東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和6年度
サービス名称 就労継続支援B型
法人名称 一般社団法人欒団
事業所名称 らんたん
評価機関名称 特定非営利活動法人 NPO人材開発機構

コメント

利用者調査は事業所と相談の結果、全利用者と評価者の面談による聞き取り方式を基本とした。但し、当日欠席した利用者には返信用の封筒によるアンケート方式としている。事業所内に評価者の顔写真ポスターの掲示、聞き取り開始時に評価者の自己紹介など顔見知りの関係づくりに努めた。また、利用者の事業所での過ごし方、職員との関わり、作業の様子などを支援の妨げにならないように見学した。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ サービス提供のプロセス項目
 Ⅵ 利用者保護項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

□理念 1.「あそこに行けばなんとなる」と思える場であること 2.利用者の自己実現の場であり、自然と笑顔が生まれる場であること 3.利用者と共に悩み、考え、行動する職員であること 4.利用者個々人の課題を共に見つけ共に解決を目指すこと 5.職員は枠組みに囚われず、可能な限りの利用者のサポートをすること □サービス提供の考え方 通所日数及び時間、作業内容ともに利用者の意向に応じて柔軟に決定する。 日々利用者の意向を確認し、その日の体調等により可能な作業を提供するようにする。 月に一度、利用者同士及び職員が意見を交わすことのできるメンバーミーティングを設け、総意を運営に反映できるようにする。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

管理者・サービス管理責任者・生活支援員・職業指導員それぞれの職責を果たすことは当然ながら、直接処遇に関わるすべての職員はその職責の壁に関係なくすべての利用者にとって安心し相談し易い存在であること。内部・外部の研修等に積極的に参加し、さらなる専門性を培うこと。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

利用者が安心できるような職員であること。そのためにも、自分の仕事を自分で決めるのではなく、何が必要とされているかを常に考え・聞き・感じ取り行動すること。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 面談やケース会議に多くの職員が同席して利用者の情報把握に努めており、全職員で一人ひとりの利用者を支援する体制を作っている

事業所では、利用者担当制ではなく、全職員で全利用者を支援する方針としている。サービス管理責任者を施設長が兼務して計画を作成しており、利用開始後から半年毎の期間でモニタリングして見直している。計画策定にあたっては、振り返りの面談では本人と施設長及び出勤している全職員が同席して利用者の状況把握に努めており、またその後のケース会議には利用者、施設長、常勤職員が出席して計画内容を検討している。当日欠勤の職員に対しても後日必ず情報共有するようにしており、全職員で一人ひとりの利用者を理解して支援する雰囲気が出来ている。
2 利用者が地域生活を安定して送るため、子供向けミニお祭り、高齢者施設や大学のイベントの出張販売を通して地域住民との交流を図っている

事業所の開設から、地域との連携を大切にした活動を行うことで、「利用者の地域生活を安定して送る」目的を具体的に実践している。また、子供たちを対象に駄菓子や綿あめ、ポップコーン販売の土曜日のミニお祭りを開催している。自主製品のパンの製造・販売は、地域の住民が購入に訪れ、高齢者施設や地域の大学のイベントへの出張販売を利用者、職員ともども接客対応している。大学での出張販売の様子は、学芸員論文に掲載されている。さらに、今年度から希望する利用者を対象に、パソコン教室を開催しており、今後、地域への拡大を視野に入れている。
3 五感を活かしたコミュニケーションでの働きかけや顧問医相談などにより、利用者・職員間のなんでも話せる雰囲気づくりの醸成に努めている

事業所での支援体制は、受け持ち制ではなく個々の利用者を職員全体で関わる支援方式をとっている。そのため毎夕職員ミーティングで情報を共有し、支援に反映させている。利用者のわずかな変化への気づき、声かけ確認、作業状況でほめるなど、職員は五感を活かしその場の状況に応じたコミュニケーションをしている。また、顧問医相談や利用者ミーティングで、利用者が思いを表出できる機会を設けている。また、利用者が職員に相談する場合、時間など状況に応じた調整をし,確実に対応できるよう取り組むなど、何でも話せる雰囲気づくりに努めている。

さらなる改善が望まれる点
1 利用者の安全の確保に向けたリスクマネージメントにおいて、日々の支援の中にあるリスクの顕在化と災害対応の想定訓練実施が望まれる

事故報告やヒヤリハットの書式は整備されているものの、職員ミーティングで意見交換することにとどまっている。今後の取り組みとして、支援の中にひそむ様々な危険要因を発見して、その分析・改善策による再発防止への取り組みに期待される。また、火災や地震などの自然災害、感染症に対する事業継続計画は策定されて職員に周知はされている。しかし、この計画をもとにした地震や水害などを想定した職員及び利用者が参加しておこなう机上訓練で指揮命令系統や各職員の役割と配置、関係機関との連携などでさらに理解が深まる取り組みに期待される。
2 構造上限られたスペースの中で、利用者・職員の靴の履き替え及びトイレなど、整備又は履き替えについて抜本的見直しに期待したい

