東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和3年度
サービス名称 認可保育所
法人名称 社会福祉法人東保育会
事業所名称 中島ゆうし保育園
評価機関名称 株式会社 評価基準研究所

コメント

利用者調査・職員調査は、WEBでの調査を実施し、携帯電話・スマートフォン・パソコンによる回答を中心とし、紙ベース希望者には従来型の紙による回答も可能とした。利用者調査開始時には、調査の趣旨や手法などに関する詳細な説明と個別のID・パスワードを記した案内状を封緘封筒に入れて全家庭に配布し、職員向けにも同様の案内状を配布した。経営層には各標準項目の自己評価を的確に行うための独自資料を提供するなど、事業所向けの配慮も行っている。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1) 認知・非認知能力の獲得の基盤を健康な心と体と考え、食と睡眠に着眼し取り組みを推進している。 2) 市内の里山を拠点に活動することで、身体能力を高め、社会性を養う。  3) 保護者とのコミュニケーションを低下させないようにアプリ等を使い情報発信をする。   4) 里山活動を通じて地域と交流する。  5) 新型コロナウィルス感染症、災害、重大事故の対策を強化し、保育を持続させることに注力する。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

子ども、保護者、地域の方、同僚、自分自身にカウンセリングマインドで関われる。 保育の仕事にやりがいを感じ、生き生きと働く姿勢を子どもに示す。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

保育所保育指針で示されたように乳幼児期の保育が、子どもの将来に大きく影響をすることを理解する。 専門職として自覚を持ち、実践を理論化し、更に実践に活かすサイクルを回していって欲しい。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 子どものワクワク感を引き出す魅力的な環境を構成し子どもの主体性を育み、多彩な遊びや活動を通して子どもの経験を豊かにしている

活動を自由に選べる魅力的なゾーン、さまざまな手作りの玩具、丁寧な掲示や展示にあふれた保育室、静かにそっとくつろげる空間、落ち着きのいい園庭、五感を刺激し子どもの冒険心をかきたてる里山…。上手にメリハリをつけながら細部にも丁寧な心配りをし、子どものワクワク感を引き出す環境を構成している。この環境に自ら関わることで、子どもたちは主体性を身に着け、自ら選択した活動をやりきる満足感を得ている。日々工夫を続け更新されていく魅力的な環境構成により、子どもたちの生きる力を育みながら、経験を豊かにしている。
2 子どもの意思と人権を尊重し、子どもの話を常に丁寧に聞きながら保育をすることで、子ども自身の自律を促し、生きる力と心を育んでいる

子どもを見守る姿勢として当園が徹底しているのが、(危険が及ばない限り)子どもを叱ったり抑止したりしないということ。不適切な行動や危険な行動がみられた場合でも、職員全員が子どもの視点に立ってフラットに話を聞くことを心掛けている。子どもをまず信頼し、事情や経緯を把握し、子ども自身に考えさせることで不適切な行動の再発や事故防止につながると考えているからだ。この姿勢はまさに園の理念「子どもに生きる力と心を」、保育目標「生きる力の基礎を培う」の実現であり、子どもを信じる姿勢が、子ども自身の人権意識と自律を育んでいる。
3 良いと思ったことに積極的にチャレンジする前向きな姿勢を持ち、常に向上意欲をもって課題を改善し、保育の質を向上させている

良好なチームの下で質の高い保育を展開する当園の長所を一言でいえば、園としての向上意欲ということになるだろう。研修直後だけではなく3か月後と6か月後に振り返りを記載するようにした研修記録の書式改善はその好例で、個々の学びを深め組織力に昇華させていくための素晴らしい試みだ。これだけでなく当園には常に、(法人内の他園と横並びでよしとせず)自園で良いと思ったことは他に先駆けて挑戦するという前向きな気風がある。保育全体が楽しそうに見えるのもそのためだろう。ポジティブで活気に満ちた姿勢の、今後の継続に期待したい。

さらなる改善が望まれる点
1 一人ひとりの学びの共有と実践のための工夫をしているが、それをより効果的なものとするための、さらなる意識の徹底と実践を期待したい

一人ひとりの学びを園の力(組織力)にしていくためには、(外部研修などでの)個々の学びを園内でいかに活かせるかにかかっていると園は考えており、研修報告書の書式等に確かな工夫が見られる。3か月後、半年後にその(学びの)内容をどう園の実践に生かしたか記述しようということもその工夫のひとつだ。とてもいい工夫だが、現状では自分の中での”振り返り”、というレベルにとどまることが多く、実践結果の報告に結び付いていないことが少し残念なところだ。”実践報告”を記載しようという意図を周知し、さらに取り組んでいってほしい。
2 現状のリーダー層によるすぐれた指導力・運営能力をベースに、若手の主体性をより生かすべく、次のステージにさらに進化していってほしい

園長・主任・副主任・看護師・栄養士・乳児と幼児の保育リーダーの7名から成るリーダー層の力と連携は素晴らしく、定期的な話し合いの下、スムーズに園運営が進められている。若手職員に対するリーダー層の指導も素晴らしく、職員もリーダーを信頼して日々の保育にあたっている。しかしその一方で、リーダー層に対する職員の依存的傾向も見受けられる。若手職員の積極性と潜在能力を引き出しさらに成長させていくためには、プロセスよりも実践結果を客観的に判断していく視点の導入など、次のステージの(高いレベルの)指導が必要なのかもしれない。
3 子どもの意見を聞き、尊重していく文化を土台にして、子どもたちの保育への参画をさらに深め、多彩な園の活動に昇華させていってほしい

改善点ということではなく、今後のさらなる発展に期待することとして指摘したい。それは、子どもたちの保育への参画のさらなる深化だ。今年、年長児の言葉から園行事へと発展したという「オリンピックごっこ」は、まさに子どもの保育への参画の好事例だが、当園には、2歳児から給食配膳で自分の希望を言うなど、子どもの声を引き出し尊重する文化(子どもの側からすれば自由に意見を述べ認められる文化)が定着している。これを土台にして、子ども自身の声をさらに聞き出し、園の活動に昇華させていってほしい。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 保育者と子どもの協働で、子どもの生活を温かく見守り、園の理念を具現化している

子どもの言葉をそのまま使った掲示物、さまざまな子どもの作品、保育者の子どもたちへの励ましの言葉、保護者への里山活動の案内や健康啓発の掲示…、当園の園舎内に満ち溢れているのは、さまざまな声。そのどれもが、子どもの育ちを温かく見守ったり、生きていること自体を喜んだり、自分の前にいる大切な仲間に呼びかけたりするもので、その背後には、子どもと保護者への保育者の肯定的であたたかな視点、子ども自身の健やかな自己肯定感がある。保育者と子どもの協働で、「子どもに生きる力と喜びを」という園の基本理念を具現化している。
関連評価項目(事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している)
2 ★ 子どもの意思の尊重と魅力的な環境構成により、子どもの遊びと生活を豊かにしている

当園の幼児クラスには、えほん/ブロック/ごっこ/ゲーム・パズル/せいさくなど、多彩なゾーンが設定されており、子どもたちが遊ぶ場所や素材を自由に選べる。幼児たちが主体的に環境に関われるのは、乳児期から豊富に用意された手作り玩具を自由に選んだり、給食配膳時に自分の希望を言ったりと、自分で考え選択する(そして認められる)ことを十分に経験してきているからだ。子どもの意思表明を十分に尊重する保育者の姿勢と、子どものワクワク感を掻き立てる魅力的な環境構成が子どもの主体性を育み、子どもの生活や遊びが豊かに展開されている。
関連評価項目(日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している)
3 ★ 地域と協働した里山での活動を通して、子どもの生活と世界観を大きく広げている

