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苦情対応の事例 苦情対応

苦情事例3医学的な判断に口を出すなと事業者から対応を拒絶された
(苦情調整委員会型)

相談内容

申出者 ---- 本人
サービス種別 ---- 精神障害者地域活動支援センター
本人状況 ---- 50代の男性、精神障害

ルールを守らない他の利用者と言い争いになった際、自分の言い分を聞きもしないで強制的に帰宅させられた。そのことに対して管理者に苦情を言ったところ、「利用をしばらく停止する」と言われ、納得できないので委員会に相談した。

対応

申出人の訴えは、「利用者聞のトラブルであるにも関わらず、どうして自分だけが利用停止というペナルティを課されるのか分からない」というものであった。一方で、申出人は当該事業所の嘱託医でもある主治医から短期の入院治療を勧められていることについても不満を訴えていることから、事業所の対応には申出人の病状に対する判断が背景にあるものと推測された。そこで直近の委員会において、医学的なケアに十分に配慮して慎重に調査を行うとの方針が確認され、担当委員として精神保健福祉士の委員が指名された。
担当委員による申出人からの直接の聞き取り調査の後、事業者調査を実施するために事業者に連絡をしたところ、事業者は、申出人と職員との関係がこじれる中で「第三者の立場から調整をしてもらえることは大変ありがたい」 との姿勢であった。
事業者調査においては、事業者が日頃から主治医との連携をきめ細かく行っていることが確認された。本件においても主治医が「利用者間のトラブルは申出人の病状の悪化に起因するものであり、当分の問、『刺激遮断』とすることがのぞましい」と判断し、これをふまえて事業者が申出人を利用停止にしたことが分かった。
委員会では、問題の発生から主治医の判断、事業者による対応、そして申出人からの苦情申出と一連の経緯を詳しく分析する中で、申出人が「自分の言い分を聞くこともなく、一方的に利用停止の『処分』を受けた」と感じていることを重視した。そして、そのことが申出人に過大な精神的負荷と不信感を与えていることは明らかであり、医学的な判断に基づく対応であったことを含め、事業者は申出人に対して説明責任を果たしているとは言えないと判断した。
委員会では、上記の内容を結果報告書にとりまとめ、申出人の病状への影響について慎重を期すため、申出人と事業者の話合いの場を設定し、担当委員が立ち会って結果報告書の趣旨を丁寧に説明した。事業者からは説明不足があった点について謝罪の言葉があり、今後、病状を見定めて利用再開を相談したいとの申し出があった。申出人もこれに納得した。
その後、2か月ほどを経て、申出人から委員会事務局に連絡があり、「いつになったら利用再開できるのか事業者に聞いても答えようともしない。そのため利用再開はあきらめ、他の事業所を利用することにした」とのことだった。事務局から事業者に連絡したところ、事業者は「こちらは嘱託医の指示に基づいて対応しているのであり、主治医でもない委員会が指図をすることはおかしい」とのことだった。委員会としては、主治医の判断を十分に尊重し配慮した上で、事業者の対応上の問題を指摘し関係改善を依頼したものであることを繰り返し説明した。しかし、事業者の姿勢は頑なであり、申出人がすでに自ら利用再開を断念したこともあり、それ以上の対応は断念せざるを得なかった。

対応のポイント

その1 医学的な判断を目的にしないことを明確にした上で対応する
委員会には専門医が委員として参加している場合も少なくないが、その委員も苦情案件に関連して診察や診断を行う立場にはない。そもそも、苦情対応機関は医学的な判断をすることが目的ではないため、そのことを明確にした上で、福祉サービスの改善と利用者との信頼関係の回復に向けて、事業者に理解と協力を求めることが必要である