東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和3年度
サービス名称 就労継続支援B型
法人名称 社会福祉法人しおん保育園
事業所名称 しおん学園(忘れな草)
しおん学園(忘れな草)/しおん学園(忘れな草)
評価機関名称 株式会社 地域計画連合

コメント

・事前説明にあたっては、令和3年度方式の評点基準、確認根拠資料の準備について、わかりやすい独自資料を用意し、事業者の負担を軽減する工夫を行っている。
・分析シートは記入のポイントを用意し、効果的、効率的に情報が整理できるよう工夫を行っている。
・確認根拠資料は、訪問調査の概ね3週間前までに評価機関への提出を依頼し、根拠の事前確認を行ったうえで訪問調査を実施し、訪問当日は事業所の課題や良い点を把握するためのヒアリングに重点を置いて実施している。
・合議は、訪問調査終了後、同じ日のうちに、速やかに実施している。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)利用者一人ひとりの人としての尊厳を育て、良き市民としての自立を促す 2)利用者のもてる力を最大限に引き出す支援、社会参加の機会創出 3)利用者の受け入れについては障がいの程度・種別は問わず、利用者の意思を最優先にする 4)保育所の園児や保護者、地域とのつながりを重視した運営やサービスの展開 5)より良い支援を行えるよう働きやすい職場づくりを目指す

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

障がいを持つ利用者一人ひとりの気持ちに寄り添い利用者それぞれの課題や問題に真摯に向き合うことができ、自らも利用者と一緒に学び、成長していくことのできる人材。また、障がいを持つ人々と保育園の園児や保護者、そして地域の人々とを結びつける役割を理解し、行動できる人材であることを求めている。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

障がいを持つ利用者と共に仕事をすることを喜びと感じ、自ら楽しもうとする姿勢を持つこと。すべての利用者の権利擁護の担い手であることを認識し、利用者の人権に配慮した支援を行うこと。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 法人をあげて総力戦でその人に合った仕事を作り出し、一人ひとりの命が輝けるような、魂に届くような支援を目指している

一人ひとりの利用者に最適な仕事を作り出し、活躍の場を与えている。就労継続支援B型事業所は本来、訓練期間を経て、就職することに主眼を置いた支援をするのだが、この事業所では、就労=就職に拘らず、居場所や活躍の場の提供と捉えて支援している。同法人の保育所等との協働により、内部での軽作業(清掃、食器洗い、シュレッダー作業等)を選び出し、仕事として割り当てるなど、その人に合った仕事を提供して支援している。また、アート活動においても利用者一人ひとりの個性が際立つ活動を用意して、命が輝く時をじっと待っている。
2 他の事業所では得難いような独特の事業を継続し、限られた社会ではあるが、ノーマライゼーションを体現している

毎週木曜日は、保育園児と共に、園バスで、牧場・農場に出かける活動を行っている。就労支援事業としては、「環境整備」に分類し、しおん保育園内の園庭整備と合わせて、南畑牧場・農場の維持管理と位置付けている。事業計画書の記述では、牧場では、飼育しているヤギ小屋の清掃、馬房掃き掃除、窓拭き掃除を行うとしている。日常的に、保育園の園庭の清掃や、子どもが食べるパンや食事作りに関わる中で、必要な存在となり、人との自然な触れ合いの中で生活している。1975年に遡る、障害児統合保育に原点を持つ事業所で、のびのびと過ごしている。
3 新しい施設長は、法人理念を継承しながら、利用率など実際的な運営の課題を解決する糸口を、現場で行動しながら探っている

学園便りで紹介された施設長のプロフィールはユニークで個性あふれるものである。法人内の全事業所で働いた経験を持ち、海外を含めた多様な世界での経験を持つ人材として、今年6月より当事業所の運営を引き継いでいる。事業所の課題は山積しているが、法人の存在意義ともいえる共生社会への理念を継承し、利用率の改善や工賃確保など実際的な運営の課題を解決する糸口を、事業現場で利用者や職員と共に汗を流しながら見出している。理念は言葉で伝える事を重視するとともに、職員と行動する中で、変化を促したいという考えを持っている。

さらなる改善が望まれる点
1 心機一転、今ここで事業所理念の想起と事業環境の点検、そして作業種目の整理をすることで次のステージに突き進む準備をしたい

事業所は理念に基づき利用者一人ひとりの活躍の場を創りだすことに力を注いできた。しかしながら、長年の奮闘努力の中でそれは多くの作業種類を生み出し、消費者のニーズに合わず、在庫が積み上がっている作業もある。引いては事業コストに跳ね返り、事業運営の健全性にも悪影響を及ぼす。今必要なのは立ち止まって設立以来の事業所理念を想い、事業環境を見直し、適正の作業数と質を確保することではないか。手順として数字としてそれぞれの作業を分析し、それがどのような結果をもたらすのか職員が率直に話し合う場を設けることが望ましい。
2 同じ法人からの仕事の安定供給に甘んじることなく、書類を通しての契約等の取り交わしを進めていくよう願う

