東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和3年度
サービス名称 認可保育所
法人名称 社会福祉法人種の会
事業所名称 世田谷はっと保育園
評価機関名称 株式会社 評価基準研究所

コメント

利用者調査・職員調査は、WEBでの調査を実施し、携帯電話・スマートフォン・パソコンによる回答を中心とし、紙ベース希望者には従来型の紙による回答も可能とした。利用者調査開始時には、調査の趣旨や手法などに関する詳細な説明と個別のID・パスワードを記した案内状を封緘封筒に入れて全家庭に配布し、職員向けにも同様の案内状を配布した。経営層には各標準項目の自己評価を的確に行うための独自資料を提供するなど、事業所向けの配慮も行っている。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)丈夫な子どもに育てます(心身の健康と食育) 2)ていねいに関わります。(情緒の安定と自立の援助) 3)子どもと遊びます。(生きている喜びと社会への信頼) 4)親の気持ちに共感できる心を鍛えます。(カウンセリングマインド) 5)家庭の事情に応じた最大限の対応をします。(多様なニーズに応える)

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

法人理念に従い保育方針、保育目標の意味を理解し、その具現に努める。民主主義の担い手としての子どもに尊厳をも知共同体の一員としての自覚と責任を持つ。保護者の人権、同僚の人権を尊重し自らの人生も客観的、俯瞰的に思考できる。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

①乳幼児の人格をリスペクトし子どもを侮らない ②子どもの言動の意味を探すること習慣化し、子どもに寄り添う ③常に子どもを観察し問いかける。子どもの意志を尊重し、コミュニケーションをとり心の通い合った保育を目指す。 ④「トラブルに対する関わり方」「集団生活を展開する力量」「教材研究に対する創意工夫」など保育のスキルアップを目指す ⑤社会人として職制理解した言動に努め、自己の役割や職責を果たす ⑥園内で発生する課題や問題に対して主体的に関わり率先して行動に移す ⑦自分の考えや意見、発案や提案をためらわずに伝え合い、議論に加わることで参画しているという仕事観、帰属感を持つ 

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 乳児期からの丁寧な関わりの積み重ねが自立的で堂々と生活を送る年長の姿に結実している。

園の幼児保育室を見渡すと、園の中心として、自立してどこか誇らしく生活する年長の姿が見られる。異年齢で幼児が過ごす中で、生活習慣の面だけでなく、保育の活動全般において、堂々と生活し、年下の子どもたちから憧れを集める姿は、保育者たちの乳児期からの丁寧な関わりの積み重ねによるものだろう。園の保育者たちの間には、おおらかに、のびやかに、子どもの成長を見守り支援しようという意識が共有されている。だからこそ、子どもが成功を積み重ねることはもちろんだが、失敗する経験をも保障し、受入れるということができている。
2 子どもを見守り支えながら、自分たちも楽しむ大人たちの協働によって、子どもが探求的に生きる居場所が創造されている

園の理念である「おとなとこども」「おとなとおとな」に象徴されるような、自分たちも楽しんで参画する大人(保育者、保護者、地域)に見守られている園である。保育者は、まず子どもを第一に考え、子どもの行動の背景にあるものをつかもうと常に努力している。その姿勢は、子どもの姿から保育を組み立てる保育計画の在り様や、精緻な保育の振り返り記録や、記録を活用した園内研修などにも表れている。こうした保育に共鳴しつつ、自分たちも参画しながら大いに楽しむ父母の会、地域の人々の存在が、園の子どもたちの探求的な生活を下支えしている。
3 職員のクレドとして「子どもを侮らない」という言葉が園の風土として浸透しており、全ての人が尊重し合う生活が作り上げらている

保育園を訪問してみると、職員の姿や言動の中に、そもそも人は多様であるという人間観や、障害があろうがなかろうが、それ以前に人としての尊厳や子どもの人権を尊重するマインドを感じる。全ての子どもたちが自分らしく生活できているようだ。それがなぜだろうと訪問して気づくのは、運営方針で大切にしている「民主的な人権感覚」を大切にしていることや、「子どもを侮らない」という言葉が職員間に浸透してることがわかった。このような倫理観が基盤になって、豊かな話し合いの時間を作り出し、その上に子ども主体の保育が展開されている。

