東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和4年度
サービス名称 指定介護老人福祉施設【特別養護老人ホーム】
法人名称 社会福祉法人三交会
事業所名称 青葉台さくら苑
評価機関名称 公益社団法人 長寿社会文化協会

コメント

*全利用者93名を対象に評価者3名が面接による聞き取り調査を行った。コロナ禍の状況の下で感染症予防の観点から、評価者3人がユニットごとに分担して当日体調的に聞き取り調査に応じられる9人に聞き取りを行い、補完調査として利用者全員の家族アンケートを実施した。*コロナ禍ではあったが、事業所の協力を得て、事前提供の資料による資料読み込みに加え、評価者3名による訪問調査を行った。*評価者3名が第三者性を担保し、担当分野についての評価の視点及び確認すべきポイントを明確にして経営層の考えを十分に把握するようにした。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1) 地域に根ざした社会福祉の実践                                                               2) あなたらしい生活と生き方の支援                                                                             3) ケアにおける「目くばり・気くばり・心くばり」の実践                                                                4) 地域のニーズに沿った取り組みの提案

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

<人物像> ①利用者の生命・健康・尊厳を守るために力を尽くす人                                                        ②利用者の気持ちに寄り添い、共感できる人間性がある人 ③専門職であるという自覚と向上心を持っている人 ④常に感謝の気持ちを持ち、礼儀正しくていねいな言葉遣いができる人

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

・社会福祉法人の職員としての自覚を持ち、高齢者、障害者、生活困窮者、また、社会的に孤立している方に対して共感を持って対応すること ・常に向上心を持ち、積極的に自己啓発すること                                   ・人の言葉を傾聴し共感することができ、チームワークを大切にすること ・地域における公益的な取り組みに関心を持ち、積極的に参加すること

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 コロナ禍における高齢者福祉施設の在り方という課題に敢然と立ち向かい、全職員の衆知を結集して感染症対策のモデルを築いている

 「地域に根ざした社会福祉の実践者」としての役割と責任を認識し、多くの高齢者施設でのクラスター発生と医療崩壊による搬送先の病院確保難に伴う高齢者施設での罹患者対応の重要性に鑑み、コロナ感染症対策に取り組んでいる。
 他施設での発生事例を検証し、マニュアル改訂、研修開催など感染予防策の周知と実践、利用者・職員の体調管理、面会の制限などコロナウィルスの持ち込み防止、早期発見・早期対応ができる仕組みの構築など、可能なかぎりの対策を実施して高齢者施設が直面する課題に敢然と立ち向かい、感染症対策のモデルを築いている。
2 管理職クラスの職員たちの、自然に表出しあう敬意と感謝の念や、利用者と交わす身振りや言葉から、施設の雰囲気の良さを感じる

本年度4回のクラスターが発生したが、施設長の陣頭指揮のもと全職員が一丸となり、一人の職員も退職することなく、惨禍を乗り越えた団結力に頭が下がる。繰り返し襲うクラスターに、毎日感染対策会議を開き、その時点でベストと考える術を検討し、トライ・アンド・エラーを積み重ねた。感染症病棟での臨床経験をもつ看護職員を中心に感染隔離マニュアルの作成、更新、現場での感染防護策を徹底するための掲示や動画活用など、独自の対応策を開発した。今後も想定されるパンデミックに向けて、本法人の知見が業界全体に普及することを願ってやまない。
3 管理栄養士が中心となって多職種と連携して、食の細い利用者の低栄養を改善し、食への関心を高めるるよう様々な工夫に取り組んでいる

管理栄養士は独自に栄養基準算定を作成し、算定表に基づき個人差を考慮した栄養目標量を検討している。毎日ラウンドして利用者から要望を直接聞いたり、状態把握を行って食形態を見直している。食の細い利用者の食への関心を高めるため、行事食や選択食で様々な工夫に取り組んでいる。行事食は毎月3~4回実施し、旬の食材を用いて季節を感じてもらえるよう配慮し、月1回主菜を2種類から選べる選択食の日は、ポスター掲示などで事前PRを行っおり、管理栄養士が中心となって低栄養の改善や食の楽しみへの関心を高める工夫に取り組んでいる。。

さらなる改善が望まれる点
1 介護福祉施設を取り巻く社会的環境整備のために更に指導的役割を果たされることを期待する

令和元年、事業所は、経営危機に直面し、急激な立て直しが求められることになった。理事長・施設長以下、経営層を一新し、経営危機に陥った要因を分析、提携関係を結んだ姉妹施設からの人的支援を求めて、経営層の強いリーダーシップの下、全職員の意識改革と連携・協力によって3年計画の事業改善計画を2年間で達成することができた。その経験は高齢者福祉施設業界にあっても貴重なものであると思われる。この成果を生きた経営学のモデルとして業界内外各層に公開し、業界の健全な発展のために指導的役割を果たされることを期待する。
2 コロナ禍にあっても家族との関係を重視し様々な媒体を用いて発信しているが、家族の要望に答えるべく尚一層の取組みを期待したい

平時には、家族が面会に訪れたときや年1回のケアプラン会議を通じて職員と家族がコミュニケーションする機会をつくっている。コロナ禍にある本年度は、広報誌やほぼ毎日更新するSNS、生活相談課からのお便り等を通して、日常生活の様子を積極的に伝えようと努力している。面会は、アクリル板越しに対面する機会やオンライン面会の機会を確保するなどした。だが家族アンケートでは、「日常生活の様子について問い合わせなくても知らせてほしい」「不満や要望を伝える機会がない」等、個別の連絡を求める声がある。要望への更なる対応を期待したい。
3 施設長が目指す介護職員が提供する生活支援や介護の質の均てん化により、入居者の個別ケアの更なる推進とQOLの向上を期待したい

管理職クラスの職員のケアに対する意識や技術が高く、知識も豊富であるのに比べて、一般職員の中には昨年度入職など経験が浅く成長の余地が大きい職員も少なくない。施設長には、介護職員の「目くばり、気くばり、心くばり」にばらつきがあることが課題であるとの認識があり、介護技術、コミュニケーション能力、レクリエーションの企画力など、介護職に必要な能力を向上し、利用者の生活支援や提供する介護の質の均てん化をはかりたいとの想いがあり、今後一層の職員への指導を期待したい。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 事業所を取り巻く環境の把握・分析を基に、実践的な経営計画を策定している

SWOT分析(強味・弱み・機会・脅威)に基づく徹底的な事業環境分析を行い、事業所が経営危機に陥った要因を、①介護人材不足の深刻化による職員確保難に伴う施設稼働率の急低下、②人材派遣・紹介会社からの人材採用や諸設備のリース契約、経営改善のためのコンサルタント契約等によるコスト高にあると分析し、①職員の確保・育成・定着、②事務費の削減、③増収に向けた取り組み、④経営組織のガバナンスの強化、の4項目を重点項目として長・中期計画を策定し、更に長・中期計画達成のために、単年度計画を策定し、目標達成を果たしている。
関連評価項目(事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している)
2 ★ ICT活用によるデータと多職種参加の朝礼や夕礼で、利用者の情報共有を徹底している

事業所は2つの方法を組み合わせて職員間連携を図っている。1つは、ケアに従事するスタッフ全員が、タブレット端末等を用いて、いつでもどこでもケア記録の入力や検索・閲覧ができること。もうひとつは、朝礼2回と夕礼等で毎日多職種が打合せをしていること。対面打合せは、情報を一方的に伝えるのではなく意見を出しあうため、利用者の状況変化に対し職種を超えて皆が共通認識をもったケアを提供できる。職員調査で、「利用者に変化があった場合の職員間における情報共有化」について、「そう思う」との回答が9割を占めた。成果の表れといえよう。
関連評価項目(利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している)
3 ★ Eコール、オンコール、嘱託医との連携、夜間かけつけ員等により緊急時に備えている

利用者の急変・窒息など迅速な対応が必要な場合に備えて、各階にAEDや吸引器、相談室に酸素ボンベを設置している。救急時は24時間嘱託医との連絡が可能であり、オンコール体制、Eコール体制、当番制の夜間かけつけ職員制度を整えている。Eコール体制は利用者への迅速な対応が必要と思われるケースを発見した職員が定められた内線へコールし、全館内に放送することで職員全員に連絡を行って駆けつけて対応するシステムである。また、利用者個々に服用役薬・既往症等を記録した緊急情報シートを作成して緊急時に備えている。
関連評価項目(利用者の健康を維持するための支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:利用者93人を対象として、当日対応可能な利用者から聞き取り調査を行った。全利用者の内訳は次の通り。男19人・女74人、平均年齢89.4歳、平均要介護度4、平均入所期間2年6か月。聞き取りに応じた利用者は男性4,女性5、要介護度3が4人,4が5人である。