事業所内で行われる授産作業の多くは同じ法人内の保育所2事業所からの受注作業である。仕事の需給関係が安定していて、労働集約的な作業のため、利用者も安心して働くことができるのが特徴である。だが、仕事を請けるにあたっては書類での取り決めや請負契約は必ずしも万全とは言えず、その仕事内容、受注額も不明確なものも散見される。本来、仕事の受注を明確にすべきなんらかの取り交わしは必要であり、同じ法人であっても、否、法人内であるからこそ、そういった取り決めは重要性であり、完璧を目指したい。
3 巣立ちの時を迎えて大空に飛び立てるように、一般就労・福祉就労などを通じて外の世界に立ち向かえるような取り組みが欲しい

事業所はこれまで利用者一人ひとりに合った作業を作り出し、安定した仕事を供給することを大切にしてきた。それらの多くは法人内で派生した仕事であるため、利用者の安心感にも繋がっている。だが、事業所の使命を考えると、利用者のここからの巣立ちにもっと積極的であって欲しい。事業所や法人内部で利用者の生活全部を完結させるのではなく、外の世界に飛び立てる取り組みをして欲しい。例えば、訓練期間のうちに次のステージに移行できる目標設定とアセスメントを行い、原則一度は外の世界にチャレンジさせるのもいいかも知れない。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み


★ 保育園と一体となって運営し、子どもとの関わりのある多種多様な活動を受託している

当事業所は、保育園舎の2階部分の事業所スペースに加え、隣接する団地の一階のベーカリーと手作り品の店を運営している。ベーカリーカフェ勿忘草(わすれなぐさ)は、安全な素材を使用し、添加物等を一切使用せず、学園の利用者が一つ一つ手づくりしており、毎日、しおん保育園他、市内の保育園にも提供している。保育園の運動会では、パン競争のパンや、クッキーでつくるレイ、競技で用いるメダルなども作成している。隣の手作りの店では、在庫は今後の課題であるが、陶芸や鮮やかな色彩の手漉き葉書など、利用者の関心を深める作業を提供している。
1 ★ 堅固な思想、豊かな設備で芸術・音楽活動等を通じて、利用者の命の輝きを戴いている

法人の源には創造教育の考え方があり、音楽や造形などの芸術活動を通じて心を豊かにする活動がある。現在、音楽講師や造形の講師を招いてのプログラムを実施しており、利用者とその家族に好評である。エントランス付近には利用者の絵画が展示されており、専門家のアドバイスで絵のキャプションも付いている。木工室は、あらゆる工具が備わっており、さながら工房のようである。チャペルにはパイプオルガンが据えつけられ、グランドピアノもある。コロナ禍前には、チャペルに音楽家を招いて行う毎月演奏会を利用者も楽しみにしており、再開が待たれる。
関連評価項目(利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている)
3 ★ 利用者支援に欠かせない利用者家族との協力関係を重視し、関係づくりを進めている

利用者を支援する上で、家族との協力は欠かせないと考えている。利用者の3分の1ほどは保育園から通い、当該事業所まで継続しており、利用歴の長い保護者とのつながりは事業所の財産ともいえる。年1回は保護者会を開き、今年は活動記録動画を紹介し好評であった。また新しい利用者の保護者とも、関係性を構築できるよう、コロナ禍前には、イベントやバザーの手伝いなどに声をかけるなどし、保護者同士のつながりや利用者の理解を深めるよう働きかけている。さらに、コロナ禍に対応する方法や、新しい保護者のニーズに応える方法を模索している。
関連評価項目(利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:2021年11月1日現在の施設の利用者を対象とした。

調査方法:アンケート方式  
アンケート(自記式)。施設にて職員が利用者に手渡しする形で調査票を配付。記入された調査票は封緘のうえ返信用封筒による郵送または施設に設置した回収箱による回収。

利用者総数 15人
アンケートや聞き取りを行った人数 15人
有効回答者数 9人
回答者割合(%) 60.0%

総括
総合満足度(大変満足、満足を合計した割合)は、56%(5人)となっている。 ●各カテゴリーのうち、「はい」の比率が高かった上位は、以下の項目であった。 問1.あなたが困ったとき、職員は助けてくれますか (89%、8人) 問7.あなたがけがをしたり、体調が悪くなったときの、職員の対応は信頼できますか (78%、7人) 問2.あなたの身の回りにある設備は安心して使えますか 問9.あなたは、職員があなたの気持ちを大切にしながら対応してくれていると思いますか 問13.あなたが不満に思ったことや要望を伝えたとき、職員は、きちんと対応してくれていると思いますか (各々 67%、6人)

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 8人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
意見の記載なし。
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 6人  どちらともいえない 1人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
意見の記載なし。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 3人  どちらともいえない 3人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
特筆すべき意見なし。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 4人  どちらともいえない 1人  いいえ 3人  無回答・非該当 1人 
意見の記載なし。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 2人  どちらともいえない 3人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
特筆すべき意見なし。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 4人  どちらともいえない 2人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
意見の記載なし。
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 5人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
意見の記載なし。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 7人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
意見の記載なし。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 4人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
意見の記載なし。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 6人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
特筆すべき意見なし。
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 3人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
意見の記載なし。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 5人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
私の希望通りの時間で働かせてくれます。 といった意見があった。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 1人  どちらともいえない 3人  いいえ 2人  無回答・非該当 3人 
意見の記載なし。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 6人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
現在はそのように感じます。 といった意見があった。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 1人  どちらともいえない 5人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
意見の記載なし。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている ×
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
法人理念を掲げ、法人の研修や保護者会において一体的に理念の浸透を図っている

