東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和3年度
サービス名称 認可保育所
法人名称 社会福祉法人修敬会
事業所名称 栄保育園
評価機関名称 合同会社 フェアリンク

コメント

・利用者調査(保護者に対する書面によるアンケート調査)では、施設長名の依頼状及び調査票、返送用封筒の3点を対象者の人数分(世帯数)の封筒に封入し、園に送付のうえ、子どもの送り迎えの際に保護者に配布してもらった。
・利用者調査の一環として、担当評価者3名で午前中の保育の場面を観察した。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)基本理念の「こころでつながり~」人は1人ではなくすべての人とつながっている。自分勝手な行動を慎み、協調性をもつ。 2)保育園は子どもにとって安らげる場所“オアシス”であることを心掛ける。 3)児童福祉を永続的に提供できるよう、質の高い保育を追求していく。 4)人材育成 人を育て続けていく。 子ども・職員の自主性を伸ばし主体的な人材を育成する。 5)人としての、人間力、ヒューマンスキルを目指す。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

上からの指示がなくても自主的に考えて動ける人材。人間的魅力のある人材。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

今日1日を組織の一員として全力で、保育に業務にあたってほしい。子どもたちの育ちをしっかりと見て、この子たちが将来の社会を作るということを見据えて計画等につなげていく。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 毎月クラスごと発行する保護者向けの通信で子どもたちの生き生きした姿を伝えるとともに、保育のねらいをわかりやすく説明している

毎月、クラスごとに保護者向けの通信を発行している。全クラスの通信に法人の保育理念が記載され、テーマも統一されている。子どもたちが活動に集中する姿などを切り取った写真画像をちりばめ、園生活の様子を生き生きと伝えている。また、保育のねらいが具体的に書かれており、月の指導計画をわかりやすく説明した内容になっている。コロナ禍のもと、保護者懇談会をオンラインで実施するなど、当初想定してなかった対応を余儀なくされる中で、毎月の通信が子どもの育ちを保護者と園が共通の視点で見守る基盤を形成するためのツールになっている。
2 入園時に保護者に配布する利用案内の冊子やホームページで、苦情解決の流れや第三者委員に直接苦情を申し出る方法等を周知している

入園時に保護者に配布するB5版の園の利用案内の冊子(しおり)は、基本理念から始まり、29ページにわたって必要事項を丁寧に説明している。苦情解決制度に関しては3ページを割き、園内の苦情窓口の他、3名の第三者委員の名前と、第三者委員に直接苦情を申し出る方法等を説明している。苦情解決の流れを図に整理したページは、園のホームページにも掲載している。また、子どもの人権擁護と虐待防止の措置として、園に責任者を置くとともに、そのための体制を整えることを謳っている。
3 新型コロナウィルス対策の他、食物アレルギー対応に重点を置いて取り組んでいる

新型コロナウィルス感染症の拡大防止に向けて、保護者と子どもにも登園時のマスクの着用や検温、手指消毒等の協力を呼びかけている。幼児クラスには手洗いチェッカーを設置して、洗い残しを肉眼で確認できるようにした。子どもの送り迎えの際に保護者が立ち入ることのできるエリアの設定は各クラスの状況によって決めている。また、当園では食物アレルギーの子どもの誤食防止対策に高い優先順位を置いている。園の対応マニュアルを作成し、家庭、医療機関と子どもの状況について情報を共有しながら、各職種が連携して安全な食事の提供に努めている。

さらなる改善が望まれる点
1 法人の理念を生かし、職員同士の支え合いの関係をより太くしていくことが期待される

2018年4月に新たに民間の認可保育所として開園してから3年が経過し、法人の理念に基づく保育の本格的な展開に向けた体制が整えられてきている。その間、園舎の全面的な改築工事にともない10か月にわたる仮園舎での生活も経験してきた。苦労を共にしてきた職員の間には仲間としての意識が育っており、その職員同士の支え合いの関係、育ち合いの関係をより太くしていくことが今後の園の発展にとって何より重要と思われる。「心でつながり 未来をつくる 自分らしく 人といきたい」という基本理念が職員の間でも生かされていくことが望まれる。
2 決定事項の周知において職層間で認識のずれが生じないよう、より丁寧な説明が望まれる

法人の理事長と2か所の認可保育園の園長による会議を月1回開き、園運営に関する重要事項を決定のうえ、各園の月1回の職員会議で園長がその内容を伝えている。子どもの午睡の時間に行う職員会議には保育士、看護師、栄養士、事務員の各職種の正規職員がほぼ全員参加し、1時間程度をかけて周知事項の確認の他、子どもの状況に関する情報共有や行事の検討などをおこなっている。園長は会議に参加できない非常勤職員に対する丁寧なフォローを課題と認識しており、今後、取り組みを進める中で、職層間の認識のずれを解消していくことが期待される。
3 職員、保護者、子どもから意見やアイデアを募り、オープンな議論を通じて、子どもにとって魅力ある園庭を作り上げていくことが期待される

