評価結果
基本情報
事業者の理念・方針・期待する職員像
事業者が大切にしている考え(理念・ビジョン・使命など)
1) どのような視覚障害者にとっても「存在価値のある」パイオニアであり続けよう
2) 視覚障害者団体が運営している事業所であることを強く意識すること
3) 利用者さんの幸福のために日々の支援があることを意識すること
職員に求めている人材像や役割
「目が不自由なことを理解する」ことが重要なのではなく、「あきらめることなく、理解する努力を続けていくこと」を大切に思う人材
職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)
上記のように「どんな視覚障害者にとっても存在価値があるパイオニア」であり続けるために、日々の個々の利用者さんに対する支援を組み立て、迷った時には「支援はその方が幸福になるためにある」ということに立ち返り、支援のあり方を模索するべきであるという使命感を持って欲しい。
全体の評価講評
特によいと思う点
視覚障害に特化したB型事業所として、点字古紙をリサイクルした各種封筒やメッセージカード等、他には真似できない商品が主力となっている。コロナ禍においても、職員の努力により魅力的な新商品の開発を続け、百貨店における様々な催事イベントが中止となる中、SNSの活用やインターネット販売の導入等により、販路の拡大にも努めている。厳しい状況であった昨年度の売り上げ・工賃は共に前年度の9割を確保し、今年度における封筒類の売り上げも過去最高となるなど、継続した取り組みは利用者の特別工賃にも反映されている。
視覚に障害のある利用者に対する支援において、その要となるのは「情報提供」であることを常に意識し、日々の業務を行っている。利用者の主な活動スペースである作業室では、障害に配慮した環境整備の他、声かけや誘導方法を工夫することで一人ひとりが必要な情報を得られるよう努めている。ま、事業所1階には、当事者が地域で生活するために必要な各種情報が掲示され、朝礼や必要があれば個別に提供している。職員は、利用者に十分な情報が提供された上ではじめて日々の支援が成り立ち、信頼関係を築くことができるということを心に留めている。
事業所は多くの利用者にとって必要不可欠な居場所となっている。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、事業所を閉鎖せざるを得ない状況も想定できるため、職員は日々の感染予防に努めている。机、椅子、トイレ、ロッカー、エレベーター、階段等、人が触れる場を一日3回除菌・清掃を行っている。また、利用者には不織布マスクの着用、食事時の黙食など職員が常に声をかけることに加え、集団感染を防ぐため利用者に検査キットを配布するなど、感染防止対策に取り組んでいる。
さらなる改善が望まれる点
個別支援計画の見直しにあたっては、現場職員が作成した利用者の状況に関する資料を参考にサービス管理責任者が利用者とモニタリング面談を実施している。日々の状況についてはサービス提供記録に記載するとともに、利用者が帰宅した後、職員間で話し合う時間を持ち、共有するようにしている。しかしながら支援経過として残されることなく口頭での確認にとどまっており、事業所としても支援内容を記録として積み上げていく必要性を認識している。各種会議の記録も併せて整備することで、日頃の取り組みが視覚化されることが期待できる。
職員間の情報共有は、利用者の基本情報、個別支援計画などを職員個々が確認することと、日々の作業終了後に管理者が職員に聞きとりを行う形で行われている。利用者を対象とした個別面接やミーティングは行われているものの、職員の意思疎通を図るための管理者との個別面接や職員間の会議などは行われておらず、職員からは、より良いサービス提供のために、組織としての情報伝達方法の確立や議案決定の整備を希望する声が聞かれた。事業を円滑に進めていくために、職員間の意思疎通を図るための仕組みづくりが進むことに期待したい。
2011年に発生した東日本大震災の時には、利用者の安全を確保するため、職員は利用者と共に一晩、事業所で過ごした。この経験を活かし現在は、非常食や水、マット等を備蓄し、自然災害に備えている。しかし、自然災害に対して職員がどのように行動をするか、備蓄品の定数はどのくらいかなど、指針を示したBCPやマニュアルは備えていない。また、事業所内へは容易に外部から入室することができ、侵入者を防止するための対策も検討段階にある。日常、非日常的な利用者、職員の安全を守るためのリスクマネジメントへの取り組みが求められる。
事業者が特に力を入れている取り組み
利用者は視力に障がいを持つ人であるが、その見え方、見えない状態は様々であり、それぞれが抱える課題も「視覚障がい者」と一括りに考えられるものではない。職員は一人ひとりの持つ障がいに対しての理解を深めながら、どのような声かけを行うか、どのような道具を活用すれば作業が進むかなど、利用者と話し合いながら事業を進めている。時には、利用者間で互いを認め合うことのできない状況が生じる場合もあるが、職員は、福祉作業所として一人ひとりが大切にされるべき場であることをを強く意識し、事業を進めることに力を注いでいる。