本事業所は、同法人しおん保育園で1975年より取り組まれた障がい児の統合保育を活動の原点としている。その後の変遷を経て、2020年より、就労継続支援B型事業所として運営しているが、現在の利用者の4分の1はしおん保育園の卒園生であり、事業所は保育園園舎の2階にあり事業も受託する等、保育園との堅固な結びつきを運営の特徴としている。本事業所の理念「人としての尊厳を育て、良き市民としての自立を促す」は法人理念でもあり、事業所の理念方針の浸透は、法人の職員クリスマス研修や、保護者会などで法人と一体的に行われている。

施設長自ら支援現場に入り、行動して見せながら事業運営をリードしている

2013年より多機能型事業を開始したが、2020年度に放課後等デイサービス事業を廃止し、現在の事業形態となった。施設長の交代により、法人内の保育部門始め全事業所を経験した施設長が新たに今年度から赴任し、事業の立て直しに取り組んでいる。現段階では、事業の実態を把握するため、各作業の現場を巡回し、作業に入りながら、利用者や職員に声をかけ、法人の理念を行動として伝えたり、事業所の方針実践の課題を把握している。常勤4人、非常勤6人の小規模さを活かし、施設長と職員の1対1のサポートを重視している。

事業所内の意思決定は、人的対応から、組織的な対応への移行が求められる

施設長が結節点となり、事業所内や関係部署からの情報を収集し、必要に応じて法人の経営層や理事長への報告や相談を行い、重要な案件を整理、意思決定する役割を担っている。法人との会議の位置づけや、事業所内の会議については、必要に応じて柔軟に対応している実態となっている。所内会議は、必要に応じて、利用者の帰宅後の時間帯に、施設長、サービス管理責任者、指導員の3名で、作業の課題などを話し合っているが、対法人、事業所内としても、組織的な意思決定への移行が求められる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
事業運営上の課題は、定期的にアウトプットし、職員と共有しておきたい

利用者には入所前に細かく意向を把握するアンケートを実施しており、その自由意見を支援プログラムの検討に活かしている。職員については、個別に把握した意見をもとに、学園日誌に記録を残し、課題の把握や解決につなげている。本事業所は、特別支援学校卒園生を入所の条件としていることから、地域では、近隣の特別支援学校の懇談会や実習担当者から情報を得て、今後の作業種などのニーズを把握している。また、外部のセミナーにも積極的に参加して、事業の動向などを情報収集している。特に今後の課題は、定期的に職員と共有しておきたい。

掲げている理念と中長期計画、事業計画の一貫性を確認しておきたい

新任の施設長として、現場の実態を把握し、課題を洗い出しながら、改善点の整理に専念している状況にある。来年度に向けて、中長期計画をすべての職員と共有し、一緒にその目標に向かって行動していけるようになることを目指している。中長期計画は現時点での考えを整理し作成されているが、事業所理念を実現するための中長期計画、中長期を実現するプログラムとしての事業計画は本来一体のものである。掲げる理念から中長期プランに無理なく展開できているか、確認しておきたい。

重点的課題の改善を着実にする計画の活用を期待したい

6月に赴任した新施設長のもとで、2022年度~2024年度の中長期計画、2021年度の事業計画を作成している。作成にあたっては、施設長としてのビジョンをまとめた上で、サービス管理責任者や職員の意見を入れ、理事長と確認し文章化している。これらの計画については、施設長も認識している通り、実効性が重要である。そのために、中長期の年度プランをさらに明確にして、事業計画・報告の初年度の項目と整合させ、さらに、重点的取り組みの実行体制と結果、予算・決算、目標値と達成値を明示するなど、改善を着実にする対策を期待したい。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
チェックリストを用い、職員の支援行動を定期的に振り返る方法を準備している

障害者権利条約パンフレット、「障害者虐待防止法について」を各作業場に設置し、特に気を付けてほしい箇所は付箋を貼って明示している。職員が利用者に対し大きな声を出すことは、虐待につながる可能性があるため、直接、職員に指導するようにしている。今後、虐待チェックリストを用いて、定期的な確認を行いたいとしている。利用者調査の結果では、苦情要望への対応は高い満足度となっているが、第三者委員については、より丁寧な周知方法を検討してほしい。

保育園とは異なる事業所として、より積極的な外部への発信を期待する

事業所の活動内容を開示するための情報としては、定期的な第三者評価の受審以外に、毎月の保育園園だよりの一部に、事業所の活動を報告する記事を載せている。園だよりは、保育所の保護者や法人の関係者に向けた内部用の発信となっていることから、事業所活動の透明性を確保し、必要としている人に情報が届くよう、より積極的な発信の工夫が期待される。実習生は、特別支援学校の就労実習の受入れを継続しており、ボランティアは今後の事業展開の中で、検討したいとしている。

市内の施設との連携が進み、超短時間労働の対応などの情報を得ている

地域に根差す法人として、コロナ禍以前は、法人、保育園と一体となって、チャペルを会場として、毎月音楽家を招き、クラシックコンサートを開催していた。地域のグループホームの高齢者や、障がいを持つ人達も毎月楽しみにしていた行事であり、一日も早い再開が待たれている。再開の折には、事業所から特別支援学校等にも招待を送りたい。また、市内の法人連絡会への関わり、施設長連絡会へのより積極的参加を予定しているとともに、生活訓練事業所とのつながりができ、超短時間労働の導入など共通課題について検討している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している ×
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる ×
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
リスクマネジメントは、事業所の利用者特性を踏まえてより充実させたい