当園の保育環境をさらに豊かにするものに法人所有の里山「ゆうしの里山」がある。地域のNPOとも協働し作り上げた里山環境は、子どもたちに無限の可能性を感じさせるスケールの大きなフィールドだ。そこでの自然観察、探検、栽培・収穫活動を通して、園内では決してできない経験が得られる。里山を軸に地域の人との関わりも生まれ、家庭も巻き込んで地域がつながってきた。子どもたちが帰属感を感じる自分の世界を大きく広げていき、故郷という意識になって心の中に残っていくだろう。子どもの生活と世界観を広げる、素晴らしい地域連携である。
関連評価項目(地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:調査開始時点での本園の利用世帯107世帯(園児総数140名)を対象として実施した。なお、兄弟姉妹がいる世帯は1世帯として扱った。

調査方法:アンケート方式  
調査項目は共通評価項目に準拠した。回答は、弊社オリジナルWEBベース方式(パソコン・携帯・スマホ)で行いWEB回答できない保護者には紙ベースの回答を、園で回収・弊社宛てに郵送してもらい集計に加えた。

利用者総数 140人
利用者家族総数(世帯) 107世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 107人
有効回答者数 79人
回答者割合(%) 73.8%

総括
総合的な感想では、園に対する満足度は「大変満足」が55.7%、「満足」が40.5%の合計96.2%であり、保護者から園への信頼は、非常に高い数値となっている。設問別でも、「子どもの心身の発達」と「園での活動が子どもの興味や関心を持って行える」、「職員の子どもの気持ちを大切にした対応」で90%の利用者が満足であると答えている。また、「提供される食事」、「職員との信頼関係」、「園内の清潔さ」、「職員の言葉遣いや態度」、「子どものけがや体調不良時の対応」、「プライバシー保護」、「保育に関する説明」などで80%以上の利用者満足があった。それ以外のすべての項目でも高い満足度であり、今後は今回保護者から出された個別意見の対応可能な事柄へのさらなる配慮や説明を充実させていただくことに期待したい。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 78人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が98.7%、「いいえ」が1.3%という結果だった。自由意見では、「散歩や運動など、日ごろから体を動かす活動を行っており、心身の発達に繋がっていると思います。」「家では小さい赤ちゃんが居て細かく切ったりする工作などなかなかやらせてあげられないが、保育園でやって下さったり、お友達と協力して何かを作ったり、時間で行動したり、先生のお話を聞いたり、これからの長い学生生活が始まるのに、協調性を学べてありがたく思っています。」などの意見があった。
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 75人  どちらともいえない 4人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」が94.9%、「どちらともいえない」が5.1%という結果だった。自由意見では、「幼児クラスでは選択制で自分が興味のある遊びに取り組めています。」「先生方もお忙しいのに子ども達の為に、色々考えて下さってると思います。どの先生もピアノだけでなく楽器を弾けるのは凄い!と思いました。」「保育園での生活を通して、大きく成長しています。毎日保育園で楽しく過ごせているようで、先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。」などの意見があった。
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 67人  どちらともいえない 6人  いいえ 4人  無回答・非該当 2人 
「はい」が84.8%、「どちらともいえない」が7.6%、「いいえ」が5.1%、「非該当」が2.5%という結果だった。自由意見では、「毎日旬の果物を提供していただけてありがたい。給食と保育の連携がとれているように感じる。クイズなどで食材の掲示物を出してくださっていて、子どもと楽しませてもらっている。またそれが食育にも繋がる。 欲を言えば、本当にごくたまにですが、副菜が物足りなそうに思うことがある。」などの意見があった。
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 62人  どちらともいえない 14人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が78.5%、「どちらともいえない」が17.7%、「いいえ」が3.8%という結果だった。自由意見では、「散歩の際に公衆電話など街中にあるものの意味を説明してくださっているようで、ありがたいです。」「特に「ゆうしの森」は都内にいながら自然に触れることができる貴重な体験となっている。」「信頼できる先生方、環境で保育していただき、本当に感謝しています。」などの意見があった。
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 62人  どちらともいえない 9人  いいえ 1人  無回答・非該当 7人 
「はい」が78.4%、「どちらともいえない」が11.4%、「いいえ」が1.3%、「非該当」が8.9%という結果だった。自由意見では、「かなり柔軟に対応頂いてます。いつもありがとうございます。」「母の在宅により時短ではなくフルタイムに変更になることがあるが、受け入れ態勢は整っている。」などの意見があった。
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 62人  どちらともいえない 13人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」が78.4%、「どちらともいえない」が16.5%、「いいえ」が5.1%という結果だった。自由意見では、「ドアもオートロックなので安心です。 避難訓練を定期的に実施している印象です。」「洋服の指定等も配慮の上であると感じている。指定する際は図等で示してもらえたらもっと親切だと感じる。」などの意見があった。
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 48人  どちらともいえない 23人  いいえ 7人  無回答・非該当 1人 
「はい」が60.7%、「どちらともいえない」が29.1%、「いいえ」が8.9%、「非該当」が1.3%という結果だった。自由意見では、「基本的に土曜日に設定されている。」などの意見があった。
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 65人  どちらともいえない 12人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が82.3%、「どちらともいえない」が15.2%、「いいえ」が2.5%という結果だった。自由意見では、「保育方針をしっかり打ち立て、それにそった保育が行えるよう、先生方は勉強、研鑽に努められていて、とても良い保育所だと思います。 子どもにも、保護者にも寄り添う気持ちを持ってくださっていることもよく伝わり、丁寧に子育て家庭の毎日を支えて下さっています。 職員の先生方が保育を楽しむ姿勢も、先生方の表情の良さに溢れていて、子ども等の過ごす環境として、とても良いと思います。」などの意見があった。
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 70人  どちらともいえない 6人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
「はい」が88.6%、「どちらともいえない」が7.6%、「いいえ」が2.5%、「非該当」が1.3%という結果だった。自由意見では、「保育補助の方達が丁寧に掃除されてて、ありがたい。」などの意見があった。
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 68人  どちらともいえない 8人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が86.1%、「どちらともいえない」が10.1%、「いいえ」が3.8%という結果だった。自由意見では、「たまに、幼児クラス以外のクラスで感情的に子どもに注意?怒っている?ところを見かけます。本当にたまにですが。」「子どもにフードを禁止しているので、職員もフードのある服装は控えた方が良いとは思います。」などの意見があった。
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 70人  どちらともいえない 6人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が88.6%、「どちらともいえない」が7.6%、「いいえ」が3.8%という結果だった。自由意見では、「発熱が急増した際には迅速にアプリを通して通知を下さり有り難く感じた。」などの意見があった。
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 62人  どちらともいえない 11人  いいえ 4人  無回答・非該当 2人 
「はい」が78.5%、「どちらともいえない」が13.9%、「いいえ」が5.1%、「非該当」が2.5%という結果だった。自由意見では、「決めつけず、寄り添い、話し合いを促してくださってると感じています。 どうしても親だとよその子を優先させてしまいますが、第三者の立場から見てくださり、子供にも考える機会を与えていただきありがたく感じています。」などの意見があった。
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 73人  どちらともいえない 5人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が92.4%、「どちらともいえない」が6.3%、「いいえ」が1.3%という結果だった。自由意見では、「保育を見る機会が今はないが、日常の先生たちのお話を聞く限りだと、子どもの特性を理解して対応してくださっているように感じる。」「先生方の明るく優しい対応には、常に感心させられておりますし、親としても励まされることが多いです。子供達の性格も良く理解してもらっています。」などの意見があった。
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 69人  どちらともいえない 8人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が87.4%、「どちらともいえない」が10.1%、「いいえ」が2.5%という結果だった。自由意見では、「SNSへの肖像権に関する承諾書について、承諾しない場合の意思表示方法の提示があると良い。」などの意見があった。
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 67人  どちらともいえない 9人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が84.8%、「どちらともいえない」が11.4%、「いいえ」が3.8%という結果だった。自由意見では、「キッズノートで毎日写真付きで日頃の様子を見せてもらえて、よく伝わってきます。」「先生からの連絡帳、いつも楽しみにしてます。子供の様子が目に浮かぶような表現が沢山あり、嬉しいです。」「とても子供や両親に対して親身になってくれている保育園だと感じます。先生方もお忙しい中、保育園での様子や子供の気持ちなどを教えて下さりとても有難いです。」などの意見があった。
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 59人  どちらともいえない 9人  いいえ 4人  無回答・非該当 7人 
「はい」が74.6%、「どちらともいえない」が11.3%、「いいえ」が5.0%、「非該当」が8.9%という結果だった。自由意見では、「運動会中止から、延期へ変更対応していただいた点大変感謝しております。」「特に不満はありませんが、そのような事があった時にはきちんと対処してくださると思っています。」などの意見があった。
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 46人  どちらともいえない 14人  いいえ 9人  無回答・非該当 10人 
「はい」が58.2%、「どちらともいえない」が17.7%、「いいえ」が11.3%、「非該当」が12.6%という結果だった。自由意見では、「該当事項がない。」「第三者委員があることを知らなかった。」などの意見があった。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
自らの保育実践を振り返り、保育の質を高めながら園の理念を具現化している

