
評価機関としての調査結果
調査時に観察したさまざまな場面の中で、調査の視点に基づいて評価機関が選定した場面
場面観察にあたっては、新型コロナ感染症により利用者の生活棟及び日中活動場所への立ち入りができないため、男女1棟づつ、同性の評価者が配膳室から食事の様子を観察して、食事前から昼食場面を観察した。利用者は配膳車の音を聞きつけ、ドアから食堂を覗いている。食事は、全員が一斉に食事するのでなく、利用者の障害特性や状況に応じて順番に職員が誘導して決まった席に座り、職員と並んで座っての食事介助、自分で食べたりしている。配膳室では、職員が利用者の嚥下状況などから、個別にトロミ、刻み、服薬の準備を行っている。
選定した場面から評価機関が読み取った利用者の気持ちの変化
男性棟の食事は、配膳の段階から利用者の障がい状況や特性に合わせて、時間差をもって食堂に誘導し、介助や見守りが必要な利用者は決まった席に誘導している。すぐに食事を摂取しようとしない利用者には、職員が辛抱強く利用者の様子からタイミングを見て、食事を口に運んでいる。また、食事のペースが早い利用者には、食事を小分けして、食べる様子を見ながら出している。これらの介助の動きの流れに利用者が慣れているためか、無理なく食事をしている様子が伺える。一方で、職員は、利用者の障害特性からか食事介助での声がけが少なく、食事を楽しんでもらう雰囲気は少なく淡々と進めているように感じられた。女性棟では、食堂のテーブルに着いた利用者に対して、職員はしゃがみ込んで目を合わせて「〇〇さん、お昼を食べますか」「手を拭いていいですか」「〇〇さん、今日はご飯、スープごはんにしますか」と話しかける際に言葉の前に「〇〇さん」と呼称を付けて話しかけている。職員が利用者に話しかけるときに 目を合わせ、言葉かけのはじめに「〇〇さん」と呼びかけることで、食事をすることを自分のこととして認識して自ら食べようという気持ちに変化したように見受けられた。
「評価機関としての調査結果」に対する事業者のコメント
男性棟は強度行動障害を有する利用者が多く、食事への気持ちが強い方や利用者間のトラブル防止を図るため、食堂への誘導を利用者のペースや座席の位置に配慮しながら行っている。食事時の声がけは他利用者へ刺激や嚥下機能低下による誤嚥を防ぎ食事へ集中できるように最小減に留めている。
女性棟は、介護を要する利用者が多いため、車椅子を使用する利用者がほとんどである。そのため、基本目線を利用者に合わせ、利用者の気持ちや体が自然的に食事に向けて意識できるよう場面毎に声をかけている。また、身体機能低下により、自身で食事を食べることが難しい方には、権利擁護の観点からなるべく「〇〇さん、次は〇〇しますか」と声をかけ、利用者の意思を確認できるように心がけている。
施設利用者の殆どが重度知的障害者であることから、利用者とのコミュニケーションや支援方針等は職員の主観ではなく客観的な記録として残し、利用者の気持ちを推察した上で支援方針をその都度見直している。