東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

系列園共通の企業理念・保育理念「子ども達の未来のために」「豊かに「生きる力」を育てる」と、今年度園の保育目標・保育方針として定めた4つの子ども像と目指す保育のあり方、安心・安全やチームワーク・感謝の心などを謳う職員の行動指針「ＳＴＡＴ」を、玄関に掲示して保護者や来園者に発信し、保護者には見学・入園時の説明や保護者会などの機会にもこれらが伝えられる。職員には理念を文章化した「クレド」とともに、入職時の本社による初期教育やこれらを掲載した携帯カードの確認、保育の各計画への記載などにより、理解と実践を促している。

園長・主任及び各リーダーが、それぞれの職責を踏まえ、園の運営や保育の統括、日々の会議等での園の方針の発信など、経営層としての役割の遂行にあたっている。また「報・連・相」の徹底などによる円滑な組織運営を図り、職員集団としての同僚性の向上を課題として、園内研修や会議の活性化にも努めている。上記の保育目標・方針は、人権・環境などの系列園共通に大切にする保育のエッセンスについて、職員が話し合い、共通理解を深める「チームブック」の取組を通じて定められており、その過程が理念その他の目指すものの共有の機会となっている。

園の主要な案件の検討は、主に常勤者が集う職員会議、または経営層によるリーダー会議で行われ、これらの場で共有される保育その他の実務的な話題が、各クラスの会議や必要に応じ行う乳児・幼児の各会議で話し合われる。クラスの会議には園長・主任のいずれかが同席し、現場の状況の把握と適宜の助言を行い、職員会議の進行・記録は毎月職員持ち回りとするなど、話し合いの充実と各職員の主体性の促進を図っている。欠席者等への必要事項の周知は議事録の供覧等により行い、保護者にはアプリでの配信や書面によって、各種の連絡事項を伝えている。

保護者の園運営や保育その他に関する意向を、個別の面談や日々の送迎時のコミュニケーション等から把握するほか、行事後にはアンケートを行って感想を収集し、次回の企画の参考としている。また玄関に設けた「給食お助けＢＯＸ」では、食事に関する要望や家庭のお悩み事などを把握している。例年は懇談会や保護者代表が出席する運営委員会も設け、意見交換の機会としている。訪問調査時点では感染防止のため書面に代替しており、再開の時期を検討している。職員の意向は経営層が前述の各会議や個別の面談、日々の業務内外の会話などから把握している。

区の私立保育所園長会や地域別の保育施設会議などを通じ、区内の保育施設経営や保育・教育・子育て等の情報を収集するほか、園見学で来園する区内の子育て家庭や在園世帯、交流のある地域の子育てボランティアの方などとの会話などから、より身近なニーズ等を把握している。本社・自治体の発信物、本社の「全社会議」やエリア別の「班会議」などから、関連する制度・政策の動向などを確認している。予算の作成と園の収支・稼働率などの管理は、本社が主たる役割を担い、一部経費の管理などを園長が行う分担とし、状況を本社・園が随時が共有している。

園の重点課題を示す3か年の計画を2種類作成し、保育や組織の構築、地域支援や危機管理などについて、毎年度末時点での目指す園の状態や、各年度の取組の概要・方針を定めている。また年度の事業計画に、園運営の主要な各分野の取組・方針などを記載するほか、保育をはじめとする日常業務について、分野別に具体的な取組内容や目標・ねらいを示す計画を作成し、実行と進捗状況の確認がなされている。3か年計画と事業計画の関連づけや、別に整備される「目標設定シート」を活用した年間の進捗管理など、より計画的な課題解決の工夫も期待したい。

職員に配付される「ＧＫ保育」「保育者実践ガイドブック」「よりそいブック」等の各手引書に、社会人としての基本心得のほか、子どもの人権の尊重と虐待的言動の排除、守秘義務厳守や保護者との私的関係の禁止など、職員に求める倫理・規範が定められている。入職時の研修やその後の日々の実務での確認等により、職員にその徹底を促すほか、前述の本社の行動指針「ＳＴＡＴ」について、個別の評価・目標管理制度などによる振り返りがなされている。日常の会議や上記の「チームブック」でも、保育のあり方や子どもへの関わりについて話し合われている。

