評価結果
基本情報
事業者の理念・方針・期待する職員像
事業者が大切にしている考え(理念・ビジョン・使命など)
1)陽気ぐらし(「感謝・慎み・助け合い」の精神で、お互いの人格・人権を尊重)
2)安全・安心・平和
3)全職員が直接の養育職員
4)永く働き続けられる職場づくり
5)地域に貢献し、地域とともに歩む施設つくり
職員に求めている人材像や役割
専門職としての自己確立に向け、「日々実践、日々研究、日々運動」を通して、「専門性の向上」と「総合力の深化」を図っていくこと。
・養護内容の専門性:養護問題の社会科学的把握、養護技術の向上、制度・政策への精通
・組織における専門性:チーム労働への習熟(自分の立場、相手の立場、第三者の立場の立体思考)
職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)
1)子どもたちを受け止め、寄り添いながら子どもたちの健全な成長と発達に向け、目的意識をもって粘り強く取り組んでいくこと。
2)施設の子どもは「貧困の連鎖」の中の被害者です。同時代を生きる大人として、「希望が連鎖する社会」、少なくとも「子ども時代は公平な社会」の建設に取り組むことが、施設の子どもへの使命と考えます。
全体の評価講評
特によいと思う点
国や都の目指す社会的養護の方向性や施設の目指す理念に沿って、全面改築による小規模化や地域交流棟の新設、それらに伴う職員の増配置といった、大きな変化を経験している最中である。話し合いを重視する民主的な組織文化により築かれた職員間の基本的な信頼関係をベースに、課題に対して各種委員会を設置して検討する等、大きなチャレンジを必要とする内容においても、建設的に取り組んでいる。実際に、若手職員の大幅増への対応としてOJTにつながる新たな制度を複数導入する等、目に見える前進が図られている。
高校進学を迎えた子どもたちを主賓とした「進級式」や、卒業して退所する子どもたちを主賓とする「卒園式」を毎年開催している。主賓の一人ひとりが高校進学に当たっての決意表明や卒園に際しての思いを文章にしたものを文集としてまとめるとともに、式典に出席した人たちの前で主賓自身が読みあげている。それを実現できる背景には、子どもたちが場合に応じて職員とぶつかる等しながらも自分の意志を表明して、その受け止めを職員集団に感じている事が伺える。すべての職員がそれぞれの形で子ども一人ひとりと関わる積み重ねに取り組んでいる。
子どもの安定した生活と自立へ向けた成長には、地域の理解と協力が必要と考えている。そのために子どもや職員は、様々な活動やイベントに住民として参加したり、学園の行事に近隣住民を招待する等している。その中で、子どもが退所した後も支援者の一人としてつながる個別の関係を築く事ができている。子どもたちの育ちを見守る地域のネットワークや、市から受託しているショートステイ事業を通して近隣の子育て家庭を必要に応じた支援につなげる等、住民に身近な社会資源としての役目も果たしながら地域とともに歩む施設として積極的に活動している。
さらなる改善が望まれる点
生活集団の小規模化に伴い、職員数の増大等に対応すべく、目指す同一敷地内2施設運営の具体化が求められている。運営体制対策委員会を中心に、職員との丁寧な合議を重ね、本園2施設、グループホーム、地域も含めて、めざす組織の形態と機能の具体化を模索しており、統括園長、園長、副園長、複数主任制の導入を方向づけている。学園の基本理念として「全職員が直接の養育職員」を掲げており、組織の形態と機能の両面を変革して統治を強化し、基本理念の実践を継続することが求められている。統治強化と自立性を包含する”管理”の構築を注視したい。
2施設ごとに改築が進展し生活が定着するなか、養護内容の充実に向け、寮舎の主体性、自主性、ガバナンス力の強化に取り組んでいる。職員体制は2ユニット8名を試行し、引き継ぎや実務処理の円滑化を図っているが、今後の寮舎会議を、養護を支える話し合いの場として重視している。2施設合同の職員会議や、学童、幼児の養護を検討する分野別会議と連携をとりつつ、寮舎として、職員間で、子どもの状況を共有し方針を検討する会議の機会を、寮舎でそれぞれ工夫している。各施設で、寮舎会議の役割と機能を明確にし、検証を重ねてほしい。
施設や法人の枠を超えて、市独自の支援制度や地域連携の取り組みを児童部会や関東ブロックの情報交換の場で発表する等、良い取り組みを業界全体に広げていくことについて、積極的な姿勢を持っている。近年、施設の全面改築をおこない小規模化、多機能化をハード、ソフト両面から進めている中で、テーマ別委員会を設置し、それぞれの委員会が活発に議論して提言をまとめている。社会的養護を取り巻く環境全体が過渡期にある中、今後はそうした成果についても、紀要や学会での発表等を通じて積極的に外部に発信し、紹介していくことを期待したい。
事業者が特に力を入れている取り組み
発達障害や知的障害、不登校や学校不適応等、一人ひとりの特性や状況に応じて子ども自身が自立へ向かう事ができるように、すべての職員が心身と生活の安定をはかる個別支援に取り組んでいる。家族との関係に様々な課題を抱える子どもたちには、家族関係の再構築や養育家庭の検討等に子どもへ寄り添いながら取り組んでいる。退所に際しては予め、子どもが生活する地域の社会資源や制度とつながる事ができるようにサポートしている。アフターケア計画満了後も個別に応じて関わりを継続する等、巣立つ子どもがいつでも相談できる存在として機能している。
コロナ禍や改築の影響により、食堂が使えず、調理クラブもできず厨房も仮設であるなど、厳しい環境下にある。こうした中でも、レシピカードの内容整理をして共有し、学園の味を守る取組みをしている。グループホームに配属された新任職員にむけ、調理実習、配食の支援を行う他、栄養士がグループホームに赴いて子どもとの調理実習にも取り組んでいる。利用者調査の結果では、厳しい状況の中でも、子ども達の食事への満足度が維持されている。建て替え中の地域交流棟に完成予定の食堂で、食を通した子ども達への新たな支援策が温められている。
昨年から今年にかけて始まった、新園舎での子ども達の生活が定着し、徐々に落ち付きを見せている。2つのユニットが、職員の部屋を中心につながっており、職員の部屋の硝子戸を通して暮らしの雰囲気がゆるやかに伝わってきて安心感をもたらしている。本園の子どもに個室ができたことは、大きな変化の一つだが、同時に、ちょっとした廊下の窪んだスペースでくつろぐ児童達の様子も印象的である。個室と共用リビングの中間の場所で、大人の目の届く所に、ちょっとくつろげるセミプライベートな居場所が生まれ、子ども達の居心地の良さにつながっている。
利用者調査結果
調査概要
- 調査対象:2021年6月1日現在の利用者を対象とした。
- 調査方法:アンケート方式,聞き取り方式
聞き取り調査を希望しない利用者・都合により調査ができない利用者には、調査票を配布して回収する方法で調査を行った。 - 有効回答者数/利用者総数:54/54(回答率 100.0% )
総合満足度(よい、ややよいを合計した割合)は、69%(37人)となっている。
小学生以下の満足度(よい、ややよいを合計した割合)は、81%(26人)となっている。
中高生の満足度(よい、ややよいを合計した割合)は、50%(11人)となっている。
●各カテゴリーのうち、「はい」の比率が高かった上位は、以下の項目であった。
問6.あなたは、職員の言葉づかいや態度、服装などがきちんとしていると思いますか
問7.あなたがけがをしたり、具合が悪くなったときに、安心できるように職員は助けてくれて信頼できると思いますか
(各々74%、40人)
問2.施設での時間の使い方や服などの持ち物について、あなたの"こうしたい"という気持ちや意見を職員が聞いてくれていますか 問9.あなたは、職員があなたの気持ちを聞いてくれて、大切にしながら対応してくれていると思いますか 問14.あなたが困ったり、"いやだな" "してほしいな" と思ったことなど、要望や希望を伝えたとき、職員はよくなるようにきちんと対応してくれていると思いますか(各々72%、39人)
アンケート結果
1.食事の時間が楽しいひとときになっているか
<小学生以下>唐揚げおいしい。 お弁当おいしい。 遊びながら食べてる子がいる。 <中学生以上> 食事はバランスがしっかり取られています。
2.施設での時間の使い方や衣服・物の所有について、職員は意見を尊重してくれているか
<小学生以下> 公文がある。勉強ばっかり。 <中学生以上> 大人は心配事や相談も聞いてくれます。
3.子どもの年齢や特性、個別事情に応じて生活の約束ごとの説明を受けているか
<小学生以下>お話会がある。 手を1本分の距離をとること。 <中学生以上> ルールはコロナの影響で変わりつつあります。
4.自立に向けた支援について、多様な選択肢から情報提供や相談対応がなされているか
<小学生以下>警察官や消防士になりたい。聞いてくれる。 困っている人を助けたい。福祉司さんからのアンケートで伝えた。 <中学生以上> 自分が(から)話をする時が多いです。
5.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