さらなる改善が望まれる点
1 本園が目指す保育や園作りが全ての利用者に伝わり、お互いが支え合える関係作りが更に進むことに期待したい

本園に入園希望をする家庭は本園の保育を分かった上で入園している家庭が多いが、中には職場や自宅から近いという理由で選択している場合もあると考えられる。本園は開園から8年になり、園の理念や保育方針はホームページや広報誌で伝えられ、着実に園の特色は地域に理解されてるが、それでもある一定数の家庭には届いていないところが、利用者調査の結果から見受けられる。園の保育方針が伝わっていない保護者は少数であり、保護者間でも孤立している事が考えられるので、更に、分かり易く伝える方法やフォローする体制等の検討を期待したい。
2 事業計画が活動領域ではなく組織向上の要素で構成されており(縦軸)、中堅の力量を基準にキャリアパス(縦軸)を構想してみてほしい

園の事業は保育、地域貢献、研修、運営強化など組織向上の要素に分類されており、その全てを職員が分担して参画している。園務分掌と事業計画が合体されており、それぞれの進捗状況も把握しやくなっている。しかも事業分類がすでに課題軸で構成されている。例えば運営強化として中堅層の育成に力を入れており、自律した組織づくりが進んでいる。今後は中堅層のリーダーシップに期待しているファシリテート力などの力量を加味しながら、同僚性、環境構成力、見守りと誘導力など、当園ならではの必要な「資質・能力」をキャリアパスの中に位置づけたい。
3 少しゆったりと過ごしたい園児のために、幼児保育室において「静」の空間、よりくつろげる場の創出を工夫していただきたい

本園の幼児保育室は、乳児期から、選択し自立的に生活することを積み重ねてきた子どもたちが自由闊達に過ごしており大変にぎやかである。それは子どもたちがのびのびと自己発揮し、遊ぶことを通じて自己実現を図る様子に他ならないが、他方、少しゆったりと過ごしたいという気持ちの園児のために、よりくつろげるエリアを創出することも必要なのではないか。具体的には音の環境面に配慮した、ほっと一息付いて落ち着けるようなエリアの創出である。環境的に「静と動」の両面を満たすことで、子どもの生活がより充実したものになるのではないか。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 中継職員の力量を高めることに力を入れ、同僚性と組織力の向上が目覚ましい

経営層は職員が自律的に学び続ける組織づくりに取り組んでいる。具体的にはリーダーが後輩を育てる仕組みの強化であるが、そのために「ミドルリーダー」の層を厚くすることにした。往還型の研修を積み重ねながらクラス運営のファシリテート力(促進力、推進力)と、子ども理解や自己評価力の育成を図ってきている。そこにOJTと園内研修が相乗効果をもたらしている。その要はドキュメンテーションである。誕生会の運営を担任以外の職員が担い、録画した記録で振り返るOJTが保育力を高め、それを園内研修で活用することで同僚性も培っている。
関連評価項目(組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる)
2 ★ サーキット運動や特色ある保育環境により、子どもの身体的な育ちの支援に注力している

法人が独自に考案・研究を重ねるサーキット運動や、園庭のツリーハウス遊具などによる、身体的な育ちの支援が出色である。これは単に心身の健康維持を図るということ以上に、運動能力の大きな向上をもたらしている。設置当初はどの園児も登れなかったツリーハウスも、数年経過した現在では、多くの子どもたちが楽しみながら攻略する姿が見られる。園では、自律神経の発達、自己肯定感・チャレンジ精神の高まりなど、内面の育ちまで視野に入れていて、こうした資質・能力が、遊びの中で楽しみながら、子どもに育っている環境は大いに評価できる。
関連評価項目(子どもが心身の健康を維持できるよう援助している)
3 ★ プロジェクト型保育の経過を保護者に伝える事で園との相互理解が高められている

園の特徴である子ども達が誕生会の企画をするプロジェクト型保育は、園が目指す保育の集大成の活動とも言える。誕生会の企画は、5人の子どもが話し合うところから始まり、プレゼントを制作したり、歌を練習したり、当日の反省会の様子等の記録を残しておき、その活動を一纏めにしたドキュメンテーションが作られる。保護者は、保育者がどこに視点をおいて子ども達をバックアップしているかが分かり易く、理念の実践が感じ取れる。共感した保護者は、園の研修に参加したり、他の保護者にその考えを解説してくれたりと着実に相互理解が高まっている。
関連評価項目(保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:調査開始時点での本園の利用世帯125世帯(155名)を対象として実施した。なお、兄弟姉妹がいる世帯は1世帯として扱った。

調査方法:アンケート方式  
調査項目は共通評価項目に準拠した。回答は、弊社オリジナルWEBベース方式(パソコン・携帯・スマホ)で行いWEB回答できない保護者には紙ベースの回答を、園で回収・弊社宛てに郵送してもらい集計に加えた。

