものは対象外)。
  7. 取り付けに住宅改修工事を伴わず、賃貸住宅の居住者でも一般的に利用に支障のないもの(天井取り付け型天井走行リフトなどは対象外)。

 また、指定居宅サービスとしての福祉用具貸与の事業は、要介護状態となった場合においても、可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえた適切な福祉用具の選定の援助、取り付け、調整を行い、福祉用具を貸与することにより、利用者の日常生活上の便宜をはかり、その機能訓練をするとともに、利用者を介護する者の負担の軽減を図るものでなければならないと規定しています。
 貸与に係わる福祉用具の種目は、車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ予防用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖、認知症高齢者徘徊感知器、移動用リフト(つり具の部分を除く)、自動排泄処理装置の13種目に分けられます。
 福祉用具貸与の際には、介護支援専門員が居宅サービス計画書の中に位置づけ、計画を行うとともに、福祉用具専門相談員との連携が必要で、平成24年度から「福祉用具個別サービス計画書」を作成しています。
作成する際には以下の4つの点について留意しています。

  1. 利用者の心身の状況・希望・環境を踏まえ、福祉用具を適切に選択・使用できるよう相談し、文書で福祉用具の機能・使用方法・使用量などについて説明を行い、福祉用具の貸与についての利用者の同意を得ます。
  2. 福祉用具の機能・安全性・衛生状態に関しての点検を行います。
  3. 利用者の身体状況に応じて調整を行い、使用方法・留意事項・故障などの対応を記載した文書で十分に説明します。また、実際に使用してみることも大切です。
  4. 利用者からの要請に応じて、使用状況を勘案し、必要な場合には、使用方法の指導を行います。

 介護保険における福祉用具貸与の場合は、要介護度別に定められた限度額の範囲内で福祉用具を利用でき、限度額以上のサービス利用についての費用は、自己負担で行うことになります。
福祉用具の貸与を利用するには、

  1. 介護保険の要介護認定を受けている人が、居宅介護支援事業者の介護支援専門員に相談・申し込みを行います。
  2. 介護支援専門員によるアセスメントにより問題の特定、ニーズの把握を行い、福祉用具専門相談員と協議をして福祉用具個別サービス計画書を作成します。
  3. サービス担当者会議(各サービス提供者、利用者、家族などの参加による意見交換)を開催して、確認・協議し、福祉用具をケアプラン全体の中に位置づけます。
  4. 利用者が福祉用具貸与事業者と貸与契約を結び貸与されます。 利用者は、毎月福祉用具の貸与に要する額の原則1割相当額を貸与事業者に支払うことになりますが、所得によって2割負担となります。(残りの相当額は都道府県の国民健康保険団体連合会から支払われます)

 また、平成18年度より、福祉用具サービス制度が変更され、平成19年度に一部見直しが行われました。要支援1,2及び要介護1の軽度の利用者については、その状態から利用が想定しにくい車いすなどの種目について、原則として貸与の対象外とされています。
 しかしながら、福祉用具を必要とする状態が、介護認定調査結果をもとに判断されている場合、認定調査結果がない場合でも適切なケアマネジメント(サービス担当者会議において、福祉用具の有用性を協議し、保険者が認めた場合)により判断されている場合は、例外的に貸与することができます。また、疾病その他の原因により、医師の判断、ケアマネジメントでの判断、市町村の確認があれば貸与することが可能な場合もあります。
軽度者に対する取り扱いは以下の通りです。(表1)

表1  福祉用具が必要となる主な事例内容(概略)
事例類型 必要となる福祉用具 事例内容(概略)
1 状態の変化 特殊寝台
床ずれ防止用具及び体位変換器
移動リフト
パーキンソン病で、内服加療中に急激な症状・症候の軽快・憎悪を起こす現象(ON・OFF現象)が頻繁に起き、日によって、告示で定める福祉用具が必要な状態となる。
重度の関節リウマチで、関節のこわばりが朝方に強くなり、時間帯によって、告示で定める福祉用具が必要な状態となる。
2 急性憎悪 特殊寝台
床ずれ防止用具及び体位変換器
移動リフト
末期がんで、認定調査時は何とか自立していても、急激に状態が悪化し、短期間で告示で定める福祉用具が必要な状態となる。
3 医師禁忌 特殊寝台 重度の喘息発作で、特殊寝台の利用により、一定の角度に上体を起こすことで、呼吸不全の危険性を回避する必要がある。特殊寝台の必要性を医師からも指示されている。
重度の心疾患で、特殊寝台の利用により、急激な動きをとらないようにし、心不全発作の危険性を回避する必要がある。特殊寝台の必要性を医師からも指示されている。
重度の逆流性食道炎(嚥下障害)で、特殊寝台の利用により、一定の角度に上体を起こすことで、誤嚥性肺炎の危険性を回避する必要がある。特殊寝台の必要性を医師からも指示されている。
床ずれ防止用具及び体位変換器 脊髄損傷による下半身麻痺で、床ずれ発生リスクが高く、床ずれ防止用具の利用により、床ずれの危険性を回避する必要がある。床ずれ防止用具の必要性を医師からも指示されている。
移動用リフト 人工股関節の術後で、移動用リフトにより、立ち座りの際の脱臼の危険性を回避する必要がある。移動用リフトの必要性を医師からも指示されている。

平成19年3月14日厚生労働省「地域包括支援センター・介護予防事業担当者会議資料」より(一部修正の上掲載)

なお、平成21年度より、福祉用具貸与として、次の3種目が追加されています。

  1. 起き上がり補助装置(体位変換器)
    (布団や一般のベッドに設置することができ、起き上がりを助けるための特殊寝台の導入が必要ない。日常的に起き上がりが困難な人が対象)。
  2. 離床センサー(認知症高齢者徘徊感知器)
    ベッドやマットに設置した感知部位からの情報で、要介護者がベッドから離れたことを家族や隣人に音で知らせる。身体には発信器などを取り付けず、工事の必要がない。転倒・転落の危険性や徘徊の危険性がある人が対象)。
  3. 階段移動用リフト(移動用リフト)
    (電動モーターで階段や段差を昇降できる移動用リフト。自立歩行が困難で、エレベーターのない集合住宅に住む人などが対象)。

平成24年には、

  1. 「介助用ベルト(入浴介助用以外のもの)」を福祉用具貸与の「特殊寝台付属品」として追加
  2. 「特殊尿器(自動排泄処理装置)」を福祉用具貸与の対象種目に追加 (本体部分は貸与、パッドなどの消耗品については従来通り介護保険対象外)
  3. 「腰かけ便座の底上げ部材」を特定福祉用具販売の「腰かけ便座」の対象に追加

が行われました。