上記のほか、本社が毎月発信する「お願い事項」でも、いわゆる不適切保育の禁止をはじめとする保育者のモラルが伝えられ、園内では回覧や昼礼等での通達がなされている。また本社作成の「保育士の自己評価表」による年2回の振り返りでも、子どもへの言動に関する内省が促されている。玄関等への区作成のマニュアルの掲示や関係機関との連携など、虐待防止の体制を整えるほか、苦情解決制度の整備や意見箱の設置、日々の交流を通じた要望・苦情等の把握など、保護者の意向への対応にも努めている。同制度の周知については、さらなる工夫も期待される。

ホームページや大田区の各種媒体での情報発信のほか、実習生・職場体験生等の受け入れのための手順書等を常備しており、区内の中学生が来園している。また前述の区の私立園長会や保育施設会議への参画を通じ、区内の保育・教育施設間の連携に加わるほか、地元の町会にも加入するなど、地域との交流を図っている。園の機能・専門性を活かした地域貢献は、見学等で来園する子育て家庭への相談対応程度となっているが、見学希望者が多く、地域内の保育ニーズの高さがうかがえる状況から、今後は園庭開放や離乳食・栄養相談なども企画したいと考えている。

毎月の避難訓練では地震・火災や立地上リスクの高い水害について、散歩時や夕方を含む各種の発災状況を想定し、発生時の対応や保護者との連携を確認しており、消防署との合同訓練も実施している。また災害時の事業継続計画・洪水時の避難確保計画を、それぞれ区の書式をもとに作成し、必要事項の追記と職員への回覧を行っている。不審者対策訓練も警察署員の来園のもとで毎年度実施するほか、ＳＩＤＳを含む各種重大事故を防ぐために、各室への手順書等の掲示や子どもの睡眠時の状態確認、消防署来園による毎年度の心肺蘇生訓練などを行っている。

保育中に子どものケガ等が発生した際は、原因・対策の検討やクラス内での話し合い、昼礼等での周知を行っている。本社が随時発信する系列他園の事例、前述の本社発信の「お願い事項」で伝えられるＳＩＤＳ・アレルギー事故や新型コロナウイルス、夏季の溺水事故や熱中症、季節ごとの感染症などに関する情報も、現場への啓発に活かしている。各種ヒヤリハットについても同様に検討と共有を行う決まりとし、事例の把握の活発化を課題としている。コロナ禍拡大後の人と環境・設備の各種防疫対策、猛暑時の戸外活動の自粛などの熱中症対策もなされている。

本社策定の「危機管理マニュアル」や「ＳＮＳ利用規程」に、各種情報の取り扱いやＳＮＳ利用時の機密保持の徹底などに関する規定が明示され、職員には入職時など、職場体験生等には活動開始前に、関連の啓発がなされている。また重要書類の施錠管理、ＰＣなどのパスワード等によるログイン制限など、情報漏洩の防止にも努めるほか、今年度は系列全園で、外部記憶媒体への情報保存の制限、有害サイトへのアクセス防止などの情報セキュリティ強化が図られている。保護者には入園時に、個人情報の各種利用目的や開示請求への対応方針などを説明している。

本社が年間を通じて職員の募集・採用を行い、専用サイトやＳＮＳでの情報発信、オンラインでの説明会や施設見学など、ウェブ媒体の活用のほか、在職者への人材紹介奨励や関連業者・養成機関との連携など、多様な方法で人材確保に努めている。また園でも状況に応じ、沿道の外壁などに職員募集の掲示を行っている。園内の状況を考慮した配属・異動や配置に努めるほか、職員の残業・休暇管理や各種福利厚生など、労働環境の整備もなされている。職員自己評価ではこれらについて課題も示唆されており、本社とも協力してさらなる環境向上を図る意向である。