利用者総数 155人
利用者家族総数(世帯) 125世帯
アンケートや聞き取りを行った人数 125人
有効回答者数 63人
回答者割合(%) 50.4%

総括
総合的な感想では、園に対する満足度は「大変満足」が55.2%、「満足」が35.8%の合計91%であり、保護者から園への信頼は、非常に高い数値となっている。設問別でも、「子どもの心身の発達」と「園での活動が子どもの興味や関心を持って行える」、「園内の清潔さ」で90%の利用者が満足であると答えている。また、「提供される食事」、「行事日程への配慮」、「職員の言葉遣いや態度」、「職員の子どもの気持ちを大切にした対応」などで80%以上の利用者満足がった。それ以外のすべての項目でも高い満足度であり、今後は今回保護者から出された個別意見の対応可能な事柄へのさらなる配慮や説明を充実させていただくことに期待したい。

利用者調査結果

1.保育所での活動は、子どもの心身の発達に役立っているか
はい 63人  どちらともいえない 2人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が94%、「どちらともいえない」が3%、「いいえ」が3%という結果だった。自由意見では、「ともだちや先生など家族以外の関わりのなかで、学びがあると感じています」、「もう少し外に出て、おひさまにあたって欲しいなと思っています」、「本来、年齢が上がるにつれ、自立・自律していくはずが、低年齢の頃の方がしっかりとしていた。保育園で身につけてほしい生活力や自己コントロールが年々できなくっていると感じる。」などの意見があった。
2.保育所での活動は、子どもが興味や関心を持って行えるようになっているか
はい 64人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」が95.5%、「どちらともいえない」が3%、「いいえ」が1.5%という結果だった。自由意見では、「とても活動がさかんで、色々な取り組みやチャレンジをしていただけて、ありがたいと思っています。」、「子どもの主体性に重きを置き、子どもに選ばせる保育の仕組みや様々な新しい取り組みを保育の中に入れ、子どもの興味を引く工夫をたくさんしている。」、「集団活動の中でも、同じように工夫して、興味をもって集団活動ができるようにしてほしい。」などの意見があった。
3.提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか
はい 58人  どちらともいえない 7人  いいえ 0人  無回答・非該当 2人 
「はい」が86.6%、「どちらともいえない」が10.4%、「非該当」が3%という結果だった。自由意見では、「口の中を怪我している時は食べやすいサイズな切って提供までしていただいていて細やかな配慮があり、驚きました。」、「家では、食べることができないメニューやバランスの取れた献立をありがとうございます。」、「果物がおやつの時、量が少ないのでもう少し増やして欲しい」、「量が足りないと本人も言っている。体格や成長に個人差があるのにの量が足りているのか疑問」などの意見があった。
4.保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか
はい 53人  どちらともいえない 9人  いいえ 4人  無回答・非該当 1人 
「はい」が79.1%、「どちらともいえない」が13.4%、「いいえ」が6%、「非該当」が1.5%という結果だった。自由意見では、「いつも泥だらけで遊べて良いです。」、「プラネタリウムに行くのにも、バスを乗り継いで、交通機関やマナーを学べるよう労力をおしまず、企画いただいています」、「園内活動ばかりでかなり狭い環境で過ごしている。色々な場所に行くことで色々な植物や昆虫、匂いや感触、人との触れ合いなど多くの経験ができると思うのでもっと外に出て欲しい。」などの意見があった。
5.保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか
はい 53人  どちらともいえない 3人  いいえ 0人  無回答・非該当 11人 
「はい」が79.1%、「どちらともいえない」が4.5%、「非該当」が16.4%という結果だった。自由意見では、「イヤな感じなく、快く受け入れていただけます。」、「事前に登園について確認をし、了承をいただいても、当日受け入れ時に怪訝な顔で受け入れをされたことがあります。園長含む事務所の方にも同じ対応をされました。無理やダメであれば、はっきりと言っていただきたいです。」などの意見があった。
6.安全対策が十分取られていると思うか
はい 36人  どちらともいえない 24人  いいえ 7人  無回答・非該当 0人 
「はい」が53.8%、「どちらともいえない」が35.8%、「いいえ」が10.4%という結果だった。自由意見では、「子どもたちの自然で自発性を損なわないところで、しっかりと安全対策を検討いただいています」、「保育士が先導せずに子どもの階段上り下りをさせていることがよく見受けます。エレベーターもある園のため、非常に危険だと思います。」、「いい意味でもも悪い意味でも放任、目が行き届いていないような感じもします 保育中の保育者のマスク着用の徹底をお願いしたい」などの意見があった。
7.行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か
はい 55人  どちらともいえない 11人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」が82.1%、「どちらともいえない」が16.4%、「非該当」が1.5%という結果だった。自由意見では、「大きな行事は土曜日で参加はしやすく計画をしてくださり、ありがとうございます。」、「昨年度の懇談会はオンラインで子供達のお昼寝くらいの時間だったので、仕事をその時間だけ抜けてというのは難しかったです。」などの意見があった。
8.子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか
はい 43人  どちらともいえない 19人  いいえ 5人  無回答・非該当 0人 
「はい」が64.1%、「どちらともいえない」が28.4%、「いいえ」が7.5%という結果だった。自由意見では、「いつも色々相談に乗っていただいています。」、「なかなか先生とゆっくり話す時間はないです。時間があれば話は出来そうですが、先生方も子供達を見るのに忙しく相談することも難しい環境です。」、「帰り際などは、先生とあまり話す機会もなく帰る形になることも多いので、園での生活の様子をちゃんと把握できているかと言われるとやや自信がないなと感じます。」などの意見があった。