園舎の全面改築の中で、園庭には全面に砂利が敷き詰められ、以前あった砂場や遊具、藤棚等が撤去された。今回の利用者調査で、数名の保護者から遊具の設置についての要望が寄せられている。園も改善の必要を認識し、園庭に三角遊具を設置するなど、子どもたちが自分の体を十分に使い、様々な原体験ができる環境づくりを進める予定にしている。今後、そのためのプロジェクトチームを編成するなどして、職員、保護者の他、子どもたちからも意見やアイデアを募り、オープンな議論を通じて、子どもにとって魅力ある園庭を作り上げていくことが期待される。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 保護者に対し関係機関への通報義務の明示と子育て支援サービスの情報提供に努めている

園の利用案内の冊子(しおり)に、虐待が疑われる場合は、関連の法令に基づき、関係機関に対する通報を行う義務があることを明示している。また、保護者が育児に困った時に利用できる各種サービス(ショートステイ、ファミリーサポート、乳幼児健康支援一時預かり、ひとり親家庭ホームヘルプサービス)とその連絡先を紹介している。全国で乳幼児の虐待死の事件が後を絶たない中、当園では、子どもの保護に努める姿勢を明示するとともに、子育てを支援する様々なサービスが身近にあることを保護者に知らせている。
関連評価項目(虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:アンケートの対象は調査実施時点で在籍している子どもの保護者全員(ただし世帯単位)。2人以上の子どもが同じ通園している場合は、年齢がいちばん下の子どものクラスに関する回答を依頼。

調査方法:アンケート方式  
書面による無記名式のアンケート調査を実施。共通評価項目に対し「はい」「どちらと言えない」「いいえ」「非該当・わからない」の4つの選択肢を用意。依頼状、調査票及び専用の返信用封筒を園経由で保護者に配付し、記入後、評価機関に直接郵送してもらった。

利用者総数 112人
利用者家族総数(世帯) 93世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 93人
有効回答者数 53人
回答者割合(%) 57.0%

総括
共通評価項目に加えて、最後に園に対する総合的な感想を5段階で尋ねたところ、最上位の「大変満足」を選んだ保護者が53人中20人(約38%)、続く「満足」が27人(約51%)で、併せて9割近くに達している。保護者の満足度は概ね高い状態にあると思われる。共通評価項目に関しては、回答者の8割以上が「はい」と答えた項目が全17問中7問あり、中でも問1(子どもの発達を促す活動)、問3(食事の配慮・工夫)、問9(園内の清潔・整頓)では、9割以上が「はい」と回答している。一方、「どちらとも言えない」「いいえ」の回答が合わせて2割を超える項目が6問あり、中でも問6(安全対策)と問8(育児に関しての園との信頼関係)では、その割合が3割前後に上っている。 利用者調査の一環として、担当評価者3名が3つのクラスの午前中の散歩にそれぞれ同行し、戸外保育の様子を観察した。3~5歳児の乳児クラスでは、芝生の丘のある公園で子どもたちがのびのびと走り回り、それを保育士が見守りながら、木に話しかける子どもに応答する様子等が確認できた。一方、別のクラスでは、一部において保育士の子どもに対する接し方にやや適切さを欠く場面も見受けられた。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 50人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
実際の調査票の質問文(以下、Q):園での活動は、お子さんの心身の発達に役立っていると思いますか
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 45人  どちらともいえない 7人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
Q:園での活動は、お子さんが興味や関心を持って行えるものになっていると思いますか
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 48人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 2人 
Q:園で提供される食事・おやつは、お子さんの状態に配慮し、工夫されたものになっていると思いますか
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 44人  どちらともいえない 8人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
Q:戸外遊びや行事などにより、お子さんが自然や社会と関わる機会は十分確保されていると思いますか
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 38人  どちらともいえない 2人  いいえ 3人  無回答・非該当 10人 
Q:急な残業などであらかじめ取り決めた利用時間を変更する必要がある場合、柔軟に対応してくれていると思いますか
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 33人  どちらともいえない 11人  いいえ 5人  無回答・非該当 4人 
Q:安全対策が十分取られていると思いますか
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 37人  どちらともいえない 9人  いいえ 2人  無回答・非該当 5人 
Q:行事の日程は参加しやすいように十分な配慮がされていると思いますか
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 39人  どちらともいえない 11人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
Q:お子さんの気持ちや様子・子育てなどについて職員と話したり相談することができるような信頼関係があると思いますか
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 52人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
Q:園内は清潔で整理された空間になっていると思いますか
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 44人  どちらともいえない 8人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
Q:あなたは、職員の言葉遣いや態度、身だしなみなどが適切だと思いますか
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 42人  どちらともいえない 8人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
Q:子どもがけがをしたり、体調が悪くなったときの、職員の対応は信頼できますか
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 25人  どちらともいえない 10人  いいえ 2人  無回答・非該当 16人 
Q:子ども同士のトラブルやいじめ等があった場合の職員の対応は信頼できますか
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 46人  どちらともいえない 5人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
Q:あなたは、職員がお子さんの気持ちを大切にしながら対応してくれていると思いますか
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 39人  どちらともいえない 6人  いいえ 1人  無回答・非該当 7人 
Q:あなたやお子さんのプライバシー(他の人に見られたくない、聞かれたくない、知られたくないと思うこと)を職員は守ってくれていると思いますか
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 41人  どちらともいえない 9人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
Q:お子さんの保育内容に関する説明は、わかりやすいと思いますか
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 31人  どちらともいえない 9人  いいえ 2人  無回答・非該当 11人 
Q:あなたが不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員は、きちんと対応してくれていると思いますか
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 20人  どちらともいえない 4人  いいえ 9人  無回答・非該当 20人 
Q:あなたが困ったときに、職員以外の人(役所や第三者委員など)にも相談できることをわかりやすく伝えてくれましたか