本社が「成長支援制度」を整備し、新人から園長級までの各階層の職責と能力・技術の指標と、これに基づく個人別の評価と目標管理の仕組みを設けている。常勤者を対象に、階層ごとの評価項目と本社の行動指針「ＳＴＡＴ」に基づき、目標設定と達成状況の評価を実施し、処遇にも反映させることで、各人の成長と意欲の向上を促すとともに、これらの過程で行われる定期的な園長との面談により、育成や処遇に関する意向の把握がなされている。また職位・経験及び職種に応じた社内研修により、保育や安全衛生、マネジメント等に関する研鑽が促されている。

行事や日常の事務その他について、係活動が行われている。それぞれ複数名を選任し、協力して役割を担うことによる関係性の構築を促すとともに、各係が園の業務に主体的に関わり、職員会議で報告や提案を行う中で、現場目線での課題解決と、園運営に対する各人の当事者意識の喚起を図っている。また上記の社内研修を含む内外の研鑽によって各職員の専門性向上を促し、学習内容は報告書等の供覧によって組織内に伝えられている。会議や前述の「チームブック」の取組などによる話し合いを、課題とする組織のチーム力向上につなげたいと考えている。

園のホームページには、所在地・連絡先・開所時間・年齢別定員といった基本情報が掲載されるほか、保育目標・保育方針・大切にしていることなど、目指す保育の概要が記され、一日の保育の流れや行事が紹介されている。また区のホームページにも定員や所在地・連絡先等の基本情報が掲載されるなど、在宅においても園の情報が入手可能となっている。入園希望者に手渡すパンフレットにも、所在地・連絡先・定員といった基本情報のほか、企業理念・保育理念・保育方針などの運営・保育に関する考え方や、年間行事予定、食事に関する情報が掲載されている。

見学希望者は感染防止に配慮して受け入れ人数を抑え、各回1組で対応しており、玄関で園内の環境や保育の説明を行うほか、1階の保育室についてはテラスから室内の見学としている。また保育提供に関することとして、自分で選んで自分の考えて遊び込む力を養うこと、生活面の援助をする保育者と子どもの組み合わせを固定する担当制を採り入れて、個別の成長を踏まえた細やかな援助を大切にしていることを伝えている。用意してもらうものや延長保育の利用などについても説明しており、質疑応答の時間を設け、個別の疑問や不安の解消を図っている。

園のホームページや見学対応を通じて園情報の発信を行っているが、地域の社会資源としての役割を果たすとともに、将来の事業継続を見すえ、園の専門性の発揮や地域交流を通じた発信については、さらなる改善を図ることを課題の一つとしている。現在コロナ禍によって実施を見合わせている地域子育て世帯を対象とした活動を、状況の好転を待って再開し、園が持つ子育てに関するノウハウを提供していく意向があるほか、高齢者施設との交流、現在も行っている学生の職場体験などを積極的に行っていきたいと考えており、今後の取組に期待が寄せられる。

入園決定者を対象に個別の面談を行って、重要事項や園利用のルールなどを説明するほか、子どもや家庭の状況を聴き取っている。面談に向けて、事前に重要事項説明書のほか、保育開始に必要な書類を手渡し、一読と必要事項への事前記入をお願いしている。面談では重要事項説明書の読み合わせを行い、子どもの主体性を育むための保育実践や、担当制保育などの保育の特徴のほか、用意するものや園利用のルールなどについて説明し、保護者の疑問・質問に答えている。終了後には説明項目を記載したチェックリストを用いて、保育開始の同意を確認している。

個別面談では「入園面談書類確認表」を用いて必要書類の提出の有無を確かめるとともに、保護者記入の各書類の内容を確認しながら、子どもの発達や生活リズムのほか、保護者の就労状況等の保育開始に必要な情報を聴き取っている。面談で把握した家庭状況や、子どもの発達・健康面などの情報に関する各種書類や面談の記録は、個人別のファイルに綴り、その後も情報を更新し、保育者が保育実践や保護者支援の際に活用することができる状態としている。また新入園児の情報は、新年度開始前の職員会議で共有することとなっている。