「子どもに生きる力と喜びを」という基本理念の下、当園が保育の目標として謳っているのが「子どもが主人公の保育」。その実現のために当園では、まず全員で自らの保育を振り返り課題を見つけ考えていく作業からはじめた。すると、保育の中のある場面から「保育者の声の大きさは適切か?」という気づきが出、全員の意識を高めることができたという。お題目を掲げるのではなく、日常の保育実践の振り返りとそれを共に考える協働作業の積み重ねで保育の質を高めていく。一人ひとりが自力で考え行動する、丁寧な理念の共有と浸透である。

専門性を生かしたリーダー配置と役割分担で、園の進路を明示し保育を作り上げている

当園が掲げる基本方針の中に「子どもの個性と社会のルールを大切に、一人一人を見守ります」という言葉がある。子どもが自発的に活動できるよう環境を整え子どもを見守る「見守る保育」の実践のために当園では「見守る保育・乳児」「見守る保育・幼児」という専門リーダーや「睡眠」という分野別リーダーを置き、それぞれのリーダーが積極的に自分らの保育について考えている。理念を示す園長、保育を見守る主任、学びと専門性を生かして改革に取り組むリーダーたち…。指導層の良好なチームワークで園の進路を明示しながら、保育を作り上げている。

一人ひとりの高い責任感と参画意識が、スピーディな意思決定と共有を可能にしている

意思決定・共有の機会である職員会議会に際して当園では、それぞれが議案ないし報告事項を会議フォーマットに入力し、事前共有しておくのだという。例えばある月の会議録では、園内安全チェックの結果、当月の行事報告、次月の予定、各クラスの報告、保健からの報告、専門リーダー、分野別リーダーからの活動報告・提案、園長の話と続いていた。事前共有がなければ到底一度の会議で検討・共有できないボリュームである。現場の保育者の高い参画意識と保育への責任感が効率よい会議を生み、その下でのスピーディな意思決定・共有を可能にしている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
地域の動向やニーズを的確にとらえた子育て支援を安定した園運営につなげている

当園が立地する地域は、市内でも比較的ファミリーの新入や移動がある地域。そうした地域の子育て家庭に対して当園では、一時預かり保育の他、園庭開放や多目的ホールでの施設開放、法人所有の里山活動など、新しい子育て家庭と園、地域をつなぐ多彩な子育て支援を行っている。コロナ禍でも中断せず行ってきた一時預かり保育は、子育ての中でリフレッシュを求める保護者ニーズに応え定着し、恒常的に利用者がいる状況だという。地域ニーズにしっかり応えた有効な子育て支援により地域の子育て家庭を支え、園の価値を高めつつ保育運営を安定させている。

長期計画で示されたビジョンを具体的に保育に落とし込み、事業計画を策定している

「保育・育成の質の向上」「地域と共に育ちあう」「良質な人材確保と育成」「社会情勢や保育施策の動向を見通した経営」という、法人が中長期計画の中で示す4つのビジョンを、園の事業計画の中で具体的な事業として示し、担当者と内容、目標を定める形で園の事業計画を策定している。例えば保育・育成事業は見守る保育・育成、地域子育て支援、児童館の3つの大分類からなり、それが「自然教育」や「家庭との連携」といった形で具体的に細分され、それぞれに担当者がおかれ目標が示されている。きわめて具体的、実践的な計画である。

具体的な計画をしっかりと振り返る手法で、計画を着実に実践している

計画の着実な実行のために当園が工夫しているのが、それぞれのテーマに具体的な目標を設定し振り返る手法だ。例えば「自然教育」のテーマにおける目標では「バスを利用し幼児クラスは月1回程度は里山へ出かける」など具体的に記載されている上、「量の見込み」も記載されていた。そしてその進捗について、散歩の回数や方法、里山活動の実施状況が記入されていた。この他にも「食育」「健康教育」など多様なテーマごとに具体的な目標と量の見込みが掲げられ、それぞれ進捗状況が記されている。具体的で緻密な計画と振り返りが着実な実践を生んでいる。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
全員が常に振り返り確認することを通して倫理意識を高め、人権擁護を徹底している

職員一人ひとりの倫理意識を高めるために当園が取り組んでいるのが、職員の自己評価シートの中児童の権利擁護チェックシートだ。そこでは「暴力的な言葉を使用しない」から「子どもの自由を奪うことをしない」まで8項目にわたって子どもの権利擁護に関する項目が配され、各自が毎月振り返り、遵守できたかチェックする仕組みだ。子どもの自由を制限したり、子どもの選択の機会を奪ってしまったりしたことはなかっただろうか…。保育の中で常に起こり得る、子どもの意思や自由を損なってしまう機会をしっかり振り返ることで、人権擁護を徹底している。

職員が自分の学びを人に伝える形で、意識を高めながら虐待防止に努めている

毎月の自己評価チェックに加え、毎年11月の虐待防止月間に合わせ、虐待防止研修を行っている。ここで特長的なのは、その研修の講師を、外部研修で学んだ職員が回り持ちで努めるという点。研修を受けた職員はそれを人に伝えることでより研修の内容を深く習得し、それを人に語ることで学びは深まる。こうした学びの機会を全員で持ち続けていくことで、一人ひとりの虐待や人権に対する意識が高まっていくという。主体的な学び合いを通して意識や知見を高めていく、すぐれたアプローチである。