事業所の出入り口はパン製造と店舗及び事務所と封入などの作業場所の2か所に分かれ、室内からの往来はできない構造になっている。事務所側では室内用に履き替え、靴は外に露出した状態で置かれている。一方、店舗側は、奥の調理室へは履き替えをしているが、室内用と外用下足が区別なく一緒に置かれている。また、トイレが各1つしかなく、店舗側女性用と事務室側男性用としていることから、利用者によってはそれぞれ履き替えることへの不便を感じている。これらのことから、限られたスペース内で、衛生面や効率性を踏まえた抜本的検討を期待したい。
3 個別の鍵付きロッカーや下足用の靴箱の設置がないため、プライバシ―に配慮できるような設備や仕組み等の検討が待たれる

事業所では個人の所有物は個人管理としているが、鍵付きロッカー等の設置がなく、椅子や空きスペースに置いている状況である。他者の荷物には許可なく触らないように利用者・職員ともに周知はしているが、利用者の声から「カバンを置く所にいつも迷う」等の意見も出ている。また、室内用スリッパ置き場はあるが、下足用靴箱がなく、事業所入口外に露出したまま靴を置いている現状である。スペース上、ロッカーや靴箱の設置場所が無いとしても、椅子の下に荷物置きケース等を用意したり、もしくは、パン販売所同様に土足での入室など検討が待たれる。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1
★ 利用者の要望などは、携帯電話や顧問医相談、第三者委員の弁護士などが対応している

利用者の悩み、希望、要望を様々な視点で把握している。意思表示が難しい利用者には、通所中の様子を観察し、気が付いたことを全職員で共有して声がけするなどの対応をしている。また、通所時間以外の相談窓口として職員の携帯電話番号を知らせ、いつでも相談できる体制を整えている。生活面での相談では、必要に応じ自宅訪問を行い、家族の様子を把握して、必要に応じて介護支援期間などと連携を取っている。さらに、第三者委員に弁護士が就任して、苦情以外の法的な相談にも応じ、週1回の顧問医相談で体調や健康面を相談する機会を設けている。
関連評価項目(利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている)
2
★ 毎月の顧問精神科医相談の個別や全体の実施は、利用者や職員の安心感に繋がっている。

顧問医である精神科医師による顧問医相談を月1回定期的に実施している。全利用者毎の1か月分の処遇月誌を事前に提出することで、顧問医は一人ひとりの利用者の状況を把握した上で的確な判断を可能にしている。相談を希望する利用者への個別対応の他に、利用者全体との対話を行っている。利用者は顧問医や他の利用者の話から自己を客観視できるなど、多くの気づきが得られている。また、支援が困難なケースに対して、顧問医からアドバイスを得てより的確な支援を実施している。継続した顧問医相談の実施は、利用者や職員の安心感に繋がっている。
関連評価項目(利用者が健康を維持できるよう支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:利用者登録数18名(男性7名、女性11名、平均年齢49.4歳)を対象に3名の評価者による個別面談方式で調査を実施した。

調査方法:アンケート方式  
聞き取り調査当日には、作業スペースから離れた相談室、事務スペース2か所に分かれ、個別の聞き取り方式で面談し、当日欠席利用者には評価機関宛の返信用封筒とともにアンケート方式で調査を実施した。

利用者総数 18人
アンケートや聞き取りを行った人数 18人 (アンケート方式8人 聞き取り方式10人)
有効回答者数 11人 (アンケート方式1人 聞き取り方式10人)
回答者割合(%) 61.1%

総括
「現在利用している事業所を総合的にみて、どの程度満足していますか」との質問に対して、「大変満足」8名、「満足」3名であった。11名全員から満足感が得られた。「困ったとき職員は助けてくれている」「身の回りの設備は安心して使える」「他の利用者との交流など、仲間との関わりは楽しい」「けがをしたり、体調が悪くなった時の職員対応は信頼できる」「プライバシーを職員は守ってくれている」「サービスに関する計画を作成したり見直しをする際に、状況や要望を聞いてくれる」「不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員はきちんと対応してくれている」などの質問では全員から満足感が得られた。一方、「困った時に職員以外の人にも相談できることをわかりやすく伝えてくれている」の質問では満足度があまり高くはなかった。コメントとして、「事業所に通うことで自分が明るくなった気がしており、感謝している」「らんたんに来て仕事をするのが生きがいで助かっている。もっと他の仕事(資源回収など)もしたいです」「普段から相談を聴いてもらい、対応してもらっていてありがたい」「スタッフが見ててくれるので、ここに来るのが好きです」などのコメントがあがっている。