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている ×
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
工事期間中の苦労を乗り越え、新園舎にて法人の目指す保育の展開を図る体制を整えた

公立園の民営化の方針に則って当法人が市より事業譲渡を受け、2018年度より民間の認可保育所として再出発した。2019年12月には園舎の全面改築工事が始まり、その間、約10か月は敷地内の仮設園舎で苦労しながら事業を継続してきた。工事期間の予定外の延伸やコストの高騰といった不測の事態を総力で乗り越え、今年度から定員を増やして新園舎での事業を開始している。6月には法人が他市で半世紀にわたり運営してきた認可保育所で長く主任を務めてきた現在の園長が就任し、法人の理念に基づく保育の本格的な展開に向けた体制が整えられた。

園の基本理念や保育目標を職員が保護者に説明し、理解を深める取り組みが期待される

保育の全体的な計画や年度の事業計画書の冒頭に園の基本理念と保育目標を明示するとともに、会議や研修等を通じて職員に対する周知を進めている。また、園のホームページや入園時に保護者に配布する利用案内の冊子に園の基本理念と保育目標を明示し、保護者をはじめとする関係者や入園希望者等に広く伝えている。今後、定期的に開催されるクラスごとの保護者懇談会等で日々の保育のねらいを説明する中で、園の理念や目標に込められた意味等を各クラスの職員が自分の言葉でわかりやすく説明し、保護者の理解を深めていくことが期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している ×
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる ×
講評
事業計画作成の過程に保護者と職員の意向把握の工程を組み込むことが期待される

園と保護者の間の情報共有や保護者同士の交流を図ることを目的として、保護者懇談会を年2回クラスごとに実施している。今年度はコロナ禍のもとでオンラインでの開催となり、日常の保育の様子を撮影した動画の配信が中心となった。そうした中でも、園の保育や活動に関する保護者から意見や要望を把握し、職員間で協議のうえ、改善につなげた事例を確認することができた。今後、年度の事業計画を組織的に作成する流れや方法を検討する中で、園を取り巻く法制度や地域の保育環境の分析の他、保護者及び職員の意向把握の工程を組み込むことが期待される。

園の中期事業計画をベースにして、それを年度単位に展開した計画の作成が望まれる

2021年度から2026年度までの6か年の中期事業計画を立て、人材育成をはじめとする6つの課題ごとに具体的な取り組みのテーマと主たる担当者を定めるとともに、年度の目標を段階的に設定している。また、園の定型業務等を遂行するための職員の役割分担表を作成している。しかし、単年度の事業計画は必ずしも中期事業計画の6つの課題と整合して作成されておらず、連鎖の関係が見えにくくなっている。今後、中期事業計画をベースに、それを年度単位に展開した計画の作成が望まれる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる ×
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
法人の基本理念を実現するための職員の行動指針を明示し、周知を図っている

法人の基本理念を実現するための職員の行動指針を明示し、理念とともに周知を図っている。行動指針は、職員が法人に対してだけでなく、専門職として子どもと保護者、社会に対して約束する内容となっており、まずは園内に掲示して保護者や関係者に明らかにするとともに、園のホームページにも掲載していくことが望まれる。また、行動指針の中にも触れられている保育所保育指針や、その上位法である児童福祉法、子どもの権利条約等についても職員が継続的に振り返り、理解を深める取り組みが望まれる。

子ども家庭支援センター等、地域の関係機関と連携して子どもの育ちを見守る体制がある

子どもの状況によって、子ども家庭支援センターや保健師、子どもが通っている児童発達支援センター等と連携し、情報を共有しながら対応している。現在はコロナ禍で実施が難しくなっているものの、園庭解放時は近隣の家庭的保育事業者に声を掛け、園庭を利用してもらっている。園では今後、地域の子育てステーションとして、専門的な機能を地域に還元していきたいという思いを持っている。認可保育所として、近隣の地域型保育施設のバックアップの役割を果たしていくことも併せ、計画的な取り組みに向けた検討が期待される。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している ×
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる ×
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
安全対策に関する保護者の声をもとに、今後さらなる改善を進めることが期待される

園の安全管理マニュアルにもとづき、散歩先で起きた子どものけがに関して、園長の指示により職員間で原因分析をおこなった事例がある。その際は、すべての職員が意見を言いやすいよう、経験年数によってグループを分け、相互に意見を出し合って原因を明らかにしたうえで、再発防止に向けた検討をおこなった。安全管理マニュアルには、保護者からも意見を聴き、保育の内容や環境の向上を図ることを謳っている。今回実施した保護者アンケートには、安全対策に関して多くの声が寄せられており、それをもとに、今後さらなる改善を進めることが期待される。