法人で所有する地域の里山を活用し、園と地域との強いつながりを創り出している

以前から地域NPOとの連携で子どもたちの自然活動の場所として活用してきた里山を、法人の所有とし整備しスケールアップ。「ゆうしの里山」と名付け子どもたちの自然遊び活動や地域との連携の場として活用している。同里山は駅や市内各所にポスター掲示され、地域の人も自由に行き来できる憩いの場所となっている。この里山は、地域の多様な人々を温かく包み込むいわば故郷のような存在となり、園と子どもと地域をつないでいる。地域の力を生かし育み、その力を保育に還元しながら地域のつながりを創出していく、力強い社会貢献である。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
園の立地条件に適応したBCPを作成した上、防災対策についても保護者に周知している

当園の立地する地域は、河川の浸水地域になっている。それを踏まえ当園では、災害、とくに水害時を想定したBCPを策定し、災害リスクに備えている。BCPをはじめ園の防災対策は安全対策リーダーを中心にしたプロジェクトで検討・改訂されており職員の意識も高く保たれている。子どもたちの避難訓練についても、水害訓練を実施し備えている。また同時に保護者に対しても、入園時の重要事項説明書において災害への意識啓発や園の防災体制についての丁寧な説明を行っている。園の全員の防災に対する意識と力を高める、優れた手法である。

さまざまなリスクに対応した委員会を立ち上げリスクマネジメントに取り組んでいる

当園のリスクマネジメントで特長的なのは、保育内容に関わるプロジェクトとは別に、安全対策委員会、感染症対策委員会、アレルギー対策委員会といった委員会を立ち上げ、ていること。各委員会で必要な事項について話し合い対策をたてていくことはもちろん、行事の計画の際等には、保育の質を侵さないよう注意しながら委員会の提言を取り入れ、方針を決めていくという。保育の本質とそれを支えるための安全確保、双方の視点をすり合わせて現状での最適解を求めていく…。保育においてきわめて望ましいリスクマネジメントである。

情報管理を適切に行うと同時にICTの活用で情報を有効に活用・共有している

個人情報を扱う書類の管理やパソコン、データの扱いに関しては厳正なルールを定め適切に管理している。職員室もきわめてよく整理されており日常的に書類やデータがしっかりと管理されていることがわかる。しかし当園の長所をあげるとすれば、情報管理というより、むしろその活用の方だろう。子どもの成長や観察記録、保育の計画などは保育ソフトを用いて作成されており、それがスムーズに全職員に共有されているのだ。しっかりしたルールの上でスムーズに行われる情報の共有や発信。ICTの活用が保育の質の向上につながっている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
自分と人を評価することを通じて、一人ひとりの良さを認め全体の力を伸ばしている

当園の人事考課は年2回、本人の現在の仕事に対する自己評価や今後やりたいことを聞き取っていくことに主眼をおいているが、特長的なのは、園長や管理職だけが考課者を務めるのではなく、比較的若い世代も考課者を努めていること。当園では2等級以上で考課者研修を履修した職員は人事考課者を努めることができる。考課者は人事考課者会議で各人のどこをどう伸ばすか話し合っていくという。自己評価と合わせて人も評価することで、その人の良さを認め、その人に今後なにが必要か考えるスキルが身につく。チーム力を高めるすぐれた方法である。

本人の意思に基づいて選択できるキャリアパスを用意し、意欲と力を向上させている

当園では、保育実践に必要なカテゴリごとにリーダーをおいているが、リーダーの育成についても工夫がある。5年の勤務実績があれば誰でもリーダーを希望できるという制度だ。5年間勤務を続けた職員には、管理職がリーダーを希望するか打診し、希望した場合はレポートを課し、レポート審査を経てリーダーを任せていくという。ひととおりの仕事を覚えた後、ややもすると意欲が低下してしまうことがある。経験を積んだ職員に次のやりがいを用意し、レポートを課して本人の力もつけさせる。本人の意思を尊重しながら意欲と能力をともに向上させている。

互いを尊重する心を言葉にし、チームの共感を強めながら保育の土台をつくっている

「いつも笑顔がある環境をつくります」。当園の保育方針の第一にある言葉だ。いつも笑顔でいるために必要なのは、職員チームの共感。それは、互いが認め合う関係性の中で生まれるもので、共感のある場所にはいつも笑顔がある。当園のユニークな取り組みである「いいねカード」は、シンプルなやりとりで共感を強める楽しい仕組みだ。自分以外の全員に対して「いいな」と思うことを一言カードに書いて箱に入れ、それを仕分けし各自に渡すのだという。嬉しい言葉の相互贈与。当園の温かい空気感はこうした小さな工夫から生まれているのかもしれない。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 健康な心を育てるにはまず体からという方針の下、当園では健康教育を保育の柱の一つとしているが、健康の中でも特に睡眠に着目して「睡眠チャレンジ」というプロジェクトを企画した。看護師が受けた睡眠の研修をきっかけに、園長・主任が眠育研修を受け、実践を模索していった。そこで行ったのが、睡眠をテーマに何をやっていくかというきわめて実践的な視点からの話し合い。保育の中で身体を動かすことを重視してはどうか、睡眠に有効な食事はどんなものだろうとさまざまな意見が出たという。つまり看護師・保育士・栄養士・調理員が横断的に協力しプロジェクトが始まったのだ。保育の中では、オリジナルのキャラクター「ニーニンジャー」が活躍するパネルシアターを作ったり、寝ることをテーマにした絵本を読み聞かせたりして子どもたちに睡眠の大切さを伝えると同時に、保護者に対しても睡眠の大切さと園の取り組みを伝え、任意参加の形で呼びかけてアンケートを行った。アンケートでわかった各家庭の睡眠時間は円グラフで可視化して掲示。保護者の「みんなはどうしているんだろう?」「何時間くらい寝られているのかな?」等という素朴な共感を引き出しながら意識啓発を始めていった。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
誰の目にも大切に見えるテーマに対して、全員全力で取り組んだ意欲と創意工夫、そして保護者の気持ちを尊重しながらゆるやかに家庭を巻き込んでいった手法を評価したい。睡眠が大切というのは誰でもわかることだが、実際にはなかなか理想的な睡眠時間を確保するのは難しい。睡眠の大切さを改めて感じた看護師の呼びかけをきっかけに、保育者が考える子どもたちへのアプローチ、栄養士が工夫する栄養・食事面でのサポート、そして保護者への呼びかけが一歩一歩階段を登っていくように着実かつ具体的に打ち出された。互いの良さと力を認め合って協力することができる当園のストロングポイントがここで生きた形だ。加えて保護者への呼びかけにおいて、その重要性を伝えつつ任意参加としたことも素晴らしい。各家庭にはそれぞれの生活パターンがあり、わかってはいても難しい場合も多い。また強制されて取り組むのは誰でも辛く続かない。興味を持って「できそう」と思った人をまず巻き込んで一歩一歩進んでいく。本来なら全員で一斉にとしたいところをあえて保護者一人ひとりの意思を尊重したところにこのプロジェクトのしなやかな強さがある。まさに当園の保育理念「家庭と育ちあう喜びを」の実践である。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 法人所有の里山での活動や園外への散歩、当園ではそうした園外活動を事業計画の中にしっかりと位置づけて積極的に取り組んでいる。しかし園外活動には移動中の交通事故やけがのリスクなど活動の拡大に応じてリスクの可能性は高まる。そこで当園では、事業計画の危機管理事項に事故防止を掲げリスクマネジメントプロジェクトを継続、プロジェクトメンバーに重大事故発生防止研修やヒヤリハット報告書の管理、新たなリスクマネジメント対策の提案という役割を持たせた。散歩については、交通安全に配慮した散歩コースの設定に加え、散歩の行先・メンバーを記入するボードなどをつくり、安全意識と情報の共有に務めた。法人でバスを所有し里山へのバス移動が始まったことに伴い、バス引率マニュアルも早速作った。そうしたマニュアルは、職員同士が子ども役、運転手役、保育者役を努めながら実際にバスを走らせ検証し考えていったという。子どもの主体性を育む伸びやかな保育を十分に説明してはいても、安全対策の不備は子どもの危険、保護者の不安につながる。そうした不安要素をしっかりと予測しできる限り取り除き、子どもの活動をさらに広げていこうと全般的なリスク対策に注力していった。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
活動の広がりとともにリスクの可能性は高まる。そこで重要なのが、どちらが第一なのかということ。リスクをとらなければリターンは得られない。しかしイケイケでやってしまっては安全確保ができないし、保護者の不安にもつながってしまう。そうした議論の中で到達した確信が、リスクリテラシーの強化だった。立ち止まる判断/やれるという決心、そのいずれにも必要なのが高いリスクリテラシーである。それを当園ではまず、プロジェクトを有効に機能させ、全員で考え対策や力を強化することからはじめ、そこで蓄えた力を土台に活動を広げていった。子どもがより自由に活動できるようにするためには、どこに気を付ければいいのか考え環境を整える。その思考と準備を土台にして、日々の楽しい活動がある。このように、まず安全確保ありきではなく、まず活動ありきという視点で、保育の豊かさを保障するためのリスクリテラシーの向上に自覚的に取り組んだことを評価したい。緻密なで徹底的な努力の結果『子どもが自発的に活動できるような環境を整え、子ども一人一人に沿った子どもが主人公の保育を保障し、「自律」と「自立」する子どもを育てます。』という当園の保育目標が、健やかに実現されている。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
さまざまな機会を活用して園の情報を積極的に発信し、利用者の理解に努めている