危機管理マニュアルには、事故対応、感染症対策について対応を整理しているが、事業所の利用者特性を踏まえてより十分なものになるよう更なる充実が求められる。利用者については、車両で配達している途中での発作への対応のためドライブレコーダーが設置されているが、利用者特性に応じ作業活動上のリスクの予防は最も重要である。また、大規模災害等に伴うリスク、経営環境の変化に伴うリスクなども踏まえて、優先順位を事業計画に明記し、予防やリスクを軽減する対応方法としてマニュアルなどの整理を求めたい。

利用者特性に応じた適切なヒヤリハットの把握や事故予防を進めてほしい

避難訓練は、併設の保育園を含めた全体で毎月訓練を行っており、事業所職員は、一体的な建物全体の安全確認をする役割を担っている。当事業所および併設保育園内の事故や近隣の感染症の情報については、保育園の昼礼に事業所職員も参加して情報交換をしている。ヒヤリハットのフォーム等は用いておらず、口頭で情報を共有し、必要に応じて連絡帳に記録し、必要な対策を即講じる対応を取っている。合同昼礼の場合、当事業所の利用者特性をふまえ、保育園とは異なるヒヤリの把握や事故予防ができるよう、昼礼の進め方には配慮が求められる。

法人の個人情報保護規定に基づき情報保護を行っている

取扱う個人情報の機密保持について、利用契約書の条項に盛り込んでいる。また、他の事業所等との間で、利用者の個人情報をやりとりする場合の同意書は入所時に署名捺印して受領しており、丁寧な対応を行っている。今後、実習生やボランティアと取り交わす書面も、個人情報保護への誓約書として、法人の個人情報保護規定に基づき、文書化しておきたい。利用者に関わる個人情報の管理は、主たる事業所内にアクセス権限を設定して保管管理しているほか、事業に必要な情報は職員が必要に応じて確認できるようサーバーにフォルダを設定して共有している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
施設としてのキャリアパスおよび人材育成計画の作成に着手している

新施設長が赴任し中長期の方向性や人材像が整理されてきた。今後、理念・方針を実現するために必要とする人材がどのような能力や行動を備えることを求めていくのかについて、職階ごとに設定することが求められており、目下、専門家に相談しながら整備を進めている。また、事業所としての人材育成をどのような方法で取り組むか、方針を定め、施設内の研修や個人別の研修に繋げてこうとしている。少人数の職場であるが、現実的に職員が参加できる方法を増やし、外部研修のみならず、会議の時間も活用して、職員が相互に学び合う機会を充実させたい。

法人の理念研修に加え、障害者支援の専門性に関わる内容をより充実させたい

職員採用は、法人全体での新卒、既卒とも採用を行っており、職員研修も、法人で一体的に行われている。研修は、入職前研修、新人研修、の他、非常勤も含めた全職員対象の職員クリスマス研修がある。クリスマス研修では、キリスト教の保育の基本を確認したり、法人の特徴である牧場に関する研修を心理学の専門家の協力を得て行っている。現在、オンラインによる人権研修などは実施しているが、今後事業所の支援の質向上に必要な専門的プログラムの導入を検討したいとしている。

必要なミーティングの時間を確保し職員相互の協力体制を強化したい

受注品、受託品などで納期が決まっているものについて、正規職員の責任者を決めて、それに向けて利用者といっしょに製品づくりを進め、チームワークによって納期を達成する取り組みを行っている。一方、日中は、利用者の対応に時間を取られるため、全職員が集まって職員会議をもつことが難しい状況がある。現状は、施設長が現場を巡回して、職員の気づきや課題を吸い上げ、取りまとめて、改善策を職員に提示する方法をとっているが、作業時間を工夫して必要なミーティングの時間を確保し職員相互の協力体制を強化したい。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 【課題目標の設定】
・放課後等デイサービス事業(2021年より廃止)の経営の安定を目指し、通所する利用者を増やし、利用率を高めることを課題とした。
【取り組み】
・利用者募集の宣伝、その一環としての実習生受け入れや、特別支援学校への送迎時の声かけを行った。
【取組みの結果】
・利用者募集の宣伝効果がなく、利用者増につながらなかった。
・利用率は高まらなかった。
【今後への反映】
・経営継続が困難にない、放課後等デイサービス事業の廃止を理事会で決定した。
・就労支援継続B型事業としての中長期計画に課題を引き継ぎ、「利用稼働率の向上」、「新規利用者の獲得」を掲げた。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定したが、その達成に向けて取り組みが行われていなかった
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行っていなかった(目標設定を行っていなかった場合を含む)
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
放課後等デイサービス事業(2021年より廃止)の経営の安定を目指し、通所する利用者を増やし、利用率を高めることを課題とした。取り組みとしては、利用者募集の宣伝その一環としての実習生受け入れや、特別支援学校への送迎時の声かけを行った。その結果は、利用者募集の宣伝効果がなく、利用者増につながらなかった。また、利用率を高めるための具体的な取り組みが行われておらず、利用率は高まらなかった。結果としては、放課後等デイサービスについては、経営継続が困難になり、2021年度より、放課後等デイサービス事業の廃止を理事会で決定した。また、同様の課題は、就労支援継続B型事業としての中長期計画に引き継ぎ、「利用稼働率の向上」、「新規利用者の獲得」を掲げ、中長期計画には年度ごとの目標値と働きかけの内容を明記するなど、具体的な内容とし、検証可能な目標設定が行われている。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 【課題目標の設定】
・就労継続支援B型事業について、好調なベーカリーのパンを始め、生産品の販売増を目指した。
【取り組み】
・生産費の販路拡大のため、「クルミル」など、東京都の障がい者施設の事業所商品を集めたショップへの出品を行った。
・生産に従事できる利用者を増やすため、実習生の受入れを行った。
【取組の結果】
・「クルミル」等への出品は、予想していた売上につながらなかった。また、新規顧客開拓につながらなかった。
・販路拡大に対する職員の取り組み方を見直す必要を確認した。
【今後への反映】
・施設長が販路拡大に責任を持ち、利用者と共に働き、自主生産品の質を高め、販路拡大のために地域とのつながりを深めていくことを次年度の事業計画に盛り込んだ。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
就労継続支援B型事業について、好調なベーカリーのパンを始め、生産品の販売増を目指した。生産費の販路拡大のため、「クルミル」など、東京都の障がい者施設の事業所商品を集めたショップへの出品を行うとともに、定員を確保し、生産に従事できる利用者を増やすため、実習生の受入れを行った。その取組の結果、「クルミル」等への出品だけでは、予想していた売上増や新規顧客開拓につながらず、販路拡大に対する取り組み姿勢そのものを見直す必要を確認した。今後への反映として、施設長が販路拡大に責任を持ち、利用者と共に働き、自主生産品の質を高め、販路拡大のために地域とのつながりを深めていくことを次年度の事業計画に盛り込み、中長期計画にもその目標を明確にしている。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
来所する人向けにリーフレットを準備しており、住民が行き交う場所にも置いている