調査方法:聞き取り方式  
評価者3人が分担して、当日体調的に聞き取り調査に応じられる9人に個別に聞き取りを行った。1階の共有ホールの3か所に机を配置し、他の利用者からは隔離して聞き取りを行った。
家族アンケートについては、事業所を通じて用紙を配布し、直接評価機関に郵送してもらった。

利用者総数 93人
アンケートや聞き取りを行った人数 9人
有効回答者数 9人
回答者割合(%) 9.7%

総括
【聞き取り調査】総合的満足感については、大変満足および満足が88.9%、不満は11.1%である。施設への意見・要望に関する自由意見としては、「皆さん良くしてくれるので、特にない」など全面的に評価を表す意見が4名から、「1か月に1度くらいはクラブ活動があればよい。半年に1回ぐらいは1泊旅行があればよい。」などの要望が3名から、「人手不足が目に付く。全体的に忙しそう。」との声が1名から、「外に出る機会が欲しい、自由に立って歩きたいし、自由に動きたいから満足することはない。」との声が1名から寄せられた。 【家族アンケート】総合的感想については、「利用者が大切にされていると感じているか」について「はい」が87.1%、「どちらともいえないが」4.8%、無回答が8.1%、「いいえ」はゼロである。自由意見としては、「心に寄り添ってくださっていると感じます。」など信頼を寄せているとの声が5名から、「人間ではなくものを預かっているかのようだと感じるときがある。」との苦情が1名から寄せられた。満足感については、大変満足および満足が90.4%、どちらともいえないが8.1%、不満は1.6%である。

利用者調査結果

1.食事の献立や食事介助など食事に満足しているか
はい 7人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が77.8%、「どちらともいえない」が22.2%であった。自由意見としては、「出てくるものはすべて美味しい。量も硬さも適度だ」など、評価するものが4名、「カレーが好きだがたまにしか出ない、献立は日によって違う。鶏料理や魚料理が多いが、美味しくない。味はまあまあで薄味」など、の声が3名から、「献立に満足している。介助の希望はない」など問題なしとする人が2名であった。
2.日常生活で必要な介助を受けているか
はい 7人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
「はい」が77.8%、「どちらともいえない」がゼロ、「いいえ」および「無回答・非該当」が各11.1%であった。自由意見としては、「右手に麻痺が残っているので左手でスプーンを使って自分で食べている。お風呂はていねいに介助してもらっている」など、評価するものが7名、「たまに肩が痛くて上がらない時、職員が助けてくれる。ただ理解してくれない人がたまにいるので、その時は苦しい」など、改善を求める声が1名から、「介助はいらない。自分で何でもやれる。何とかやっている。」など非該当とする人が1名であった。
3.施設の生活はくつろげるか
はい 7人  どちらともいえない 2人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が77.8%、「どちらともいえない」が22.2%であった。自由意見としては、「カントリーウェスタンミュージックを聞いている。レコードを収集している。皆さんとはコーラスをやっている。」、「一人が好き。今は描けないが絵を描いていた。ここでは自由と自然が好き。」など、評価するものが7名、「長く勤めていたので、趣味は特にない」、「こういう所ではできないものと最初から思っている。」など、どちらともいえないとする声が2名であった。
4.職員は日常的に、健康状態を気にかけているか
はい 4人  どちらともいえない 0人  いいえ 4人  無回答・非該当 1人 
「はい」が44.4%、「どちらともいえない」がゼロ、「いいえ」が44.4%、「無回答・非該当」が11.1%であった。自由意見としては、「顔色が悪いと『どうしたの』と聞いてくれる。」など、評価するものが3名、「聞かれることはない。気になることもないので話すこともない。」などの声が3名から、「もともと元気。」など非該当とする人が1名であった。
5.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 9人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
全員が「はい」と回答している。自由意見では、「いつもきれいにしてもらっている。」、「良くやってもらっている。」、「清潔にしてもらっている。」、「職員が丁寧にしてくれている。」など6名が評価の声を寄せている。
6.職員の接遇・態度は適切か
はい 9人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
全員が「はい」と回答している。自由意見では、「気持ちよくやってもらっている。」、「皆さん普通に話している。」、「言葉遣いは普通。乱暴な人はいない。」、「丁寧に話してくれる。」など6名が評価の声を寄せている。
7.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 8人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が88.9%、「どちらともいえない」が11.1%であった。自由意見としては、「ちゃんとしてくれる。お医者さんも看護師さんもいるので安心。」、「コロナに感染した時は訳が分からないまま救急車で病院に運ばれた。」、「皆さん親切です。」など、評価するものが5名、「コロナに感染した。」との声が1名であった。
8.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 6人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
「はい」が66.7%、「どちらともいえない」が11.1%、「無回答・非該当」が22.2%であった。自由意見は、「ほとんどの方は皆さんと仲良くしている。」、「好きな人としか付き合わない。職員が公平に見ているのでもめごとは起こらない。」など、評価するものが5名、「喧嘩はある。認知症の人は言っても分からない。職員は対応している。ただ、我慢できない時に言うので、『我慢してくれ』と言われると困る。それさえなければ問題ない。」など、どちらともいえないとする声が1名、「見たことがない」など非該当とする声が2名であった。
9.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 7人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が77.8%、「どちらともいえない」が11.1%、「いいえ」が11.1%であった。自由意見としては、「自分でできることはさせてもらっている。」、「皆さん大事にしてくれる。」など、評価するものが4名、「職員による。皆が理解しているとは思えない」など、どちらともいえないとする声が1名、「介護スタッフはまあまあ。NSはどこでもそうだが、きつくて横柄。」などいいえとする声が1名であった。
10.利用者のプライバシーは守られているか
はい 6人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 3人 
「はい」が66.7%、「無回答・非該当」が33.3%であった。自由意見としては、「たまに友達と話している時、『そういうことはしゃべってはダメ』と注意されることはある。」など、評価するものが1名、「そういうことは考えたことがない。」、「プライバシーは特にない。」など、非該当とする声が2名であった。
11.個別の計画作成時に、利用者や家族の状況や要望を聞かれているか
はい 2人  どちらともいえない 1人  いいえ 2人  無回答・非該当 4人 
「はい」が22.2%、「どちらともいえない」が11.1%、「いいえ」が22.2%、「無回答・非該当」が44.4%であった。自由意見としては、「実際には計画の変更はなくて済んでいる。」など、どちらともいえないが1名、「入所する時に計画書を見た。その後は見たことはない。ここのスタッフと生活について話し合いをする機会はない。」など、いいえとする声が2名から、「計画を立てていることは知らなかった。」などが2名であった。
12.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 2人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 4人 
「はい」が22.2%、「どちらともいえない」が22.2%、「いいえ」が11.1%、「無回答・非該当」が44.4%であった。自由意見としては、「入所時の説明は分かりやすかったが、その後そういう機会はない。」など、どちらともいえないが1名、「家族が説明を受けているかどうかも分からない。」など非該当とする人が1名であった。
13.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 5人  どちらともいえない 1人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
「はい」が55.6%、「どちらともいえない」が11.1%、「いいえ」が22.2%、「無回答・非該当」が11.1%であった。自由意見としては、「必要があれば伝えると思う」、「あまり希望は言わない。人によるが対応してくれると思う。」などはいとするものが2名、「職員が忙しそうなので我慢することはある。」とのどちらともいえないが1名、「団体生活なので我慢している。」、「スタッフは横柄な態度。」など、いいえとするものが2名、「不満や要望を言ったことがない。」など非該当とする人が1名であった。
14.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 3人  どちらともいえない 1人  いいえ 3人  無回答・非該当 2人 
「はい」が33.3%、「どちらともいえない」が11.1%、「いいえ」が33.3%、「無回答・非該当」が22.2%であった。自由意見としては、「相談できることは聞いているが、相談したことはない。」などはいとするものが2名、「必要がない。」など非該当とする人が2名であった。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
事業所の目指すところを明確に定め、職員、利用者、地域や社会に周知を図っている

事業所は、【①地域に根ざした社会福祉の実践②あなたらしい生活と生き方の支援③ケアにおける「目くばり・気くばり・心くばり」の実践④地域のニーズに沿った取り組みの提案】を基本方針に掲げ、職員に対しては、入職時研修に始まる諸研修・会議、職員ハンドブックの全員への配布、事業計画書・報告書の全員への配布等、利用者本人や家族に対しては、掲示物、ホームページ、パンフレット、運営会議等、地域や全国の老人福祉施設関係者に対し、ホームページ、インスタグラム等あらゆる機会を通じて発信し、周知を図っている。