コロナ禍ということもあり、作業室では10名程度の利用者に対して、2~3名の職員が支援を行っている。訪問時は、点字古紙をリサイクルした各種封筒の製作が主な作業内容となっており、折り目を付けるための木製の道具や、糊付けしやすいよう工夫した台紙等、職員のアイデアだけでなく、一人ひとりの見え方や特性に応じて、利用者と相談しながら補助具を手作りしている。また、利用者のアイデアが新商品に結びつくこともあり、作業の一つひとつが利用者の喜びに繋がるよう心がけて手支援している。
事業所1階では点字古紙をリサイクルした各種封筒、メッセージカード、ブックカバー等が販売され、また、2020年よりハンドメイド通販サイトの導入を開始し、順調に販路を拡大している。小規模な事業所であり職員数も少ないが、販売経験やイラストが得意など、専門性に特化した職員により、クリスマスやお正月といった季節限定の商品や魅力的なアイテム等、新商品の開発に力を入れている。また、他店舗での研修に参加し得たノウハウを現商品の改良に活かしたり、イベントが少ない状況下でもマルシェへの出店を行うなど、取り組みを続けている。
利用者調査結果
調査概要
- 調査対象:登録利用者全員
- 調査方法:聞き取り方式
個別聞き取り調査 - 有効回答者数/利用者総数:22/22(回答率 100.0% )
登録利用者22名中、全員から回答を得ることができた。満足度が高かった項目としては、「事業所の設備は安心して使用できますか」「支援計画の作成時や見直しの時は、希望や状況を聞いてくれますか」「計画やサービス内容についての説明はわかりやすいですか」などがあげられる。総合的な満足度では、15名が「よい」「ややよい」の回答であった。視覚障害者に特化した事業所なのでよいです、利用者同士の関係もよく職員が相談にのってくれるのでありがたいです、以前より利用者の立場に立った支援をしてくれるようになったと思います、作業中も少し和やかな雰囲気で世間話などできます、などのコメントがあがっている。意見や要望としては、職員によっては視覚障害者の事をあまりわかっていないのではないかと思う人もいます、伝達事項は必ず全利用者に周知してほしいです、利用者の仕事の出来高には違いがあるので工賃は歩合制にしたらよいと思います、視覚障害者ができる仕事を増やしていく必要があると感じます、などがあがっている。
アンケート結果
4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
17名が困ったときの支援は受けていると回答している。「助けてくれます」との回答が複数あがっている。物の配置について教えてくれます、自分でできることは自分でするしできないことは職員に声を掛けます、忙しそうにしている時は聞きにくいです、困ったことや質問への回答に時間がかかる場合があります、などのコメントがあがっている。
2.事業所の設備は安心して使えるか
20名が事業所の設備は安心して使用できると回答している。問題なく使用できている、定員管理が徹底されているので問題はありません、階段の手すりが途中で切れていて少し危ないです、ロッカー室が狭いので混雑して危ないです、置き場所が変更された時は伝えてほしいです、などのコメントがあがっている。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
利用者同士の交流については、17名が楽しいと回答している。「会話を楽しんでいます」との回答が複数あがっている。外出先の情報交換などができて楽しいです、アットホームな雰囲気がよいです、リフレッシュできます、コロナ前は忘年会や新年会や旅行などありましたが今は昼食時にデリバリーなどをして楽しんでいます、などのコメントがあがっている。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
事業所に通所することが自身のスキルアップにつながっていると回答したのは14名であった。「いいえ」の回答はみられなかった。生活のメリハリがつき利用者同士の交流が役立っている、工賃がもらえるので生活に役立っている、誰かのために役立っていることにやりがいを感じている、手先を使う仕事が自分に合っている、社会人としてのルールや場をわきまえることができるようになった、などのコメントがあがっている。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
工賃の支払いに仕組みについては、18名が分かりやすいと回答している。「いいえ」の回答はみられなかった。点字で書かれている明細書を渡してくれます、わかりやすく読んで説明してくれます、向上心のある人もないひとも同じ工賃であるのはおかしいと思います、毎月決まった日に工賃が支払われますが持久性なので出来高には関係ない、などのコメントがあがっている。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
18名が事業所内の清潔は保たれていると回答している。「きれいです」「トイレもきれいです」との回答が複数あがっている。利用者が迷わないように道具を元の位置に戻してくれます、毎日チェックしてくれます、整理整頓についても職員が指摘してくれます、トイレなどは専門の業者が来てきれいにしてくれます、コロナもあり消毒もされています、などのコメントがあがっている。
19.職員の接遇・態度は適切か
16名が職員の接遇は適切であると回答している。利用者に対して平等だと思います、改善を求めたことがありよくなったと思う、利用者個々に合わせた言い方や話し方をしてほしいです、職員にもよると思います、などのコメントがあがっている。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