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたが困ったとき、職員は助けてくれていると思いますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「病院からの事務処理や、他の対応など助けてもらっている。日常では生活のリズムの相談などしている」「作業内容についてスタッフが教えてくれる」「ここの相談は家庭や子供の事も聞いてくれる。利用時間や急な変更に配慮してくれる」「大丈夫?と声かけしてくれる」などのコメントがあがっている。また、「チャイムが聞こえない時、呼びかけてもらえると助かる」といった声が一部に聞かれた。
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたの身の回りにある設備は安心して使えますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「不便に感じたことはない」「掃除して気がついた所はきれいにしたり、整理している」「大丈夫です」「危ない所はない」などのコメントがあがっている。また、「作業の場所は決まっているので、他の場所のことはわからない」「女子トイレが行き来が大変です。それが少し心配」といった声が一部に聞かれた。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたにとって、らんたんの他の利用者との交流など、仲間との関わりは楽しいですか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「他の利用者や職員とおしゃべりするのがとても楽しい」「日中活動の他に、お花見やお疲れ様会、映画などあり楽しい」「食事会やお花見など年2~3回あって楽しく参加している」「年末年始のクリスマス会、パーティーが楽しかった」「苗字、名前を教えてもらえると、もっと関わりやすい」などのコメントがあがっている。また、「他の利用者との交流は苦手です」といった声が一部に聞かれた。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 9人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「らんたんでの活動は、あなたの就労に向けた知識の習得や能力の向上に役に立っていると思いますか」との質問に、9名から「はい」の回答が得られた。「どちらともいえない」には2名の回答があった。「午後から事業所内の掃除をしており、やりがいを感じている」「就労に向け、見てもらいながら作業ができている。職員とこまめに体調や生活リズムなどの相談をしてアドバイスを得ている」「タブレットとかパンの測量は役に立つと思う。就職はできればしたい」「基本的なことを学べるのが良いなと思っている」などのコメントがあがっている。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「あなたは、工賃等の支払いのしくみについて、職員の説明がわかりやすいと思いますか」との質問に、10名から「はい」の回答が得られた。「いいえ」には1名の回答があった。「時給×働いた時間で決まり、皆勤賞がある」「一人ひとりに説明してくれる」「利用開始時に説明してくれた」などのコメントがあがっている。また、「あまりよく覚えていない」といった声が一部に聞かれた。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 8人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
「あなたは、らんたんの生活スペースは清潔で整理された空間になっていると思いますか」との質問に、8名から「はい」の回答が得られた。「どちらともいえない」には1名の回答があった。「仕事の終りや年末の大掃除があり、整理されている」「掃除は職員と一緒に仕事として担当でやる」「気にはなりません」などのコメントがあがっている。また、「ちょっと狭いから仕方ないかな」「心配なのはトイレくらいです。遠くて小さいのが気になります」「わからないです」といった声が聞かれた。
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 10人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたは、職員の言葉遣いや態度、服装などが適切だと思いますか」との質問に、10名から「はい」の回答が得られた。「どちらともいえない」には1名の回答があった。「よく声かけしてくれて、良くしてくれる」「不快に感じることはないです」「みんな優しい」「問題ないです」などのコメントがあがっている。また、「どうかな。大丈夫だけど恐い人もいる」といった声が一部に聞かれた。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたがけがをしたり、体調が悪くなったときの、職員の対応は信頼できますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「生活での健康について相談に乗ってくれる」「体調悪い時に休ませてくれたり、(早退していいよ)と言ってくれる」「作業で疲れた時、アイスノンしてくれた」「体調のことを気にかけてくれたり、ケガした時に絆創膏をくれた時は助かりました」「風邪気味で熱があった時に薬をくれた」「気分が悪かったり、しんどい時、自分からいって対応してもらってます」などのコメントがあがっている。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 8人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 3人 
「あなたは、利用者同士のいさかいやいじめ等があった場合の職員の対応は信頼できますか」との質問に、8名から「はい」の回答が得られた。「トラブルはなく、お互いに助け合っている」「そういう事はない」「多分あれば入ってくれると思う」「あまり見た事はない」「ケンカはない」などのコメントがあがっている。また、「他の利用者との交流は少ないためわからない」といった声が一部に聞かれた。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「あなたは、職員があなたの気持ちを大切にしながら対応してくれていると思いますか」との質問に、10名から「はい」の回答が得られた。「仕事をしていても常に声かけして、気をつかってくれます。嬉しいです」「アドバイスをしてくれて、いつも助かっている」「始業前や職員との時間調整して相談に対応してもらっている」「気にかけてくれているのが良くわかる」「家庭優先でしてくれる。急な変更に対応してくれる」「挨拶してくれたり、シール貼りの見本をみせてくれたり、パンの並べ方を教えてくれる」などのコメントがあがっている。
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたのプライバシー(他の人に見られたくない、聞かれたくない、知られたくないと思うこと)を職員は守ってくれていると思いますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「職員を信頼している」「場所や時間を考慮するなど、いろいろ配慮してくれる」「守秘義務があるので安心している」「いつも相談室で話すので大丈夫」などのコメントがあがっている。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたのサービスに関する計画(目標)を作成したり見直しをする際に、らんたんはあなたの状況や要望を聞いてくれますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「職員との面談で、自分を見つめ直す機会となっている」「年に2回面談があったと思う」「就活の前段階で体調管理が目標です。これができれば前向きに就活できます」「1つ1つの仕事をミスなく丁寧にすることが目標」などのコメントがあがっている。また、「目標は忘れました」「計画は知らない」といった声が一部に聞かれた。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 10人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「あなたの計画やサービス内容についての説明は、わかりやすいと思いますか」との質問に、10名から「はい」の回答が得られた。「面談はわかりやすいと思う。月1回やってくれる。近況報告みたいな感じ。人によりペースは違うみたい」「2対1で面談します。わかりやすく説明してくれる」「具体的にどうするとかも話しながら、わかりやすく説明してくれた」などのコメントがあがっている。また、「面談はしていない」といった声が一部に聞かれた。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 11人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「あなたが不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員は、きちんと対応してくれていると思いますか」との質問に、11名全員から「はい」の回答が得られた。「頼む前に対応してくれる」「不満はないです。通所時間などの調整や、イベント参加などに対応してくれる」「言ったことはないが、気軽に相談でき、対応してくれる」「疲れて休みたい時、一人で抱え込む時、わかってくれる」「頼めば聞いてくれると思う」などのコメントがあがっている。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 5人  どちらともいえない 1人  いいえ 4人  無回答・非該当 1人 
「あなたが困ったときに、職員以外の人(役所や第三者委員など)にも相談できることをわかりやすく伝えてくれましたか」との質問に、5名から「はい」の回答が得られた。「どちらともいえない」は1名、「いいえ」には4名の回答があった。「生活保護のワーカーや役所の自立支援担当職員に相談ができる」「使っている。訪問看護とか」「電話の所に貼ってある。SOS電話の案内」「たぶん聞いていると思うが忘れた」などのコメントがあがっている。また、「わかりません」「知らない」といった声が一部に聞かれた。