事業所は二つ折りの案内リーフレットを作成しており、事業所を訪れる利用希望者およびその家族に手渡されている。また、それとは別に利用の具体的な内容が記された文書も作成されており、そこには利用のプロセスまで詳細に記されている。リーフレットは隣接するカフェベーカリー、しおん工房の目に付く場所にも置かれており、同法人が運営する地域子育て支援センターの受付にも配置されている。パン等を市内の関係機関に車両を使って配送していて、度々市民と接することもあるため、問い合わせの時に備えて車にも搭載している。

ホームページやSNSなどのメディアで視覚に訴えた広報宣伝をしている

今日の仕方に合った広報宣伝をすべく、インターネット等での事業所情報の発信に熱心である。インターネット上にある法人のホームページには、事業所の理念・運営方針が最初に掲げられており、事業所の一日の流れや年間の行事一覧、さらには利用者が事業所内のプログラムで制作した作品等の写真も掲載されている。その他インスタグラムなどのSNSなどからは管理者発の情報発信がされている。電子メディアでの広報宣伝については今後も拡充していく予定である。

特に特別支援学校と地元行政には利用者の募集を行っていることを知らせている

事業所は特別支援学校との関係性が深く、そのため市内の特別支援学校への情報提供は年間を通して数多く行っている。また、地元行政にも接触の機会がある毎に、利用者枠に余裕があり、受入れていることを常に伝えている。利用希望者には事前見学と利用希望があれば、体験利用をしてもらうようお願いしている。これは事業者としてもどのような人なのかを知る必要があるのと、利用者が納得して利用してもらいたいからである。体験期間は特に定めてはおらず、任意の期間となるが、大方2、3日である。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
事業所の理念等も理解してもらった上で契約に入り、利用者負担金も説明している

サービス利用に入る前の利用契約時には、事業所の理念と運営方針に重点を置いた説明をしている。事業所の成り立ちや利用者の様子も併せて説明し、納得して利用に至るようにしている。その後、契約書・重要事項説明書を前にして丁寧な説明を、特に利用負担金について具体的な数字を挙げて説明し、またその他、年に1回行う宿泊訓練についての費用、レクリエーションについての費用徴収についても数字をあげてお伝えし、了解を得、快諾して頂いた後、署名および捺印をお願いしている。

契約時は一方的な説明だけでなく、利用者サイドの意向も聴いている

サービス利用契約時には事業所からの一方的な説明に終始せず、利用者およびその家族からの意向・意見を十分に伺うことに努めている。そこで得られた情報は記録に書き起こされ、日常の支援に活かしている。サービス利用に伴い、生活が変化することでストレスなどに脆弱な利用者もいるため、従前の利用者の生活を家族からの情報で詳細に知ることにより、生活の変化をできるだけ抑制する方向で支援している。また、ストレスが顕在化したところでは、職員の声かけ等により適度な介入を行い軽減の方向で支援している。

サービス終了後の先を案じ、継ぎ目のないフォロー体制を準備している

サービス終了時には生活の変化が生じるため、その変化後の生活を案じた支援を行っている。終了する局面においては必要に応じて面談や関係機関を集めてのケースカンファレンスを開催するなどして、できるだけ変化によるストレスや不安を抑える方向で支援がスムーズに進むように、関係者の役割分担を決めて、利用者のフォローにあたるなど継ぎ目のない支援を心がけている。例えば、家族と引越しするため、サービスを終了することとなった利用者は相談支援事業所と連携をとり、退所に纏わる不安を取り除きながら退所まで支援を行うことができている。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
定められた書式によって情報は保管・管理されている