入園時に保護者に配布する冊子に個人情報の使用目的や開示請求の方法等を明示している

入園時に保護者に配布する利用案内の冊子に個人情報の使用目的を明示するとともに、保護者からの開示請求等に関する対応方法を記載している。また、紙に印刷された個人情報はファイリングして事務所内の鍵のかかる書庫に保管しいている。業務で使用するパソコンは事務室内で使用することとし、保育士の共用パソコン以外はパスワードを設定して、担当者以外は開けないようにしている。電磁的記録は各端末のドライブに保存しているとのことで、園では今後、定期的なバックアップの方法を検討する必要を認識している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している ×
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている ×
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している ×
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している ×
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる ×
講評
当園の保育士として必要な知識やスキルの段階的な定着の道筋を整えることが期待される

国のキャリアアップ研修ガイドラインに沿って毎年、対象者を選定し、計画的に受講を支援している。今後、法人の理念に沿った保育の展開を図るにあたり、当園が必要とする保育士としての知識やスキルを明らかにしたうえで、それを段階的に身につけていく道筋を体系的に整え、当園における人材育成の基本的な枠組みとして運用していくことが期待される。当法人が他市で運営する保育園では、モンテッソーリ教育の考え方や手法を取り入れた保育を展開しており、当園でも本格的に導入していく方針である。今後、法人独自のキャリアパスの構築が期待される。

職員の就労状況の実態を把握のうえ、職場環境のさらなる整備に向けた検討が望まれる

今年度から定員を29名増やして110名とすることで保育士の増員に取り組んだが、採用難の折、新卒の採用は1名にとどまった。中途採用により予定人員は確保したものの、休職等がある中で、現場からは増員を求める声が寄せられている。これから法人理念に沿った保育を本格的に展開していくためにも、職員の組織に対する信頼とモチベーションの向上が何より重要となる。今後、職員の就労状況の実態を把握したうえで、職場環境のさらなる整備に向けた検討を進めることが望まれる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 常勤の保育士はほとんどが中途採用であり、始めは保育士がそれぞれの経験をもとに各クラスの保育を組み立ててきた面があったが、当法人が市から移譲を受けた当初からのメンバーである主任を中心に業務の標準化を進めてきている。特に、食物アレルギーの対応に関しては医師、家庭とも連携しながら子どもの安全を確保するためのマニュアルや書式の整備を行い、関係者に対する周知を図っている。また、早番・遅番のルーティン業務の手順や保育中の基本的な留意事項等をマニュアル化し、職員に周知している。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
子どもの人権に対する配慮及び子どもの人格と意思の尊重を方針に謳う中で、子どもに対する配慮を欠いた職員の関わりが見られた場合は、園長、主任が個別に指導している他、園内研修等の場で捨象したケースを提示し、何が問題なのかを考えさせる取り組みをおこなっている。また、年度ごとに園内業務の係分担を決めており、その中にマニュアルの係として、保育体制、園運営、危機管理、感染症、安全・救急、給食・食物アレルギーの6つの領域を定めている。しかし、今年度はその部分だけ担当者の名前が入っていない。内容によっておのずと担当の職種や職位が決まってくるところもあるとは思われるが、今後は年度当初から担当者を定め、法制度や子どもの状況等の変化に合わせてマニュアルの随時及び定期の見直しに取り組むとともに、その過程で現場の職員の声や保護者の意向等も反映していくことが期待される。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 今年度から定員を一気に3分の1以上増やして110人とすることで、法人として保育士の増員を最重要の課題に据えて取り組みを進めてきた。年度当初から数社の保育園の求人サイトに募集案内を掲載したが、採用難の折、すぐには成果につながらかった。また、コロナ禍のもと、オンラインでの面接を試みたものの、初めての経験だったこともあって、効果的な運用には至らなかった。結果的に新卒の採用は1名にとどまった。中途採用によって予定人員は確保したとは言え、今後の採用活動をどのように展開していくかという点では法人として課題を残した状態にある。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させていない
【講評】
園のホームページに求人案内を掲載しているが、法人が他市で運営している園の求人情報を比べると、条件よりも見せ方の部分で訴求力が一段劣るように見受けられる。人材の確保は法人全体の経営課題であり、今後、職員採用のプロジェクトチームを法人内に立ち上げて、現場の職員の感覚も活かしながら効果的な採用活動を展開していくことが期待される。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
市の保育課(ホームページを含む)へのファーストコンタクトからの問い合わせが多い

認可保育所への入園希望者は、市の保育課に問い合わせるか、または市のホームページで各園の募集状況等を確認のうえ、希望する園に直接問い合わせをする場合が多いとのことである。市のホームページから市内各園の情報が閲覧できるものの、そこに掲載されていた当園の写真が今年度12月まで古い園舎のままになっており、年明けにようやく更新された。市内どの園においても1歳児クラスへの新規入園希望が多くなっており、当園では18名の定員を設けているものの、他園と同様、応募が募集人数を大幅に上回る状況となっている。

コロナ禍のもと、密を避けながら、園長または主任が丁寧な見学対応に努めている

見学の問い合わせには希望の日時を確認のうえ、園長または主任が対応している。基本的に子どもの活動の様子が見られる時間に案内している。新型コロナウィルス感染防止の基本的な対策を講じたうえで、1回の案内は多くても2組までとし、個別の質問等にも丁寧に対応できる体制を整えている。見学者には園のパンフレットを配布し、当園が保育の中で大切にしていることや、子どもの一日の生活、年間の行事等について、園内を案内しながら説明している。