リーダー層の人材育成・配置に力を入れ、事業所の目的達成に努めている

理事長が全国老人老人施設協議会副会長、東社協高齢者福祉施設部会会長を、施設長が東社協生活相談員研修委員会委員、医務課長が看護研修委員会代表幹事を務めるなど社会貢献に努めるとともに、リーダー層の人材育成・配置に力を入れ、事業所の目的達成に努めている。部課長会議、各種会議、全体会議、個人面談を通じ、経営層は自らの役割と責任を職員に表明し、事業所をリードしている。なお、職員の自己評価では、リーダー層の80%は「そう思う」としている一方、一般職員の63.3%は「そう思う」、23.3%は「わからない」としている。

重要な案件を決める手順があらかじめ決まっており、決定事項を関係者に周知している

重要な案件については、理事長・施設長/部課長会議/各部署会議から発議し、検討・決議までの定められた手順により決定している。重要な意思決定については、その内容と決定経緯に関し施設長決定事項として施設長から部課長会議・各部署会議を経てフロア会議で全職員に伝えるとともに施設内インターネット・掲示等により迅速に周知し、ホームページ・毎月の相談課からのお知らせ・さくらだよりによって利用者家族や関係者に伝えて周知を図っている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
経営危機立て直しに取り組み、事業所の環境を把握・分析し、急速に成果を上げている

事業所は、令和元年、介護人材不足とコスト増による経営危機に直面し、抜本的立て直しが必要になった。そのため、理事長・施設長以下、経営層を一新し、経営危機に陥った要因を分析、提携関係を結んだ姉妹施設からの人的支援を求めて、3年計画の事業改善計画を2年間で達成することができた。その成果を基に、令和3年度、更にSWOT分析(強味・弱み・機会・脅威)を徹底的に行い、それに基づく中期計画を策定し、理事長以下、全組織を挙げて達成に向けて邁進している。その成果を東社協主催のアクティブ福祉in東京で職員が研究発表した。

事業所を取り巻く環境の把握・分析を基に、実践的な経営計画を策定している

徹底的な事業環境分析を行い、経営危機に陥った主たる要因を、①介護人材不足の深刻化による職員確保難に伴う施設稼働率の急低下、②人材派遣・紹介会社からの人材採用や諸設備のリース契約、経営改善のためのコンサルタント契約等によるコスト高にあると分析し、①職員の確保・育成・定着、②事務費の削減、③増収に向けた取り組み、④経営組織のガバナンスの強化、の4項目を重点項目として長・中期計画を策定し、更に長・中期計画達成のために、単年度計画を策定している。

計画の着実な達成のため、事業計画の執行状況を確認している

計画の着実な達成のため、部課長会議で事業計画の執行状況を毎月確認するとともに、施設サービス部会議で稼働状況・収支状況を毎月確認し、目標管理シートを用いて各部署会議で達成状況を確認している。その結果、①施設修繕の計画的実施、②各種補助金の取得、③ICT化の活用、④連携法人とのアライアンス契約によるコスト削減、⑤技能実習生の受け入れ、⑥人材直接雇用による職員の定着育成、⑦職業訓練校への講師派遣等具体的成果につなげている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
社会人・福祉サービス事業者として守るべき規範を全職員に徹底させている

福祉サービス事業者としての社会的使命について、会議、研修、諸規程、ハンドブック、日常業務の遂行を通じて組織の末端まで周知させ、その実現に向けて取り組み、その実施状況をチェックしている。職員の自己評価においても、「私は社会人・福祉サービス事業者として守るべき法・規範・倫理を理解できている」の設問にリーダー層は100%、一般職員は93.3%が、「はい」と回答し、自分がそれを守っているとの回答も、リーダー層95%、一般職員93.3%が「はい」としていて、組織全体に高いモラルが浸透していることが伺われる。

利用者からの要望への対応や虐待防止に組織的に取り組んでいる

利用者からの要望・苦情は施設サービス部が中心となって対応し、入所時における重要事項説明書を用いての説明、意見箱の設置、ポスター掲示、職員からの気づきなどで汲み上げられた要望・苦情を、苦情会議委員会で検討・回答するとともにケアプランにも反映させている。虐待防止対策としては身体拘束廃止委員会を設け、虐待防止マニュアルの作成、職員ハンドブックの配布、身体拘束廃止・虐待防止研修の実施、「虐待の芽チェック」などにより組織的に取り組み、職員の認識を高めている。

地域社会を支える重要な専門性を有する一員として地域貢献を果たしている

地域の一員として、「さくらだより」など広報紙、おたより、ホームページ等による地域への発信のみでなく、①町会役員が事業所の評議員として在籍、②町会の災害訓練等に施設長と現場職員が参加、③地域の各種イベントへの参加、④地域住民への災害食配布、⑤各種ボランティアの受け入れと区主催「お仕事相談会」への協力、⑥介護士・看護師実習生、技能実習生受け入れ、⑦公的役職(理事長:東社協会長、施設長:町会役員・東社協職員研修会委員・区施設長会、医務課課長:東社協看護研修委員会)を引き受け、広く地域貢献を果たしている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
事故予防と感染症対策の2課題に集中してリスクマネジメントに取り組んでいる

事業所は、統括施設長のもと、情報広報室、人材対策室と並んで災害対策室を設け、災害対策室を中心に事故予防と感染症対策の2課題に集中してリスクマネジメントに取り組んでいる。事故予防に関しては、災害対策マニュアル(BCP)を策定し随時見直すとともに、災害訓練を実施して職員に周知している。コロナを中心とする感染症対策については、医務課の指導のもと、マニュアルに沿った対策と実践を通じてのマニュアルの見直しを的確に行って、クラスターの鎮静化に取り組み、成果を挙げている。

危機管理意識が高く、マニュアルの遵守と見直しが常に行われている

災害対策室を中心に、感染症対策マニュアル(BCP),災害対策マニュアル(BCP)を随時見直し、介護現場に周知し、介護現場およびそれを支える事務職を含めて多職種で危機管理体制を整えている。緊急時に備えて、日常職員間のコミュニケーションを密にするとともに、Eコール(緊急時通報)システムを各フロアに設置し、Eコールが鳴らされた時には、他のフロアからの職員も駆けつけて応援に当たる体制を整え、組織全体で安全を守る体制になっている。また、それらの実践からの気づきをその場で端末に記入し、マニュアルの見直しに活かしている。

情報の大切さを理解し、情報の収集・分析・管理・活用を行っている

理事長以下、組織全体として情報の意義・価値を理解し、内外の情報について収集・分析・管理・活用にあたっている。収集した情報は、法人文書規程に基づき事業所内共通のパソコン(ほのぼのNEXT)で管理し、使用目的ごとにアクセス権を定めて保護し、活用している。1階事務所入り口に法人運営規程・指針・パンフレット等を置き、分かりやすく作成されたホームページと合わせて外部への情報公開を行っている。ズームによる毎朝の全体申送り・特養申送り・多職種会議や夕礼を通じて事業所内のコミュニケーションと情報交流が日常行われている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
人材対策室が中心となって、人材の採用、育成、定着について計画的に行っている

経営層は、「職員の定着と能力向上による組織力向上こそが健全経営のための基本である」としてし、「利用者と職員が共にファースト」の理念を組織内に植え付けている。福祉サービスの従事者として、利用者の安全・安心・満足を守ることが重要であることは当然であるが、それを実現するためにも職員の意欲向上が不可欠であるとして、人材対策室を中心に計画的・効率的・積極的な人材採用、研修環境の整備・的確な人事評価・処遇改善・ストレスチェックや腰痛調査・社宅制度など働きやすい職場環境づくりを行い、職員の育成・定着を実現している。

的確な人事考課制度の導入、職場環境の整備など職員の意欲向上に努めている

事業所は、「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」の宣言マークを取得している。人材の育成・定着に向けての基本である人事考課表を定め、組織内に明示することにより、的確・適正な評価を可能にしている。全国老人福祉協議会の表彰職員推薦、法人内での表彰・お祝い制度などによる職員表彰、腰痛調査・ストレスチェック・精神科医による相談、上司との面談・ICT活用による職員負担軽減・希望休制の導入・社宅制度・リフレッシュ休暇など、職員の意欲向上に努めている。