9.施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 62人  どちらともいえない 2人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が92.5%、「どちらともいえない」が3%、「いいえ」が4.5%という結果だった。自由意見では、「もののしまい方、利用の仕方全てに子どもたちが自分で意識して取り組める工夫があります」、「昨年末の胃腸炎の対策が不十分だと思う。処理の現場を見たが、換気もされておらず、子どもたちは一つの部屋に入れ込まれているような状態で、どうなのか心配になった。」などの意見があった。
10.職員の接遇・態度は適切か
はい 56人  どちらともいえない 7人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」が83.6%、「どちらともいえない」が10.4%、「いいえ」が6%という結果だった。自由意見では、「とても丁寧に寄り添ってくださる先生もいらっしゃれば、避けられていると感じる先生もいます。」、「言葉遣いは疑問な点もあるが、態度などはよい人も多い」、「ごく一部の保育者の方ですが、保護者によって挨拶をしたり、しなかったりする保育者がいる。また、受け入れや迎えの時にこちらを見て気が付いているのに、無視するような態度を何度か取られている。」などの意見があった。
11.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 53人  どちらともいえない 10人  いいえ 4人  無回答・非該当 0人 
「はい」が79.1%、「どちらともいえない」が14.9%、「いいえ」が6%という結果だった。自由意見では、「看護の先生が丁寧に見てくださっています。」、「状況を把握している範囲のお話は丁寧にしてくださいます。」、「怪我をしたことを子どもから、聞くことが多く、保育者からは伝えてもらえないことが多い。子どもがいすぎて把握出来ないのであれば、考えなければいけないことだと思う。」などの意見があった。
12.子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 41人  どちらともいえない 18人  いいえ 3人  無回答・非該当 5人 
「はい」が61.1%、「どちらともいえない」が26.9%、「いいえ」が4.5%という結果だった。自由意見では、「子どもたちに話をさせ、自分たちで解決する道をサポートいただいています」、「低年齢でも、子供が手を出した時に親に伝えるのは必要でしょうか?また、親同士直接話す(あやまる)ように促されたこともあり、困惑しました。」、「とりあえず謝らせて終わっているように見えるので、もっと何が悪かったのか理解させて欲しい」などの意見があった。
13.子どもの気持ちを尊重した対応がされているか
はい 54人  どちらともいえない 11人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」が80.6%、「どちらともいえない」が16.4%、「いいえ」が3%という結果だった。自由意見では、「様々な場面で子ども主体性を尊重していただいています。 」、「ほとんどの先生が素晴らしいと思いますが、ごく一部、子供に対して少し威圧的な先生が担任だった時期があり残念でした。」、「だいたいは、気持ちに寄り添って頂いていると思うが、きつい言い方をされているときは、どうなのかと思ってしまう。」などの意見があった。
14.子どもと保護者のプライバシーは守られているか
はい 53人  どちらともいえない 8人  いいえ 5人  無回答・非該当 1人 
「はい」が79.1%、「どちらともいえない」が11.9%、「いいえ」が7.5%という結果だった。自由意見では、「個人情報を扱うため当然のことだと思います。」、「保護者の勤務先や個人情報を見てそのことについて話しかけてくる先生がいるので守ってくれるとは思いません。インスタグラムにも子どもの顔が写ってる写真があり、何があるか分からない世の中にとても怖いなと思いました。」などの意見があった。
15.保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 46人  どちらともいえない 18人  いいえ 3人  無回答・非該当 0人 
「はい」が68.6%、「どちらともいえない」が26.9%、「いいえ」が4.5%という結果だった。自由意見では、「今日こんな遊びをしました、今日こんなことがありました、などを聞かせていただいているので。」、「活動がとてもすばらしいのに、何をしているか、しか伝わっていないです。活動の背景に、なぜこれをしているかがたくさんありそうなので、せっかくなりもっともっと発信いただけるといいなと思っています。」などの意見があった。
16.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 48人  どちらともいえない 9人  いいえ 5人  無回答・非該当 5人 
「はい」が71.6%、「どちらともいえない」が13.4%、「いいえ」が7.5%という結果だった。自由意見では、「改善に真摯に取り組んでほしい。私たちの要望を全部聞いてくれとは言いません。変えていくと約束したことくらい守って欲しいです。」、話しても寝耳に水といった印象です。事務所の方に話しても取りいってもらえないため、どうすればいいのか分かりません。 一個人のわがままで処理されているのではないかと不信感ばかりが募ります。」などの意見があった。
17.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 22人  どちらともいえない 24人  いいえ 11人  無回答・非該当 10人 
「はい」が32.8%、「どちらともいえない」が35.8%、「いいえ」が16.4%という結果だった。自由意見では、「園内の掲示と何かの書類でみた程度。事務所の方からそのようなお話を直接聞いたことはありません。」、「入園時に説明いただきました」などの意見があった。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
創設者の思いがこもった「コンセプトブック」が保育を創り出す源泉になっている