利用者や利用希望者が園の情報にたどりやすくするために、”保育園のしおり”や”つくしんぼ通信(外部の利用者向け子育て広場の案内)”、室内開放や園庭開放に関する園外部に設置した掲示などに、QRコードの表示を積極的に活用している。園のHPには以前から10分程度の園の紹介ビデオが設けられていたが、今後はYOUTUBEなどにもアップすることで、園HPに入らない人にも園の様子を見てもらえることを目指しており、市のHP案内ページにもリンクを依頼するなど、アクセス数アップも意識したより効果的な方法が前向きに考えられている。

魅力的な園パンフレットで、利用者の興味を惹きつつ保育方針を的確に伝えている

園を紹介するパンフレットには写真やカラー挿絵が取り入れられ、利用希望者が親しみを持って読めるようになっている。園では以前から文字を大きくしたり、目立つ字体を使用したりするなど、情報の受け手の興味関心を惹く工夫を意識してきたが、更に改良が加わり、最も大切な”園の大事にしていること”を的確に伝えることを強く意識した内容になった。利用希望者本位の情報伝達媒体として機能するだけでなく、園の声がしっかり伝わるパンフレット。充実した園パンフレットが、園をよく理解してもらった上での入園につながっている。

地域向けの子育て情報誌「つくしんぼ通信」により利用希望者向け情報を発信している

毎月発行の地域向け子育て情報誌でもイラストや写真を使って分かりやすく見えやすい内容にしているが、HPではトピック見出しについて、何の情報が出ているかを見た人が1行で分かるように、主任や副主任が工夫して表現を考えており優れたものとなっている。利用者は園庭開放の日程をこのHPで確認できるが、園庭解放や室内開放を伝える欄には、「あそびましょ!」という表題にするなど、分かりやすいキャッチ―な表現にすることを工夫している。育児相談、調理や保健からの情報提供もあり、利用希望者が本園の事業内容を知る絶好の機会としている。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
新入園児の面接記録については職員間での情報共有がシステムとして上手く機能している

毎年3月に実施する入園説明会では、所定の新入園児面接用紙により、担当する職員の聞き漏らしがないよう工夫されている。新入園児の客観的情報を取得するという目的からは非常に効果的である。「しおり」の説明内容への同意及び遵守について、説明後に保護者の署名捺印をもらっていることも、双方の共通理解の確認の意味で有効だろう。職員が聞き取った新入園児の情報は、職員会議などで、他の職員にも確実に伝わるよう意識されており、有効な情報共有システムが完成されている。

保護者の安心感につなげるために、入園時の「慣らし保育」を丁寧に実施している

園では「慣らし保育」の日程を保護者・担当職員で納得を得た上で決定している。保護者の個別事情にも配慮したこの「慣らし保育」スケジュールは子どもにとっても保護者にとっても無理のないもので、初めて園を利用する保護者が安心してわが子を園に預けられるようを意識している。この「慣らし保育」は、最初1時間程度から子どもだけで昼食を取れるようになるまでと、徐々に時間を延長していく形。保育の始まり時点でのきめ細やかさが感じられる。保護者とのコミュニケーションの期間として位置づける園の姿勢は重要で、安心感をもたらしている。

卒園児や保護者への継続的支援の場として、「おーいあそぼう会」を実施し成功している

「おーいあそぼう会」と名付けられた会は、毎年1回5月頃に卒園した小学1年生と在園児のふれあいの機会として実施され、この計画ではその年の園のテーマを上手く行かすことを意識してきた。これを発展させて、里山に親子で遊びに行く「ゆうFes!!」という新しいイベントを企画し、卒園児への参加も呼び掛ける計画を立てるなどした。コロナの影響で近時はこの行事実施は難しい面もあるが、卒園児や保護者から学校の情報を収集し、サービス終了後の卒園児等への配慮がされている。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
全体的な計画を一人ひとりの子どもに着実に落とし込んで指導計画を作成している

当園では、保育ソフトを活用し指導計画を作成、全体的な計画を一人ひとりの子どもに着実に落とし込んで指導計画を作成している。例えば0歳児クラスの月案計画では、養護/教育/食育、行事、保健・安全・情緒の安定といった全体項目の下、一人ひとりの子どもについて、子どもの姿、保育者のかかわり、家庭という視点から計画が立てられ、それぞれに対する反省も記載される。最後には、その月の反省と評価、次月の目標も記入するようになっており、1枚で全体と個人、振り返りと課題が見える形だ。このしっかりした計画が保育の基盤になっている。

具体的な発達目標を定め、子ども一人ひとりをしっかりと継続的に見守っている

「見守る保育」をしてく中で、子ども一人ひとりを本当にしっかり見守れているのか…。そんな自問から始まったのがクラスごとに定めた発達目標。例えば2歳児クラスでは「日中のオムツをはずす」、3歳児クラスでは「多い少ないがわかる」などカテゴリはさまざまだが、各クラス2つないし3つの目標が明記され、一人ひとりの子がその発達を遂げているか観察結果が記入されている。ある切り口で継続的に子どもを見続け、そこに向けて工夫していくやり方だ。この目標は保護者とも共有されるので、家庭とも連携した見守りになっている。

さまざまな掲示により子どもの状況を温かな視点で共有し、適切な支援につなげている

一人ひとり発達の違う子どもに適切な支援や言葉かけをしていくために必要なのは子どもの状況の把握と共有だが、そのために当園では、子どもに対するさまざまな掲示を工夫している。例えば2歳児クラスでは「1日パンツの子」・「午睡のみおむつ」といった掲示でトイレトレーニングの段階を示し、給食配膳についても子どもごとに「副菜ちょっと」など、子どもの特徴を記載し配膳時に(子どもの意向を聞きつつも)量を加減してサーブできるようにしている。子ども一人ひとりの状況を保育者全員が共有し、温かで適切な言葉かけ・支援ができている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
子どもが環境に興味関心を持ち、環境に自ら働きかけることができるよう工夫している