内外研修の充実・職員間のコミュニケーション強化等により、組織力向上を実現している

職員定着に向けて、「介護技術・医療知識を向上させ、専門職としてのモチベーションアップを図る」ため、各委員会・各チームにおける取組について、発表までの過程での学びや達成感を感じさせるために発表の機会を設けている。職員が外部の研修を自主的に受講することを推奨し、研修後、実践で活かせる助言を上司が更に行うとともに、内部で伝達研修を実施している。朝礼や各種会議、緊急時対応など日常業務を通じ、多職種間を含め職員間のコミュニケーションが行われており、職員相互の信頼関係が築かれ、組織力向上に結びついている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ)  事業所は、令和2年初頭から全国的拡大を見せ始めた新型ウィルス(コロナ)が医療崩壊と高齢者施設でのクラスター発生など、高齢者福祉施設の経営にとって重大な脅威をもたらすものと捉え令和2年度初めから組織を挙げて感染症対策に取り組んでいる。 取り組み開始にあたって、①新型コロナウィルス感染症の感染発生、拡大を防ぐ、②感染症対策BCPを作成し、平常時と感染症発生時の対応を的確に行うとの目標をたてた。
 具体的には、褥瘡対策・感染症対策・医療ケア委員会及び医務課が中心になり、経営再建に際して姉妹関係を結んだ社会福祉法人の感染症対策マニュアル(BCP)と実践を参考に、直ちにマニュアル作りと職員研修を行い、職員全員が毎朝の検温、毎週のPCR検査を実施、利用者と接触する際の感染症対策の徹底、コロナ感染症対策強化事業補助金の活用など事務職を含め全組織を挙げて取り組んだ。その結果、令和3年度は職員には4名の感染者が出たものの、施設内でのクラスター発生はなかった。
 事業所は、コロナ対策を長期的・継続的に取り組んでいるが、令和4年7月にはクラスターが発生、10月に収束した。これらの経験から、さらに対策の継続強化を図っている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
 事業所は、常に「地域に根ざした社会福祉の実践者」としての自身の役割と責任を自覚している。そのため、コロナ感染症についても、多くの高齢者施設でのクラスター発生と医療崩壊による搬送先の病院確保難に伴う高齢者施設での罹患者対応の重要性と対策の長期化を予測して、コロナ感染症対策に取り組んでいる。
 取り組みにあたっての目標も明確であり、社会全体がこの新型ウィルスへの対応のノウハウが未熟な中、最善の取り組みを行ったものと評価できる。初期に発生した他施設での事例を検証し、感染症マニュアル作成、事務職を含む全職員が連携して定期的な感染症研修開催などによる感染予防策の周知と実践、利用者・職員の体調管理、面会の制限(オンラインでの面会導入)などコロナウィルスを外部から持ち込まないようにする、早期発見・早期対応ができる仕組みの構築、コロナ感染症対策強化事業補助金の活用など、その時点で可能なかぎりの対策を実施しているものと評価できる。
 高齢者施設が直面する課題に、試行錯誤を繰り返しつつも真摯に取り組む姿勢に深く敬意を表するとともに、理事長の公的立場からこれら取り組みを社会に公表し、より高度な対策を実現されることを期待する。
 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ)  平成10年4月設立の事業所は、平成年間末から、介護人材不足とコスト増による急激な経営危機に直面し、抜本的立て直しが必要になった。このため、事業所は、姉妹関係を結んだ社会福祉法人の全面的協力を得て令和元年10月から3年計画を策定して事業再生に取り組むことになった。途中、令和2年1月からコロナ禍対策に追われながらも、3年計画を1年早めて入居状況、職員確保・定着、安定した経営などの目標を達成し、引き続き、利用者が安心して暮らせる環境や職員が健全に働ける職場環境づくりに取り組んでいる。
 令和3年度、前記成果を踏まえ、改めてSWOT分析(強味・弱み・機会・脅威)を徹底的に行い、それに基づく新たな中期計画を策定し、「健全な経営を行うためには、利用者が安心して暮らせるよう、それをサポートする職員が、良好な職場で働く環境が必要である」ことから、重要課題として「健全な組織経営と職員教育」を掲げ、「良好な経営に結びつけるための組織体制の強化」、「課題の抽出」を目標として目標達成期間を令和3年4月~令和5年3月までに設定して、理事長以下、全組織を挙げて取り組んでいる。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
 上記取り組みの中で、「健全な経営を行うためには、利用者が安心して暮らせるよう、それをサポートする職員が、良好な職場で働く環境が必要である」ことを組織全体が共有することによって、事業再生が短期間に実現できたものと高く評価したい。
 ①組織全体で、事業再生計画を確認し、取り組み内容に対してどのような成果があったのかを確認する、②職員アンケートを実施し、職場環境の変化を評価する、③看護課・相談課などに専門職経験のある職員を新規に採用し、施設内で専門的支援を提供する、④介護リーダーとチーム編成によりケアの質を高めるなど、目に見える成果を上げることができた。
 また、令和3年度を振り返り、令和4年にはチームごとに課題を抽出し、リーダー、サブリーダーの適性や職員の適材適所などの検討を行って、新人職員教育・中堅職員教育を強化できるチーム編成を念頭にリーダーサブリーダーを刷新している。
 これらの取り組みについて、令和4年にアクティブ福祉in東京’22で研究発表を行ったことは、事業所の職員のモチベーション向上につながるのみならず、高齢者福祉施設に働く人々に対しても希望をもたらすものであると高く評価したい。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
コロナ禍で事業所情報が外部に伝わりにくいため、SNSを活用し積極的に発信している

事業所の入口にはパンフレットや法人運営規程等がおかれ、誰でも手に取れる。コロナ禍で事業所の情報が外部に伝わりにくいとの認識から、発信に力を入れている。情報広報室を設置し、ロゴマークの更新、法人パンフレットの刷新、広報誌の発行、ホームページやSNSなど、それぞれの媒体の特性を生かし多角的な発信をする。広報誌には、新人職員紹介、施設の取組み、イベント、職員コラムなどを掲載する。SNSはほぼ毎日更新、フォロワー数は2200を超えた。発信から「ご利用者の笑顔のため」を合言葉としている日常生活の雰囲気が伝わってくる。

入所希望者に速やかに入所してもらえるよう、行政と密に連絡をとっている

当施設は選ばれる事業所となることを目指し、市民からの問い合わせ窓口となる行政や地域包括支援センター等の関係機関に、広報誌の配布やSNSの案内により、事業所情報を知らせている。当施設に入所できる人は、従前は目黒区に住民登録がある人に限られていたが、行政に繰り返し要請した結果、本年度から目黒区以外の居住者にも、3部屋分の門戸が開かれ入所できるようになった。更に今後、一人暮らしで経済的に困窮する人も積極的に受け入れる方針を掲げているため、入居者の選定に関して、行政とより密接な関係づくりが必要になると思われる。

コロナ禍でも、問い合わせや見学の要望にできる限り柔軟に対応している

施設入所を検討することに後ろめたさをもつ家族がいるため、入所後本人や家族が後悔の念を抱くことがないよう、問い合わせや見学には丁寧に対応している。平時であれば施設内を時間をかけて案内し、利用者と職員のやりとりを含め暮らしの様子や生活環境などをゆっくり見学し、本人にとって適切な生活を望めるかを判断してもらいたいとの思いがある。しかしコロナ禍で難しいため、サービス内容や料金などの基本情報の説明に加えて、生活の様子をアルバムで見せたり、不安や心配な点を聞いたりしてボタンの掛け違いが生じないよう努めている。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
重要事項説明書等はケアの方針や事故リスク等、利用者目線で記載され分かりやすい

コロナ禍で入所前訪問ができないため、事前に入所関連書類を送付し、入所当日説明する。重要事項説明書や当該指針等を用いて、当事業所では、自立への支援を行い寝たきり防止につとめている方針であること、対応できない医療処置があるため退去を求める場合があること、生活施設であるため身体拘束など利用者の行動を制限する行為は原則行わないこと、事故防止につとめても事故リスクはゼロではないこと等、入所後に齟齬が生じないよう留意して説明し、同意を得ている。一連の書類は利用者目線で記載されており、ケアに対する事業所の姿勢が分かる。

利用者ごとに担当介護職員を任命し、個別性の把握と理解に努め生活環境を整えている

利用者に適した生活環境を整えるため、ケアマネジャー等の関係者からも入所前の生活状況について情報を得ている。入所時に行う入所時カンファレンスでは、本人と家族から、新しい生活への不安や要望、体調不良時や急変時の対応についての意向等を把握している。本人の意向を把握しにくい場合も、家族から性格や生活歴などを聴き取り、本人の人となりを理解するよう努めている。利用者ごとに担当介護職員を任命し、利用者の良き理解者となり、安心して生活を営む上でのパートナー的存在となることを目指しているようにみえる。

入院や転出時にはサマリーを提供。お看取りをしたときは関係職員が玄関から送っている

前年度の退所者39人の内訳は、死亡が最も多く30人で、そのうち施設内でのお看取りが19人、続いて入院8人、療養施設へ1人だった。入院や他施設への転出に際しては、本人の身体状況や生活状況についてサマリーを作成し、退所後も本人らしさを理解した支援につながるよう配慮している。施設内お看取りにあたっては、コロナ禍でも人生最終段階の大切な時を本人と家族がともに過ごせるよう、家族はガウン着用や消毒などの感染対策をしたうえで居室内に入り面会できるよう対策を講じている。お見送りは施設の玄関に職員が集まり、お別れをしている。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の施設サービス計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
施設サービス計画は、入所1ヵ月後に本人参加のケアカンファレンスを経て正式作成する