Ⅴ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
「あそこに行けばなんとかなる」と思ってもらえる事業所を目指して運営している

一般社団法人欒団(以下法人)が運営する就労継続支援B型事業所らんたん(以下事業所)は、令和3年に武蔵野市内に開設された。利用定員は20名で、精神障害を持つ利用者を主に対象としている。火曜から土曜を開所日とし、毎週土曜日にはミニお祭りを開催しており、地域住民や子どもたちに来所してもらって地域との関わりを築いている。「『あそこに行けばなんとかなる』と思える、道しるべとなるような場所であること。一緒にいて安心や楽しさを提供する場所であること」を理念とし、利用者の生活の安定や生産活動を通した就労訓練を支援している。

ホームページやSNSで活動の様子や予定表を公開して気軽に事業所を知る事が出来る

法人のホームページがあり、運営目的、作業紹介、予定表を簡潔に掲載している。広報誌の発行はないが、SNSでは「ミニお祭り」や自主製品のパン等の写真や予定表を掲載して活動の様子を公開しており、利用希望者が気軽に閲覧して事業所情報を得ることができる。また2種類のリーフレットを用意し、一つは事業所紹介用として、法人概要や活動内容を掲載し、市役所や相談支援事業所の他、病院や商工会に配布している。もう一つは利用希望者用として法人理念や地図、一日の流れや活動紹介の他、利用までのフローチャート図やよくある質問を載せている。

行政や相談支援事業所の紹介の他、SNSやお祭で事業所を知ってもらう機会としている

見学は、電話やメールで随時受付けており、主に施設長が担当して、事前に見学したい事項を聞き取り、個々に合った日程調整をしている。来所時には、パンフレットで事業所概要を説明後、施設内を案内して活動の様子を見てもらっている。また見学カードを記入してもらい、紹介者や希望の活動などを確認している。新規利用者は、市役所や相談支援事業所からの紹介が大半を占めているが、SNSなどを見て本人から問い合わせがあったり、保護者が事業所のお祭りに来所して事業所を知ったことから利用に繋がった例など、様々な経緯で利用者を獲得している。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
5日程度の体験利用を設定しているが、希望により30分のみの体験も可能としている

見学後に利用を希望する場合は、5日程度の体験利用をしてもらい、双方の適正を見る機会としているが、本人と相談の上、30分間のみの体験も可能としている。本人の情報を利用者の支援機関から得て体験を開始し、希望の作業、もしくは簡単な作業などから体験してもらっている。体験後に利用希望となると、契約の流れを説明して個別支援計画作成に向けての聞き取りや、どのような作業に携わりたいか、どれくらいの頻度・時間で利用するかを細かく確認している。受け入れ用可能かどうかは夕方の職員ミーティングで検討して利用の受入れを決定している。

利用開始時には、生活リズムや希望等の確認、声掛けや面談により不安軽減を図っている

契約時には本人と施設長、必要に応じて家族や相談支援専門員が同席し、重要事項説明書、契約書、契約書別紙を説明後、署名捺印をもらっている。そのほか、運営規程、工賃規程、個人情報同意書についても契約時に説明している。利用開始時には本人が安心してスタートできるよう、通所日数・時間は利用者の生活リズムや体調、作業は慣れるまで職員が近くで見守りながら、「いいね」と褒めたり、「一緒に相談しよう」など声掛けや、面談の機会を多くするなど、丁寧に対応して、利用者が安心して通所出来るように配慮している。