利用開始時には利用者の心身の状況や生活状況等を把握するため、事業所が定めた書式によって情報を記録している。事業所では、生育歴・医療情報を中心とした情報を収集するための「利用者情報シート」、利用者の日常生活能力や日課など生活全般の様子を知るための「利用者の生活についてのアンケート」、個別支援計画を策定するため利用者が思う生活目標や課題を書き入れてもらうための「個別支援計画作成シート」を作成している。これらは3つの書類は、不備なく揃っていることを確認した上で、個人ファイルに保管・管理される。

個別支援計画は、手順どおりに作成され、利用者の同意を得て実行される

個別支援計画は、利用開始後すぐに策定され、支援の方向を指し示すものとなっている。サービス管理責任者が中心となり、サービス当初に作成された「利用者情報シート」、「利用者の生活についてのアンケート」、「個別支援計画作成シート」により、情報を集約し計画案を作成、その後、所内で管理者、担当職員と検討を重ね、最終案を利用者に提示し、利用者に合わせた説明を行い、了解を得ている。個別支援計画は6ヶ月毎に見直し、更新を行っている。利用者の状況に急変が生じた場合はこの限りではなく、事態の推移に応じて柔軟に対応している。

一人ひとりの日々、毎日の記録を大切に書き留めている

利用者一人ひとりについて個別状況を利用日毎に定められた書式に従い、記録している。また、サービス管理責任者は別個に「サービス管理責任者ノート」としてサービス管理者の視点で利用者毎の細かな動きを記録として留めている。施設長は、上記2つの記録をまとめた上で、事業所としての対外的あるいは組織的動きを含めて、「学園日誌」として記録している。これらはいずれも職員全体に情報共有され、支援に活かされている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
理念を土台に据えた個別支援計画は、記録や会議などで実際の支援を確認している

事業所の理念に忠実に、利用者一人ひとりの個性を尊重しその感性を輝かせ日々豊かに過ごすことを大切にした、個別支援計画を作成している。計画に基づいて支援は行われ、実際に計画通りに支援が行われているかについては毎日の作業状況を記録している個別記録やサービス管理責任者の手によるメモ、学園日誌等、会議などで確認している。利用者および利用者を巡る状況に変化があった場合は、計画に拘ることなく、まずは支援を優先し、その後、一定の手順に沿って計画の見直しを行っている。

言葉を通じての意思疎通はできているが、誤解や取り違いに注意して支援している

障害の程度を考慮して個別の対応を図っているが、何か特別のツール、例えば絵カードや写真などのツールを使っての配慮などはする必要はなく、全体としての伝達方法についてはそれほど課題はないと考えている。その理由として、利用者の一部を除いて多くは障害支援区分が比較的軽いほうであり、言葉でのコミュニケーションが十分可能だからである。ただし、それでも誤解や取り違いは多々あり、言葉でのやりとりはゆっくりはっきり、利用者が理解できたかどうかの都度確認は必要である。

人間関係を調整してだれもが事業所での生活が平穏になるよう努めている

利用者が平静に作業を遂行することができ、かつ周囲との人間関係においても平穏な世界を築けるよう、事業所では関係調整を中心とした必要な支援を行っている。利用者一人ひとりの人柄や行動を把握し、その日の作業種目や気分変動のある利用者がいればその日の天候まで考慮に入れて対応している。不穏な雰囲気を察した時は、グループを分けたり、時には集団から切り離してみたりと事前の予防策はとっている。トラブルが発生した場合には職員が即座にマンツーマンで介入し、当事者にも、周囲の利用者にも後に影響が長引かないようにしている。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している
講評
利用者に適した作業がなくても作り出す、という意気込みがある

事業所の理念を体現する最も重要な事項として、利用者一人ひとりの意向をもとにして、その人らしさを発揮できる場となるよう努めている。その人に合った作業を選ぶだけではなく、今現在その人が発揮できる場が存在しないのなら、これから作ればいいという考え方にまで到達している。この考え方はクリエイティブであり、挑戦的である。授産作業の多くの部分は隣接する保育所からの受注作業であるが、そうした環境下にいることが作業を作り出しやすさを助けている。だが、このことは同時に事業所が数多くの作業を抱えるという負の面も露呈させている。

ルールは大らかさを心がけ、スマホの使い方は利用者・家族の意見を聞いて検討中である

日中活動の場の事業所であるため、生活全般に対してはそれほど多くのきまりごとがあるわけではなく、あっても強い拘束力をもっているわけではない。例えば、作業中のおしゃべりは、度を越す場合はその都度注意するに留めている。最近、話題となることが多いのはスマートフォンについてである。事業所へのスマートフォンの持ち込みは許されているが、通所時間中は操作しないことを条件にしている。現在、スマートフォンのマナー等については新たな問題が出ているので、利用者や家族の意向をよく取り入れ、ルールづくりを検討しているところである。

利用者も調理補助などで関わることができる、その食事の味わいは格別であろう

希望者には昼食を提供している。食事は保育園の献立と同じで、保育園の調理室で調理されている。保育園と同じ献立ではあるが、量などは大人の目安となっている。調理補助やおやつ作りで関わる利用者もいることで、ここの事業所での食事は、ただ職員から出された食事を摂るという受け身の意味を払拭させ、自分たちも食事作りに関わっているという能動的な意味が込められている。食事中は音楽も流れており、自由な雰囲気でそれぞれの利用者が食事を楽しんでいる光景が印象的である。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている
講評
利用開始時の3点セットで対応策をとりまとめ、支援にあたっている