園のホームページで施設の概要等を伝えており、今後の継続的な見直しが期待される

当園独自のホームページがあり、市と園の名前を入れて検索すればすぐに閲覧できるようになっている。園の保育理念や職員体制、クラス別の利用定員、保育室や絵本コーナー等の写真、子どもの一日の流れと年間行事予定表、苦情解決制度の案内等が掲載されており、ホームページから直接問い合わせができるようになっている。しかし、子どもたちが生き生きと生活する姿が視覚的に伝わってこないため、法人が他市で運営している歴史の長い認可保育所のホームページと比べると、やや訴求力が弱いように見受けられる。今後の継続的な見直しが期待される。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している ×
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
当園の利用案内の冊子に沿って園長、主任及びクラス担任から事前説明をおこなっている

利用決定者に対する説明については、入園の時期により、説明会を開いて、または個別に日程を調整して、入園時健診とは別の日に実施している。B5版29ページにわたる当園の利用案内の冊子(しおり)に沿って、園長、主任からは主に利用の規則や生活上のルールを中心に、その後、クラスの担任から提出書類一式についての説明をおこなっている。今回実施した保護者アンケートの意見等を踏まえ、今後は市で定めている利用条件等に関する説明をより丁寧に行うとともに、説明をした(受けた)ことを相互で確認し合う文書の取り交わし等の検討が望まれる。

入園時に保護者から提出を受ける書類を通じて、園に対する要望の把握に努めている

限られた時間での事前説明において、保護者の意向を聞いて、それを記録化する仕組みは十分には整っていない。児童票や家庭状況調査書等の入園時提出書類に子どもの生育状況や健康状態、家庭での生活の様子の他、園に対する保護者の要望等を記入してもらい、関係職員間で共有している。保育園は子どもとともに保護者も保育士も一緒に育ち合う場所であり、その入り口での十分なコミュニケーションはその後の関係形成においても重要と思われる。今後、面談記録の様式を整備する中で保護者の意向を聞き取る欄を設け、記録化に取り組むことが期待される。

他の保育施設等への転園に際して、支援の継続性に資する取り組みが期待される

入園時は、子ども及び保護者の就労等の状況に応じて段階的に保育時間を延ばし、子どもが無理なく環境になじめるように配慮している。必要に応じて、保護者の同意のもとで子どもが入園前に通園していた施設に子どもの状況について照会することもある。一方、子どもの就学時には、子どもの状況を小学校に直接、または保護者を介して、所定の書面で伝えている。今後は他の保育施設等へ転園する際も、必要に応じて園での配慮事項等を転園先に情報提供し、子どもが継続性のある支援を受けることができるよう、関係職員間で協議を進めることが期待される。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
当園の掲げる自主的個別保育を個々の保育ニーズに沿って展開していくことが期待される

入園時は、保護者から提出を受けた書類をもとに関係職員が協議し、子どもの生活全体をとらえて保育ニーズを見定めたうえで、必要に応じて個別の保育計画を作成している。当園の掲げる「自主的個別保育」が根拠に基づく保育となるためには、子ども一人一人の成長や発達の状況の他、家庭環境等、子どもの生活全体を定期的にアセスメントし、保育ニーズの変化をとらえていくことが求められる。そうした観点から現在の仕組みを意味づけし直し、当園の基本理念に沿った保育の展開を図っていくことが期待される。

毎月のクラスごとの通信により、保護者に保育のねらい等をわかりやすく説明している

法人の保育理念、保育目標に基づき、全体的な計画から年間及び月間の指導計画が年齢ごとに展開されている。今後、当園が掲げる「自主的個別保育」やモンテッソーリ教育の考え方を取り入れた保育の要素を計画の中に具体的に反映していくとともに、3・4・5歳児の異年齢混合クラスに関しては、異年齢保育のねらいや効果を含めてクラス単位の計画の作成についても検討することが期待される。毎月のクラスごとの通信には、子どもの姿のほか、月の保育のねらいが具体的に書かれており、保護者に対して指導計画をわかりやすく説明する内容になっている。

職員間の情報共有に力を入れるとともに、日々の保育記録から必要な指導につなげている

週3回、子どもの午睡の時間に開く15分程度のミーティングで全体に周知する必要のある情報の共有を図るとともに、職員間の連絡ノートを作成し、全員に目を通してから業務に入るように指示している。また、日々の保育の記録を主任及び園長が確認し、保育士の着眼のよいところや、さらなる工夫が求められる点等についてコメントを付して戻している他、子どもに対する適切な関わりについて、日常的に保育現場に入って指導をおこなっている。今回実施した場面観察調査でも、そうした指導が実を結んでいると感じられるシーンが確認できた。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
「さらに応答する保育」の実践に向けた取り組みを始めたところである

年齢や文化・習慣等の違いについては、日々の保育の中で課題に添った内容の絵本を用いて、違いを知らせるよう取り組んでいる。子ども同士のトラブルについては、子どもの気持ちを汲み取って対応するよう努めるとともに、昼礼やヒヤリハット報告書等で職員間で共有している。園の短中期事業計画において、「さらに応答する保育」の実践を目指し、取り組み1年目の今年度は、正規職員全員が講師から学んでいるところである。小学校への進学に際しては、子ども一人ひとりの情報を提供するとともに、保護者の求めに応じて就学支援シートに記入している。