利用終了の際には、サービス担当者会議開催や移行先への情報提供により引き継いでいる

事業所開所が数年のため退所事例は少ないが、リハビリを優先するために退所を決めたケースでは、サービス担当者会議を開催し、相談支援専門員や主治医と情報の共有した後に退所としている。利用終了の場合は、移行先への電話や会議で情報を提供している。入院やリハビリのための退所で、福祉サービスの移行先がないケースでは、入院している利用者と電話する機会を作ったり、市役所と連携して利用できるサービスの検討をするなど、利用者の不安に寄り添っている。今後、就職のため退所するケースがあれば、アフターケアの実施を予定としている。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
フェイスシートとアセスメントシートは職員が聞き取って作成し、半年毎に更新している

個々の利用者の情報は、利用開始時に主治医からの診療情報提供書や相談支援事業所からも情報を得ている。フェイスシートとアセスメントシートは、利用開始時の面談で職員が聞き取りにより作成後、追記する形式としており、その後は半年毎の個別支援計画の更新前に見直して次の計画作成の土台としている。フェイスシートでは、「健康、生活などで困っていること」や、「事業所に望むこと」等を確認している。アセスメントシートは「将来の希望」「困っている事」「今後の生活の希望」ほか、利用の目的や日数、希望活動等を聞き取っている。

利用開始から半年毎の振り返り面談で達成度を評価し、個別支援計画を更新してる

事業所では全職員で全利用者を支援する方針としている。サービス管理責任者を施設長が兼務して計画を作成しており、利用開始後から半年毎の期間でモニタリングして見直している。振り返りの面談では、本人と施設長及び出勤している職員が同席し、達成度を評価して振り返り報告書にまとめて次期の計画に繋げている。また、アセスメントの更新も同時に実施している。利用者、施設長、常勤職員によるケース会議を実施してから施設長が個別支援計画案を作成している。入院など急に計画の変更が必要になった際には、計画作成と同じ手順で随時見直している。

日々の支援記録は処遇日誌に記録し、月毎に処遇月誌にまとめて支援を振り返っている

日々の支援の記録は、今年度からクラウド型記録ソフトを活用し始めた。「処遇日誌」に日々のケース記録をつけており、その日の記録担当者が主に入力し、他の職員が追記している。処遇日誌は月毎に「処遇月誌」としてまとめ、支援を振り返るとともに、顧問医にも閲覧してもらい助言を得ている。利用者情報は、毎朝の申し送りと、常勤職員が参加する夕方のミーティングで共有され、各利用者の気になったことや、良かったこと等を話す時間を設けている。オンラインでも情報共有している。非常勤職員には出勤時に管理者から伝えたり、書面で周知している。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
目標達成に向け職員間の情報共有を行い、利用者と共に取り組む細やかな支援をしている

事業所では、居場所づくり・生活リズムづくり・就労など、利用目的が異なる利用者個々に対して、職員全体で関わる体制で支援している。利用者に対する職員個々の見方・考え方・気づきなどの違いを出し合い、支援に反映させている。そのため、毎夕に職員ミーティングを実施し情報の共有に努めている。また、個別支援計画には達成目標に対して「本人の役割」を表記し、日常活動の中で必要時に確認を促している。その際、注意や指示をするのではなく、本人が再認識できるよう配慮し、利用者と職員が共に目標達成に取り組む細やかな支援を実施している。

五感を活かしたコミュニケーションで、利用者との信頼性が得られるよう努めている

利用者の個性や障害特性、利用目的など、個々の多様なニーズに対し、コミュニケーションを支援の重要な手段の1つとしている。毎日の職員ミーティングで声かけのタイミングや話し方の工夫などを検討し、共通した支援を実施している。日常とは異なるわずかな変化にも声かけ確認などて対応している。また、利用者がいつでも、何でも相談できる雰囲気づくりに努めている。即対応が困難な場合には、その時の事情を説明し確実な時間を約束し対応している。利用者は状況を理解し時間の約束をすることで安心して待てるなど、信頼性が得られるよう努めている。

顧問医や関係機関と連携し、情報交換を密にしながら利用者の支援に取り組んでいる

事業所では、顧問医と職員及び利用者との相談の機会を設け、支援が困難なケースに対する職員へのアドバイスや、利用者からの相談対応などを毎月実施している。また、状況により利用者の主治医と職員との情報交換もしている。相談支援事業所とは頻繁に情報交換を行い、相互に必要と思われる情報提供するなどして支援に反映させている。さらに、利用者の平均年齢が50歳に近いことから、訪問看護ステーションと連携し、利用者の事業所での活動や家庭での様子などの情報交換を行ったり、生活に関する支援など、関係機関と連携した支援に取り組んでいる。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている ×
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している -
講評
利用者の安心感や自信に繋げられるよう、利用者の意向を尊重した活動を提供している