病気やケガなど緊急時の対応については、13名が信頼できると回答している。「いいえ」の回答はみられなかった。適切な対応をしてくれます、災害時などの避難場所についてしっかりと確認しています、体調についてはよく話を聞いてくれます、横になれるベッドが用意されています、などがあがっている。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
利用者同士のトラブルへの対応については、11名が信頼できると回答している。「利用者間のトラブルなどはありませんが対応してくれると思います」との回答が複数あがっている。大きな声を出す人には職員が注意をしてくれます、ケースバイケースだと思います、感情に波のある人がいてその点を職員に相談しました、などのコメントがあがっている。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
14名が個人の気持ちは尊重されていますと回答している。やりたい事やできない事を相談すると考えてくれます、親切に接してくれます、常に気持ちを大切にしてくれています、視覚障害者の立場で考えてほしいです、などがあがっている。
23.利用者のプライバシーは守られているか
18名がプライバシーは守られていると回答している。相談したいことがある時は空いている部屋を使って話を聞いてくれます、相談の時は全てのドアを閉めてプライバシーに配慮してくれます、利用者から出た意見を○〇さんからの意見として朝礼時に話すことはいかがな事かと思うことがあります、などのコメントがあがっている。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
19名が支援計画作成の際、状況や要望を聞かれていると回答している。「いいえ」の回答はみられなかった。目標の達成の有無を伝えてくれて常に話し合いができるようにしています、サービス管理責任者と話をしてやりたいことも伝えています、全てを聞いてくれるわけではありません、などがあがっている。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
サービス内容や計画に関する説明については、19名がわかりやすいと回答している。「いいえ」の回答はみられなかった。モニタリングは半年に一度行っています、モニタリングで改善すべき点など伝えてくれるのでその後の相談に関する提案にもなっている、職員にもよると思います、などのコメントがあがっている。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
不満や要望については、11名が対応されていると回答している。職員にはプライベートなことも含め何でも相談できます、職員は忙しいので言いずらい事もある、中途半端な返答ではなくはっきりと回答をしてほしいです、自分で解決しないといけないと思いあまり相談できていません、などのコメントがあがっている。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
外部相談窓口に関しては、16名が相談できることを伝えられていると回答している。知ってはいますが相談したことはありません、この事業所の職員からは聞いていない、以前から知っている支援センターの人に相談しています、点字の案内があればよいです、などのコメントがあがっている。
サービス分析結果
1.利用希望者等に対してサービスの情報を提供している
- 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
- 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
- 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
- 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
【講評】
利用契約はサービス管理責任者が契約書等を読み上げて説明し、締結している
視覚障害者で点字を利用することができる人は約1割程度ということもあり、契約書・重要事項説明書については点字で作成するには至っていない。また、ロービジョン、全盲等、見え方も利用者によって様々であるため、事業所では利用開始時にサービス管理責任者が契約書等を読み上げ、契約書の代筆、押印を行なっている。事業所を利用するにあたって自己負担金が発生するケースについては、重要事項説明書により特に丁寧に利用料と工賃の仕組みを読み上げて説明し、契約を締結している。
環境についてのオリエンテーションを丁寧に行い、安心して利用できるよう配慮している
契約締結時には、事業所を利用するにあたってのルールも合わせて説明している。これは、利用者と職員が相談しながら作成したもので、利用者の意見が十分取り入れられている。利用開始時には環境についてのオリエンテーションに特に力を入れ、室内環境や作業に利用する補助具、必要物品がどこに配置されていて、どのように片付けるか等を説明している。施設内は本館、新館に別れた3階建てという広い空間であり、一度の説明では理解が難しいため、職員は繰り返し説明を行って利用者が安心して利用できるようにしている。