自主的個別保育の実現のために、教具や遊具の充実を図ろうとしている

自主的個別保育の実現のために、大人主導ではなく、子どもが自分でやりたいことを選んで遊ぶ環境を整えようとしている。旧園舎の解体から新しい園舎の利用開始までの1年余りを経て、2021年2月から新園舎において、子どもが主体的に活動できる環境を少しずつ整えているところである。園庭が使えなかった約1年間は、天候が許す限り毎日近所の公園に散歩に出かけた。園は今後、室内においてはモンテッソーリの教具の充実、園庭においても、子どもたちが自分の体を十分に使い、様々な原体験ができる環境づくりを進めていく予定である。

3・4・5歳児の異年齢児保育の実践が、より豊かに展開されることが望まれる

3・4・5歳児は、年間を通して異年齢児で構成される3クラスで保育が行われているが、年間、および月間の指導計画は、年齢別に立てられている。週間指導計画はクラス毎に計画され、廊下に掲示され、保護者が確認できるようにしている。毎日、異年齢で過ごす保育においては、年齢の高い子どもが低い子どものお手本になったり、年下の子どもは年上の子どもの行動力に刺激を受けたりする等、互いに良い効果が見込めると思われる。ごく日常となっている異年齢児保育の良さについて改めて検証し、より計画的で効果的な保育の取り組みが期待される。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
家庭と連携して保育に当たるよう努めている

家庭とは、連絡ノートを通して子どもの様子や生活リズム等を共有している。登園時には、家庭での子どもの様子を保護者に確認して引継ぎノートに記録し、職員間で情報を共有している。現在保護者が入れる場所は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、0・1・2歳児クラスは各自のロッカーまで、幼児クラスは廊下まで、と制限している。降園の際には、子どもの見たままの姿を保護者に伝えることとし、漏れがないよう遅番職員に引き継ぐようにしている。園は、早朝等に短時間働く職員への情報の提供・共有について、改善が必要と認識している。

子ども一人ひとりのペースに合わせて、食事や排せつ、休息を取れるように支援している

食事や排せつ等の基本的な生活習慣については、個人差が大きいので、職員間で共通認識を持ったうえで、子ども一人ひとりのペースに合わせて進めるようにしている。例えば朝食を食べていない、と連絡ノートに記入されていた時は、その日の子どもの様子を注意深く見守り、降園時に保護者に声を掛けて、家庭での様子等を聞くようにしている。排せつについては、家庭での様子を聞きながら、2歳の暖かい時期にオムツが取れるのを目安としている。休息は子どもの状況に配慮して時間を調整し、5歳児については、就学を見据えて原則11月から午睡はしない。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している ×
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している ×
講評
遊び込める空間づくりに取り組んでいる

自主的個別保育の実現のために、子どもの自立を促し、子どものやりたい気持ちを見出せるような保育に必要な教具を、現在少しずつそろえ、保育に取り入れ始めているところである。幼児の部屋には、製作を継続できるよう、製作途中のブロック等を飾っておく棚を配置している。一方、広々した0歳児の保育室は、現在、自発的に遊び込めるようなコーナーの作成途中である。利用者アンケートにおいて、「園での活動は、お子さんの心身の発達に役立っていると思うか」という問いに、95%近い保護者が「はい」と答えており、高く評価されている。

積極的に戸外保育や畑活動を行い、季節の移ろいを感じられるようにしている

天気の良い日は必ず、戸外活動を行っている。近隣に点在する公園に出掛けたり、畑で種まきや収穫等をしたりしている。滞在調査をした際には、公園までの道中、年齢の小さい子どもが道路の内側になるように手をつなぎ、横断歩道では手を上げて渡る等のルールが習慣付けられ、子どもが自発的に行動している様子が見受けられた。子どもの発見や言葉に対して保育者は、「よく見つけたね」等と共感的に反応していた。園庭には、細かい砂利が一面に敷かれていることもあり、子どもたちは主に、園庭の隅に設けられた植え込みの土を掘って遊んでいた。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
芋の収穫、焼き芋作り等を通して、皆で協力しやり遂げる喜びを味わった

通常実施してきた行事は、コロナ禍により縮小、または保護者の参加は見送る形で実施している。夏祭りは、幼児がクラス毎に出店し、乳児クラスの子どもが買い物係を担当し、職員はヨーヨー店を開いた。10月の運動会は、近隣の小学校の運動場で行い、皆で一つのことに向かって頑張る中で、子どもなりの達成感や自信を付けたようである。11月には、近隣の農園で掘った芋を、ドラム缶を使った焼き芋作りに挑戦した。2歳児以上の子どもたちは、芋洗いを夢中で手伝い、芋の収穫から焼き芋の準備、出来上がった焼き芋の味わいまでを楽しんだ。

コロナ禍の中、工夫をしながら行事に取り組んでいる

行事等の準備・実施に当たっては、保護者に前もって便りを配布し、準備等の協力を得ている。今年度の9月から、1歳児以上が年齢別に、講師によるリトミックを月1回実施し、音楽に触れながら表現する楽しさを味わっている。12月の5歳児クリスマス会では、子どもたちが配役を決めた絵本を題材にした劇を、保護者の前で発表した。また、別日には、クリスマスの飾り付けをした各クラスの部屋で、クリスマス給食を楽しんだ。今後も、コロナ禍の状況を見ながら、感染対策を徹底しながら行事を実施したい意向である。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている ×
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている ×
講評
朝夕は子どもの人数に合わせて部屋を移動し、朝は8時半から集団活動を開始している