利用開始前の見学や体験を通して、開始時には利用者の意向や障害特性などを考慮して作業の選択を行っている。人との関りが苦手、逆に皆と楽しく仕事したいなどの意向を尊重し、封入封緘や印刷作業、パンの製造や販売、清掃など、それぞれの個性が発揮できやりがいに繋がる作業を提供している。パン製造の作業では、工程を細分化して集中力の持続が難しい利用者にも達成感や自信が得られるよう配慮している。作業分担は「お願いしたいけど大丈夫?」や「声かけ」、「ほめる」ことなどで、利用者が安心して自己実現できるよう支援している。

メンバーミーティングを開催し、職員と利用者との意見交換による相互理解に努めている

事業所では、毎月第4土曜日にメンバーミーティングを開催し、利用者と職員との意見交換を実施している。その日の参加メンバーや内容により、司会進行を職員又は利用者が、書記を利用者が担当し実施している。職員から利用者へのお知らせや、作業・余暇活動・利用者同士での決め事などを検討している。作業や販売に誰が何を担当するかや困っていることなどを話し合っている。また、作業の効率化や正確性などについて話し合いするなど、利用者からの意見を反映させている。当日参加できないことから意見や提案などを事前に申し出る利用者もいる。

利用者・職員の下足置き場及び履き替えについて、整備又は抜本的見直しが望まれる

事業所の出入り口は2か所あり、封入などの作業及び事務室と、隣接するパン製造と店舗とに分かれている。封入作業室側はスリッパに履き替え、靴は外に露出した状態で置かれている。室内にはスリッパ置き場はあるが、靴の収納場所の確保は困難な状況にある。一方、パン製造作業室の出入口は、パン販売及び喫茶など店舗のため土足での入退室をしているが、店舗から調理室への移動時、明確な区分けがなく下足とスリッパが一緒に置かれている。限られたスペース内でいかに整備するか、又は履き替えの必要の有無など抜本的な見直しの必要性が望まれる。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている -
講評
本人からの相談対応や関係機関などとの連携で、利用者の健康管理に努めている

利用者の平均年齢が50歳近いことから、精神疾患以外の病気治療をしている利用者もいる。事業所では利用者の居住地域で実施している健康診断の受診を勧めており、受診結果は通院時に主治医に見せるよう説明している。健康診断受診の強制はしていないが、日常の利用者の様子や本人からの相談内容から、顧問医に報告したり主治医に連絡して対応するなどしている。さらに、相談支援事業所や訪問看護ステーションの担当者との情報交換を頻繁に行い、役割分担して利用者を精神的・身体・社会的側面から総合的に捉えて、健康維持の支援に努めている。

定期的な顧問医相談の実施により、利用者及び職員は顧問医よりアドバイスを得ている

毎月1回顧問医相談を実施し、顧問医である精神科医師が利用者及び職員の様々な相談に対応している。全利用者毎の1か月分の処遇月誌を事前に顧問医に提出して様子を把握した上で、支援が困難なケースの対応などへのアドバイスを職員に行っている。顧問医と個別に相談したい利用者には、事前に相談内容を知らせて個別対応している。また、顧問医と利用者集団での対話による相談も行っている。他の利用者や医師の話を聴くことで、気づきや自己を客観視できるようになったとの利用者の声もある。定期的な相談の実施が利用者の安心感に繋がっている。

自然災害発生等における緊急持ち出しに対して、利用者の健康情報一覧を作成している

利用者の健康に関する情報は、利用開始時の主治医からの医療情報提供書の受理や、利用者の居住地域での定期健康診断結果などの情報がある。事業所ではBCPを作成し、災害発生時の対応などの検討を行っている。健康に関しても健康情報一覧表を作成し、全利用者の情報をA4サイズ1枚ににまとめ、疾患名や主治医など記録している。事業所では、日常において利用者の服薬は自己管理としており、加えて、基礎疾患以外の病気を併発し服薬している利用者もいることから、災害避難の際、確実に服薬が必要な薬などの記載についの検討を期待したい。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
事業所と家族と相互で情報交換を行い、協働による利用者の生活支援に努めている

サービス利用開始時の家族からの情報は、個別支援計画に反映させて支援に活かしている。さらに、利用者と職員で作成した個別支援計画書の目標・本人の役割・支援内容などに対して、家族からの情報提供もあり、これらの情報を個別支援計画立案や見直しの際に参考にしている。また、日常活動において体調不良や様子が気になる場合に、家族やグループホーム職員に連絡している。逆に、家族やグループホームからの相談など相互に情報交換をしている。事業所では、利用者だけでなく、家族との信頼関係を築き、協働による利用者の生活支援に努めている。

安定した通所のため、利用者の家族を踏まえた関係機関と連携した支援に取り組んでいる

利用者の家庭での生活状況などについて、相談支援事業所と連携し、必要時には家庭訪問を行うなど生活支援をしている。利用者の多くが40~50歳以上であり、家族の高齢化もあることから、家族内での関係性が悪くなる場合もある。相談支援事業所が中心となりグループホームへの入所を提案するなどして、利用者・家族も落ち着いたケースもある。また、訪問看護ステーションとの連携により、介護が必要な両親のケースで、該当するサービス利用の説明や対応など、事業所が関係機関と連携して、家族をも踏まえた介護分野などの支援に取り組んでいる。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
利用者と年齢層の異なった地域住民との接点の機会が、生産品販売を通して拡大している