作業は一定の精度を求めるが、利用者のストレスも考慮しスキルアップを図っている
事業所全体として販売品の精度を求めるため、利用者も質の高い作品を作ることに熱心に取り組んでいる。新規利用者については、すぐに精度の高い作品を求めるのではなく、法人の会員向けに送付する封筒などで作成の手順を覚えてもらいながら、慣れたところで販売品の作成に移行するなど、負担がかからないよう配慮している。視覚障害に特化した事業所が多く無いため、サービス終了するケースは年に数件となっているが、当事者に様々なサービスを提供している法人の特色を活かし、終了後も気軽に相談できるよう配慮している。
1.サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている
- サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
- サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
- サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
2.サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている
- サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
- 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
- サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
- サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
【講評】
初期アセスメントで利用者の状況を確認し、その後の支援につなげている
新規利用者が事業所を利用する際のアセスメントは重要であるため、見学や契約の際に利用者の状況を詳細に聞き取っている。特に「見え方」については利用者個々で異なるため、その人がどれだけ見えるか、見えないか、光を感じられるか、感じられないか等を注視している。聞き取った情報は基本情報と初期アセスメント票に記載しており、初期アセスメント票では、コミュニケーション、作業、移動、理解力、聞く姿勢、自分の気持ちを伝えることができるか、職員や利用者への態度等、その人の持つ力を確認している。
個別支援計画の目標は作業スキルの向上が確認できるものとして位置付けられている
個別支援計画は主目標と個別的目標に別れ、個別的目標では事業所内で行う作業の目標、主目標では利用者の生活全般の目標を掲げている。個別的目標は作業工程、例えば、「会報の封筒の糊付けができるようになる」等、作業の目標をスモールステップで立て、更新時には、達成した目標をさらにステップアップさせ、利用者自身が作業のスキルが上がっていることを自覚できるように目標を設定している。作成された個別支援計画は職員に周知され、利用者・職員が目標達成に向けて取り組んでいる。
モニタリングでは目標の達成度の確認とともに職員の支援の振り返りも行われている
モニタリングは6ヶ月に一度、職員から書面で聞き取りを行い、サービス管理責任者が利用者と面接を実施している。個別支援計画はサービス管理責任者から職員への指示書なようなものと考え、職員間で共有されている。日々の記録は簡易的なものであるが、職員はモニタリングの時期に利用者の良い点、気になるところ、今後の希望などを書面にまとめ、サービス管理責任者に提出する。モニタリングに職員が関与することで、利用者に対する支援の振り返りも行われ、利用者・職員が共に新たな目標に向かう機会となっている。
1.定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している
- 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
- 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
- アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
2.利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している
- 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
- 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
- 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
3.利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している
- 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
- 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
4.利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している