<小学生以下>大人がきれいにしてくれている。 おトイレとかお風呂のそうじをお手伝いしました。 <中学生以上> 土・日の間にホールなどをそうじしています。
6.職員の接遇・態度は適切か
<小学生以下>いいときも悪いときもある。 たまにふざける。 <中学生以上> みんなやさしいです。
7.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
<小学生以下>病院に連れていったり。 具合悪くなったことはない。 <中学生以上> しっかりと看病してくれます。
8.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
<小学生以下> 仲良いけど時々ケンカする。大人を呼んでくると「どうなってるの?」と聞いてくる。 あんまりケンカしない。 <中学生以上> 子どもたちの意見をよく聞いてくれます。
9.子どもの気持ちを受け止め、尊重した対応がされているか
<小学生以下>大切にしてくれるよ。 知らない。あんまりそういうことは話さない。 <中学生以上> よく対応してくれます。
10.子どものプライバシーは守られているか
<小学生以下> 内緒にしてくれるかどうかは分からない。 <中学生以上> 相談はしていないです。
11.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
<小学生以下> 個別に話す事はあるが目標は決めていない。 今は「ケンカしない」 <中学生以上> 意見なし。
12.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
<小学生以下> 意見なし。 <中学生以上> 意見なし。
13.自らの権利について、さまざまな機会をとらえて職員はわかりやすく教えてくれるか
<小学生以下> 学校の先生から聞いた。 ノートはもってる。話した記憶はない。 <中学生以上> 意見なし。
14.子どもの不満や要望は対応されているか
<小学生以下> 何もしていないのにたたかれたりしたら絶対大人に言う。 <中学生以上> 対応してくれますが良くなったことはあまりない。
15.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
<小学生以下> 権利擁護の人が来る。 スクールカウンセラーの先生とか。相談させられたことがある。 <中学生以上> 意見なし。
組織マネジメント分析結果
◆事業評価結果
7つの「カテゴリー」の下に、それぞれ「サブカテゴリー」「評価項目」「標準項目」を設定して評価しています。
評価項目ごとに、標準項目の実施状況を、実施できている場合は
で、実施できていない場合は
で表しています。
1. 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している
- 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
- 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
2. 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている
- 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
- 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
3. 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している
- 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
- 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
- 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
【講評】
国のビジョンや都の計画、子どもたちや職員の状況を踏まえながら全面改築を進めている
国の「新しい社会的養育ビジョン」や都の社会的養育推進計画において、児童養護施設の小規模化、多機能化の方向性が示されていることを踏まえた機能論に加え、子どもたちの支援を具体的に検討する中で、本園の全面改築を進めてきた。子どもたちの生活棟の建て替えは完了し、あとは事務棟や地域交流棟などの改築を残すのみとなっている。改築にあたっては、職員間で意見を出し合いながら、子どもたちや職員の状況、生活のしやすさ、働きやすさ等を総合的に考慮して、最適な解を追求し、見えてくる課題も都度、整理しながら進めてきている。
子どもたちの意見を反映できるよう寮舎毎や子どもたち全体で話し合う場を用意している
子どもたちの意見を日常的に吸い上げるため、寮舎毎に話し合いの機会を持っている。寮舎毎の話し合いの中で、全体で検討した方が良い内容があれば、中高生児童総会等で寮舎を超えて話し合う場を設けている。職員が議題を提起し子どもたちに意見交換を促す場合もある。本年度は敷地内の広場の使い方や遊び方のルールを決めたり、コロナ禍で従来のようにはできない行事をどのようにしていくか、といったことについて話し合う予定としている。施設運営について、子どもたちが意見を表明し、子ども同士で話し合い決定していくプロセスを大切にしている。
新設する地域交流棟の活用にあたり、地域ニーズや先行事例等を多面的に検討している
改築に伴い新設する地域交流棟の活用方法について、検討を重ねている。様々な声を集める中で、最も地域のニーズが高いと判断した「居場所」づくりを第一義的に目指すことを目標に定めた。名称は公募し、誰もが居心地よく過ごせるよう、空間のコーディネート等には専門家の意見も取り入れる方向で検討している。電源やWi-Fiを利用可能にすることや、高齢者等に配慮した床暖房の設置等、想定する利用者の状況を考慮して検討している。子ども食堂を実践している施設等に見学に行くなど、先行事例についても参考にし、議論を深めている。
1. 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
- 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
- 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
- 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
- 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
- 事業所の経営状況を把握・検討している
- 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
1. 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している
- 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
- 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
- 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
2. 着実な計画の実行に取り組んでいる
- 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
- 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
【講評】
「権利擁護ガイドライン」の記載を充実させ、職員の理解が深まるようにしている
社会的な行動規範等については、事業計画や就業規則に示して全職員に周知し、新任職員へは研修で倫理綱領の読み合わせをおこなう等により浸透を図っている。「権利擁護ガイドライン」を整備しており、最近では不適切なかかわりについての記述を充実させ、良いこと、悪いことの境界を職員がより具体的に理解できるようにした。この冊子は寮舎会議で読み合わせるなど活用しており、年2回の「人権擁護チェックリスト」の実施により、実践状況の振り返りをおこなっている。振り返りの結果はガイドラインの見直しにもつなげている。
地域の支援ネットワークの中で情報共有や具体的支援を継続し、成果を上げている
地域の子ども食堂に協力する等、地域支援ネットワークの一員としての役割を積極的に推進している。市社協が事務局となって平成28年に設置された富士見子ども連絡会では、当施設の職員も出向き、勉強につまづいている地域の子どもに九九やローマ字を教える等の活動はコロナ禍でストップしているが、定期的な情報共有は継続している。子どもの成長に伴い、関わる支援機関も変わっていくが、地域の子どもの情報を互いに共有することで、その子が実際に支援対象となったときに、経緯や背景を踏まえた支援を開始しやすい等のメリットも実感できている。