自主製品のパンなどの平日店頭販売に加え、土曜日限定で「ミニお祭り」と銘打ち、子供たちを対象に綿あめ・ポップコーンなどの駄菓子を店頭販売している。さらに、高齢者施設などでパンその他の自主製品を職員と利用者で出張販売を実施している。店頭や出張販売を通して、子供から高齢者まで様々な年齢層の地域住民と利用者が、接客での対話などを通して交流している。顧客対応に苦手な利用者は職員のフォローで安心に繋がっている。また、地域住民にとっても障害をもつ利用者と接することで、障害への理解に繋がるなど啓蒙活動の機会とも成っている。

地域の大学イベントでの出張販売や農家との野菜提携など、地域連携の輪が広がっている

地域大学の1人が顧客として店頭を訪れたことが発端で、事業所では数年前より地域の大学イベントでの出張販売を実施している。利用者及び職員にとって、出張販売でも高齢者施設とは異なる初めての体験が活動への意欲に繋がっている。さらに、大学の職員や学生にとっても、精神疾患や障害者を理解するなど、多くの学びの機会となっている。また、地域の農家と提携し、規格外の野菜や果物を安価で購入しパン製造に活かしている。従来とは異なり、新鮮な野菜を使用することで、味・香りなど品質が向上するなど、地域との連携の輪が広がっている。

  評価項目12 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
利用者自身のペースで力を発揮でき自信がもてるよう、多様な活動を提供し支援している

利用者にとって利用目的が居場所づくり・就労など様々だが、個々の利用者の個性や意向を尊重した活動を提供している。主な作業はパンやケーキの製造及び店舗・出張販売、封入・封緘・仕分け作業、依頼物の印刷、スパイス製造など多岐にわたっている。利用者によっては得意不得手があることから、職員は利用者に作業ができるか否かの確認をとるなど、マイペースで安心して作業ができ、自信をもって作業に取り組めるよう支援している。さらに、今年度より活動時間外でパソコン教室を開始し、就労を踏まえて希望する利用者へ職員が教えている。

事業所独自の商品開発や品質アップへの取り組みに、利用者の意見を反映している

事業所では地域の農家から規格外の野菜を購入し、パンの生地に刻んで入れたり、地域の他のパン製造販売店にない、事業所オリジナルのパンを製造している。さらにシフォンケーキでは、基本である材料のサラダオイルに代わる乳製品を使用するなど、常に創意工夫に取り組んでいる。さらに、土曜日の「ミニお祭り」では季節感を活かした和菓子などの製造販売をしている。また、平日には冬でも人気のかき氷を販売している。メンバーミーティングでの利用者・職員間の意見交換や、作業活動中での利用者の意見などを参考に、商品開発や品質向上に努めている。

パン製造など自主製品の販路拡大と共に、さらなる受注先の開拓に取り組んでいる

事業所のパンの製造・販売では、出張販売について売り上げが拡大しているが、店頭での販売にさらなる工夫が必要と考えている。商品の表示方法や宣伝の仕方などで、職員と利用者との意見が異なり具体的な改善には至っていない。子供向けの綿菓子作りの体験など、新たな取り組みの検討を期待したい。受注作業については、封入・封緘などの他に、馬バッジのベース作成、折鶴製作などを継続して行っている。利用者の工賃アップを図るために、都の生産活動施設応援センターに受注先の紹介依頼の登録をしており、積極的に受注先の開拓に取り組んでいる。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
法人個人情報に沿って個人情報を取り扱うほか、随時個別に同意を得て情報提供している

事業所では、法人個人情報保護規程に沿って個人情報を取り扱っている。利用者の個人情報が掲載された書類は鍵付きの棚に保管して個人情報保護に努めている。利用者とは契約時に個人情報使用同意書を得ており、サービス担当者会議や支援者間での情報共有など必要最小限に留めるとしている。そのほか個人情報の提供・使用時には、その都度個々に同意を得ている。利用者との個別面談での相談等は相談室を利用するほか、ミーティング等で利用者情報の共有時には事務所を使用し、オンライン共有時にはイニシャルを使用するなど、個人情報保護に努めている。

利用者用のロッカーや靴箱の設置がないため、安全に管理できる環境の検討が待たれる

利用者のプライバシーに配慮し、事前に得ている個人情報のうち、職員との会話の中で話題に出して欲しくない情報に関しては出さないなど配慮している。個人の所有物は個人管理としているが、鍵付きロッカー等の設置がなく、椅子や空きスペースに置いている状況である。利用者の声から「カバンを置く所にいつも迷う」等の意見も出ている。また、靴箱がなく事業所入口外に靴を置いている状況である。ロッカーや靴箱の設置スペースが無いとしても、椅子の下に荷物置きケース等を用意したり、もしくは、パン販売所同様に土足での入室など検討が待たれる。