- 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
- 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
1.個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている
- 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
- 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
- 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
- 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
【講評】
利用者が目標を達成するために日々の支援があることを職員が意識できるよう努めている
個別支援計画は、生活全般についての「主目標」、作業に関する「個別的目標」に対して、達成時期、支援内容等を記載するかたちとなっている。半年ごとに行うモニタリングでは、作業の取り組み具合、生活状況や他利用者との関り等について、現場で支援を行う職員が記載したシートを参考に、目標の達成状況の確認を行って、次の計画に活かしている。サービス管理責任者は、日々の支援における現場職員との情報交換により、計画に記載された目標達成のためにサービス提供があることを意識できるよう努めている。
障害や特性等、利用者一人ひとりの状況に配慮してコミュニケーションを図っている
事業所の利用を開始するにあたって実施する初期アセスメントでは、コミュニケーションの項目において、理解力、聞く姿勢、自己表現等の評価を行って支援に活かしている。視覚障害であってもロービジョン、全盲等、見え方は利用者によって異なり、また、聴力、知的や精神等、重複した障害を抱えているケースもあるため、白黒反転や拡大文字の使用、繰り返しの分かりやすい説明等、利用者一人ひとりの状況に応じてコミュニケーションのとり方に配慮している。
施設内外において利用者の自立や関係作りに必要な支援を行っている
利用開始当初は、現場職員が橋渡し役や仲介役になって利用者が不安なく過ごせるよう努めるとともに、個別支援計画のモニタリングでは、作業室における座席や利用者同士の関係性についても把握し、些細なトラブル等への対処方法を伝えている。日々の朝礼では福祉サービス、就労関係等についてきめ細かい情報提供ができるよう心がけており、直近では、都から寄せられた新型コロナウイルスの検査・診断可能な医療機関について、希望する利用者にテキスト化した情報を提供している。
2.利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている
- 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
- 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
- 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
- 【食事の提供を行っている事業所のみ】
利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している
【講評】
携わる作業の内容や目標は面談において利用者と相談しながら設定している
作業の中心は点字古紙を再利用した各種封筒の製作となっており、利用者一人ひとりの作業内容や目標については、個別支援計画見直しの面談において、可能限り意向に沿って設定している。またモニタリングでは、利用者自身が作業に関する短期目標を強く自覚できるよう例えば、封筒の糊付け枚数等、具体的な数値を示して効率化を図ったり、製品の完成度を作業開始当初と比較して動機づけを行うなど、利用者の特性に応じた意識付けを行うよう努めている。
事業所内で快適に過ごすためのルールを定め、理解が得られるよう説明を行っている
事業所の決まりごとは、利用開始時契約書・重要事項説明書とともに、2年ほど前に作成した「パイオニアの利用者さんに守っていただきたマナーやご理解いただきたいこと」を活用して、理解が得られるよう説明している。事業所内で快適に過ごすため、作業中の会話や飲食・昼食等についてのルールを定め、また、接触等のアクシデントを避けるため、室内移動についての声かけや配慮についても記載されており、毎月のミーティング等で必要に応じて利用者の意見を反映しながら見直しを行っている。
作業室は利用者の特性に配慮し、安心・安全にのための工夫がなされている
作業室は全盲、ロービジョンの利用者が安心・安全に過ごせるよう様々な配慮がなされている。利用時間中に天気や交通情報等の情報収集ができるようラジオを付け、時計は音声で時刻表示するタイプを使用している。壁際には利用者ごとの作業用具箱が整然と並べられている他、使用する物品は置き場所を決め、利用者が混乱しないようにしている。食事提供はしていないが、昼食を事業所で摂るケースもあり、利用者との会話から時に出前を取るなど、コロナ禍における黙食を守りつつ、一息つく時間の提供に配慮している。
3.利用者が健康を維持できるよう支援を行っている