入園直後の子どもと保護者の負担と不安の軽減のために、10日間を目安に慣れ保育を行っている。保護者の就労事情や子どもの状況を踏まえて立てた予定を基本に、子どもの状況に応じて柔軟に対応している。保育者や保育環境に慣れることができるよう、徐々に時間を延ばしながら体験を増やし、期間中はできる限り同じ保育者が担当するなどの工夫を行っている。また保護者には、子どもができるようになったことや遊んでいる様子を伝えたり、利用開始後感じた疑問や不安を聴き取るなどして、少しでも不安を和らげることができるよう配慮している。

入園決定後、保護者から記入・提出される各様式などをもとに、各保護者との面談が行われており、子どもの成育歴を詳細に把握して、園で長時間を過ごす子どもの心身の負担を軽減できるようにしている。子どもの特性や食事・睡眠・遊びなどに関する情報は、面談を担当した園長から各職員に伝えているが、個々の引き継ぎ内容に関して、今年度までは全体の会議記録としての書式などは作成されておらず、新年度以降は引き継ぎ内容を記録として残すことで後々の確認事項として活かすなど、家庭と園との生活・保育の連続性に関するさらなる配慮も期待される。

保育内容を保護者に発信する機会として、クラス別の懇談会を設定しており、コロナ禍拡大後は感染防止の必要から開催を見合わせ、保育の理念・方針や各クラスの年間の保育内容等は、クラスだよりとして書面で発信をしている。また各保護者との個別面談を感染対策を施しつつ実施し、子どもの様子を家庭と共有するとともに、園への要望等を聴取して信頼関係の構築につなげている。今後の取組としてクラスだよりの発信を定例化し、より子どもの姿や活動内容を保護者と共有し、記載内容を通して保護者とのコミュニケーションをさらに深めたいと考えている。

全体的な計画及び大田区が発行している「こころを育てる大田の保育」をもとに、年・月・週日の各指導計画を立案し、実践している。計画策定にあたっては各クラスで検討し、適宜振り返りを行っており、クラス内での計画策定及び評価・反省が深められつつあることから、これらの集約を全体的な計画の園としての見直しにつなげる工夫についても検討の余地があろう。今後は各クラスの計画と評価・反省を全体へとつなげる共有の機会を設けることで、園全体での計画実践とし、さまざまな取組の充実に活かしてゆくことが期待される。

毎月行われているクラス会議にて子どもの情報を共有し、一人ひとりの育ちを確認している。0歳児は毎月心身両面での成長を記録し、1・2歳児は隔月、3歳以上児は3か月周期で記録をしている。また0～2歳児は毎月個別計画を策定し、発達の個人差に配慮がなされたねらいを策定している。特別な配慮が必要な子どもの育ちを支えるために、関係機関と連携を図り、子どもの園での様子や保育者の関わり等の相談する機会を設けたり、来園による指導も受け、子どもの行動観察後にさまざまな場面での援助方法や保護者へのフォローなどの助言を得ている。

子どもが主体的に関われる環境の工夫について、玩具の種類や配置について検討を重ねている。発達や興味を把握して玩具を選定するとともに、電車や車に興味を持つ子どもたちには床に線路や道路を示し、数名の子どもたちが遊び込める工夫を行うなど、遊びの展開や発展も見通した環境設定に努めている。また玩具が散乱しがちなクラスには玩具ごとにコーナーを設定して、それぞれの遊びの保障ができるようにしている。これらの取組を通じて子どもが落ち着いて遊びに集中し、遊びを通して友達との関わりが豊かに展開されるよう配慮している。

年齢に関わりなく遊びを通してふれ合える活動の取組が行われている。幼児は異年齢で散歩に出かける機会を設け、手をつなぎ合ったり、年上の子の姿をまねて交通ルールを守ろうとする姿も見られている。朝夕の合同の時間帯では同じ遊びを通して関わり合う姿が見られ、異年齢の子どもたちが安心して遊べる環境となるように、時に保育者が仲立ちをして遊びをつなげる役割を担っている。コロナ禍の影響により、乳児・幼児の関わりの機会の設定にも制約が生じており、今後は情勢をみて徐々に行事等を通して関わりを促していきたいと考えている。