幼児クラスにはその日に使用できる遊びゾーンを示したゾーン表があり、えほん/ブロック/ごっこ/ゲーム・パズル/せいさくなど、多彩な選択肢が提示されている。そしてゾーン内には、例えば「せいさくゾーン」では、養生テープ、毛糸、色紙など、子どもが選ぶ素材やが(子どもたち自身が選んで取り出せるように)配置されているなど、常に子ども自身が考え、選び、決めていくよう計画されている。日常的な環境に用意された豊富な選択肢。子ども自身が自分の意思で選べるように工夫することで、子どもの主体的な環境への働きかけを保障している。

子ども一人ひとりの全体的な姿をしっかりと把握し家庭とも共有しながら保育をしている

集団での様子・遊び、人間関係、食事、その他の課題…。これは年長児の面談表にある子どもに対する園からの記載項目。項目に沿って「集中力が持続するようになってきた印象がある」など保育者から見た子どもの姿が記述され、その下には家庭からの聞き取り事項が追記される。家庭からの情報では、生活の様子に加え睡眠など健康面、心配なことも聞き取りされる。まさに子どもの全体的な姿の把握だ。子どもの主体性、子どもの自由な活動を重視する当園の保育を支えているのは、こうした一人ひとりの子どもの確実な把握とその丁寧な共有なのである。

言葉による伝え合いができる環境を用意し、子どもたち自身の問題解決能力を育んでいる

「あいてのはなしをきこう」「ふざけないでさいごまでおはなしをしよう」「おはなしちゅうはともだちにいたいことをしない」。当園の幼児クラスの一角にあるピーステーブルには、子どもたち自身の手によるこんな掲示がある。ピーステーブルは子どもたちがトラブルを起こした際に自分たちで言葉による伝え合いをして問題を解決しようという場所だ。保育者は子ども同士のトラブルの際に互いの気持ちを代弁するなどの援助をしながら、次第に子どもたちだけで問題が解決できるようにしていくという。子どもの自律を育む見守りである。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
子どもたちを温かく励まし見守りながら、子どもの生活リズムをつくりだしている

子どもたちの生活の安定には生活面での自立が重要だが、当園ではそれを、保育者全員が子ども発達の状態に応じて適切に声掛け・援助ができるよう工夫しながら、温かく見守り、子どもの自立をサポートしている。例えば2歳児クラスでは、排せつの自立の発達に応じて「パンツ頑張り隊」「トイレ気を付け隊」というチーム分け掲示があり、そのチームの子に対する声かけのタイミングやポイントが記されている。ユーモアのセンスをまとった温かな励ましと見守りによって、子どもの生活の自立を促し、安定した生活リズムを作りだしている。

家庭での生活と園生活を総合的に把握・共有しながら子どもの生活を安定させている

必要な時期の適切な午睡は子どもの生活・健康にとって重要だが、子どもの生活を園生活だけでなく家庭での生活も含めた長い連続体と考えると、家庭での睡眠状況との連携がさらに重要になる。園での午睡の時間がどうかと考える前提として家庭でどのくらい睡眠をとっているのか、何時に寝て何時におきているのか、そうした全体感の中での把握が重要なのだ。当園が取り組んでいる睡眠チャレンジは、まさにその実践。家庭での睡眠状況を把握し共有しつつ、園での午睡も記録し家庭にフィードバックする。子どもの生活リズムをつくる有意義な取り組みである。

安全で快適な午睡環境を整え子どもの体と心の安定を生み出している

睡眠について、当園では午睡の環境についても工夫している。幼児の午睡スペースは保育室と連続しつつ仕切られた落ち着いた部屋になっており、シェードを通して穏やかな光が差し込む明るい空間だ。あえて暗くしていないのは、子どもたちの午睡時の睡眠を適切なレベルに保つため。睡眠に伴うSIDSなどの事故の危険性を減少させることができるのだという。こうした空間的な工夫に加え、午睡室には睡眠時の事故防止チェックリストが常時掲示されており保育者により見守りも徹底している。健やかで安全な睡眠を、子どもの体と心の安定につなげている。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している
講評
子どもたちが自ら選んで遊べる環境を用意し、子どものワクワク感を誘発している

乳児クラスで大人気だったのは、牛乳パックに電車のプリントを貼ってプルトーイのように遊べる手作り電車。床には線路が貼ってあり、子どもたちは幾台もある電車を自由に選んで心の赴くままに走らせることができる。幼児クラスには、いくつものゾーンがありそれぞれ子どもたちが遊びを選択することができる。乳児クラスから豊かな遊び環境と選択の機会を経験してきた当園の子どもたちは、とても遊び上手だ。保育室内に丁寧に計画された遊びと選択の環境が、子どもたちのワクワク感を不断に誘発しながら、自律と自立を育んでいる。

自ら選ぶ園外活動を通して、生きる力を高めながら子どもの生活を豊かにしている

睡眠に着目した健康づくりの取り組みから、当園では子どもたちの屋外活動、特に散歩に力を入れている。そこで工夫しているのは子どもたちが自分でコースを選べるようにしていること。選ぶことで積極的かつ意識的に取り組むことができ、体力の強化はもちろん生活のメリハリがつけられるようになり室内で遊ぶ際の集中力も増してきたという。自ら選んで園外活動をし帰ってくるというプロセスが、くじけない力、協力する力、人を助ける力、きまりを守る力など、子どもに必要な多くの力、生きる力を育み、子どもの生活を豊かにしている。

里山での活動が、子どもの自律と自立を育み、子どものポテンシャルを高めている

園からバスで数分のところにある法人所有の里山「ゆうしの里山」を活用して、子どもたちの経験を深く豊かに広げている。ゆうしの里山には季節の作物を育てる畑、雑木林を整理した疎林地、深い森、広場が連綿と続いており、野生動物を見、声を聞き、季節の実りを得ることができる。そこは、子どもたちにとって無限の可能性を秘めた場所なのだ。ここで見たことや遊んだこと、考えたことすべてが子どもの心に深く刻まれ、子どもたちの感性の土台を大きくしていくのだろう。この素晴らしい里山環境での活動が、子どものポテンシャルを大きく高めている。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
子どものアイデアを取り入れた子ども主体の行事で、子どもの保育への参画を促している

オリンピックイヤーだった今年、ある年長児からオリンピックごっこというアイデアが出た。それを聞いた保育者が計画を大きくふくらませ、旗を持った選手団パレードから体操、聖火リレー、かけっことつながる大きな計画となり、8月のある日、全園を巻き込んだ幼児クラスの行事としてオリンピックごっこを行ったという。アイデア出しから当日の仕切りまで、リーダー的な役割をになったのは4・5歳児だということだが、自分たちで楽しみを創り出すこうした経験は、何よりの自信になったことだろう。まさに、子どもたちの保育への参画である。

子どもたち自身の話し合いや協力を重視しながら、子ども主体の行事を創り出している

子どもたちが自由に活動を選んでいく生活の中で気を付けなくてはいけないのは、活動のメリハリ。何となくゆったりしていたり、ふざけていたりする中でも、必要なときに集中してスピードアップしたり協力したりできる力を身に着けることだ。その点に着目し、運動会に臨むにあたってはリレーの順番決めやバトン練習など、子どもたちがじっくり話し合い、集団としての意見の一致を持ってから集中して取り組めるように工夫したという。日々の経験の積み重ねの上にある、子ども主体の行事で、子どもの意欲や協働的問題解決能力を育んでいる。

