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  4. 機器の導入による好影響
特集記事

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

介護ロボット等の施設導入から生じた好影響と悪影響
介護ロボット等の施設導入に係る課題と今後の展開について

介護施設のICT化とロボットの活用で介護はどう変わるか

2 機器の導入による好影響

 介護ロボット等の導入による好影響(効果)は、大きく「直接的効果」と「副次的効果」が考えられます。当然、効果を得るために機器を導入するのですが、効果は日常化しやすく意識していないと当たり前になって見えなくなってしまいます。効果が効果として効果的にその効果を発揮するためには、単に活用するだけではなく、意識的に評価の視点を持って導入に伴う様々な変化を能動的かつ多角的に捉える努力が必要になります。

直接的効果

 直接的効果とは、機器そのものが目指している効果や目的のことです。介護ロボットには個々に想定された直接的効果があります。安全を見守るロボットであれば事故の未然防止であり、装着型移乗介助ロボットであれば介助者の身体的負担の軽減です。本来、直接的効果を得るために機器を導入するのであって、本質的な効果とも言えます。想定された使い方で上手に活用すれば “得られるはず”のメリットです。

副次的効果

 副次的効果とは、直接的な効果以外の効果で、機器の活用の仕方によって引き出すことができる二次的な効果のことです。直接的な効果を得ることが一次的な導入目的ではありますが、せっかく新たな機器を導入するのであれば同時に副次的効果も得られるよう積極的に活用していきたいところです。

- 事例1 -
 砧ホームで活用している癒し系のコミュニケーションロボットは、利用者に癒しや安らぎを提供することで認知症の周辺症状を緩和する心理的効果があるとされています。動物のぬいぐるみのように見えるロボットですが、全身に覆われたセンサーが利用者によるコンタクトを捉えて動きと声でリアクションします。個別的なケアでの活用を想定していましたが、バスケットに入れて廊下の一角に配置したところ多くの利用者に喜ばれ、施設のペットとしての扱いに変更しました。何人かの利用者にとっては、ペットとなったロボットに会いに行くことが日課となり(社会的効果)、会いに行くために歩行や車椅子を操作することが運動となりました(身体的効果)。当然、ロボットとのコミュニケーションにより利用者は直接的効果として癒しや安らぎを得ることができますが、癒されている利用者を見ている私たち職員も癒されるという(職員のストレスの解放)、いくつもの副次的効果を生むことになったのです。

図1:使い方による効果

【図1:使い方による効果】


- 事例2 -
 装着型移乗介助ロボットは、屋外に持ち出して活用することが可能です。その場で装着を体験いただき体感を共有できるという特性があります。そこで砧ホームでは、地域向けの介護体験会や福祉介護の実践研究大会にロボットを持ち出し、参加者に事業所や介護への関心を高めてもらいながら施設の快活なイメージのアピールに活用しています。それにより、全国各地からロボットを用いた介護実践にも関心のあるポジティブでアクティブな介護士たちが集まってきています(PR効果、職員採用効果)。


写真1:実践研究大会

【写真1:実践研究大会】