顧問弁護士や権利擁護委員会など外部の目を取り入れ、施設運営の透明性を高めている
子どもの権利擁護委員会を設置し、意見箱に入った子どもの意見等について検討したり、必要に応じて組織的な対応をおこなう体制を整備している。外部の目を取り入れ、客観的な視点を踏まえて検討するようにしており、日常的な支援の中で職員が直面する、不適切かどうかの判断の難しい事例についても弁護士に相談し、アドバイスをもらうこともある。職員の心身の健康保持が不適切なかかわりの防止につながると考え、日頃から「全職員が直接の支援者」との意識を共有し、チームワークを大切にしながら取り組み、また、職員のセルフケアも推進している。
1. 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる
- 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
- 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
1. 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている
- 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
- 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
2. 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている
- 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
- 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
1. 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる
- 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
- ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
2. 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている
- 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
- 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
- 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
【講評】
防災の専門家の助言を得ながら、学習会や机上訓練等により危機対応能力を高めている
防災アドバイザーが毎月1回来園しており、防災に関する学習会を開催したり、BCPの策定について助言を得るなど、その専門性を活用している。年2回は防災アドバイザーとともに机上訓練を実施し、防災全般についての職員の知識や対応能力を高めている。以前は法人内で協働して炊き出し訓練なども実施していたが、ここ数年はコロナ禍及び建て替え工事等のためストップしており、状況が落ち着いた段階で再開したいと考えている。備蓄品のアレルギー対応を進める等、避難先での実際の支援等を想定した備えのさらなる充実が期待される。
新型コロナウイルス感染症に関するBCPを策定し、周知するなど危機管理に努めている
新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年4月に「新型コロナ対策BCP(案)」を策定し、状況の変化や蓄積された知見を基に改訂を重ねている。具体的な感染予防策について、各寮や各グループホームでの実施状況をチェックリストにより確認する取り組みをおこなっており、職員や子どもたちへの意識付けを図っている。その他、生活安全係による避難訓練計画等を含む年度方針の策定や、リスクマネジメント委員会による協議等、安心・安全な環境づくりに向けた取り組みを継続している。
個人情報の漏洩等の防止に努めながら、情報を共有し活用している
二施設運営への転換に伴い、情報の管理方法についても見直しが必要となっている。兄弟姉妹が二施設に分かれて入所している事例もあるなど、情報共有の必要な範囲を検討している最中である。閲覧可能なパソコンを限定する等、実務面を考慮して合理的な情報保護、管理体制の再構築に取り組んでいる。緊急事態宣言の発令に伴い、一部を自宅勤務としている関係で、自宅勤務時の情報管理のルールを定めた。データを持ち出す際のルールを定める等の対策を取り、情報漏洩等の防止に努めている。
1. 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる
- 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
- 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
- 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
- リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
- 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
1. 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
- 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
- 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
- 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
- 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
【講評】
制度を活用しながら採用を進め、職員の配置を手厚くし、宿直回数の抑制を実現した
建て替えにより小規模化が図られた本園では、職員体制を2ユニットで8名体制とし、建て替え前よりも手厚い配置となった。グループホームでも3名から4名体制へと増配置をおこなった。その結果、宿直回数を抑えることが可能となった。職員アンケートからは「働き方が楽になった」「複数勤務ができるようになった」等の好意的な意見がみられ、成果の実感が見て取れる。これらの配置を実現するには新規採用が必須であったが、採用難の傾向にある同業界にあって、過去3年間で40名の採用をおこない、必要数を充足していることは特筆に値する。
キャリアパスの明示やバディ制度の新規導入等により、職員育成の仕組みを強化している
法人全体でキャリアパスを整理し、イメージ図として職員に明示している。フラット制を大切にした組織風土に合うよう、一直線に上昇していくスタイルではなく、円形に広がっていくように図示している。勤続年数や役職に応じて求められる技量や研修を明示し、キャリアアップをイメージできるようにしている。また、育成の鍵となるOJTをより体系的に行うため、バディ制度を新たに導入した。先輩と後輩の組み合わせにより、業務チェックリストやマニュアルの読み合わせなどをおこなっており、先輩職員にとっても業務内容の再確認につながっている。
メンター制度等、職員間のコミュニケーションを活性化させる仕組みづくりを進めている
本年度5月からメンター制度を取り入れている。メンターには敢えて異なる部署の職員を配置し、愚痴も含めて気軽に話ができる関係性づくりを目指しており、異なる立場の職員の話を聞くことで園全体を理解していくきっかけになることも意図している。まだ開始したばかりであり、雑談レベルでの交流が中心であるが、それを大切な一歩として捉え、今後、継続する中で成果を出していきたいと考えている。今回の第三者評価の職員アンケートからは、新人職員もおおむね好意的に受け止めている状況がうかがえ、さらなる成果につながっていくものと期待される。
1. 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている
- 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
- 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
2. 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している
- 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
- 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