新たな利用者の施設サービス計画は、入所前に収集した本人や関係者からの情報をもとに、入所当日に暫定版を作成する。入所後は、1か月程度をめどに本人参加のケアカンファレンスを開催する。カンファレンスには、多職種が集まり、本人の言葉だけでなく表情やしぐさ等から感じていることなどを丁寧に引き出す。利用者ごとに決められた担当介護職員を中心に、各専門職はそれぞれの立場からの意見を出し合う。こうした情報をケアマネジャーが総括し、正式な施設サービス計画を作成する。ケアカンファレンスに本人が参加している実態は特筆に値する。

介護ソフトへのデータ入力と、対面打合せの双方を重視し、職員間で情報共有をしている

施設サービス計画やケア記録等、利用者一人ひとりのデータはすべて介護ソフトで一元管理する。フロアごとにパソコンとタブレット端末が配置される。音声入力やデータ検索が容易で、ケアに必要な情報を、多職種が入力したデータ含めタイムリーに入手できる。加えて、朝礼と夕礼など毎日5つの対面打合せを定期開催していることが大きな特徴である。ウェブ会議システムを利用し、それぞれの関係者が集まり、利用者の状態変化等に対応するケア方針について意見を出し合う。日常、多職種が共通認識に基づくケアの提供を重視していることが評価できる。

担当介護職員が、本人やケア提供の状況を踏まえ定期的にモニタリングと評価を行う

施設サービス計画は、原則1年に1度更新する。ほかに、退院時など生活状況に大きな変化があったときは、都度作成しなおしている。その間、介護担当職員が、計画作成後3か月ごとに目標達成状況を評価し、6カ月後にモニタリングを行う。評価やモニタリングは、介護ソフトに入力するため、他の職員も閲覧し意見交換をすることができ、日々のケアに生かしている。このような仕組みは、職員が遠慮なく意見を出し合える職場環境という当事業所の強みとあいまって、利用者を中心とする自立支援サービス提供の推進につながっているものであると評価できる。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 施設サービス計画に基づいて自立生活が営めるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 施設サービス計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者の意向や状態に応じて、生活の継続性を踏まえた支援を行っている
  標準項目3 介護支援専門員を中心に、介護、看護、リハビリ、栄養管理等の職員が連携して利用者の支援を行っている
講評
利用者ごとに介護担当職員を決め、施設サービス計画に基づく支援を実践している

利用者一人ひとりに担当介護職員を任命し、計画にもとづく支援をしている。認知症のある人は、心身の状態が不調であっても表出することが難しいケースも多い。担当職員は、利用者と毎日顔をあわせ言葉をかわすため、表情や声のトーンなどから日々の小さな変化に気づきやすい。ただ利用者調査によると質問「職員は日ごろから、あなたの身体の調子を聞いてくれるか」に「はい」との回答は4割にとどまり、その割合は、2020年からの3年間で、9割→7割→4割と年々低下している。その原因を探り対応策を講じることが望ましい。

利用者の意向や状態は入所前から把握し、継続性に配慮したケアを提供している

事業所の方針である「あなたらしい生活と生き方の支援」を実践するため、利用者の意向に応じできる限り入所前からの継続した生活を送ることができるよう、丁寧に対応している。パソコン、DVDプレイヤー、携帯電話などを自由に持ち込み楽しんでいる。利用者調査では、「タブレット端末を用いて一日中、囲碁の対局をするのが楽しみ」との回答もみられた。施設の食事が口に合わない利用者には、家族が差し入れる弁当や冷凍食品等を毎食職員が準備しているケースもあるが、利用者意向を尊重するあまり、職員に過度な負担がかかっていないか懸念される。

ケアプラン会議等のほか、毎日多職種が顔を合わせケアの留意点などを確認している

入所時カンファレンスや毎週開催されるケアプラン会議では、多職種が参加して個別の利用者への支援について話し合いをしている。ほかにも毎日多職種が集まり打合せする機会を設け、利用者支援の注意点等を確認しあっている。その成果として、職員自己評価調査結果によると、「介護支援専門員を中心に、多職種の職員が連携して利用者の支援を行っている」に「そう思う」と回答する職員はおよそ9割にのぼる。自由意見でも、多職種で話し合う機会が多く、各部署が互いに協力して問題解決や支援にあたっていることを指摘する声が散見される。

  評価項目2 食事の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態に応じた食事提供や介助を行っている
  標準項目2 利用者の栄養状態を把握し、低栄養状態を改善するよう支援を行っている
  標準項目3 嚥下能力等が低下した利用者に対して、多職種が連携し、経口での食事摂取が継続できるよう支援を行っている
講評
利用者個々の食事内容・栄養目標量を検討して個別ケアに取り組んでいる

主食は常食・軟食・粥・粥ペースト・パン・パン粥の6種類、副食は常食・一口・粗刻み・刻み・ソフト・ペーストの6種類を提供している。利用者個々の咀嚼・嚥下機能・栄養状態・ADL・疾病・食への関心・嗜好等を考慮し、一人ひとりに適した食事形態および内容を検討して食事を提供している。管理栄養士は、利用者の年齢別・性別・生活活動強度別に事業所独自の「栄養基準算定表」を作成し、この算定表に基づき荷重平均栄養量を算出し、個人差を考慮した栄養目標量について年2回、評価して見直しを行っている。

栄養ケアマネジメントの実施、多職種協働により利用者個々の食事形態を決定している

栄養ケア計画は、管理栄養士が中心となって多職種協働のカンファレンスを行い、個人別の栄養状態を判定して作成している。栄養ケアマネジメントを行うに当たっては、入所時に本人の食事の状況を観察した上で食形態について決定し、その後は1か月に1回アセスメントとモニタリングを実施、3か月に1回、スクリーニングを実施して栄養ケア計画を評価、見直している。現状継続か変更するか慎重に判断し、変更が生じる場合は、その都度、家族の意向や現場介護職からの意見、看護師からの医療的な助言、本人の要望等を擦り合わせて計画に組み入れている。

口腔ケア、誤嚥性肺炎予防に力を入れ、栄養や水分摂取の維持・増加に努めている

施設長、管理栄養士、各フロア介護職員・看護職員・厨房職員から構成される食事・口腔ケア委員会を月1回開催している。利用者からの意見や各フロアでの取り組みを共有し、より美味しい食事を提供できるよう委託業者と連携して献立に反映している。利用者の口腔機能維持のため、歯科医と連携した口腔ケアや看護師を中心とした誤嚥性肺炎の予防にも力を入れている。加齢や介護が重度化した利用者は食が細く食事量の増加は難しいため、必要に応じて栄養補助食品による摂取量の維持や水分補助対策としてゼリーを用意し摂取量の増加を図っている。

  評価項目3 利用者が食事を楽しむための工夫をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の嗜好を反映した食事を選択できる機会がある
  標準項目2 食事時間は利用者の希望に応じて、一定の時間内で延長やずらすことができる
  標準項目3 テーブルや席は、利用者の希望に応じて、一定の範囲内で選択できる
  標準項目4 配膳は、利用者の着席に合わせて行っている
講評
毎年の嗜好調査、管理栄養士による聞き取り結果を献立に反映している

食べることの楽しさや満足度の向上を目指し、嗜好調査を毎年実施し、主食の硬さ・料理の味付け・具の大きさ・全体の盛り付け・満足度等について把握している。調査への回答が口頭で可能な利用者には食事口腔ケア委員が意見を聞く等、可能な限り多くの利用者の意向の把握に努めている。また、管理栄養士が毎日ラウンドし利用者から意向や要望を直接聞き取り、利用者の状態把握を行っている。必要な場合はすぐに多職種カンファレンスを開催し食形態の検討を行って変更している。嗜好調査や聞き取り結果を基に厨房職員と連携して献立に反映している。

行事食や選択食には、食事をより楽しめるよう様々な工夫をしている

管理栄養士が中心となって行事食を毎月3~4回、選択食を月1回提供している。行事食は旬の食材を用いて、栄養成分のバランスや彩り、盛り付けなどを工夫して、利用者に季節を感じてもらえるよう心掛けている。お正月は元旦は重箱にお品書きや折り鶴の演出を加え、2日はちらし寿司、3日は中華おこわを提供して、飽きずに食べて貰えるよう味の工夫をして新年のお祝いをしている。また、月1回主菜を2種類から選べる選択食の日を設け、ポスター掲示や直接話すなど、事前PRを行って、食事への関心を高め、食事をより楽しめるよう工夫している。