保育園が目指していることは、法人作成の小冊子「コンセプトブック」に明示されている。これは保育園を創設した前理事長が書き下ろしたもので、自身の幼少期から会社設立までの「おいたち」には、創設者の保育への思いが込められている。これを読むと、その思いが源泉となり、子育ての「考え方」や「環境」の要点、さらに大人たちの責任として「保育士」に期待していることや「保護者」に理解してもらいたいことが分かる。この小冊子は、職員や保護者に配布され、職員は常にこれを読み込み、研修会でも活用されていて、保育の拠り所となっている。

職員間のチームワークを高めながら目指す理念の浸透を図る体制ができつつある

当園の運営は職員の民主的な参画を重視している。それはコンセプトブックでも明瞭で、「最優先課題」である「保育者集団のチームワーク」を育むために「自己発揮」が不可欠と考えている。自分が得た経験や考えを積極的に伝えること(自己発揮)に対して、真摯に応えること(応答性)によって職員間に豊かな「同僚性」を育もうとしている。当園には、多様な価値観を含み込んだ対話が「素晴らしい保育」を生むという保育観があり、さまざまな会議や研修の中に、民主的対話が惹起されるようにしており、これが理念共有の仕組みにもなっている。

多様で豊かな子どもの存在を尊重するために、子ども像としての保育目標を作らない

当園の保育理念の最大の特徴は、子ども像としての「保育目標」を持たないことであろう。この意味は、子どもを潜在的に豊かな存在として捉えているからであり、また子どもの主体性を尊重しているからでもある。子どもの姿を目標概念の言葉で規定してしまうことに、大人や社会や教育の不遜さを嗅ぎ取っているようで、かけがえのない子どもに対しては「侮るなかれ」が職員への強い戒めとなっている。こうした職員の心得は管理職のためのマネジメントブック「糧ー試練と鍛錬が出会うとき」にまとめられ、リーダー層の職員がいつも携えている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
事業計画と事業報告は職員全員が参画して作り上げる仕組みになっている

事業計画は保育実践に該当する「アカデミー」と、研修や人事考課などの「アカデミー&マネジメント」、そして財務などの「マネジメント」の3領域から構成されている。その3領域はさらに保育実践、地域貢献、委員会活動など分かれ、全体で25の重点項目に細分化されている。それぞれに実施項目、実施時期、実施回数、担当者などが決まっており、園運営全体がどのような要素で展開されているかが一目瞭然である。職員の役割分担が決まっていることにより、事業計画および報告は全て職員全員で作り上げる体制ができている。

事業計画は一覧表になっており内容ごとに結果と分析、課題が明確にされている

事業計画は、一覧表になっており、全ての事業項目に途中経過、結果、ふりかえり、次年度の取り組みの蘭があり、PDCAサイクルが確認できる。例えば課題から改善に結びついたものとして、中堅職員のファシリテート力の育成がある。前年度のふりかえり欄には「園内研修の回数が目標に達してない」と分析され、今年度は「計画的に実施」されている。実際のところ新任職員がトピック形式の月案を立てることができるように、中堅職員が後輩を育成する力もついてきたと、経営層は感じている。計画に基づく分析と改善を着実に実施に移す仕組みがある。