3. 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる
- 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
- 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
- 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
- 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
4. 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる
- 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
- 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
- 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
- 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
1. 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる
- 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
- 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
- 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
1. 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
【前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ)】
【課題・目標及びそれらを抽出した理由・背景】
①子どもの成長と安全のために小規模化が課題であったこと、②労働環境の整備や、地域福祉の充実が課題であったこと、の2点を背景に、小規模化を目指す全面改築計画に基づき取り組みを進める。小委員会を設け、具体化を図る。
【取り組み・結果・振り返りに基づく今後の方向性】
主な委員会の活動は以下の通りであった。
1)工期対策委員会:児童棟の引越しが完了し、入所児童は新しい建物での生活がスタートした。2021年度も改築の進行管理を行う。
2)資金対策委員会:各種助成金給付の実務作業及び寄付の呼び掛け等を行い、実際に寄付を得て地域のつながりが感じられた。2021年度も助成金の獲得及び企業からの支援の拡充に向けて取り組む。
3)地域福祉対策委員会:地域交流棟の構想と計画の提案を行った。法人内の他施設との連携・協議を進めた。2021年度は11月に完成予定の地域交流棟の活用方法について具体化していく。
4)運営体制委員会:同一敷地内で一体的に運営してきた調布学園及び第二調布学園の運営体制を分けていくことについて論議・研究を重ね、提言をまとめた。2021年度もさらなる検討を進めていく。
【評語】
| 目標の設定と取り組み | 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った |
|---|---|
| 取り組みの検証 | 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った |
| 検証結果の反映 | 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた |
【講評】
理念共有の取組により関係者の理解と協力を促進している
入所している子どもたちのニーズと、職員のワークライフバランスの確保及び多様な労働形態の保障という課題、また「共生社会」に向けて地域福祉の中でさらなる役割を果たしていく使命感などを総合的に考慮する中で、小規模化を目指す全面改築計画を推進してきた。関連する委員会を設置して、計画に基づきさまざまな観点からの検討をおこない、2022年4月頃に改築完成記念式典をおこなう予定で工事等が順調に進んでいる。計画に沿った進捗状況の確認も適宜おこなわれており、PDCAサイクルに沿った取り組みがなされている。小規模化により、子どもたちの生活環境が個室化されたことのメリットは大きい反面、課題も見えてきており、そういったことを整理しながら、より良い施設運営を目指して取り組みを継続する意向が確認された。
2. 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
【前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ)】
【課題・目標及びそれらを抽出した理由・背景】
被虐待児の入所割合が実質的に8割を超える中、対応の困難さ等から職員の心身の負担が増大傾向にある。また小規模化に伴い人員配置を手厚くした結果、新任・若手職員の割合が増加し、人材育成や定着のための手立てを講じる必要性が増している。職員の定着率は比較的高いものの、基本理念の一つである「永く働き続けられる職場」をめざし、多様な働き方を可能にする条件整備やメンタルヘルスの取り組みを進めることとした。
【取り組み・結果・振り返りに基づく今後の方向性】
1)採用委員会及び人材育成委員会を設置し、人材の確保・育成・定着の具体化を図る。⇒インターン制度を実施し新任職員15名を採用し、委員会としての提言をまとめた。提言に基づきメンター制度、バディ制度を導入する。
2)衛生委員会の体制強化を図る。⇒業務軽減アンケートやヘルスチェックを実施し、産業保健スタッフのあり方を含め、改善に向けて協議した。引き続き超勤問題、有休消化、メンタルヘルスに取り組む。
3)職員のメンタルヘルスに取り組む。⇒嘱託の産業医や顧問弁護士制度を充実させ、人権擁護や相談体制を構築した。委員会を新設し検討していく。
【評語】
| 目標の設定と取り組み | 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った |
|---|---|
| 取り組みの検証 | 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った |
| 検証結果の反映 | 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた |
【講評】
理念共有の取組により関係者の理解と協力を促進している
話し合いに基づいて課題を抽出し、課題に沿った検討の場として各委員会を設置し、効率的かつ効果的に検討が進むように取り組んでいる。委員会によっては、話し合いの結果を提言の形でまとめ、施設全体での検討につなげている。こうした組織運営のあり方が、2021年度にはバディ制度、メンター制度といった新たな制度にも結びついており、人材育成・定着の仕組みの強化が進んでいる。理念の実現のために必要な事柄を話し合い、改善に向けて着実に進めていく組織運営がなされている。
サービス分析結果
【講評】
入所に際して必要な説明を子どもや保護者に伝えている
入所前に子どもや保護者と面接できる場合には、受け入れ予定の寮舎職員と家庭支援専門相談員が対応している。面接では学園の概要や入所後の生活についてまとめた子ども・保護者それぞれに向けて作成した「入所のしおり」を使用して、不安や要望に応えながら説明している。緊急の対応等で事前の面接ができなかった場合には、入所後に説明を行っている。子どもには、入所後に生活する寮舎の様子やルール等を伝えている。保護者には、学園の事業目的や子どもに提供する支援の概要、入所後の面会や交流のしかた、権利擁護や安全対策について説明している。
支援の連携や地域における社会資源としての活動に必要な情報提供を行っている
子どもの通う小学校や中学校等が、子どもたちの生活における様子の把握や家庭としての学園と連携をはかるために必要な情報(寮舎やユニット、関係する専門職等)を、個人情報保護の観点から可能な範囲で提供している。地域の子どもたちを見守るネットワーク活動に、社会資源の一つとして参加する中で、必要に応じた学園の情報を提供している。また、社会福祉や社会的養護の専門誌等からの取材にも積極的に応じて、学園が行っている取り組み等の情報を提供している。
子どもや保護者からの問い合わせや見学の要望に対しては、状況に応じて対応している
乳児院や他施設で既に生活している子どもに対しては、入所後の生活安定をはかる意味でも可能な限り事前の見学に対応している。個々の事由で、一時保護の扱いで入所した子どもが正式な入所を打診された場合には一時保護所へ一旦移動して、学園での一時保護期間を体験入所ととらえて正式な入所への意思決定が行えるようにしている。虐待が要因で入所に至る子どもの保護者からの問い合わせがあった場合には、学園が直接対応せずに児童相談所へ問い合わせを行うように伝えている。
