現在位置 : 福ナビホーム > 苦情対応トップ > 苦情対応の事例 > 苦情事例5

苦情対応の事例 苦情対応

苦情事例5行動援護サービスをめぐる違法な対応に是正勧告を行った
(福祉オンブズマン型)

相談内容

申出者 ---- 母親
サービス種別 ---- 行動援護
本人状況 ---- 10代の女児、知的障害

娘は重度の知的障害があり、行動援護サービスを利用していたが、女性ヘルパーの介護が必要であるにもかかわらず、時々、男性ヘルパーが介護にあたっていたようだ。また、若いヘルパーが対応していたことがあるが、行動援護従事者の資格を持っているのか。介護の日報を見せられたことがないが、日報を作成しているのか。これらの疑問と事業者への不信感から、現在、サービスの利用をやめているが、事業者の対応に納得できず、調査してほしい。

対応

事務局から事業者ヘ苦情内容及び調査事項を伝え、調査日程の調整を行った。
また、事業者調査に先立ち、今後、調査を進めていく上での参考となるよう、事業者の業務内容や法令で定める行動援護サービス基準等に関する事前情報取得のため、市の担当部署に対し、オンブズマンへの情報提供の協力依頼を行った。その後に事業者から事情聴取を行ったところ、申立人の主訴に関して次のことが判明した。
申立人の子へは、いつも同じ女性職員が担当できる日時のみサービスを提供していることが職員の活動報告書の記載内容から認められる。一度だけ男性職員が子の送迎を担当したことがあるが、その男性が行動援護サービスにまで従事したことを示す客観的な資料はなく、申立人の主張が事実であるか否かは確認できなかった。行動援護従事者の資格を持つ女性職は4名おり、各職員の活動報告書から、実際に有資格者が配置されているものと認められる。
子の行動記録は、活動報告書にサービスの提供状況として記録されているが、その記載内容は不十分で、また、活動報告書は申立人の確認をまったく得ていなかった。
本件調査を進めていく中で、事業者には、社会福祉法及び厚生労働省令等の違反行為があることが明らかとなり、そのことによって申立人は行動援護サービスの内容を把握できず、事業者が不適切な対応をしているのではないかとの不信感を持つに至ったものと思われる。よって、以下の点について是正勧告を行い、それに対して事業者から改善報告がなされた。
1点目は、書面交付義務違反であり、事業者は行動援護サービスの利用に関する契約書を取り交わしておらず、また、サービス内容の十分な説明をしていない。この点について事業者からは、「契約締結の際は、サービス内容について重要事項等を記した文書を交付し、利用申込者が十分理解し同意できるように説明する。利用者の障害特性に応じた適切な配慮をし、必要事項は契約書別紙等に記し同意を得る」等の改善報告がなされた。
2点目は、サービス提供記録の作成及び利用者の確認義務違反であり、この点について事業者からは、「提供したサービス内容等を詳細に記載するとともに、利用者又はその家族に内容の確認を得ることを職員に徹底させ、それを施設管理者が確認する」等の改善報告がなされた。
その他、サービス提供方法等についての丁寧な説明や、職員の勤務時間、職務内容、常勤・非常勤の別を明確にした勤務表を作成し、利用者が閲覧できる体制を整備する等の改善報告がされた。
以上の報告を受け、事業者が今回の苦情をきっかけとして、書面作成や説明の不備により大きな問題に発展し得ることを理解し、積極的に業務の改善に取り組む姿勢を示していることと、すでに契約書、活動報告書、シフト表及び勤務表等の書式を改め、その内容がおおむね適切であることから、今後の業務改善が期待できるものとして、この改善指置を了承した。

対応のポイント

その1 すでにサービス利用をやめている利用者との関係改善にも努力する
申立人は、事業者に対する不信感からすでにサービスの利用をやめているが、申立人との関係修復にできる限り努めるため、事業者から申立人に対し、利用当時の子の利用状況や職員の勤務体制、違反事項に対する今後の改善策等について、誠意を持って説明し、申立人の疑問に答えるよう、あわせて要望した。
その2 事業者の改善措置が確実に実行されるよう見守りの手段を講じる
苦情調査を通じて法令等に違反した事業者の実態が明らかとなり、是正勧告を受けての改善報告書が提出されたが、その後の改善状況のフォローをどうするかが課題となった。その点についてオンブズマンと事務局で協議の結果、事務局から市の担当部署に対して、是正勧告及びその改善措置報告の情報を提供し、市と東京都との指導監査の機会等を通じて、改善措置が今後も確実に継続して実行されるよう見守りを依頼した。