利用開始時には医療情報を中心に記載されている「利用者情報シート」、利用者の日常生活動作の状況が分かる「利用者の生活についてのアンケート」を作成しており、これらを拠り所にして利用者一人ひとりに必要とされる支援策がまとめられ、支援が実行されている。毎日の健康管理の要としては、毎朝に行う検温などの健康チェックや声かけ、連絡ノートや電話などを通じての家族からの情報伝達などで、日々の利用者の健康状態を把握している。判断に迷う専門性の高い内容については隣接する保育所所属の看護師にアドバイス等を求めることもある。

看護師によって健康情報が毎月もたらされ、無理な通所は控えるように伝えている

毎月発行されている「しおん学園だより」には毎回、「保健だより」として保健衛生関係の記事が看護師による筆で掲載されている。ここにはインフルエンザや新型コロナ感染症等の話題、食事と健康の問題など、多岐に渡って健康についての注意喚起も含めた情報が提供されている。日頃から健康管理に気を配り、例えば、通所日であっても体調がすぐれない場合は大事をとって自宅で療養するよう利用者および家族に伝えている。事業所内で体調の急変があった場合は家族に連絡をし、必要がある場合は救急隊への救急要請もしている。

万が一の場合を考え、内服薬は処方薬一覧表とともに預かっている

日常的に薬剤を預かったり、服薬確認などの支援はしてはいない。だが、東北大震災等の時の教訓を活かして、災害等非常事態に遭遇した時のことを想定し、万が一帰宅困難者となった場合に備えて、希望する利用者については一定量の内服薬を預かっている。この時、処方箋薬局から出される処方薬一覧も受け取って保管している。処方薬に変更があった場合は速やかに申し出るよう家族にはお願いをしている。管理は看護師が受け取りから保管まで一元的に行っており、薬剤と処方薬一覧は事務室の鍵のかかるキャビネットに保管されている。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
保育所出身者を中心にして家族との協力関係を築いている

利用者のうち3分の1は就学前に保育所を利用しており、その家族は法人の理念や方針、その他組織文化を承知していることが、家族との協力体制をとっていく上での最大の強みである。ただし、3分の2はそうでない利用者であるため、バランスをとりながらの関係構築に苦心している。家族が事業所に何を期待するかが異なっており、協力体制をとる上で隘路となっている。協力関係を築くにあたっては何よりも利用者尊重の姿勢を中心においている。キーパーソンの家族が就労していることも多く、情報の共有がしにくいのことが課題の一つである。

笑顔の写真と親しみやすい言葉で事業所の様子が伝えられ、家族は楽しみにしている

毎月発行される「しおん学園だより」には、日頃の事業所の様子が利用者が活動している写真とわかりやすい文章によって紹介されていて、毎月楽しみにしている家族もおり、好評である。公への写真公表には承諾を得られない家族の利用者以外は、毎回どの利用者も写真の中に写り込むように配慮している。その他、インターネット上のホームページには、事業所の成り立ち、一日の流れが説明され、利用者の作品等も掲載されている。その他インスタグラムなどのSNSなどでも情報発信はされている。また、保護者会は年に1回行われている。

虐待が疑われるケースは家族と信頼関係を保ちつつ注意深く観察している

虐待が疑われるケースについては職員間で情報を共有すると共に相談支援事業所と密な連携をとって問題解決に向きて動きを進めている。利用者との何気ない会話から情報を入手することもあり、慌てず焦らずを基本に、職員間で話し合い、問題発覚後のことも考えて対応している。今のところ、大事に至ったケースはないが、職員が利用者から耳にしたちょっとしたエピソードをきっかけとした事例など、要観察の事例は発生しているため、家族との信頼関係を軸にして、関係機関も含めた情報共有に努めている。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
玉石混合の情報から利用者に適切な情報を選び提供している

事業所には、行政や関係機関などから数多くの情報が寄せられ、チラシ・ポスター等も数多く送られてくる。事業所としてはそれらすべてを利用者に伝えることには無理があり、加えて利用者の利益にそぐわないと考えている。それら情報は利用者に適切か否かを判断した上、利用者には掲示や直接手渡し、あるいは口頭などによって情報を伝達している。利用者からの質問にはいつでも答えられるよう行政や関係機関が行うイベントや地域にある社会資源の利用など、職員間で情報の検索、情報共有を絶えず行い、利用者の期待に応えられるようにしている。

利用者自ら地域に飛び込むことで、自立へ向けた布石が打てている

地域行政が主導するアートイベント「いのちかがやけ作品展」に毎年、利用者の作品を引っさげて参加している。ここに参加することが利用者の日頃のアート活動を地域の人々に知ってもらう良い機会であり、利用者はやりがいを感じるハレの舞台ともなっている。また、事業所は自主活動として、定期的に近隣の清掃活動を行っており、こうした地域への貢献を通じて事業所の存在を知ってもらっている。こうして利用者自らが積極的に地域の中で飛び込むことで、将来の自立へ向けた基盤整備に繋がることを期待している。