1.子どもや保護者等に対してサービスの情報を提供している
- 子どもや保護者の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
- 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
- 子どもや保護者の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
【講評】
入所する子どもや保護者に、基本的ルールや重要事項の説明と同意の確認を行っている
子どもや保護者には可能な限り、入所当日までに基本的ルールや重要事項(個人情報の取り扱いや予防接種等)を伝えた上で、内容に対する同意を書面で確認している。その際に子どもへは、基本的な起床就寝時間等の日課や年間行事、生活の中でできる事(習い事やアルバイト等)や決まり事(こづかいやゲーム等)、生活する寮舎と担当職員の名前や苦情相談の方法等をまとめた子ども用のしおりを渡している。保護者には、学園の事業目的や子どもに提供する支援の概要、入所後の面会や交流のしかた、権利擁護や安全対策についてまとめたしおりを渡している。
入所した子どもの学園での生活に対する不安やストレスの軽減につとめている
事前のアセスメントとして児童相談所から提供された情報の確認を本人との面接等で行い、入所後の支援に必要な情報として所定の書式にまとめている。入所する先の寮舎で既に生活している子どもたちには受け入れ側として心の準備ができるように事前に伝える等、寮舎の環境変化に対する準備も行っている。入所後、外出の決まりやテレビの使い方等、入所前の生活様式と異なる事柄への不安に対しては、子どもの理解へつながる対応に取り組んでいる。入所直後には心理療法担当職員による面談も行い、表面的には把握しづらい心の状態把握にもつとめている。
個別の状況に応じて必要な退所に向けた準備やアフターケアに取り組んでいる
退所に際しては、個別の状況に応じて必要な準備やアフターケアに取り組んでいる。大学等に進学して社会で自立する子どもに対しては、様々なサポートを得る事ができる市の児童養護施設退所者等支援事業(ステップアップホーム事業)等につなげている。家庭環境や家族関係の改善により退所する子どもや保護者に対しては、専門職のサポートを受けながら家族での宿泊訓練を積み重ねる等、退所後の生活に対する不安の軽減に取り組んで、子どもが安心して成長できる家庭の構築と移行に向けた支援に、関係機関と必要に応じて連携しながら取り組んでいる。
1.サービスの開始にあたり子どもや保護者に説明し、理解を得るようにしている
- サービスの開始にあたり、施設の基本的ルール(約束ごと)、権利擁護の取り組みをはじめとした重要な事項等を子どもや保護者の状況に応じて説明している
- サービス内容について、子どもや保護者の理解を得るようにしている
- サービスに関する説明の際に、子どもや保護者の意向を確認し、記録化している
2.サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている
- サービス開始時に、子どもの支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
- 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
- 入所以前の生活習慣等をふまえた支援を行っている
- サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、退所後の支援の継続性にも配慮している
【講評】
寮舎職員が子どもの「自立支援計画」に基づいてアセスメント情報を更新している
生活の様子、職員の対応や子どもの反応等も含めた支援に関する具体的な状況、他職種や他機関から得た情報は、寮舎職員が「自立支援計画」に基づいて個別の記録書式へ集約している。初回の「自立支援計画」作成に際しては、入所前から蓄積した情報をアセスメント書式に集約して入所の1か月後に寮舎職員や専門職による「アセスメント会議」を行い、支援の基本方針(子ども自身の就労による自立、家庭復帰による退所、養育家庭への措置による退所等)を設定している。その後は、寮舎職員が日常的にアセスメント情報を更新している。
子どもの意向を踏まえながら、現実的な退所に向けた「自立支援計画」を作成している
「自立支援計画」は、寮舎職員や関係する専門職等による会議で検討を行い、子どもに関する状況と退所に向けた課題に基づいて作成している。作成に際しては、「事前聞き取りシート」を使用して、学園や家族に対する思い、退所に対する具体的なイメージ、将来の夢や子ども自身による生活の振り返り等を聞き取っている。計画では、子ども自身の就労による自立、家庭復帰による退所、養育家庭への措置による退所といった、現実的な支援の到達目標を「自立支援方針」として掲げている。計画は、年度の中間に見直しているほか、必要に応じて変更している。
子どもの支援に必要な情報の共有と周知をはかる体制をもっている
子どもの日常的な生活の様子や変化、支援の内容や流れについては、寮職員が「個別記録」へ毎日記録している。記録内容に応じて分類項目に紐づけており、必要に応じて進捗や変化の確認を行う事ができている。「自立支援計画」を踏まえて記録できるように、記録で掲げた目標を書式の中に掲示している。記録や計画等の子ども一人ひとりの支援に必要な情報は、学園のネットワーク上ですべての職員が必要に応じて確認する事ができている。さらに、寮舎内での引き継ぎや、すべての寮舎や専門職に対して共有と周知が必要な情報を伝える会議を毎日行っている。
1.定められた手順に従ってアセスメントを行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している
- 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
- 子ども一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
- アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
2.子どもや保護者の希望と関係者の意見を取り入れた自立支援計画を作成している
- 計画は、子どもの最善の利益を第一に、子どもや保護者の希望を適切に反映して作成、見直しをしている
- 計画を子どもにわかりやすく説明し、同意を得るようにしている
- 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直すとともに、緊急に支援内容を変更する必要が生じた場合の対応や計画変更のしくみを整備している
3.子どもに関する記録を適切に作成する体制を確立している
- 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
- 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
4.子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している
- 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
- 申し送り・引継ぎ等により、子どもに変化があった場合の情報を職員間で共有化している
1.個別の自立支援計画に基づいて、自立した生活が営めるよう支援を行っている
- 個別の自立支援計画に基づいて支援を行っている
- 子ども一人ひとりに合った方法で、子どもと職員との愛着関係や信頼関係を構築するために受容的・支持的な関わりをしている
- 小規模なグループでケアを行うなど、子どもが家庭的な環境の中で生活できるよう支援を行っている
- 子どもの発達支援等のため、精神科医等が子どもの発育等に応じ個別判断した上で、児童相談所と協議し、適切な職員等が生い立ちを振り返る取り組みをしている
- 退所後の安定した生活基盤の確保に向け、関係機関や関係職員が連携をとって、リービングケア(退所後の生活を見越した支援)を行っている
- 退所後は計画に基づいて、一人ひとりに応じた支援を関係機関や関係職員と連携して行っている
【講評】
子ども一人ひとりの「自立支援計画」に基づいて日常的に支援できる仕組みをもっている
子どもたちの日常的な状況や変化については、寮舎職員が「個別記録」に毎日集約している。記録は、内容に応じて所定の分類項目ごとに紐づけて、必要に応じて課題の分析や支援等の進捗を確認する事ができる。記録を行う際には、子ども一人ひとりの「自立支援計画」で掲げた年度ごとの目標と、その目標に向けた月ごとの目標を、入力画面で確認しながら念頭において記載できるようにしている。記録は月ごとに区切られて、月末には寮舎職員による振り返りと翌月以降に向けた支援の方向性を明記している。
子ども一人ひとりに応じた自立へのさらなる支援に向けて、生活集団の小規模化を行った