行事までのプロセスを丁寧に記録・発信し、協力しやり遂げることの喜びを共有している

子ども主体の行事を組み立てていく中で、当園では、行事当日までの話し合いや練習などのプロセスの記録・発信にも抜かりがない。例えば運動会までのい話し合いの結果などは、「今日はこんなことを話しました」のようにこまめに保育アプリを使って記録し保護者に発信してきたという。これはもちろん優れた保護者への保育の発信だが、もう一つ、一歩一歩の自分たちの歩みの確認と共有という意味で、子どもたちと保育者にとっても大きな意味のある営みだろう。自分たちの歩みを喜びと共に共有しながら、次のステップに進んでいけるのだから。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている
講評
子どもの様子の丁寧な引継ぎにより、保育時間の長い子どもを適切に見守っている

日中の保育から夕方保育への引継ぎに際し、子どもをしっかりと見守れるよう当園が工夫しているのが「引継ぎ連絡メモ」だ。同メモは2日間スパンで記載されるスタイルで、左の欄にはその日の日中から夕方保育担当の先生への連絡事項、右の欄には翌日の家庭からの連絡事項や前日からの引継ぎ事項が記載され、それぞれの日の延長保育の有無も記載される。記載内容は日中のけがの経過や午睡がきちんととれたかなど健康・身体面のことが主だが、誕生日なども記入される。こうした丁寧な引継ぎが保育時間が長い子どもたちへの適切に見守りにつながっている。

子どもがほっと一息つける空間も用意し、子どもがいつでもくつろげるようにしている

さまざまな魅力的なゾーンを設け子どもたちの興味・関心を積極的に誘発している当園の環境づくりには、じつはもうひとつ大きな特長がある。それは、ほっと一息、くつろぐことができる空間づくりだ。幼児クラスの保育室の片隅の小空間やロフト的な空間などあちこちに、何気ない抜けのスペースがある。子どもたちはアクティブな活動の連続の中で、こうした小さな空間で息を入れ、心を整え次の活動に向かえるのだろう。何もしないでいるということも選べるように工夫することで、子どもが長い時間でも安心しくつろげるようになっている。

日中と延長時間で使う玩具を分ける工夫でメリハリをつけ、楽しい時間をつくっている

延長保育の利用で保育時間が長くなる子どもにとって、延長時間が楽しい時間になるよう当園が工夫しているのが玩具の使い分け。日中とは違うものを延長時間帯に投入し、また同じものが続いてマンネリにならないよう夕方使った玩具の使用履歴と遊びに参加したメンバーをともに記載した記録帳をつくり、日々フレッシュな気持ちで延長時間の遊びが楽しめるよう工夫している。このひと手間により、延長時間にメリハリがつき、夕方の時間帯も子どもたちが主体的に楽しめる時間になっている。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している                                                                                        
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
園庭の栽培や里山の畑の収穫物を食育活動や食事に取り入れ、食への意欲を高めている

園庭の一角を使って野菜を栽培し、収穫した野菜は(洗ったり皮をむいたりという)子どもたちの食育活動に利用した上で給食のメニューに取り入れる。また里山の本格的な畑からも季節のおいしい野菜が届き、それが日々の献立を賑わせる。つまり日常的に、自分たちの日々の栽培・観察活動の成果や、自分たちが慣れ親しんだ豊かな周辺環境(里山)の季節の移ろいが自分たちの食卓に跳ね返ってきているのだ。こうした連関性が食への興味をかきたて、子どもたちは季節感や自然への親しみという大きな感性の下で食への親しみ・意欲を高めることができている。

食に関するこまめな情報提供を積み重ね、子どもたちの食リテラシーを高めている

さつまいもは秋の野菜、天然だしの3つの要素、にんげんが持つ5つの味覚:…。エントランスの掲示スペースには、季節や収穫に応じて、色に関する情報がわかりやすく掲示されている。また食の三要素に関しても、2歳児クラスから易しく掲示しながら食事の前に丁寧に説明している。こうした積み重ねで育っていくのが、子どもたちがナチュラルに身に着ける食のリテラシーだ。季節感と豊かな食体験を届けてくれる里山の収穫物に加え、こまやかで丁寧な情報提供と言葉かけで子どもたちの食リテラシーを高め、楽しみながら食を営む力を育んでいる。

自分の食べられる量を把握して伝えることを通して、食事を楽しむ力を育んでいる

自分が好きでたくさん食べたいものは「いっぱい」、苦手で少し少なくしてほしいものは「ちょっと」。子どもたちは自分の食べられる量や自分の好みをしっかりと自覚し、それを相手に伝えることで自分にとって最適な食事をとることができている。ここで特長的なのは、こうしたやりとりを2歳児クラスから始めていること。2歳児ではまだ確かなことは表現できないが、保育者はその子の実情を把握しながら子どもの意見をしっかり受け止め、食事を提供している。こうした積み重ねの結果、子どもたちはしっかりと自分の力で食を楽しむことができている。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
子ども自身の環境や安全への関心を高める活動を続け、危険回避力を育成している

安全対策員会のメンバーを中心に、子どもたちと一緒に園内の安全について考える「おっとあぶないキャンペーン」活動は、法人全体の看護師でもある当園看護士を中心に継続して取り組まれている優れた取り組みである。キケンくんマークを付けた年長児が園内を巡回し、危険箇所を見つけていく。自分の周囲の環境を意識的に見つめなおす活動である。見つかった危険個所については、他児にも危険性を知らせるため、保育者と一緒にポスターを作成し掲示する。リスク意識を子どもたちの中に浸透させながら危険回避能力を育む、優れた取り組みである。

園児の観察から始めた「眠育」活動を通して、健康面の全体的な改善を目指している

現在当園で積極的に取り組んでいる「眠育」は、法人が所有する里山に各園の園児たちが訪れて活動をする中で、「なぜ当園の子どもたちは、他園の子どもたちに比べて体力がないのか?(泣いたり疲れたりすることが明らかに多い)」という職員の疑問から出発した。そこで、原因に生活面での問題があるのではと考え、看護師からの提案もあり、睡眠を軸に生活リズムを整える「眠育」を計画。保護者の協力を得て実施したところ、いろいろな改善が見られた。園はこれを契機に、体力づくりのための筋力アップなども計画する等、次のステップに向かっている。

看護師と保育士が協働して乳幼児突然死症候群対策や感染症予防に取り組んでいる

入園のしおりには、園のSIDS対策が「乳幼児突然死症候群(SIDS)から赤ちゃんを守るために」という項目でよくまとめて記述されている。呼吸体動センサーを用いた乳幼児突然死症候群対策(SIDS)、3歳以上児に対する見回り目視確認など、園が重点的に取り組む姿勢がよく理解でき、AEDについても詳しく説明されている。園の取り組みは入園時に丁寧に説明され、保護者が随時確認もできる。感染症情報は保護者伝達アプリを用いて随時知らせる仕組みもある。看護師を中心に、子どもの健康維持へのすぐれた取り組みを徹底している。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している
講評
日常保育や園行事を通して、保護者同士の関わりを意図的に深め、保育観を共有している