  評価項目12 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
まずは挑戦してみる、その気持ちを大切にした支援をしている

体験利用の際には、まずは面談を行い、利用者の得意なこと、やってみたことについて尋ね、相手の反応を見ながら話を進めている。複数の作業の中から利用者に合いそうな作業をピックアップし、とりあえず、取り掛かってもらうことにしてしている。継続可能で適性ある作業を勧めるが、利用者本人が納得して決定してもらうことを基本にして、また、作業について多少のアレンジをすることも良しとしている。その時のやりたい気持ちを大切にして、それが継続できるような支援を心がけている。働きについては常に正のフィードバックをするようにしている。

工賃のしくみ作りや利用者への説明は今後の課題である

作業の種類やその成果、評価方法が多様であるため工賃のしくみは必ずしも明確なものになっておらず、また説明も十分とは言えない。事業所は、今後の課題であることは認識しているが、働くことの喜びは工賃以外にもあることを利用者とその家族には知ってもらいたいと考えている。また、音楽や造形などのアートな活動も心の豊かさを広げていく上で大切なことであると伝えている。なお、現在、作業の工賃支払いの方法は、ポイント制と時給制に分かれており、今後は作業種目の整理も含めて、工賃支払いの方法が課題となっている。

自立した販路の拡大を現代のツールを使って達成したいと考えている

社会に役立つこと、誰かに喜んでもらえることを大切にする中で、工賃アップをしたいと考えている。その上で、様々な体験を増やし、人としての成長を促すため、少しずつ仕事の幅を広げるよう取り組んでいる。まずは、市内の障害者支援施設と繋がって、関係性をがっちり固めて、地を這うような顧客開拓を積極的に行っていきたいと考えている。また、現在の商品ラインナップも変更を加え、今の時代にもてはやされる、商品を開発したいと考えている。例えば、インスタグラムで「映え」するような商品も登場させたいと虎視眈々と狙っている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
個人情報保護規定を丁寧に説明し、同意を得た上で承諾書に署名・捺印を得ている

サービス利用開始時に個人情報保護規定を書面の形にして丁寧に説明し、理解を得られたのであれば、個人情報利用承諾書に目を通してもらい、さらに説明し、同意が得られれるのなら、そこに署名・捺印をもらっている。実際に個人情報のやりとりを外部とする場合には、書面の取り交わしはされてはいるが、利用者との信頼性を高めるため、その都度、利用者本人の言葉での了解を得ている。

私物の置き場所として仕切られた棚を提供している

利用者には、事業所は仕事をする場所なので、通所や作業に必要のない物品は持込まないようにと伝えてはいるが、それでもある程度の私物は必要となるため、置き場所として、棚を仕切りで区切った個人スペースを提供している。各個人スペースには利用者のネームプレートがつけられており、他の利用者との所有物と混在しないようになっている。棚には扉や鍵はないため、利用者には他の利用者の物品には触らないようにとの指導をしている。

利用者主体の意思決定と「ノ―」と言える仕組みで支援をしている

事業所は常に個人の意思を尊重した支援を行っている。事業所が独善的にものごとを決めたり、お仕着せの判断をしないようにしている。利用者にサービス等の提供について意志決定を求める際にはいくつかの選択肢を用意して答えやすいようにしている他、時には「ノー」ということも許容している。ただし、すべて拒否については合理的な理由があってのことで、そのことは利用者にも根気強く説明してわかってもらうようにしている。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている
講評
一つの作業に一つのマニュアル、授産作業の数だけマニュアルがある

事業所では、数多くの授産作業を有しており、基本的にそれら一つ一つに作業マニュアルが作成され、作業はマニュアルの手順・取り決めに沿って進められている。マニュアルはいずれもA4版1枚に収まるように作成されており、例えば、牧場での一日の作業の流れが説明されたマニュアル、カフェベーカリー部門での製造マニュアル、カフェ店内の清掃マニュアル、パンの配達マニュアル、保育園での洗濯物マニュアル、調理場食器洗いマニュアルなど多岐に渡っており、それぞれに作業内容、留意点がかかれ、従事者(利用者)・支援の要点が書かれている。

マニュアルに使われるのではなく、マニュアルを使いこなしている

施設長は、各種マニュアル通りに作業が遂行されているかについて、記録や職員会議等で確認しており、疑問が生じたならばサービス管理責任者や担当者に確認するなど、明確な誤りが見つかれば、早期に改善されるよう指示を出している。職員も普段からマニュアルに沿った支援をすることを身に付けており、マニュアルに縛られることなく、マニュアルの核を理解した上で、定められた手順を守ることを肝に銘じている。マニュアルは通常、事務室のだれもが手にとりやすい書庫に堂々と配置されており、臆することなくだれでも手にして良いことになっている。

日々刻々と変化する作業状況に合わせて、マニュアルも変わり続けている

利用者の意向や能力、特性に合わせた授産作業を行っているためもあり、授産作業自体が変化をし続けている。社会状況との兼ね合いで、需給関係のバランスも変化しており、そのため今日のマニュアルは明日のマニュアルではなく、絶えず見直し、手直し、作り直しが迫られている。マニュアルの変更にあたっては現場での利用者・職員からの声、保護者の意見も重要視している。職場としてマニュアルの見直しを年に1度は行っており、緊急に変更を要する場合は即応できる体制を整えている。