子ども一人ひとりの状況や支援の検討は、毎週行う寮舎会議で話し合っている。職員個々の子どもとの関係に応じたそれぞれの対応が職員集団としての一貫した支援となるように、支援方針の一致と具体的な支援内容を共有して、すべての子どもに不安を与えない支援の提供を目指している。その中で本年度は、本園寮舎の改築により最大13名だった生活集団を最大7名に小規模化して、子ども一人ひとりへの支援を拡充できる環境を整えた。今後は、子ども一人ひとりに応じた自立への支援を新たな環境を活かしながら提供できる体制づくりが期待される。
入所の際から子どもたちの自立に向けて専門職や関係機関と連携しながら取り組んでいる
入所の際から「自立支援計画」で明示した最終的な目標(単独での自立、家庭復帰等)に向けた支援を、子どもと保護者の意向や状況等を踏まえながら積み重ねている。成育歴等から様々な困難を抱える子どもたちが増える中、必要に応じて専門職や専門機関と連携している。自分の生い立ちと向き合って整理しながら自己肯定感を獲得する作業を提供する等、子どもが自分自身の未来に前向きな気持ちで臨みながらそれぞれの自立を目指す事ができる支援に取り組んでいる。退所後も個々の計画に基づくアフターケアを提供して、それぞれの自立をサポートしている。
2.家族等との関係構築に向けた取り組みを行っている
- 家庭支援専門相談員を中心に、家族等との関係構築のための支援方針が明確にされ施設全体で共有されている
- 子どもの最善の利益を第一に子どもや保護者等の意向を確認しながら、関係機関と連携をとって、子どもと家族の関係調整に取り組んでいる
- 子どもの状況や行事等の情報を個別の連絡により保護者等に知らせている
- 保護者等との面会、外出、一時帰宅等は、状況を把握したうえで、子どもの安全に注意しながら行っている
- 養育家庭や養子縁組等の制度が有効に活用されるよう児童相談所と連携をとっている
- 入所中の子どもの家族等(里親を含む)に対し、退所後の生活を想定したさまざまな支援を行っている
【講評】
子どもそれぞれの状況に応じて、保護者・家族との関係に対する支援を提供している
入所前の面接から家庭支援専門相談員が関わり、子どもと保護者・家族の関係や家庭環境における課題の把握と支援方針の検討に児童相談所と連携しながら取り組んでいる。家庭復帰を目指す子どもには、安心と安全を確保する中で交流や外出等を積み重ねる等、家族の再統合に向けた子どもの思いや不安に寄り添いながら保護者・家族との関係づくりに取り組んでいる。学園からの自立を目指す子どもには、必要に応じて自立支援コーディネーター等がサポートしながらこれまでの家族関係に対する整理を行い、退所後の保護者・家族とのつきあい方を検討している。
子ども自身の思いや不安に寄り添って、保護者・家族との交流に取り組んでいる
児童相談所の方針に基づいて入所後に保護者・家族と交流できる場合には、子ども自身の思いや不安に寄り添った家族関係の支援に取り組んでいる。子どもとの面会や電話・手紙等のやり取りに制限のある保護者・家族に対しては、可能な範囲で子どもに関する情報を児童相談所が伝えている。子どもと直接交流できる保護者・家族に対しては、子どもが参加する学園や学校・地域の行事予定を伝えて参加をうながしている。家族で交流した際には、子どもと家族双方への事後面接で双方の様子を確認する等、関係改善への交流を積み重ねる事ができるようにしている。
家庭復帰や養育家庭に委託を行った際には関係機関と連携して生活の定着を見守っている
子どもが家庭復帰により退所する際には予め、家族が生活する地域の関係機関(学校、学童保育、子ども家庭支援センター、保健師、児童相談所等)と地域支援者会議を可能な限り開催している。会議では、退所後の生活定着に必要な支援の確認と役割分担を決める等、連携した見守り体制の構築に取り組んでいる。また、家庭復帰が困難な子どもには、里親支援専門相談員が児童相談所と養育家庭への委託について検討を行っている。委託後は、養育家庭とこまめに連携する等、子どもが安定した生活の中で成長する事ができるように取り組んでいる。
3.子どもが楽しく安心して食事ができるようにしている
- 楽しい食事となるような環境を整えている
- 食事時間は子どもの希望や生活状況に応じて対応している
- 食事の献立は、子どもの状況(食物アレルギーや疾患等に関する主治医等の指示を含む)や嗜好に応じて工夫している
- 食習慣の確立や食についての関心向上のため、関係職員と連携して食育の推進に取り組んでいる
【講評】
生活集団の小規模化により、子ども一人ひとりの寮舎職員と団らんする時間が増えた
食事は調理員が半調理した料理を各寮舎ごとに2か所あるユニット(最小生活単位)へ運び、それぞれのキッチンで仕上げている。これまで13名だった生活集団における子どもの最大定員が7名となり、食事の際に子ども一人ひとりの寮舎職員と団らんできる時間が増えた。改築前まで土日に実施していた学園全体が食堂に集まる全体食も、現在は行っていない。個別対応が必要な子どもの増加もあり、行事以外での全体食のあり方が今後の課題となっている。
子どもたちへ食事の楽しみ方を伝える献立づくりに取り組んでいる
毎年実施している「嗜好調査」や「お弁当アンケート」のほか、各寮舎持ち回りで行っている検食の記録等も参考に、子どもたちが食事を楽しみにできる献立づくりへ取り組んでいる。子どもが入所した際には、その子どもの好みに応じたデザートを手作りして当日に提供している。おせちや子どもの日の中華ちまきといった季節や時節に応じた献立、進級式等での行事食、手巻き寿司を自分でつくる等の食事イベントも実施している。学園の敷地で収穫したタケノコ、梅、あしたば、ナスといった食材を使用して話題を提供する等、食事の楽しみ方を伝えている。
子ども自身が健康な生活をつくる事ができるように「食」を通して働き掛けている
子どもが自分の健康を守れる自立へ向けた食育に取り組んでいる。アレルギーのある子どもに対しては毎年検査を行う等、医師の指示を得て対応している。子ども自身も自分のアレルギーへ対応できるように、必要な知識や具体的な対応(除去食や代替え食等)を伝えている。子どもたちへ「食」に対する意識づくりや技術習得の機会を提供していた「調理クラブ」は、コロナ禍で活動を停止している。寮舎で完全調理を行う「日曜日の朝食づくり」は継続し、調理室から提供された食材を使用して中高生が順番で調理を担って基本的な技術を習得する機会にしている。
4.子どもの健康を維持するための支援を行っている
- 入所まもない子どもの健康状態(口腔ケア、視力等)に配慮し、健康維持のための支援を行っている
- 健康に関して、子どもに理解を促す取り組みを行うとともに、子どもからの相談に応じ、必要に応じて子どもや保護者等に説明をしている
- 子どもの服薬管理は誤りがないようチェック体制の強化などのしくみを整えている
- 医療機関と連携しながら、日頃の健康管理を行い、子どもの体調に変化があったときには、速やかに対応できる体制を整えている
【講評】
子どもたちへの日常的な健康管理は看護師とともに取り組んでいる
本園の改築に伴い、児童棟に看護室を設置した。子どもが入所する際には看護師も立ち会って、一人ひとりの健康面に関する情報の把握につとめている。医療機関の利用歴も確認して、入所後の健康管理への支援を検討している。入所後は、すべての子どもに対して嘱託医による検診を提供している。就学前の子どもに対しては、歯科検診も行っている。看護師は、意識的に生活場面へ関わりながら必要に応じて医療機関への通院をつなげる等、子どもたちの健康不安に対する早期発見と早期対処に寮舎職員等と連携しながら取り組んでいる。
日常生活の中で発生する子どもたちの様々な急変へ対応する体制づくりに取り組んでいる
アレルギーを持つ子どもの急変に備えて、近隣にある病院の専門医に電話で直接相談できる体制を整えている。看護師のいる本園から離れて立地するグループホームには、熱性けいれんを発症した子どもへの対応をまとめたフローチャートを作成して、関係する職員に周知している。子どもが服用する薬は、看護師が安全に配慮して管理している。服用時に立ち会う寮舎職員が対応しやすいように準備して、1週間ごとに手渡している。今後は、体調不良の子どもに対する適切な応急処置の知識や技術をすべての寮舎職員が習得できるように取り組みたいと考えている。
子どもを含めた学園全体による「新型コロナウイルス感染拡大防止」に取り組んでいる
昨年から引き続き、今年度も「新型コロナウイルス感染拡大防止」に取り組んでいる。洗った手の洗い残しを簡単に可視化できる装置を購入して子どもたちが手洗い徹底の必要を体感できる機会を提供する等、日常の予防策(咳エチケット、手洗い、うがい、マスクの着用)実行への意識づくりに取り組んでいる。職員に三密防止等の徹底をはかる「感染拡大予防チェックリスト」のほか、「健康管理票」を作成して子どもたちへの発熱や症状の有無等を確認している。その必要に応じて医療機関でのPCR検査につなげる等、早期発見や発生予防に取り組んでいる。
5.子どもの精神面でのケアについてさまざまな取り組みを行っている
- 子どもが心の悩みや不安を相談できるように工夫している