登園時は子どもの様子を保護者から聴取して「健康観察記録」に記入している。前日にケガや体調不良が生じた際には、引き継ぎ事項として記入をしており、降園後の様子を口頭で確認できる仕組みを整えている。乳児は登園時に検温を行うなど、丁寧な体調管理への配慮がなされている。夏季の水遊び時にもプールカードを活用して体調確認を行い、健康的に水遊びができるような準備をしている。乳児は連絡通信アプリを活用して園と家庭での様子を毎日共有し、幼児も各学年ごとにホワイトボードに活動の様子を記入して、降園時に保護者に知らせている。

食事・排せつ・着替えなどの身辺自立に向けて、子どもが挑戦してみたいと思えるような支援を心がけている。発達の個人差に配慮し、乳児は毎月の計画策定時にクラス内で確認を行い、一人ひとりの子どもの発達に沿って無理のないペースで進めている。散歩時の靴下や靴の脱ぎ履き、着替え等の着脱は、低年齢児でも意欲が見られている時は思いを尊重して見守るようにし、難しい場面では大人がさりげなく援助をすることで、子どもの自立（律）の芽を伸ばせるようにしている。また子どもの様子を保護者に伝え、ともに進めていけるように連携を図っている。

トイレトレーニングは排尿間隔が一定になった頃より、家庭と連携を図り、遊びを妨げたり無理強いしたりせず、子どもの気持ちを優先して徐々に進めている。2歳児のトイレにはパンツ等の脱ぎ履きがしやすいよう、手作りの腰掛けが置かれ、脱ぎ履きごとに消毒をするなど、安全性にも配慮している。休息は身体を休める時間としてとらえ、室内の温度湿度管理を行い、オルゴールをかけて穏やかに過ごせる環境としている。ＳＩＤＳ対策として適宜呼吸・状態の確認を行うほか、各保育室に「突然死予防チェック項目」を掲示するなど、事故防止に努めている。

各保育室は玩具や教材が自由に取り出せる位置に置かれており、それぞれの遊びに興じる姿が見られている。年間を通して年齢に応じた製作に取り組んでおり、園内に掲示された子どもの作品を通して、保護者との対話にもつなげられている。訪問調査時にはハロウィンに向けた作品が園内を彩り、各クラスの展示から、年齢に応じた活動の変化も伝えられていた。また散歩や戸外活動等の身体を動かす活動と、室内での製作遊びなどの活動は、バランスに見通しをつけ、偏りのないよう計画策定を行い、日々の活動が静・動ともに展開されるよう配慮している。

朝夕の会では対話を通して、言葉による自己表現や仲間の気持ちに互いに共感し、それぞれの思いがふくらむような時間や会話を大切にしている。また遊びや生活の場面の中で、発達や興味に応じた絵本の読み聞かせを行うほか、絵本を題材にして劇遊びにも発展するなどの取組も行われている。発達状況に応じた運動遊びにも取り組み、這う・立つ・歩くなどの運動や姿勢の発達、体幹やバランス感覚を養う等のねらいを定め、マットや跳び箱等の体育教具を活用して、仲間とともに身体全体を動かす気持ちよさや楽しさを感じながら、体力や運動能力を養っている。

季節の移ろいや外気を全身で感じて五感を養う戸外遊びを活動に採り入れている。夏の暑さやコロナ禍でのソーシャルディスタンスなどの安全を最優先しながらも、子どもがのびのびと外遊びを体験できるような活動の設定に努め、散歩の道中で近隣の人々と挨拶を交わしたり、交通ルールを知るなど、社会性も培われている。歩行が不安定な乳児は、バギーで散歩に出かけた後に園庭の砂場やデッキの上で遊ぶ時間を設けることもあるなど、安全を考慮しつつ、心身の発達状況に応じた戸外活動を行い、身体を動かし、季節や寒暖の感覚を養えるようにしている。