- 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
- 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
- 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
- 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
- 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】
服薬の誤りがないようチェック体制を整えている
【講評】
毎日、作業前に聞き取りを行って利用者の健康状態について確認している
利用者の健康状態や生活状況については、利用開始時の聞き取りをもとに「フェイスシート」に記載して把握している。既往歴によっては作業時に配慮を要する場合もあるため、必要に応じて主治医に診断書を依頼して医療情報の確認も行っている。コロナ禍においては、日々の体温をサービス提供記録に記載して健康管理を行うとともに、事業所では毎日の作業前に健康状態についての聞き取りを行っており、健康への不安がある場合等、随時相談にも応じている。
日頃の会話や様子から生活状況全般についての把握を行い、相談に応じている
作業室では利用者に普段と違った様子は無いか、現場の職員が確認するとともに、日頃から利用者との会話を通して、食事や服薬等、生活状況全般について把握するよう努めている。例えば、糖尿病や高血圧の症状があるケースについては、持参している昼食の内容をそれとなく確認し声かけを行ったり、モニタリングの際にバランスの取れた食事についてのアドバイスを行っている。また、必要なケースでは、相談支援事業所と連携して動機づけ等の支援を行う場合もある。
利用者の状況に沿って必要なケースでは服薬の見守りや身体状況の観察を行っている
主治医や緊急連絡先については重要事項説明書への記載にて把握している。利用時間内に服薬するケースは多くなく、また、利用者自身での管理を基本としているが、難病で痛みのコントロールを行っている利用者に関しては、服薬内容が変わったとの報告を受け、様子観察を通常より細かく行ったり、抱えている疾患によっては確実な服薬が行えているか、職員が遠目に様子を伺う等の支援を行っている。また、体調変化時には所内での休息の他、最寄り駅や自宅まで同行する場合もある。
4.利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている
- 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
- 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
- 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
【講評】
日々の支援は本人の意思決定を最優先にして行うことを基本としている
現在、在籍しているほとんどのケースについては、利用者自身で物事を決定することが可能であり、そのため敢えて家族に連絡しなければならない場面はあまりないが、必要な場合には、事前に本人の了解を得ることを基本としている。個別支援計画についても本人との面談を通して目標を設定し、家族がいる場合には、目を通してもらうよう伝えている。また、知的障害のあるケースであっても、意思疎通が可能であれば本人とのやりとりを第一に、家族への連絡は最小限にとどめている。
状況によっては利用者を取り巻く環境にも働きかけながら支援を行っている
利用者本人とのやりとりを基本としつつも、状況によっては家族と連携して支援を行う場合もあり、摂食に課題のあるケースでは、家族に依頼して改善が図られるよう動機づけを図った。また、家族が高齢の利用者では、介護サービスを提供している関係機関と連携を図った例もある。家族等が事業所の情報を知る手段として、ホームページの他、広報誌「パイオニア通信」がある。イベントの自粛が続くコロナ禍においては発行が滞っているものの、利用者の活躍を伝える手段として再発行できればと考えている。
5.利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている
- 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
- 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
【講評】
1階の掲示スペースでは障害に配慮したかたちで様々な情報が提供されている
事業所は母体である東京都盲人福祉協会と同建物内にあることもあり、事業所1階の入り口付近には多くの情報が掲示されている。視覚障害者向けの音楽教室や鑑賞サポート付きの演劇公演といった余暇活動を充実させるための情報の他、点字版の政府広報、音声コードのある防災ガイドブック、信号をより安全に渡りや数くするためのアプリケーション案内等、生活に必要な情報が障害に配慮したかたちで提供されており、掲示だけでなく朝礼においても必要に応じて利用者に伝えている。
地域の資源をより活用できるよう情報提供の方法を工夫していきたいと考えている