当園の開所時間は、午前7時15分から午後7時15分の12時間である。朝は、0歳児は初めから0歳児クラスの部屋で過ごすが、1、2歳児は、8時まで1歳児の部屋で過ごし、8時になると2歳児が隣室に移動し、8時半から各クラスの部屋で活動を始める。3、4、5歳で構成される幼児3クラスの子どもたちは、8時半までまん中のクラスの部屋で過ごした後、各自の部屋に移動し、30分間程度、それぞれが机上遊びに取り組み、子どもたちがほぼそろう9時頃から集団活動を始める。子どもの人数に合わせて、過ごす部屋や遊びの内容を工夫している。

朝夕の保育時間専用の玩具をそろえて、楽しく安全に過ごせるよう努める意向である

夕方は、原則午後6時15分から7時15分までが延長保育の時間であり、17時半以降、朝同様に、人数に応じて過ごす部屋を限っている。日中に出していない玩具で遊べるようにしたり、園庭を活用して、飽きずに遊べるように工夫したりしている。今年度、定員が81人から112人に増員になったこともあり、延長保育を利用する子どもの人数は多く、子どもが安心して過ごせる空間や保育者の確保が課題である、と園は認識している。今後は、朝夕の保育時間専用の玩具をそろえて、子どもが楽しく過ごせるような配慮に努めたい意向である。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している                                                                                        
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
栄養計画に基づき、食べることに関心を持てるよう、年齢に応じて取り組んでいる

子どもが落ち着いて食事をとれるよう、異年齢で構成される幼児クラスには、高さの違う椅子やテーブルを配置している。年間を通して、「食べる意欲、食べる力を育て、生きる力を育てる」等の目標に基づき、栄養士を中心に、栄養計画を立てている。例えば、年度の始めには、「給食に慣れ、安心した環境で楽しんで食べる」ことを目標に、なじみのある食材を使った献立にしたり、夏には、園内の畑で収穫したきゅうりやなす、ピーマン等を使用した献立にして、野菜が苦手な子どもも、少しずつ野菜が食べられるような工夫を施したりしている。

献立に卵を使わず、食物アレルギーのある子どもには完全除去食等、個別に対応している

和食中心の献立は、噛むことを意識できるものとし、原則として2週間サイクルで立てている。旬の食材を積極的に取り入れ、献立表においては、その食材とそれを使った献立に星マークを付けて、一目でわかるように工夫している。子どもが初めて食べる食材が献立表にあった場合は、家庭で2回試すよう、保護者に促している。食材として卵は使わず、食物アレルギーのある子どもに対しては、医師の診断書を基に、完全除去食等、個別に対応している。対象の子どもには色の違う食器を用い、席を離し、食事を載せたトレイは調理員が直接担任に手渡ししている。

園庭の一角で野菜を育てたり、食事を楽しむ工夫を保護者に伝えたりしている

子どもたちは、春には夏野菜の種をまいたり苗を植えたりし、成長する様子を観察したり触ったりした。夏の終わりには大根、人参、ほうれん草、ねぎを植えた。芋ほり会で掘った大きな芋は、焼き芋とは別に、園庭で芋煮会をして楽しんだ。給食だよりには、好き嫌いや小食等、乳幼児期によくある保護者の悩みを取り上げて、成長過程における偏食やむら食い、遊び食べ等の理由や、「たとえ食べなくても、大人がおいしそうに食べる姿や、目にする機会が多ければ好感度がアップします」等、食事支援のコツも掲載して、家庭での食生活のヒントを提供している。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
看護師が手洗いを指導し、幼児はマスクを着用して、感染症対策をおこなっている

子どもたちの健康に対する意識を高めるため、幼児クラスのトイレの手洗い場に、手がきちんと洗えているか目で見て確かめられる機器を設置して、看護師が子どもたちに定期的に手洗い指導をしている。夏は暑さ指数を参考に、外遊びの可否を決めている。医療的ケアが必要な子どもについては、保護者を通して専門機関と連携して対応している。スムーズな就学を目指し、必要に応じて小学校とも連携している。新型コロナウィルス感染症の感染予防のため、幼児は8月からマスクを着用している。

定期的な身体測定、健康診断等を通して、子どもの健康維持を図っている

玄関ホールには、日々、子どもたちの病気欠席の数と、感染症に関するお知らせや、身体測定や内科検診の予定を掲示している。乳児検診は月1回、全園児の定期健康診断と歯科検診、視力検査は年2回実施している。毎月の身体測定の際には、爪もチェックしている。各健診結果の記録は、保護者と共有している。看護師は1日数回、各部屋を巡回して子どもの健康をチェックし、気になる子どもの状態を、保健日誌に記録している。午睡時には、0歳児には午睡チェックセンサーを付けたうえで5分毎に、1、2歳児は10分毎に目視し、日誌に記録している。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている ×
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している ×
講評
出来る限り保護者の就労等の事情に配慮して、延長保育を受け入れている