七夕・お月見・節分や雛祭りなどの伝承行事では由来を知り、童謡・唱歌を口ずさんだり、象徴物の製作や見た目でも楽しめる食事の工夫など、季節感も味わえる機会となっている。運動会や発表会等の集団での行事に取り組む際は、社会情勢を踏まえ、より安全に開催ができるよう慎重な配慮を行っている。運動会はクラス単位で開催され、年齢ごとに身体能力に合わせた運動教具を活用したり、かけっこやリレー、ダンスなど、小規模開催ながらも子どもが目標に向けて真剣に挑む表情や、昨年からの成長した姿を保護者も感じられる行事となっている。

発表会では「発表の場を通して人の前で発表をする楽しさを知る」をねらいとして、音楽劇や歌、絵本を題材にした劇遊びなど、子どもの興味や日頃の遊びから内容を考案している。ありのままの子どもの姿を軸に、大人主体に偏ることなく、子どもが意欲的に取り組み、一人ひとりが主役となるように、意見を重ねて決められている。保護者が参加・観覧する行事に関してはアンケートを行い、寄せられた感想などを次年度の検討時に参考とするほか、意見を集約して園内に掲示し、行事や子どもの姿に寄せる保護者の思いを園全体で共有できるようにしている。

例年、年長児を中心に行う「お店屋さんごっこ」では、子どもの意見や思いを保育者が聴き取り、企画に活かしている。子どものイメージがふくらむような提案や、一人ひとりの意見が出やすいような雰囲気づくり、他者の意見に耳を傾けられるような働きかけを行い、さまざまな創意工夫を促し、準備の過程から当日まで、年齢に応じて楽しく取り組めるよう援助している。子どもたちがさまざまな素材を用いて商品などを製作し、年下の子どもたちも招いて売り買いを楽しむことで、それぞれの達成感や、仲間と協力して作り上げる喜びの実感につなげている。

合同保育時間帯は子どもの人数が多くならないよう、時間や空間の調整をして適宜換気を行うなど、安全に過ごせるようにしている。また乳児は緩やかな担当制として、特定の大人との関わりにより愛着・信頼感を紡ぎ、一人ひとりが安心して過ごせるような関係性を構築している。それぞれの子どもとの個としての関わりを大切に行い、一日の生活を通して子どもの体調や機嫌を把握するほか、サークルなどの設置によって、友達との関わりも一人遊びも思い思いに行える空間とするなど、心身ともにくつろげる環境になるよう配慮がなされている。

降園時は会話のほか、0～2歳児は連絡通信アプリ、3歳以上児はホワイトボードへの記入によって、子どもの様子を各保護者に伝えている。夕方以降は徐々に園児の人数が減っていくことで、子どもが不安な気持ちにならないよう、保育者がなるべく個別に関わり、じっくりと遊べるようにし、補食・夕食の提供の際は、喫食量にこだわるよりも、安心して楽しく自分のペースで食べられるようにしている。年齢に合わせたさまざまな玩具や、その時間帯だけの特別な玩具の提供、気分転換につなげられるような過ごし方を、さらに検討していきたいと考えている。

食事の環境として、各室に発達に即した机と椅子を設置し、座席も固定して一人ひとりが安心して落ち着いて喫食できるようにするほか、0・1歳児は食と遊びの空間を視線からも遮り、ゆったりと食事が摂れるようなにしている。低年齢児は担当の保育者による1対1の援助から始め、食事の雰囲気や園の食事内容に一人ひとりのペースで慣れていけるように、丁寧に進めている。献立は系列園共通の2週間サイクルメニューを活用し、初回の喫食状況を把握して、食べ具合が進まない場合は形状や味つけの工夫などを行い、次回提供時に活かすようにしている。

食物アレルギーへの対応では手順書を整備し、入園時には保護者との個別面談や医師の診断書から子どもの状況を把握するほか、提供時には専用のテーブルとトレー・食器を用い、複数名の職員で内容を確認して、誤配・誤食を防いでいる。離乳期にも保護者と個別に面談し、家庭と連携を図っており、未経験の食材は家庭で2回以上試してから園で提供する仕組みとして、一人ひとりのペースをもとに、無理のない進捗を図っている。日々の喫食状況は栄養士が残食や保育者からの情報から把握し、子どもが意欲的に食べられるような食事作りにつなげている。