利用者支援を行うにあたり、独居ケースでは、相談支援事業所や生活保護のケースワーカー、訪問介護等、関係機関と担当者会議を開催して利用者の地域生活を支えている。利用者に地域の情報を提供する際、その方法は複数あるが、情報を「点字化」することは困難であるため、現時点では主に代読で提供している。事業所ではメールを使用している利用者が増えていることを踏まえ、テキスト化した情報をメールにて伝える取り組みを始めており、今後活用を広げて行ければと考えている。
事業所同士の情報交換を行い、当事者が就労する機会を確保できるよう努めている
視覚障害に特化した就労継続支援B型事業所は都内でも数少ないため、日頃から事業所間での情報交換を密にするよう努めている。コロナ以前は、職員が互いの事業所を体験し支援に活かす機会も設けられていたため、他事業所からの紹介や利用者間の情報により、当該事業所の利用に結びつくケースもある。近隣大学の運動部の学生による作業支援のボランティアは、コロナ禍においては活動を控えているが、盲学校からの実習生受け入れは今年度も継続して行っている。
12.【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている
- 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
- 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
- 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
- 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
- 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
【講評】
法人の強みも活かした様々な作業種により利用者に働く場を提供している
設立母体である東京都盲人福祉協会と同建物内にある事業所では、会員・その他の視覚障害者から寄せられた読み終えた点字用紙をリサイクルして、各種封筒の製作を主な作業内容としている。また、会員向けに発送する点字郵便・録音テープやCD等の封入、タクシー用点字シールの作成の他、点字の得意な利用者は、協会が発行する点字出版物の校正作業を担っている。さらに、新宿区の「障害者による地域緑化推進事業」にも参画しており、利用者の自主性を尊重して作業を選択できるよう努めている。
手当を含む工賃の仕組みについて説明し、理解が得られるよう努めている
工賃規定では、利用は週3日を限度とすること、基本の工賃額、各種手当、交通費等について定めており、毎月25日に支給される工賃の明細は、拡大文字や点字版により作成している。利用者には、B型事業所は福祉就労的な側面が強いため、個々の能力に応じた時給が設定しにくいこと、そのため、年に2~3回の特別工賃を支給し、利用者それぞれの貢献度を反映させていることを利用開始時やミーティングで説明し、事業所の工賃についての理解が得られるようにしている。
利用者一人ひとりにとって存在価値のある事業所を目指し日々の支援を行っている
どのような視覚障害者にとっても「存在価値のある」パイオニアであることを事業所の方針とし、生きがいや社会参加等、利用者一人ひとりの目的・目標は異なっていても、互いに刺激し合って、高め合える場の提供を目指して支援を行っている。個別支援計画では、働きたい、色んな事に挑戦したいという希望に沿って、会員向け封筒の糊付けという初歩的な作業から販売用の商品に少しずつステップアップできるよう目標を設定するなど、利用者個々の強みや能力に応じた作業を提供している。
【講評】
利用者との個別面接は内容や状況を勘案してより最適な場所で行なっている
個別支援計画やモニタリング時の面接など、個別面接を行う際には作業室の隣にあるランチルームを使用し、他の利用者に会話が聞こえないように配慮している。さらにプライバシーに配慮が必要な会話や、聴覚にも障がいがあり大きな声でのやりとりが必要な利用者に対しては、相談室で面接を行っている。環境面では、利用者の私物を入れるロッカーを一人一人に用意し、他者の持ち物と混同しないよう配慮している。ロッカーに鍵は常備しているが、管理は利用者に任されており、利用者の自主性も尊重している。
作業所での過ごし方は利用者の要望を尊重し、補助具の改善などにも取り組んでいる
利用者が行う作業については、できる限り利用者の意見を尊重し、作業内容を定めている。利用者アンケートの中でも個別支援計画の目標は、サービス管理責任者と話し合いながら決めていると答える人がほとんどであり、面接の中で利用者が自らの要望を伝え、作業所での過ごし方を決めていることが伺えた。作業で使用する補助具も利用者からの意見を取り入れ日々改善されており、精度の高い製品の製作につながっている。月例のミーティングや朝礼は、利用者が相互に意見交換を行える場として大切にされている。
利用者の状況が異なるため、職員は互いを認め合えるような声かけを行なっている
利用者は視覚から得る情報が少ないため、音に敏感なケースが多く、利用者アンケートにおいても、作業工程で指で紙を数える音や、作業中に歩き出す人の行動が気になる等の意見があげられている。また、作業の進行も人それぞれ異なり、早いペースで行える人、一つ一つの工程の合間に一呼吸置かなければ次に進めない人など様々である。利用者同士で互いのことが気にかかり、トラブルに発展する場面もあるが、職員は個別性を大切にし、利用者には事業所が福祉作業所であることを繰り返し伝え、互いを認め合うことができるよう声かけを行なっている。