- 性についての正しい知識と理解が得られるよう、子どもの年齢や状況に応じた説明を行っている
- 子どもの課題に応じて、心理的ケアや医療的ケアが必要な場合は、関係職員・機関と連携をとって、支援を行っている
【講評】
専門機能強化型施設として、心理職員を中心に子どもの精神面へのケアに取り組んでいる
様々な生活環境や成育歴の中で、発達面や精神面に多くの課題を抱えた子どもたちが増えている。学園では、心理療法担当職員や治療指導員といった心理職員を中心に子どもの精神面に対するケアへ取り組んでいる。心理職員は、特定の子どもに対するカウンセリングや心理療法以外にも、入所時から子どもの生活場面へ意識的に関わって、すべての子どもに対する精神的ケアの一人ひとりに応じた支援のあり方を検討している。子どもの言動やコミュニケーションの状況等を把握して、学園における専門性に基づいた支援や専門医療機関への受診等につなげている。
互いの尊厳を尊重しながら他人と生きる事を子どもが考える性教育に取り組んでいる
子どもが一人の人間として自立するために必要な、人間の尊厳を伝える性教育に取り組んでいる。子どもの性的な価値観に働き掛けて、集団生活や退所後のトラブルに備えたいと考えている。性(生)教育係は、幼児・小学校低学年・高学年・中学生ごとに横割りで学習会を開催し、年代に応じた身体と成長に関する知識を伝えている。職員が一方的に情報を伝えるのではなく、子どもたち自身が互いの尊厳を尊重しながら自分と他人との関わり方を考える時間にしている。生命の誕生から男女の性差や身体の仕組み、恋愛や互いを尊重する意味について考えている。
子どもの精神面に対するサポートに応じた社会資源や専門機関との連携も行っている
寮舎ごとに8人の職員が、最大7人の子どもからなるユニット(最小生活単位)2か所を担当している。一人の子どもに8人の職員が関わる中で様々な人間関係をつくり、時と場合に応じて子どもが相談相手を選べる環境を提供している。子どもの精神面に対するサポートには、心理療法担当職員や治療指導員のほか、定期的なカンファレンスで児童精神科医師からの協力も得ている。様々な事由から不登校状態にある子どもに対しては、対応に専門性を持った外部の団体から協力を得て対応する等、必要に応じて地域の社会資源や専門機関との連携も行っている。
6.子どもの主体性を尊重し、施設での生活が楽しく快適になるよう支援を行っている
- 居室等施設全体は、子どもの年齢や状況に応じて一人ひとりの居場所が確保され、安心、安全で快適なものとなるようにしている
- 日常生活や余暇の過ごし方は、子どもが主体的にかかわって決めている
- 行事やイベントの企画・準備は子どもとともに考え行っている
- 施設の生活ルールは子どもの意見を尊重し見直しを行っている
- 子どもが一人ひとりの希望や季節等に合った清潔な衣服を身に付けられるよう支援している
【講評】
本園で生活する小学生以上の子どもには、個室化によるプライベート空間を提供している
本園寮舎の改築工事が完了して、生活集団(ユニット)の小規模化(最大13名から7名へ)と居室の個人利用に対応した。寮舎ごとにスタッフルームを挟んで2つのユニットを配置しており、宿直の職員が同時に両ユニットの安全を見守れるようになっている。愛着形成の課題や孤立への不安への対応等から、就学前の子どもが所属する幼児寮舎は就寝時も数人単位で対応する等、敢えて個室化していない。小学生以上の子どもに対しては、将来の自立に向けて個室化した居室を提供している。居室の机や壁一面の収納スペースは、子ども自身が使い方を決めている。
子どもが自分の要望を実現したり、子ども同士が協力して活動できる機会を提供している
寮舎の「お手紙箱」には、「○○に外出したい」とか「○○が欲しい」といった要望を投書できる。要望は寮舎職員で検討を行い、可能な限り対応している。生活集団が共有するルールの変更については、寮舎の児童会で子どもたち一人ひとりが考えや思いを表明した上で合意形成に取り組んでいる。学園の小学生児童会と中高生児童会では、子ども同士が協力しながら取り組める様々なイベントや活動を提供している。他施設との交流イベントや戦争体験者の話を聞いて平和について考える等、様々な体験を得る中で自分自身の価値観を養えるように取り組んでいる。
子ども一人ひとりの特性に応じた主体性を育むさらなる取り組みが期待される
退所後の目標に向けて主体的に生活する事が難しい子どもの少なくない中で、一人ひとりの主体性を育む取り組みが課題となっている。居室を個人利用にして、室内での過ごし方を自分で考えて決めたり、一人になって自分を冷静に見つめる時間を持てる環境をつくっている。今後は、子ども一人ひとりが自分の生活に応じた内容に生活ルールをカスタマイズできるようにしたり、入所を受け入れる寮舎の子どもたちが新しい子どもに対して寮舎の生活や決まりを紹介するガイドを作成する等、自分の生活を自分でつくる経験の中で主体性を育む取り組みが期待される。
7.子ども一人ひとりに応じた学力向上・進路決定のための取り組みを行っている
- 基本的な生活習慣を確立するとともに、社会常識、社会規範及び生活知識・技術を身につけられるよう支援を行っている
- 学習環境を整備し、基礎学力の向上・学習習慣獲得のための支援を行っている
- 子どもの意欲・意思や能力に応じた学習教材・塾等を活用している
- 進路について、子どもと保護者等、学校、施設による話し合いを行っている
- 多様な選択肢を提示したうえで、子どもの最善の利益にかなった進路の自己決定ができるよう支援している
- 個別に必要な時期・状況で、職場実習や職場体験、アルバイト等の社会経験を積めるよう支援している
【講評】
子ども一人ひとりに応じた学習をサポートする環境と体制を整えている
本園寮舎の改築完了による居室の個室化で、私物の管理や居室内の清掃を行いながら自立に向けた意識づくりと自分の生活を管理する力を育み、自分の居室で学校の課題や試験勉強に集中して取り組める環境を整えた。小学校1・2年生や小学6年生等、早い段階での学習習慣づくりや節目によって生じる学習のつまづきへの対応に、大学生や教職経験のある社会人等による学習ボランティアの協力を得ながら個別学習やグループ学習を提供している。学習の進み具合や受験等の必要に応じて、一人ひとりに応じた教材の購入や通塾の機会も積極的に提供している。
子ども一人ひとりの学力や進路に対する課題に応じて取り組んでいる
成育歴や個別の特性等で、学力や進路に課題を抱える子どもたちが少なくない。不登校や学校不適応等で学習機会の確保が難しい子どもに対しては、心理療法担当職員や治療指導員、所属する学校との連携を行いながら一人ひとりに応じたサポートに取り組んでいる。不登校状態にある子どもの復学や進学を支援しているサポート校等の協力も得ている。子ども自身の特性(学習障害等)に応じては、就学先に特別支援学校も含めて検討する等、対応している。学習意欲に課題がある子どもには、自己肯定感を高めて将来へ自ら取り組める意識づくりに取り組んでいる。
子どもが自分自身の将来や進路の決定に向けて考える事ができるように取り組んでいる
子どもには、就学前から基本的生活習慣の確立や生い立ちの整理等で生活や情緒の安定をはかり、自分自身の将来に向けて取り組めるようにサポートしている。中学生にはそれぞれの将来や進路に対するイメージづくりや心構え等について、高校生には進学時に使用できる制度や独り暮らしに備えた準備等について、みんなで話しながら自分で考える事ができる時間を提供している。高校生に対しては、施設退所者に家賃補助と相談支援を行うステップアップ・ホーム事業、大学等への通学者に向けた生活支援給付金支給事業を紹介して、実際の利用につなげている。
8.地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている
- 地域の情報を収集し、子ども一人ひとりの状況に応じて活用している
- 施設の活動や行事に地域の人の参加を呼びかける等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
- 子どもに、地域と日常的に関わりながら生活していることの大切さを伝えている
【講評】
子どもが一人の住民として地域の情報を得る事ができる環境づくりに取り組んでいる
学園の子どもが通う小学校の保護者によるボランティア団体や近隣のソフトボールサークル、お祭りの準備等、地域住民による活動には職員を積極的に派遣している。地域の少年団活動には、子どもたちや職員だけではなく卒園生も参加している。学園の設備を練習会場に提供している和太鼓やフラダンス等のサークルには、職員や子どもたちも参加している。学園に対する地域住民の理解を拡げるだけではなく、自分の生活や将来に有用な体験イベントや社会資源の情報を子どもが一人の住民として得て利用につながる事ができる環境づくりにもなっている。
多種多様なボランティアを受け入れて子どもの生活と心を豊かにしている