子どもの食への興味や関心を深めるために、年間を通して食育計画を策定し、実際に食材に見て触れ、育て、命ある食物に感謝できるような心の育ちにつなげる活動を行っている。年齢ごとに担当調理スタッフを配置し、子どもとのコミュニケーションを深めながら、発達に即した食育活動を行い、年長児は箸の持ち方や食材の栄養素などを遊びを通して学ぶなど、食への意欲の向上や興味・関心を育んでいる。また保護者に配付する毎月の食育だよりでは、旬の食材やマナーなどへの関心を深める記事や、旬や人気メニューのレシピを掲載している。

子どもの衛生や清潔に対する感覚の育みに向けて、乳児期のおむつ替えや着替えの援助の際には言葉を使い、清拭や清潔な衣服への着替えを子どもが快適なものと感じられるよう、状況や感覚を言葉を使って伝えることを心がけている。歩行が確立する頃から始める手洗いの際にも、手順を伝えながら、きれいになることの心地よさを伝えている。手洗い・咳エチケット・鼻かみなどは正しい手順を知らせるだけでなく、必要な場面や意味を伝えることで、清潔や健康に関する意識を育み、適宜声かけや問いかけを行って所作の定着を促している。

避難訓練時には担当者が幼児クラスで振り返りの時間を持ち、身を守るための行動や姿勢などについての復習を行っている。散歩時には交通ルールや外出時の危険を教えるほか、公園では遊具の使い方や危険箇所を、注意喚起とともに伝えている。工作で用いるはさみなどの危険を伴う道具は、手先の器用さや力、発達に応じた理解力を踏まえて使い方を教えている。また年長児では日常で起こった危険なことについて、「子どもミーティング」で話し合う時間を設けており、前夜に発生した地震の際の対応をみんなで伝え合ったりしている。

子どもの健康維持に向け、登園時からの健康観察や水分補給、適度な休憩の確保などに取り組むほか、定期的に行う小児科・歯科医師による診断や身体測定などを実施しており、情報は記録に残し、職員間で共有することとなっている。また園舎内の衛生環境の向上にも努め、手が触れる場所や玩具の定期的な消毒のほか、室温・湿度の管理や換気などを行っている。保護者への保健情報の発信など家庭との連携にも努めており、感染症が発生した場合には状況や対策を知らせるとともに、「ほけんだより」には感染症情報や身体・健康に関する情報を掲載している。

入園時には子どもの成長発達や性格などの特性だけでなく、保護者や家庭の状況のほか、育児に関する考え方や方針についても把握し、園ができうる範囲内で個々に対する援助を行えるよう努めている。保護者の意向の把握に向けて、運営委員会や個人面談も行うほか、行事後にはアンケートを行っており、結果は保護者とも共有している。保護者の就労事情や健康状態などによって、急な保育時間や利用日の変更があった場合には、柔軟に対応することとしている。

保護者との信頼関係の向上を目指して、保育者と保護者の対話時間の確保に努めている。その日の保育内容や保育者が把握している子どもたちのエピソードや成長の姿を保護者に伝えられるよう、感染症対策を講じたうえで、送迎場所を変更している。保護者にできるだけ具体的な情報を伝えることで、安心を届け、信頼を得たいと考えており、今後は日々の活動記録をまとめて過去のものの閲覧も可能にしたり、保育中の写真に育ちの様子や子どものつぶやき・職員の考察を付記し、保護者に発信する「ドキュメンテーション」の作成にも取り組みたいと考えている。

コロナ禍において、懇談会の開催の実施は見合わせているが、0・1歳児クラスに関しては感染症対策を講じたうえで、入園時に顔合わせの時間を設けている。その他の学年でも、懇談会の代わりとしてクラスだよりを発行しており、一日の流れや担任からのメッセージのほか、新入園児の親子写真も掲載している。保護者への育児情報の発信にも取り組んでおり、保健や子育て・発達支援など、育児や家庭生活に役立つ諸資料を掲示・常置するほか、「給食お助けＢＯＸ」として、家庭の食事に関する悩みや疑問などを把握し、個別に対応する取組も行っている。