事業の中で核となる保育については、職員が「保育過程」について理解を深めている

保育を計画して実践し、その記録を残し振り返るーー。この一連の「保育の過程」について、経営層は「この1年間で職員の理解が進んだ」という手応えを持っている。前年度に課題と感じていた「保育の計画、記録の充実」は、今年度、職員の間で話し合う時間が十分に取れたことから、子どもの姿からどこを記録に残すのか、どの部分を次の計画に結びつけるのか、といったことを深く語り合えたという。これは事業計画の「理念に基づいた教育・保育」の中の「小グループでのワーク」という実践から生まれたもので、年間12回以上実施された。★★


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
コロナ禍でストレスの溜まった卒園児に園を開放しストレス解消に貢献している

小学生になった卒園児に保育園を開放し、里帰りしたような「ほっとする時間」を提供している。はっと保育園に戻ってくるという意味から、事業名は「ハットカミング」。2020年9月、コロナ禍の休校が再開したあと、勉強の遅れを取り戻そうと、小学校は授業の密度を高めた。その結果、学校生活そのものに慣れていなかった1年生は、ストレスが高まったという。学年別に土曜日の1日、弁当持参で園を開放すると、1年生は卒園児のほぼ全員の27人が集まった。この試みはどの保育園でも見習いたい地域貢献と言えるだろう。

地域向けの子育て支援事業はコロナ禍にあっても感染対策を講じて実施している

当園の地域向け子育て支援は、一時保育や育児相談、親子向けイベントなどがある。一時保育は定員7人でニーズが高い。育児相談は園長や主任による育児相談のほか、看護師が身長、体重を図って健康相談にも応じている。親子向けのイベントとしては、乳幼児向けのキッズヨガ(月2回)や、人形劇、季節のイベントなどのワークショップ(年4回程度)を開催している。この1年ほどはコロナ禍で開催できないものもあるが、感染対策を講じてできるだけ中止にしないように努めている。地域との「交流」を超えた「連携事業」による事業展開になっている。

園児は地域の高校生やボランティア、地域の方との自然な交流を楽しんでいる

地域との関わりも多い保育園である。同じ敷地内にある東京学芸大附属高校の高校生が頻繁に遊びにきている。吹奏楽や合唱部、ダンス部など4つのクラブが演奏などに来たり、園児の高校へ出かけて自然の素材をもらったりと、日常的な交流がある。当園の地域との関わり方は、団体同士だけではなく、地域の市民の方との個人的なつながりも大切にしていることに注目したい。地域のカレー屋さんのご主人が車椅子で来園し、子どもたちと鬼ごっこが始まるなど交流が自然体だ。様々な人が寄り添いながら「みんなでみんなをみていく園づくり」になっている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
経営環境の変化も重要なリスクと位置付けて、最新の情報を入手している

世田谷区の人口動態統計やコロナ禍の動向など、園経営に関わる情報は園長が率先して入手している。それによると同区の乳幼児人口は減少傾向が見られ、今後入園を希望する家庭が少なくなると見込まれている。さらにコロナ禍で出産を控える方も増え、園長は園児減少の傾向は当面続くだろうとみている。0歳児に空きが出始めている中、同区が保育士確保問題も含めてどのような方針を打ち出すのか、経営環境は大きな変動期を迎えている。同園はそうした環境変化も重要なリスクととらえ、最新の情報入手を怠らないようにしている。

リスクの分析を怠らず、想定される災害を踏まえた訓練が実施されている

リスク対策の考えは明瞭である。まず起こりうるリスクを整理して優先順位を決めている。優先順位が高いのは「生命を脅かす事象」であるが、各種の災害を想定した時、コロナ禍のように、それぞれがどれくらいのリスクがあるのか、判断に迷うこともある。そこでリスクマネジメント委員会を数ヶ月に1回開き、最新情報を確認したり、記録されたヒヤリハットを分析して、リスクの程度を検証している。その上で大切にしているのが各種災害を想定した避難訓練で、火災、地震を想定した毎月の訓練のほか、世田谷区が一斉に実施する避難訓練にも参加している。

個人情報を含め子どもの情報が保育における情報活用の本質として明示されている ★

園長はホームページで次の園の風土を説明している。<自分で好きな事を見つけて夢中で遊ぶ子ども達、そんな子ども達を夢中で観察し対話する職員集団。いつも手さぐり、疑問に思ったら『まずはやってみよう~』の精神が満ち溢れ、それが文化となり雨水が地面に吸い込まれるように浸透していく。そんな社会がここにあります。>ここ雨水とは、保育理念や情報と捉えることができる。子どもの情報が職員の対話を通じて、行動と精神に変わるという説明になっており、この例えの中に保育における情報の活用の本質が表現されている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
目指される人材像は4つの力量からなり、職員育成のキャリアパスに連動したい