入園時の面談で、各家庭の子育てや就労等の状況を把握して対応している。延長保育は、当日の申し出であっても受け入れるようにしている。保護者懇談会は年2回計画しているが、初夏に実施予定だった第1回は、新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、子どもの様子の動画配信とした。個人面談は保育参観の後に予定していたが、同様の理由により取りやめ、5歳児については、12月初旬に面談の機会を設けた。園は今後、希望者だけでなく、全員と個人面談を実施したい、また、来年度から始める一時保育の中での相談対応も実施の意向である。

週案や写真の掲示、園・クラスだよりの配布により、保護者と保育の様子を共有している

保護者が送迎時に入ってくる、幼児クラスの部屋の廊下には、週案とともに、その日の保育の様子を記入した用紙を毎日掲示しているほか、戸外保育の写真も掲示して、子どもたちの様子を保護者に知らせている。毎月の園だよりでは、行事や畑等、園全体の取り組みや子どもたちの様子を掲載して、保護者と共有している。その他に年4回、子どもたちの活動の様子の写真をふんだんに用い、趣向を凝らしたクラスだよりも発行している。漢字の読み書きが不自由な保護者には、献立表にひらがなを付ける等の対応をしている。

職員の誰もが、保護者を適切に支援できるような知識を身に付ける意向である

園のしおりには、子どもショートステイやファミリーサポートセンター、乳幼児健康支援一時預かり、ひとり親家庭ホームヘルプサービス等、立川市が提供する子育て支援制度を紹介している。そのほかに、5歳児を対象に、立川市の子ども総合相談担当者による出張相談の案内が、幼児クラスの部屋の廊下に掲示されている。関係機関が関わっているケースに関しては、ケース会議を実施して、より良い方法を検討して、子ども支援、保護者支援につなげている。今後園は、職員全員が保護者支援の知識や技術の向上に努めたい意向である。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している ×
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している ×
講評
コロナ禍の様子を見ながら、地域資源の活用や地域との交流の機会を探る意向である

2月から新園舎での保育が始まるまでの1年余りは、園庭が使えなかった。園庭が使えるようになってからも、コロナ禍の影響で開放することはできず、地域資源としての機能は果たせない状態が続いている。公園での出前保育の実施も自粛し、近隣の学校や高齢者施設の方々との交流も、できない状態が続いている。一方、立川市の子ども支援ネットワークのブロック会議は実施され、気になる子どもの家庭の情報交換等をしている。近隣の小学校の学校運営協議会にも出席している。今後はコロナ禍の様子を見ながら、地域との交流の機会を模索しようとしている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている ×
講評
子どもの人権擁護の徹底に向けた振り返りや職員相互の関係性の構築が期待される

子どもの人権に対する配慮及び子どもの人格と意思の尊重を方針に謳う中で、子どもに対する配慮を欠いた職員の関わりが見られた場合は、園長、主任が個別に指導している他、園内研修等の場で捨象したケースを提示し、何が問題なのかを考えさせる取り組みをおこなっている。今後、保育士の職能団体等が作成している子どもの人権擁護のための自己点検表等を活用しながら、子どもに対する日々の関わりを日常的に振り返る機会を設けるとともに、職員同士が専門職として相互に気づきを交換し、共に育ち合う関係性を築いていくことが期待される。

オムツ等の取り替えの際に子どもが周りからの視線にさらされない環境を整えている

1歳児クラスでは、トイレの入り口にオムツ交換用のスペースを設けている。小さなベンチが置かれており、そこに子どもが腰かけて、一人で紙パンツを取り替える姿が見られた。オムツやパンツの取り替えの際に子どもが周りからの視線にさらされず、また、発達に応じて自分でできるように環境を整えている。子どもの羞恥心に対する配慮の一つとして、性教育の取り組みがあげられる。現在は5歳児の年間指導計画にも該当する内容が見当たらず、今後は計画に位置づけたうえで、プライベートゾーンや命を大切に思う気持ちを育む保健指導の展開が期待される。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている ×
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している ×
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている ×
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
食物アレルギーの対応など安全管理を中心にマニュアルを整備し、関係者に周知している

常勤の保育士はほとんどが中途採用であり、当園での平均在職年数は1.8年という中で、始めは保育士がそれぞれの経験をもとに各クラスの保育を組み立ててきた面があったが、当法人が市から移譲を受けた当初からのメンバーである主任を中心に業務の標準化を進めてきている。特に、食物アレルギーの対応に関しては医師、家庭とも連携しながら子どもの安全を確保するためのマニュアルや書式の整備を行い、関係者に対する周知を図っている。また、早番・遅番のルーティン業務の手順や保育中の基本的な留意事項等をマニュアル化し、職員に周知している。

園内業務の係分担におけるマニュアルの担当を中心に、組織的な見直しが期待される

年度ごとに園内業務の係分担を決めており、その中にマニュアルの係として、保育体制、園運営、危機管理、感染症、安全・救急、給食・食物アレルギーの6つの領域を定めているものの、その部分だけ担当者の名前が入っていない。内容によっておのずと担当の職種や職位が決まってくるところもあるとは思われるが、来年度からはスタートの時点から担当者を定め、法制度や子どもの状況等の変化に合わせてマニュアルの随時及び定期の見直しに取り組むとともに、その過程で現場の職員の声や保護者の意向等も反映していくことが期待される。