食事時間や座席は利用者の希望に応じて可能な限り調整し、配膳は個別対応としている

食事時間は栄養ケアマネジメントに基づき、ゆっくり食事ができるよう早出しの実施、座位が保てない利用者への居室での食事提供など、個人の要望や状態に応じて対応している。テーブルや席は希望を聞き取り、利用者間の相性を考慮して調整している。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく食べることができるよう、温冷配膳車を利用して適温での個別配膳を行っている。家族からの差し入れについては、利用者の嚥下機能を考慮しながら管理栄養士と看護師がアドバイスして調整している。

  評価項目4 入浴の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の意向や状態を把握して、できるだけ自立性の高い入浴形態(個浴、一般浴等)を導入している
  標準項目2 入浴の誘導や介助は、利用者の羞恥心に配慮して行っている
  標準項目3 認知症の利用者に対し、個別の誘導方法を実施している
  標準項目4 利用者が入浴を楽しめる工夫をしている
講評
入浴委員会を開催し自立支援の視点を持った安全な入浴方法について検討している

フロア別介護職員・看護職員・介護支援専門員から構成される入浴委員会を月1回開催しプライバシー保護や自立支援の視点を持った安全な入浴方法について検討している。委員会が実施した研修は、中堅職員が講師となり、浴室で委員が実際にストレッチャーに乗り利用者の気持ちを感じて話し合い、より良い入浴支援につなげている。また、個浴槽を安全に活用するために手すりの位置・職員の立ち位置・誘導方法・見守り体制などを話し合い、次年度に向けてのイベント浴に浴室の飾りつけや香りについて提案している。

入浴機器を刷新し、利用者の状態に合わた入浴形態を整えている

入浴は週2回提供している。入浴形態は一般浴、入浴用車椅子に座ったまま浴槽に入る中間浴、仰臥したまま浴槽に入る機械浴の3形態を用意し、利用者の意向と状態により安全で可能な限り自立性の高い入浴を支援できるよう選択している。入浴の安全性及び快適性の向上を図るため、令和3年度に機械式の個浴および座位姿勢での浴槽をそれぞれ1台導入して、入浴機器を刷新している。入浴拒否のある利用者には、スムーズに入浴できるよう待ち時間を作らないことやフロアで統一した声かけを行っている。

利用者のプライバシー保護に努め、入浴が利用者の楽しみとなるよう工夫をしている

入浴時の職員の対応方法として、衣服の着脱の場所、脱衣の時期と裸を晒さない配慮、同性者による介助等をマニュアルに明記し、入浴時のプライバシー保護に努めている。利用者の状態や意向に合わせて入浴形態を選び、入浴順や時間の調整を行い、待ち時間の少ない快適な入浴支援を心掛けている。また、入浴が楽しみとなるよう冬至の柚子湯などのイベント浴を開催しており、次年度は浴室の飾り付けや香りを楽しめるよう企画している。利用者が姉妹で一緒に入浴することを希望する場合には柔軟に対応している。

  評価項目5 排泄の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の意向や状態に応じ、自然な排泄を促すよう支援を行っている
  標準項目2 排泄の誘導や介助は、利用者の羞恥心に配慮して行っている
  標準項目3 研修等によりオムツ交換、トイレ誘導等の排泄介助方法の向上に取り組んでいる
  標準項目4 トイレ(ポータブルトイレを含む)は衛生面や臭いに配慮し、清潔にしている
講評
利用者個々の排泄リズムを把握し、トイレでの排泄および自然排便を促している

利用者個々の排泄リズムを把握して定時の排泄誘導に加え、その人に合ったタイミングでの声かけを行っている。全居室にトイレが設置されているため積極的にトイレでの排泄を促し、利用者の身体能力を最大限に活かした排泄援助を行うため、自立で排泄できる利用者だけでなくパット交換もトイレで行い、立位を保つことで生活リハビリにつなげている。自然排便を促すため、利用者が毎日2回ラジオ体操で身体を動かすことを促し、腹部マッサージを活用している。また、牛乳や補助食品等を活用して下剤に頼らない自然排便を促している。

委員会・研修会・OJTを開催して排泄ケアの向上に努めている

排泄委員会を2か月に1回開催して排泄時間、パット・オムツの選定、研修の実施等について検討している。褥瘡予防や皮膚トラブルへの対策、利用者に合う排泄用品の選定等についてそれぞれの担当から状況報告や提案が行われている。コロナ禍以前はオムツ業者の協力による研修が定期的に開催されていたが、今年度は開催が1回に止まったため、職員は外部の研修に参加して排泄介助について学び、新入職者に対してはOJTの中で指導を行っている。適正な排泄ケア用品を使用することで利用者の皮膚トラブルの発生・予防を防ぐ排泄ケアの向上に努めている。

利用者のプライバシーを保護し、トイレの衛生環境の保持に努めている

排泄時の職員の対応方法として、「扉およびカーテンは必ず閉める」「扉およびカーテンを開けた場合にはすぐ閉める」などをマニュアルに明記し、排泄時のプライバシー保護に努めている。各居室のトイレは毎日午前と午後に清掃業者が掃除を行い、汚れた場合はその都度介護職員が清掃しゴミを回収し、スプレーを使用して臭気対策も行い衛生環境の保持に努めている。ポータブルトイレは使用の都度交換し、消臭剤を便器に入れて臭気対策を実施している。清掃業者は共用スペース、共用トイレ、廊下の清掃を毎日行っている。

  評価項目6 移動の支援は、利用者の状態や意思を反映して行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態や意向に応じ、できるだけ自力で移動できるよう支援を行っている
  標準項目2 ベッド移乗、車イスの操作など移動のための介助が安全に行われている
  標準項目3 利用者が快適に使用できるよう車イス等の環境整備が行われている
講評
可能な限り自力歩行で移動するよう支援している

利用者の状況と意向を踏まえ、機能訓練指導員と看護師による指導・助言に基づいて移動の方法を決めている。長い距離の移動が難しい場合でも、ベッドからトイレまで手引き歩行する、車椅子からテーブル席に腰をかけるまで自力で歩行するなど、自分の足で移動できるよう支援している。機能訓練指導員は利用者に合った杖、歩行器、靴を選定し、随所に休憩用のソファや椅子を配置するなど環境整備への助言を行っている。安全な移動支援のためにも、利用者の拘縮予防や可動域訓練に力を入れた生活リハビリを促している。

機能訓練指導員・看護師の指導・助言に基づいて移動・移乗方法を決めている

機能訓練指導員・看護師による指導と助言に基づきカンファレンスで、利用者の移動・移乗方法が検討されケアプランに位置づけられている。車椅子の常時利用は利用者の75%を占め、主な移動手段となっている。施設ではティルト式、フルリクライニング型、普通型の車椅子を用意し持ち込みも可能で、一人ひとりに合った車椅子が選定され、安全に利用できるよう配慮されている。移乗にはスライディングボードの他、緊急時用のレスキューシート、入浴時用のスライドシートなどを活用し利用者の安全な移乗と介護者の負担の軽減を図っている。

車椅子が安全に利用できるようマニュアルに沿って車椅子の修理・清掃を行っている

車椅子は月1回定期的に点検マニュアルに沿って、車椅子のブレーキ、空気、アームレスト、フットレストの異常、汚れがないか、点検して確認している。異常がある場合は、程度によって業者または職員による修理を行い、清掃機材を用いて清掃を行っている。各移動器具は居室担当職員が曜日を決めて清掃を行っている。担当職員は利用者が移動器具を使用する前に必ず安全確認を行い、不具合が発見された場合は修理を行っている。

  評価項目7 利用者の身体機能など状況に応じた機能訓練等を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに応じた機能訓練プログラムを作成し、評価・見直しをしている
  標準項目2 機能訓練のプログラムに日常生活の場でいかすことができる視点を入れている
  標準項目3 機能訓練指導員と介護職員等の協力のもと、日常生活の中でも機能訓練を実施している
  標準項目4 福祉用具は、定期的に使用状況の確認をし、必要に応じて対処をしている
講評
利用者が継続的に実施できる生活リハビリをケアプランに反映して実施している

利用者の機能訓練プログラムは、多職種カンファレンスで機能訓練指導員が中心となって利用者の心身の状況を確認し、自立支援を基本として、利用者が継続的に実施できる生活リハビリのプログラムを作成し、適切な機能訓練が行われるようケアプランに反映して実施している。プログラムは、ケアプランの評価・見直しが行われる際に合わせて評価・見直している。生活リハビリは利用者が日常生活において移乗時の立位訓練、排泄介助時の可動域訓練、排泄介助後の歩行訓練等の目標を挙げて、利用者が実際に鍛える内容を挙げて実施している。