園長は職員の育成、特にミドルリーダーの育成に力を入れている。数年後の「こども園化」を視野に入れて、幼児教育の実践と自己評価ができる中堅層を厚くしようとしている。その際、目指されている保育者像は明確で、開園当初から馴染んできたものがある。それをキーワードでまとめると同僚性と応答性を高める自己発揮、子どもを見守ることと、意図したところへの導き、そして子どもと接する時の自己抑制ーの4項目になる。その内容は法人が2010年に発行した「コンセプトブック」に詳しく解説されており、今後キャリアパスとの連動が期待される。

学び高めあう職員集団にするために人材育成を担う中堅職員の育成に力を入れている

自律した学びの組織とするために中堅職員(ミドルリーダー)の育成に力を注いでいる。中堅職員は後輩職員の育成を担当、さらに園運営にも参画する立場になっていく。そこでクラス会議でのファシリテート力や民主的運営のスキルなどを学ばせている。そこで目を引くのは、研修が往還型になっていること。毎月1回、養成校の先生に来てもらい、研修で学んだことを実践してみて新たな課題に気づき、さらに研修で学びを深めるという、学びと実践の間を往復するような研修である。チームワークや同僚性を高めることを重視している当園らしい仕組みである。

保育記録のドキュメンテーションが子ども理解や保育の振り返りに役立っている

当園の保育は、子どもの体験が深まるような「仕掛け」を工夫しているが、それがアイデアに富んでいる。そんな創意工夫が生まれるのは、リーダー層が職員に自己発揮を奨励しているからだろう。保育は「子どもの姿」をどのように読み取るかで、その後の保育展開が大きく左右される。そこで園内研修は、誕生会などの保育場面をビデオに録り、職員が子どもの姿や心の動きをどう捉えたのか、その気づきを語り合うようにしている。これはドキュメンテーションの本来に使い方であり、職員の資質向上と組織のチームワーク向上に役立っている。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 経営層は重要課題を5つあげている。それぞれの課題について改善目標を設定して取り組み、どこまでできたか、次年度への継続にするかかなどの検証と判断が行われている。それをまとめたものが事業計画と事業報告で表現されている。

5つの重要課題は次の通り。(1)ミドルリーダーの育成(2)保育計画・記録の充実(3)ICT化、保育内容の発信(4)園庭の充実(5)幼保連携型認定こども園への移行

(例)課題の設定と改善の取り組みの過程
ミドルリーダーはクラス会議を開催し付箋ワークを中心にクラスの環境、活動、ケース会議などのファシリテートをしてきた。公開保育も実施で来ていなかったので自分たちの保育に自分たちで問いを出すことが難しかった。しかし、話し合いの時間を十分に取ることができたので保育計画、実行、子どもの姿、振り返りのプロセスが見えるようになってきた。こどもの姿からどのように記録を残して行くのか?どの部分を次の計画に結び付けるのか?話し合いの論点は様々だが子どもを中心に語り合う場面が多く見られるようになってきた。ドキュメンテーションの活用も話し合いの促進になった。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
経営層は重要課題を5つあげているが、事業計画と事業報告には25項目の事業が並んでおり、その中から5つが重要課題に選ばれている。全ての事業項目に途中経過、結果、ふりかえり、次年度の取り組みの蘭があり、PDCAサイクルが確認できる。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 経営層は重要課題を5つあげている。それぞれの課題について改善目標を設定して取り組み、どこまでできたか、次年度への継続にするかかなどの検証と判断が行われている。それをまとめたものが事業計画と事業報告で表現されている。

5つの重要課題は次の通り。(1)ミドルリーダーの育成(2)保育計画・記録の充実(3)ICT化、保育内容の発信(4)園庭の充実(5)幼保連携型認定こども園への移行

(例)課題の設定と改善の取り組みの過程

幼保連携型認定こども園への移行のために、ミドルリーダーの育成を課題に設定し、そのためにファシリテート力と子ども理解力を改善目標として取り組んでいる。具体的には世田谷区の往還型研修を採用し実施に移行している。その成果は「小グループでのワーク(ECEQ方式)を通して、職員全員の意見の吸い上げと、保育のねらいに即した事項が抽出できる様になった」という手応えをえている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定し、その達成に向けて取り組みを行った
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行った
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させた
【講評】
目的達成のための手立てとして「リーダーのファシリテート力の不足が見られた」として「ミドルリーダーの保育力強化」を今年度の目標に設定しており、このような保育事業特有の検証ができるところが、この事業所の強みと言ってよい。その強みは、経営層が保育実践の経験が豊かであること、さらに管理職が何をどう研鑽すればいいのかという指針があることであろう。保育理念や保育方法が確立されている中で、常に職員間で闊達な対話が継続しているのは、保育に対する高いモチベーションの現れでもある。さらにそこを支えるものとして、管理職のためのマネジメントブックが優れている。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
園の情報は、区が発信するホームページや冊子、園の行事に参加して得ることができる