日々行う散歩では、近隣の公園に出かけ、虫の探索や植物の観察を行ったり、自然物から季節の移ろいを感じるほか、交通ルールや遊具で遊ぶ時の順番など、公の決まりやマナーも学んでいる。運動会では近隣の小学校の体育館を利用し、普段と違う場所で身体を動かしながら、小学校の雰囲気を感じている。また職場体験の中学生が来園し、保育者と一緒に着替えの援助を行ったり、散歩の同行や絵本の読み聞かせを行ったりしており、子どもたちにとっては職員以外の人と親しく関わり、身近なお兄さん・お姉さんとして交流を深めている。

保護者には入園時に、個人情報の取り扱いについて、利用目的や同意のない第三者提供を行わないことなどの説明と、掲示・広報媒体等での氏名・肖像の利用に関する承諾確認を行っている。子どものプライバシー保護と羞恥心への対応として、幼児の身体測定や着替えの際は男女別にし、パーティションを立てるなどの配慮を行い、日常の着脱においても窓のカーテンを下ろすなどして、外部からの視線を遮るようにしている。またおむつ替えはトイレに設置をしたおむつ交換台で替えるようにするなど、環境設定の面でも配慮に努めている。

子どもたち一人ひとりの個性や特性を踏まえるほか、保護者の育児に対する価値観の尊重に努め、個々の必要に応じて援助できるように取り組んでいる。子どもたちの発達の微細な変化や心情を解して細やかに援助できるように、生活面の援助を行う保育者と子どもの組み合わせを固定する担当制を採り入れるほか、特別な配慮を必要とする子どもに対する援助や、保護者に対する支援では、情報を職員間で伝え合い、認識を共有したうえで行えるようにしている。また外国語を母国語とする保護者への援助にも取り組んでいる。

虐待の防止や早期発見に関するマニュアルを常備し、虐待の早期発見や把握した時の留意点、職員による虐待を発見した時の対応などについて、必要時に職員が確認できる状態としている。また送迎・着脱などの日常の場面で、保育者が子どもや保護者の様子、親子の関係などの異変の把握に努め、必要の際の関係機関との連携体制を整えている。支援が必要な子ども・家庭の在籍時には会議等で随時情報を共有するなど、実務を通じた職員への啓発がなされている。虐待防止や育児困難家庭への支援について、組織全体でより理解を深める場の設定も期待される。

系列園共通の「保育園危機管理マニュアル」には、避難訓練等の安全に関する留意事項のほか、自然災害や事故発生・虐待・個人情報の取り扱い等に対する業務の標準が示され、必要に応じて流れ図を用いるなど、活用のしやすさにも配慮されている。また給食・食育や食物アレルギー・未食対応、清掃衛生などに関するマニュアルやガイドラインも整備されるほか、保育の基本が記されている「ＧＫ保育」「保育者実践ガイドブック」は全職員に配付し、必要時の参照を促している。本社制作の「ＧＫアプリ」でも、これらの手引書等にアクセス可能となっている。

園独自のマニュアルとして、清掃のチェック表や散歩マップなどを作成するほか、口拭き・エプロンの洗濯に関する留意事項や緊急車両の呼び方、突然死予防チェック・睡眠時の観察確認表、インフルエンザの出席停止期間に関する早見表といった、即時対応や適宜確認が必要なものを掲示するなど、日常業務における業務の標準の明示にも取り組んでいる。また今年度から行事・防災・環境整備などの、園内の主要業務を職員が係に分かれて担当し、実践や改善事項を伝え合うことで、園業務に対する職員間の認識や手順の標準化につなげたいと考えている。

業務や手順の再確認については、日々の職員間の打ち合わせや職員会議などの話し合いの機会に適宜行われており、嘔吐処理手順や散歩時や水遊びの際の留意事項など、季節的に頻繁に必要となるものについては、時期に合わせて実技研修も採り入れながら確認することとしている。クラス打ち合わせや職員会議の議事録は全職員で一読し、共有することとしているほか、本社から通達される安全に関する注意喚起や留意事項にについても、全職員が目を通すこととなっている。また今年度職員の意見交換や情報共有等を目的として、会議体を見直している。