多職種が協力して利用者個々に合う機能訓練を日常生活の中で実施している

自立支援の視点から日常生活でのリハビリを充実させるため、機能訓練指導員と多職種が協働して、それぞれの専門性を活かしている。ケアチェック表を基に、関節可動域訓練等身体機能訓練、座位・立位・歩行等基本動作訓練、食事・排泄等日常生活動作訓練、物理療法、作業療法、温熱療法などの現状確認を行い、利用者のADLや健康状態の変化を早期に把握し、生活リハビリの方法を定めている。生活リハビリの実施により、以前よりもADLが向上し、体力、気力の向上につながった利用者がいるとの報告もある。

理学療法や福祉用具、センサーを用いて身体機能等の維持・回復に取り組んでいる

利用者の日常生活に必要な機能の維持・回復を図るため、理学療法や福祉用具、センサーを活用している。介護度の重度化により不安定な座位やベッドでのポジショニングに対して適切な補助具やセンサーを導入している。センサーは立ち上がりや歩行が危険、体動が激しい等利用者の状況に応じて種類を決めている。OHスケールを活用して体圧分散マット、座面クッションを変更して褥瘡になりやすい利用者の皮膚観察を強化している。福祉用具の使用状況は、機能訓練指導員・介護職員・看護職員が個別に確認し、センサー類は種類・状況に応じて変更している。

  評価項目8 利用者の健康を維持するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の状態に応じた健康管理や支援を行っている
  標準項目2 服薬管理は誤りがないようチェック体制の強化などしくみを整えている
  標準項目3 利用者の状態に応じ、口腔ケアを行っている
  標準項目4 利用者の体調変化時(発作等の急変を含む)に、看護師や医療機関と速やかに連絡が取れる体制を整えている
  標準項目5 終末期の対応をすでに行っているか、行うための準備が行われている
講評
看護師が多職種と連携して利用者の健康管理・服薬管理を行っている

看護師7人によりフロア担当制としている。バイタルチェックは入所直後1週間は毎日継続、その後は週2回、体調変化時は随時行うなど、利用者の状態観察をして記録・申し送りを行い、体調変化時や健診結果は嘱託医に報告して指示を受けて対応している。服薬管理は服薬管理マニュアルを徹底して遵守し服薬チェック表を活用して行っている。一包化された内服薬は薬局から医務課に届けられる。各フロアに配る時、各フロアに届いた時、利用者への配薬時、それぞれの段階で看護師と介護職が分担したダブルチェックにより事故を防止している。

Eコール、オンコール、嘱託医との連携、夜間かけつけ員等により緊急時に備えている

利用者の急変・窒息など迅速な対応が必要な場合に備えて、各階にAEDや吸引器、相談室に酸素ボンベを設置している。救急時は24時間嘱託医との連絡が可能であり、オンコール体制、Eコール体制、当番制の夜間かけつけ職員制度を整えている。Eコール体制は利用者への迅速な対応が必要と思われるケースを発見した職員が定められた内線へコールし、全館内に放送することで職員全員に連絡が行きわたって駆けつけて対応するシステムである。また、利用者個々に内服薬・既往症等を記録した緊急情報シートを作成して緊急時に備えている。

質の高い看取りケアが提供できるよう努めている

令和3年度は19名の看取りケアに取り組んでいる。看取りケアの実施にあたり家族の不安感の緩和や家族と利用者が満足できるケアを提供するため、早期に医師が家族と面談する場を設けた。また、こまめにカンファレンスを実施し、利用者の状態の共有、今後の方針ケアの内容を検討している。看取りケア後は関わった職員に対しグリーフケアを含めた研修を実施し、問題点の抽出・改善点の検討を行った。改善点はマニュアルに反映して、質の高い看取りケアを提供できるように努めている。

  評価項目9 利用者が日々快適に暮らせるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 起床後、就寝前に更衣支援を行っている
  標準項目2 起床後に洗顔や整髪等、利用者が身だしなみを整える際に支援を行っている
  標準項目3 利用者が安定した睡眠をとることができるよう支援を行っている
講評
生活にメリハリをつけるため起床後・就寝前の更衣支援を行っている

高齢化・重度化が進み、ほとんどの利用者が介助を必要としている。自宅では終日寝間着で生活していた人、逆に就寝時に寝間着に着替えなかった人など生活習慣は様々であるが、施設では、昼間は普段着、夜間は寝間着を勧めている。居室のベットで寝たまま一日を過ごすことがないように、日中はリクライニングの車椅子に移ってリビングで過ごすよう促している。また、適度に休息をとり、快適で安楽な生活ができるようお茶などのタイミングも考えている。季節に合った衣類に着替えることができるよう家族に協力を依頼している。

利用者が快適に一日を過ごせるよう身だしなみを整える支援を行っている

起床後食事が提供されるフロアへ行く前に利用者の気持ちを尊重しながら起床を促し、声を掛けて一日が気持ちよく始められるよう配慮している。髪の毛を整え、ホットタオルを手渡して顔を拭き、服装の乱れを整えるなど業務マニュアルに沿って支援している。食後や水分補給時には利用者の口周りや手指に汚れがあればタオルで拭いていつでも清潔に過ごせるようにしている。コロナ禍以前は、月2回、理容師や美容師が施設に出張してきて訪問理美容が行われ、カット、パーマ、カラーリングを実費で受けることができたが、現在は訪問頻度を少なくしている。

夜間に安定して睡眠できるよう、日中の活動や夜間の対応を工夫している

夜間に利用者が安眠できるように、日中の余暇活動への参加を促すとともに、室温・換気・採光・騒音・臭気など居室の環境を整えている。夜勤者はこまめに巡回し、利用者が安心して眠れるよう声かけしている。利用者個々に合わせて体圧分散マットを使用し、個別の寝具の持ち込みや湯たんぽを活用して寝心地に配慮している。リラクゼーションミュージックや懐かしい唱歌など心地よいBGMを流して落ち着ける環境づくりをしている。眠れない利用者には無理にベットに誘導せずに、甘いものや温かいものを提供してフロアで過ごせるようにしている。

  評価項目10 利用者の施設での生活が楽しくなるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 施設での生活は、他の利用者への迷惑や健康面に影響を及ぼさない範囲で、利用者の意思が尊重されている
  標準項目2 利用者の意向を反映したレクリエーションを実施している
  標準項目3 認知症の利用者が落ち着いて生活できるような支援を行っている
  標準項目4 利用者の気持ちに沿った声かけや援助を行っている
講評
基本として、利用者の意思が尊重された生活が受け入れられている

利用者は一定のルールの基に利用者の意思が尊重された生活を送っている。希望すれば差し入れ・出前・飲酒は自由であるが、他の利用者に影響がないこと、職員の見守りを条件としている。食品の差し入れは、職員が形態・賞味期限・季節により生鮮食品の確認を行っている。居室に入る家具やリネン類、趣味に使用するパソコン、ラジカセ、携帯電話等を持ち込むことができる。携帯電話での通話、インターネットの活用、ネットショッピングによる書物や食品の買物など、自己管理を条件として受け入れられている。

コロナ禍の制約がある中で、クラブ活動などを創意工夫している

コロナ対策のため、クラブ活動は少人数で実施し、他の階との合同や大人数での開催は中止している。講師派遣による活動も中止し、職員が、道具をこまめに消毒、密にならない人数制限、歌を歌うレクリエーションは十分に間隔を取るなど工夫して実施している。書道クラブでは作品が地元の住区センターの作品展に展示されるため利用者は目標をもって作品作りに取り組んでいる。音楽クラブではインターネットでの新曲探しやコンサート映像鑑賞が楽しみとなっている。茶道クラブでは参加者する職員・利用者全員が浴衣を着る等の工夫を行って楽しんでいる。

認知症の症状のある利用者が落ち着いて生活できるよう様々な工夫に取り組んでいる

施設ではDBD(認知行動障害尺度)を用いて、「同じことを何度も聞く」「よく物をなくしたり、置き場所を間違えたり、隠したりする」「世話をされるのを拒否する」等、利用者個々の周辺状況の特徴を把握している。職員は利用者の主張や行動を受け入れ、利用者が納得するまで、静かに寄り添い見守っている。また、好きな歌を歌ったり、対応する職員を変えたりして、利用者の気持ちが切り替えられるよう支援している。認知症ケア実践者研修を受講した職員が多数在籍し、利用者が落ち着いて過ごせるよう様々な工夫に取り組んでいる。

  評価項目11 地域との連携のもとに利用者の生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 定期的な散歩や外食、遠出など外出の機会を設けている
  標準項目2 利用者が地域の一員として生活できるよう、地域住民が参加できるような行事など、日常的な関わりが持てる機会を設けている
  標準項目3 地域の情報を収集し、利用者の状況に応じて提供している
講評
コロナ禍で制約があるなか、利用者が施設の外の空気に触れる機会をつくっている