大学生や教職経験のある学習ボランティアが、子どもたちと学習を通して交流している。陶芸ボランティアや遊びや造形のボランティア、絵本等を読み聞かせるボランティアも活動しており、子どもたちの情操を豊かにしながら交流している。近隣の里山を自然の恵みを活用しながら開拓する民間の活動にも参加して、ツリーハウスづくりや火おこしからの料理等を通じた交流も行っている。様々なボランティアとの関わりや活動への参加を得る事で、子どもたちが職員以外の多様な人たちと出会って交流できる機会を提供している。
地域の中で様々な出会いを大事にしながら生活する事の大切さを子どもたちに伝えている
コロナ禍以前には毎年、学園を会場とした夏の野外映画会や盆踊りを地域の恒例行事として開催している。その運営には住民の協力も得ており、子どもたちが地域の中で生活している事を実感できる機会となっている。地域の住宅地に所在する3つのグループホームはそれぞれに、一戸の住宅として周辺との近所づきあいに取り組んでいる。子どもが在園中の出会いを切っ掛けに学園のフレンドホームや退所する子どもが利用する市のステップアップ・ホーム事業の世話人としてつながる等、日常的な人との関わりを大事にする事の大切さを伝えている。
【講評】
個人情報の取り扱いを具体的に分かりやすく伝えるマニュアルに基づいて対応している
個人情報の取り扱いに関しては、法人の「個人情報保護規程」に則った「個人情報取り扱いマニュアル」に基づいて対応している。マニュアルでは、個人情報の定義、組織としての取り組み、個人やチームとして注意する事について、具体的に例を示しながら分かりやすく伝えている。子どもが入所する際には、学園や幼稚園・学校での子どもの写真撮影や、撮影した画像の広報誌等への使用可否について、保護者には書面で事前の確認を原則として行っている。個人情報の使用に同意が必要な場合にはその都度、確認を行って記録に残している。
生活場面における子どもの羞恥に対する配慮へのさらなる徹底が求められる
本園寮舎の改築工事が完了して、学童以上の子どもがいつでも一人になってプライバシーを確保できる居室の提供準備が整った。子ども自身の安全と安心に反しない限りにおいて、居室への入室は職員と子どもの区別なく本人の許可を必須としている。本人宛の郵便や宅配物、電話やメール等の内容を本人の許可なく確認しない事を原則としている。個別の事情や状況に応じて内容の確認が必要な場合には、その旨を説明して理解を得た上で本人から内容の提示を受けて確認するようにしている。今回の調査で伺えた、羞恥に対する配慮へのさらなる徹底が求められる。
子どもの意見を聞いて一人ひとりの自分らしさを守る支援に取り組んでいる
寮舎ごとに、子どもが悩みや要望を内緒で投書できる「お手紙箱」を設置している。投書の内容は寮舎職員の会議で検討を行い、投書した子どもの意向を踏まえて対応している。投書用紙を予め子どもに配布して投書しやすくする等の工夫が期待される。また、制服のスカート着用に違和感を持つ子どもがズボンを着用できるように学校と連携する等、子ども一人ひとりの自分らしさを守る支援を行っている。今後は、子どもの職員や学園に対する苦情や不満へ積極的に応えていく等、一人の利用者である子どもの尊厳を尊重するさらなる取り組みが期待される。
1.子どものプライバシー保護を徹底している
- 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、子どもや保護者の同意を得るようにしている
- 個人の所有物や郵便物の扱い、居室への職員の出入り等、日常の支援の中で、子どものプライバシーに配慮した支援を行っている
- 子どもの羞恥心に配慮した支援を行っている
2.サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、個人の意思を尊重している
- 「子どもの権利ノート」などにより、子どもの基本的人権について、日常生活の中でわかりやすく説明している
- 子どもが意見を表明しやすい環境をつくるなど、子どもの権利が守られるように取り組んでいる
- 子ども一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
- 施設内の子ども間の暴力・いじめ等が行われることのないよう組織的に予防・再発防止を徹底している
【講評】
業務や支援に必要な手引き等を実務と照らして見直しながら、必要に応じて活用している
日常の基本的業務や支援の考え方や要点については、「実務の手引き」にまとめている。手引きは必要に応じて実務と照らした加筆修正を行っているほか、3年ごとに職員全体で改訂している。また、ボランティアの受入れや性教育等、特別に配慮が必要な取り組みについては、さらに具体的な判断基準や対応方法について示したガイドラインを作成している。これらは学園のネットワークにつながったパソコンから確認できるほか、一冊にまとめて各寮舎にも配布して、日常的な支援や職員研修等で活用している。
職員全体で定期的に確認しながら、支援や業務水準の維持向上に取り組んでいる
毎年度、各寮舎や専門職、委員会や係等の活動ごとに方針と総括を行い、その内容を職員全体で確認している。年度初めには、前年度の実績や課題を踏まえながら当年度の方針と目標を各部署・活動ごとに決めている。年度終わりには振り返りを行い、目標の達成状況と次年度への課題を確認している。特に子どもに対する支援については月ごとに目標を設定して振り返り、年度途中での中間総括も行う等、寮舎ごとの支援水準に格差を生まない支援実務の標準化と水準の維持向上に取り組んでいる。
子どもたちからの要望を踏まえたサービスづくりに取り組む姿勢をもっている
子どもに配布される「入所のしおり」には、基本的な日課(起床就寝や食事の時間等)や集団生活におけるルールを記載している。寮舎内におけるテレビの視聴時間等の具体的な取り決めについては、寮舎職員が子どもたちと話し合いながら決めている。他の寮舎や学園全体に対して子どもから要望が上げられた際には、子どもたちと職員による児童会で話し合って対応している。今後は、子どもの生活へ直接関わる事柄(日課やルール全般等)を定期的に子どもたち自身と見直して改訂をはかる等、利用者に即したサービスづくりへのさらなる取り組みが期待される。
1.手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている
- 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
- 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
- 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
2.サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている
- 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
- 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や子ども・保護者等からの意見や提案を反映するようにしている
事業者のコメント
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【講評】
「希望が連鎖する社会」の建設に貢献することを目指し、業界全体の向上も意識している
施設では、マイナスの環境からスタートする子どもたちに対し、やりたいことがあれば実現できるよう、習い事や進学等の希望について全力で応援する姿勢を持ち、一人ひとりへの支援をおこなっている。「希望が連鎖する社会」、少なくとも「子ども時代には公平な社会」の建設のため、さまざまな制度も活用しながら支援している。一方で、制度そのものをより良い方向へと変えていく必要性も認識している。施設が位置する市は独自の支援制度を持つなど比較的充実しているが、他地域にも広がっていくよう児童部会等で働きかけていくことも重視している。
法人及び併設する二施設それぞれのガバナンス強化を目指し、組織改編を進めている
これまで、フラットな組織運営方法を採用し、全体で議論し決定していく形態を取りながら、併設する第二調布学園との一体的な運営を図ってきた。一方、制度面での人員配置の充実に伴い、過去と比較して職員数が倍増している中で、各施設において幹部が園長1人、主任1人という組織体制でマネジメントをおこなうことの限界が顕在化している。法人としてのガバナンスの強化が求められていることも含めて、統括施設長の下での各施設マネジメント層の機能分担の必要性が高まっており、現在、「同一敷地内二施設運営」への転換に向けて議論を進めている。
職員の納得感を得られるように、意見を吸い上げながら民主的な運営を図っている
二施設運営に向けて数年間かけて議論を進めてきたが、合同での運営の継続を支持した職員の意見も丁寧に吸い上げて、細部を検討していくこととしている。職員の多様な意見を尊重し、納得感のある施設運営が図れるよう、合意形成に努めている。また、本年度の議題として、例えば副施設長のポジションの新設が挙がっているが、これについては、考えられるデメリットも伝えながら2022年度の導入を管理層が提案し、職員間で議論している。民主的な組織運営を継続的に図っている。