1.利用者のプライバシー保護を徹底している
- 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
- 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
- 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
2.サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している
- 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
- 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
【講評】
災害時や感染症防止等、利用者の安全のため職員が取るべき行動指針の整備が求められる
事業所には、倫理規程、虐待防止マニュアル、虐待セルフチェック、防災計画等、手引き書が1冊のファイルに閉じられている。ファイルは所内に設置されているものの、日常的に職員が開き、確認できるものとして十分に活用はされていない。東日本大震災の時に利用者と職員の安全のため、事業所で一晩過ごして以来、震災に備えて備蓄品を取り揃えたり、感染症予防に力を入れているが、行動の指針となるマニュアルの整備までには至っていない。業務を標準化し質の高いサービスを提供するためにマニュアルなどの整備が求められる。
利用者とともに作り上げる標準的な作業工程の手順書の整備が期待される
販売品を作成するにあたり、過去には利用者が率先してマニュアル作成に取り組んだこともあるが、利用者自身の見え方や作業のしやすさ、道具の使い方等はそれぞれ異なるため、標準化するのが難しい状況にある。しかし、利用者の通所日数は週3回程度であり、多くの利用者が製品の作成に携わるため、製品の質を担保していくためには、標準的な作業工程を示すことが職員の負担軽減にもつながる。作業工程など利用者・職員が共有し、確認できる手順書などの整備が期待される。
1.手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている
- 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
- 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
- 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
2.サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている
- 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
- 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
事業者のコメント
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評価情報
【評価機関名】
【評価実施期間】
2021年5月12日~2022年3月29日
評価結果のダウンロード
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【講評】
事業所の案内は利用者が入手しやすいよう、ホームページを活用して提供している
事業所の設立母体である東京都盲人福祉協会は、法人全体で視覚障がい者に対し様々な支援を行っているため、ホームページ、パンフレットでは法人の事業の一環として事業所が紹介されている。視力に障がいのある人は様々な情報をテレビやラジオ、スマートフォンやパソコンから入手している。事業所も利用者自らが検索し、情報をとることができるよう配慮してホームページを作成している。視覚障がいに特化した作業所は数が少ないため、各自治体の福祉課からの問い合わせで対応することも多い。
見学希望者には利用開始後に齟齬が生じぬよう、丁寧に対応することを心がけている
利用者は事業所の情報を居住地の自治体、ホームページから入手するほか、視覚障がい者施設間の繋がりや当事者同士の交流、クチコミにより得ている。サービス利用前の見学は適宜行われているが、都内には視覚障がいに特化した就労継続支援B型事業所が少ないため、より多くの人が利用できるよう利用回数に制限を設けている。この点については利用者の理解が得られるよう繰り返し説明するとともに、見学の際は作業の体験に加え、事業所の歴史、工賃の仕組み等、利用開始後に齟齬がないよう配慮している。
利用者への情報提供は、個々の見え方や特性に応じて理解しやすい方法で行われている
視覚障害者に対する支援の要は、個々が必要とする情報を適切に提供することであり、この点を意識して日々の支援を行うようにしている。利用規程や工賃の仕組み・明細は点字の説明書を作成したり、希望者にはメーリングリストを作り、必要な情報を提供している。最近では東京都が配信している新型コロナウイルス診断・検査が行える病院のリストを配信し、利用者に喜ばれている。複雑な説明は書面を丁寧に読み上げるなど、利用者の必要に応じた形で情報の提供がされている。