コロナ禍の現在は実現できていないが、年2回、4月と1月には懇談会をオンラインで行った。各家庭から全員に向けて発言することが、保護者が互いの顔や声を保共有するいい機会になると考えたからだ。もちろん以前から、園は懇談会を保護者同士の交流を図る機会として重視しており、園からの保育の説明に加え、写真や動画を用いて子どもたちの姿を共有することで交流の濃度を高め、深い信頼関係を構築してきた。意図的に保護者間の関わりを深めていくことで、園と保護者が保育や子育て観を共有できるようにしている。

父親の積極的な保育参加により家庭の交流が深まり、園のすべての人の絆を強めている

保護者同士の関わりを重視する当園では父親の保育参加も多く、園はこの現象を、家庭の養育力向上につながるものと肯定的に捉えている。園行事、日頃の送迎、そして懇談会…。参加することによって父親参の(我が子のみならず)他児に対する関心も増し、知っているからこそ親しい気持ちになれる。父親を含めた関係性の深さとそれに起因するフレンドリーな空気が当園の温かい空気管を醸し出していることは前回の評価時でも伺えたが、その良好な関係はさらに深まり、園外での園児と家族の交流にもつながる等、園に集う全ての人の絆が強まっている。

保護者への発信を工夫し、子どもの姿を生き生きと伝え、保護者の理解を深めている

新しい保育アプリの活用によって、保護者に対して子どもの一日の様子をコメント付きの写真で配信できるようになり、保護者の園の保育に関する理解は大きく進んだ。その様子は今回の利用者アンケートのコメントからも明らかに伺えた。文章だけでのおたよりよりも、写真など視覚から情報が伝わるようにすることで、園の保育の理念や方針がより確実に理解されるようになってきたという手応えを園は感じている。今後のさらなる活用に期待したい。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
講評
高齢者との交流など、地域・世代間交流の重要性を意識し、再開を課題に計画している

地域との関わりを重視し、地元農家と園をつなぐコーディネーターから週1回新鮮な野菜を受け取るなど地域とのつながりを大切に続けている。コロナ禍以前では、近隣のデイサービス施設に勤務している保護者からの声かけによって5歳児が施設を訪問して交流する機会もあった。普段関わらない高齢者との交流は子どもたちにとっては優しく包み込んでもらう温かな経験、お年寄りにとっても癒しの機会となる非常に貴重なものだったと園は考えている。今後の再開をふくめ、更なる地域交流の発展に期待したい。

地域の人たちと触れ合う、里山での豊かな経験の中で、子どもたちが大きく成長している

当園は駅近くの住宅地に立地する園であるため、子どもたちが法人所有の里山「ゆうしの里山」で過ごす時間は自然に触れる良い機会となり、自然の中で危険を察知する力や、自然の中で遊びを自ら見いだす力などさまざまな力を得ている。それに加えて、畑を管理する地元の人に畑の作業を教えてもう、あるいはいろいろな大人とあいさつするといった交流によって、コミュニケーション力も高めている。里山の自然の中での人との触れ合いが生んだ、当初の目論見を大きく超えた多様な経験により、子どもたちは大きく成長している。

園長の主催するお茶会や月見会など、意図的に地域の人との交流の機会をつくっている

5歳児には、園長が主催する「お茶会」に招待してお茶の体験をさせるという機会を設けている。この準備として、子どもたちが地元の和菓子屋さんに抹茶を喫む前のお菓子を買いに行くなど、意図的に地域の人との交流を創り出している。これ以外にも、地元の園芸店や魚屋さんなどに買い物に行くなど、園行事に絡めて子どもの経験をどう豊かにしていくか、職員で話し合いすすめている。幼児クラスの子どもたちが自分の世界認識を広げる社会的な体験は、主体的な遊び込みと共に最も重要なものであり、今後も深めていくべき課題でもあると園は考えている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている
講評
職員が一人ひとりの子どもの意思表明を促し、子どもの意思を尊重している

園の理念は、「全ての人々の人権を尊重した、ともに育ちあう地域を目指して」というものであり、子ども一人ひとりを大切にするという職員の姿勢は園の理念実現への過程そのものでもある。日々の園での生活や保育の中でもこれが浸透しており、子どもたちの主体的な意欲を促すような職員たちの言葉がけが見られた。幼児クラスでは、朝の集まりで保育者がその日の活動を示し、それに対して子どもたちが意見を言い、その日の活動を決めるという姿がごく自然なものとして見られた。一人ひとりの意思表明を促しながら、人権を尊重した保育が実現されている。

日常的な言葉かけを通して子どもたち自身の意識を高め適切に行動できるようにしている

子どもたちに対して、日常的な言葉かけ積み重ね、プライバシーの保護に関して適切に行動できるようにしている。プライベートゾーンの話は定期的に丁寧に繰り返し、夏の水遊びの着替えの祭には男女の場所をおおよそ分けつつ、着替えの際には全部脱がないで部分的に着替えていくよう声掛けをする。こうした積み重ねにより子どもたちの意識は高まり、適切に行動する力がついている。訪問時も、「着替えをするからあっちに行って」という子がいた。こうしたことをはっきり言えるのも、子ども自身が自分を守る力を身に着けている証左であろう。

何もしないことも含むたくさんの選択肢を用意し、子どもの心の自由を支えている

当園の幼児クラスの保育室には、子どもたちのワクワク感を掻き立て、興味を引き付けるさまざまなゾーンが設定されているが、その中に、ほっと一息つける隙間のような小さな空間やロフト状の空間がさりげなく作られている。つまり、何もしないことも選べるのだ。温かな保育のニュアンスを知り尽くした設計者とその空間を使いこなす保育者のセンスで、当園の保育室の細部には確かなぬくもりがある。心和む空間づくりを通して子どもの「ホッとする」権利も保障している、子どもの権利と意思を尊重した保育空間である。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
法人として手引書等を整備し、定期的な点検見直しも行い「生きた手順書」となっている

法人内の4保育園で話し合われ作成された手引書等がしっかりと整備されている。また内容面でも2年毎に保護者意見も取り入れ点検や見直しが行われ、より使いやすいマニュアルができていた。理念、方針、職員行動規範、情報管理等を総合的に盛り込んだ「ステートメントブック」も現在見直しが検討されており、法人として新しい保育を意識した改革がこれから始まる予定とのことであった。「マニュアルブック」は正職員一人ひとりが所有し、それを常に振り返るというルールも徹底されている。まさに「生きた手順書」である。

現場の子どもの姿から拾い上げた園の課題を、リーダーを中心に検討し改善している

園での様々な課題については各クラスで職員が話し合い、これをクラスリーダーが会議を持ち話し合い改善するという仕組みがある。例えば、食と睡眠に着目した当園の取り組みも「当園の園児は法人内の他園に比べて体力がない」という事例が多く見受けられたことから職員が話し合った結果、生活面に着目してまず眠育、そして体力を着けるということから筋力アップ、という形で取り組みの推進につながったものである。このような、子どもの観察からの話し合いを、次の改善や発展につなげていく動きが確実に機能しており、本園の強みともなっている。

若い職員の主体性を重視し、教えすぎず見守る指導でレベルアップをはかっている

新人職員のスキルアップにについては法人の研修体制などの充実もあり、育成体制は万全だ。また業務マニュアルを各自が所持しているので、実際の仕事において新人が戸惑ってしまっても、すぐに業務の自己点検ができる。そうした中、先輩やクラスリーダーが強く意識しているのが、一緒に手順を確認はするが、教えすぎないようにすること。若い職員自身に悩ませることの重要性を理解したベテラン職員の適切な指導により、若い職員が主体的に学びながらレベルアップできる環境が整えられている。