当施設は、目黒川沿いに立地する地の利をいかし、利用者が職員付き添いでのベランダ散歩や、桜の季節にお花見を楽しむ機会をつくり、開放感のある気分を味わえるようにしている。小学校のハロウィンプロジェクトでは、施設を訪れた仮装姿の子どもたちに職員がお菓子を渡し、利用者は玄関とベランダから手を振りあい楽しんだ。花火大会は大型のテレビモニターで鑑賞し、迫力満点で好評だった。外出が難しいなか、インターネットも積極的に活用している。利用者の出身地や思い入れのある土地の映像、懐かしい風景を楽しむ機会もつくっている。

地域社会を最大のステークホルダーと位置づけ、地域の活動に積極的に取り組んでいる

法人理事長は、社会福祉法人の最大のステークホルダーは地域社会であると明言しており、地域の人や地域の活動を大事にしている。ボランティアは利用者と地域をつなぐ役割をはたし、楽しみや生きがいであるとの考えから、ウェブ活用した体操教室や大学教員による傾聴、クリスマスの飾り付けなど、昨年度は延べ67人の参加があった。地域の人たちと共同で行う防災訓練は、災害時に不可欠とされる地域社会との連携を実現するために、地域との顔見知りの関係を築く重要な機会であるという。昨年度は法人が8回主催し、地域主催の訓練には2回参加した。

昨年の参議院議員選挙では、不在者投票所を設け、希望する入居者は投票した

当施設は東京都選挙管理委員会に指定されている施設であるため、2022年7月に行われた参議院議員選挙では、施設長が管理者として不在者投票所を設け、投票を実施した。入居者から投票希望者を募り、目黒区に報告、投票用紙の交付および投票箱を用意してもらった。入居者97人中、投票人数は27人だった。投票にあたり、職員は利用者の誘導、投票立ち合いのほか、必要に応じて代筆補助人を任命し投票をサポートした。不在者投票は、利用者が社会の一員としての認識し、日本国民の権利である参政権を行使できる機会となっている。

  評価項目12 施設と家族との交流・連携を図っている 実施状況
  標準項目1 利用者の日常の様子を定期的に家族に知らせている
  標準項目2 家族や利用者の意向に応じて、家族と職員・利用者が交流できる機会を確保している
  標準項目3 家族または家族会が施設運営に対し、要望を伝える機会を確保している
講評
入居者の様子がわかるよう、家族へお便りの送付やSNSでの発信に力を入れている

施設で暮らす利用者の日常の様子は、本年度4回発行した広報誌や、ほぼ毎日更新されるSNSなど、各種媒体を通し「ご利用者の笑顔のため」を合言葉とする明るい雰囲気が伝わってくる。相談課からのお便りは毎月送付している。ただ平時には家族とは、面会来訪時や、年1回のケアカンファレンスに本人と家族に参加してもらう機会に、職員から家族へ利用者の日ごろの様子を伝えたり、家族の要望を聞くなど意見交換しているものの、コロナ禍で家族との接点が格段に少なくなっている。職員には、家族支援が十分でないとの忸怩たる思いがある。

コロナ禍でも利用者と家族の面会の機会を工夫し、人生最終段階には特段の配慮をした

面会はコロナの感染状況に応じて、アクリル板越しの直接対面やタブレット端末を利用したオンライン面会の機会をつくり、昨年度月平均60人の面会を実現した。特に利用者の人生の最終段階は、残された家族にも悔いが残らないよう、最大限配慮をしている。カンファレンスをこまめに開き、早めに家族と医師が面談、家族とスタッフは常に本人の状態変化を共有、ケアの方針や内容を一緒に考える。面会禁止期間中でも、感染対策を十分に行い家族が本人のベッドサイドで大切な時間をともに過ごす環境を整えた。質の高い看取りケアは、職員の充足感も大きい。

再開の目途が立たない家族懇談会にかえて、家族アンケートを行い意見を聴取した

定期的に家族懇談会を実施し、施設運営、利用者の生活支援・医療についての意見交換の場をつくる予定だったが、再開の目途が立たない。そこで第三者評価実施時に、15項目について「家族調査」を実施した。総合満足感は、「大変満足」「満足」の合計が9割に達した。ただ、自由回答では、「本人の様子を問い合わせなくても知らせてほしい」「要望や不満を伝える機会がない」との声や、サービス計画やサービス内容の説明に満足していない様子がみられる。介護担当職員から家族に向けて定期的な発信をするなど、家族の要望に応える取組みが望まれる。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い、利用者のプライベートな空間への出入り等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
プライバシー保護の重要性を、職員ハンドブックや研修を通じ職員全員に周知している

プライバシーを守ることは、法人の理念を実現するうえで遵守すべきこと、社会人として生活するうえで不可欠なことであるとの信念の下、充実した倫理規定集を策定して「職員ハンドブック」の中に収め、職員全員に配布して、実践に結びつくよう研修で周知徹底している。利用者や家族には、入所時に個人情報保護に関連する書類を用いて分かりやすい説明を心がけ、同意書に署名を得ている。施設が発信する情報媒体には写真が豊富に使われているが、必要に応じて都度、本人や家族に掲載についての可否を確認し、人によりシャドーをかけるなどしている。

身体拘束防止や虐待防止に力を入れ、羞恥心に配慮した排泄・入浴ケア提供に努めている

介護施設では、利用者が弱い立場におかれやすく社会の目が入りにくいことを鑑み、職員の人権意識を育むため、虐待防止内部研修は全員参加を目標に実施している。身体拘束廃止についても、指針やマニュアルの周知徹底をはかる。多職種で構成される虐待防止委員会、身体拘束廃止委員会は、各年4回開催するほか、利用者の状況に応じて都度多職種が集まり知恵を出し合う体制としている。身体拘束ゼロが長期にわたり継続し、職員全体の意識の高さが伺える。素肌が人目に晒され羞恥心を感じやすい排泄や入浴ケアでは利用者の立場にたったケアを心がける。

利用者の意思や価値観を尊重した、生活支援やサービス提供を心掛けている

利用者調査の際、たまさか利用者の意思を尊重する場面に遭遇した。事前にヒアリング対象者としていたうちの一人が当日、「話をしたくない」との意向に変化したため中止とする旨職員から伝えられたのである。レクリエーションなど職員が企画する活動やイベントへの参加も自由で、都度本人の意向を確認している。昨年行われた参議院議員選挙では、目黒区選挙管理員会と協力し、施設内に臨時の期日前投票所を設置し、希望者が清き一票を投じる機会をサポートした。権利擁護はもとより、利用者の生活意欲や生きがいの向上につながることを願っている。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
講評
手引書は毎年見直し、変更点を赤字で記載、現場職員に周知・徹底されるよう努めている

法人や事業所には、良質のケアを提供するためのさまざまな宣言、指針、マニュアルなどが充実している。毎年見直しを行い、変更点は赤字で記載しており、一目でわかる。特にインシデント・アクシデントが発生したときは、関係者一人ひとりが振り返りや対策案を考えて記録に残し、それを踏まえリスクマネジメント委員会でも再発防止策を検討する。手引書は、緊急事態発生時に容易に取り出せるよう、全てのフロアで保管場所を統一している。現場職員がマニュアルの内容を着実に実践できるよう、管理職は適宜現場を見回り、基本を指導・確認している。

コロナ感染対策マニュアルを作成、現場で戸惑わないよう手順の掲示や動画活用を行った

コロナ禍では、オンラインを含めた研修で感染症に関する正しい知識を全職員が共有し、感染対策の徹底と早期発見、早期対応に努めた。本年度は複数回にわたりコロナのクラスター発生に見舞われたことから、看護師や介護職員等が話し合いを重ね、コロナ病棟での臨床経験をもつ看護師を中心に実態に即したコロナ感染対策マニュアルを作成し、感染状況に応じてこまめに改訂している。さらに、現場職員ができるだけ不安なく汚染区域(レッドゾーン)に入れるよう、感染防護服の着脱手順等は、イラスト入りのチャートの掲示や動画で確認できるよう工夫した。

サービスの質の向上を目指し、ICTを活用した業務の効率化と標準化に取組んでいる

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に積極的に取り組み、業務の効率化や標準化を図ることで無駄を省き、利用者へ提供するサービスの質の向上につなげたいとしている。持ち運びが容易なタブレット端末の各フロアへの配置により、利用者を見守りながら記録入力が可能になり、転倒などのアクシデント予防につながった。見守り機器の共通スペースや必要に応じた居室への設置により、異常があった場合はパソコンに通知され早期対応ができる。ネックスピーカーは、複数の職員間での迅速な情報共有ができ、緊急時に現場駆けつけに特に有効である。