利用者の生活習慣等は利用開始時に確認しており、個々に意思確認をもとに支援している

個々の利用者の価値観や生活習慣などは、利用開始時にフェイスシートやアセスメントで把握しており、利用者の状況に配慮して支援している。利用日数や時間は利用者ごと体調や状況を考慮して決め、作業や余暇活動、行事への参加も強制せず、利用者の希望により参加してもらっている。利用者が意思表示できる機会も用意し、「今日は○○と△△があるけどどうする?」「同じ作業が続いてるけど飽きていない?」等、小まめに確認するよう心掛けている。そのほか、利用者の意見や要望は、普段の会話や面談、毎月のメンバーミーティングで把握している。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
講評
各種マニュアルを作成してファイルに綴じて、職員が必要時に閲覧できるようにしている

事業所では各種マニュアルを作成しており、マニュアルファイルには、法人の「虐待防止マニュアル」「危機管理マニュアル」、事業所の「消防計画」「感染症対応マニュアル」「感染症症状マニュアル」のほか、授産活動の作業マニュアルも綴じて、職員が必要時に確認できるようにしている。利用者対応マニュアルとしては、障害別に疾患の特徴をまとめ、対応方針をマニュアル化している。利用者ごとの個別支援マニュアルはないが、処遇日誌の職員考察欄に「支援に気をつける」などを記載し、職員間で情報を共有して支援の統一が出来るようにしている。

マニュアルは職員の意見を聞きながら作成し、現状に合わない場合には随時見直している

マニュアル類の作成分担は、業務マニュアルについてを理事長が主に作成しており、業務を担当する職員の報告を聞きながら,意見を参考に作成している。また、業務の流れを写真に撮って視覚的に分かりやすく工夫もしている。完成したマニュアル類は、職員に配布して意見交換を行い、修正後に完成としている。法人設立から数年のため、マニュアル類の整備に取り組んでいる段階であり、見直しの時期は特に定めてはいないが、マニュアルが現状と合わない場合には、毎日の職員ミーテイングで検討するなど職員間の意見交換で随時見直しの機会を持っている。

パンなどのレシピは試食を繰り返しながら、職員や利用者の意見を参考に作成している

利用者の自主製品のマニュアル類は、各種パン作成マニュアル、スパイス作成マニュアルとしてレシピを作成している。これらは、ファイリングして調理室に設置してあり、作業中にいつでも確認できるようにしている。パン等のレシピのマニュアルは施設長が担当しており、季節の食材を取り入れて随時作成している。試食を繰り返しながら、職員や利用者の意見も取り入れてレシピを作成・見直している。また、ミニお祭り用のわたあめマニュアルやポップコーンマニュアルは写真入りで行程を説明し、利用者担当、職員担当に分けてマニュアル化している。


Ⅵ 利用者保護項目

利用者保護項目
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  評価項目3 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
講評
利用者意向を大切にした支援をもとに苦情解決体制の第三者委員に弁護士が就任している

利用者が休日や夜間などの通所時間以外でも、職員と連絡・相談できる体制が整っており、必要に応じ自宅訪問で生活面の相談にも応じている。また、月1回の顧問医と利用者との相談日が設けられ、何でも相談・発言できる機会となっている。苦情解決窓口および第三者委員や行政等の苦情解決体制は重要事項説明書に記して利用契約時に利用者に説明し、苦情解決ポスターの施設内掲示や利用者の意見箱を設置している。第三者委員は弁護士が就任しており、常に連絡が取れるよう電話番号が示されて苦情・要望とともに、法的な相談にも応じていることもある。

虐待防止委員会では、虐待を疑われるケースの確認や職員セルフチェックを実施している

法人は、法人倫理綱領及びその行動基準を定め、職員に徹底することで虐待防止に努めている。虐待防止の組織的な取り組みとして、虐待防止委員会では、「虐待の可能性がある対象者の確認」「虐待ケースと思われるケースの確認」「障害者虐待発見チェックリスト・職員セルフチェック」などを推進している。また、虐待防止に関する研修として、東京都や市が開催する虐待防止研修には職員が参加し、他の職員への伝達研修を実施している。事業所は、利用者・職員とのコミュニケーションを大切にして、何でも言い合える風通しの良い職場となっている。

日々の支援のヒヤリハット事例に気づき、その顕在化に向けた危機予知訓練に期待される

日々の支援に対する危機管理として、事故防止対策へのヒヤリハット記入書は作成しているものの、現状としてその事例は少ない。ヒヤリハットに気づく危機予知訓練などの取り組みが求められ、その事例の分析・改善する再発防止に期待される。火災や地震などの自然災害、感染症対策の「事業継続計画(BCP)」が作成し、発生時の組織体制、地域の被害想定ハザードの確認、ライフラインの復旧想定などをまとめている。また、利用者の基本情報・主治医・家族構成などをまとめた「利用者情報一覧表」を作成していつでも持ち出せるようにしている。