保育園利用を考える保護者が、先ず目にする区のホームページには、園の規模や概要など基本的な情報が見やすく掲載されている。世田谷区では、保育の質のガイドラインとなる「世田谷の保育」を発刊し、区が考える現代の保育のあり方を説明している。利用者はこれも入手できるため併せて園の情報を見る事ができる。また、園は一時保育や地域子育支援としてヨガ教室や育児講座等のイベント等を開催しており、これらに参加したり体験したりもできる。園は、保育園の利用を考えている保護者に本園の考えが伝わるように動画等も使い多くの情報を出している。

園のコンセプトや保育活動が伝わるホームページは見やすく、保育観を知ることができる

園のホームページからは、法人が考える保育の在り方や園の活動の様子など大切な情報を得ることが出来る。本法人は、同じ理念の下で18の児童施設を運営し、トップページの「法人のページ」から、その理念についても詳しく見ることができる。発信では動画サイトを活用して、創設者が保育の考え方を紹介したり、本園の特徴であるプロジェクト保育やサーキット等、保育の取り組みなどを紹介したりしている。また、入職した職員も必ず読む「種の会コンセプトブック」もホームページから見ることが出来、園が大切にしている保育の価値観を知る事ができる。

園の見学会は予約制で開催され、ホームページで日時等を知ることができる

本園の見学会は、ホームページの「保護者の方へ」から日時や予約状況等の情報が得られる。現在は感染症対策として、4月から5月は月に2回、7月以降は、希望者が増えるので毎週5人ずつ時間制で開催している。予約は電話で随時受け付けているが、園内の見学では、パンフレットが配布され、地域担当の職員が活動の様子を説明しながら園内を案内する。ホームページの「お知らせ」に令和3年度の入園説明会として、園長が保育目標や利用に関する動画等が掲載されているので、これを見てから見学することで、本園の内容をイメージしやすくしている。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり保護者に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を保護者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容について、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、保護者の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、子どもの保育に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、子どもの不安やストレスが軽減されるように配慮している
  標準項目3 サービスの終了時には、子どもや保護者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
保育所を初めて利用する保護者が安心して子どもを預けられるように配慮している

園は、保護者の気持ちに寄り添い、入園する子どもの様子を丁寧に聞き取っている。入園決定後、園から入園のしおりが郵送されるが、しおりには、保育方針等の後には「入園に際して、あれこれ、知ってください」と題して、入園までに準備して欲しい事や保育時間などの決まり事が記され、保護者は安心して準備を進められる。1月下旬からは入園前の面談が実施され、学年のリーダーが、その子の家庭での生活リズムや主食副食の食べ具合、睡眠や排泄の状況などを丁寧に聞き取り、安心して預けられるよう記録票を使い、聞き漏れが無いように配慮している。

卒園後も園との関わりを大切にする取り組みがあり、保護者の安心にも繋がっている

本園には、「はっとタッチプロジェクト」という、卒園した子ども達を20歳まで丁寧に見守っていこうという取り組みがある。本園は開園から8年のため、まだ20歳に達した卒園児はいないが、現在は、小学生がボランティアとして園と関わったり、その保護者の相談にのったりする「ハットカミング(里帰り)」が続けられており、卒園児の保護者から小学校での様子についての相談もがあったという。この取り組みは、法人理念である「みんなでみんなを見ていく園づくり」の一環であり、園と地域が繋がる種となっている優れた取り組みである。

保護者の職場復帰と子どもが無理なく保育園生活に入れるために慣れ保育が計画される

利用開始時には、子どもが新しい環境に少しずつ慣れて行けるように、慣れ保育が計画される。この慣れ保育は、それぞれの子どもに合わせて、入園の面談時に保護者と話し合い、計画がされる。目安としては、0歳児は、初日は母子で登園してもらい、共に1時間園で過ごし、1週間ほど掛けて徐々に離れていく。園は、預けられる子どもと預ける保護者が相互にストレスを抱かないように、様子を見ながら預かる時間を少しずつ伸ばし、保護者には園での様子を丁寧に伝えるようにして園と保護者の信頼関係を作っている。


  サブカテゴリー3 個別状況の記録と計画策定
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメント(情報収集、分析および課題設定)を行い、子どもの課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 子どもの心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し把握している
  標準項目2 子どもや保護者のニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 全体的な計画や子どもの様子を踏まえた指導計画を作成している 実施状況
  標準項目1 指導計画は、全体的な計画を踏まえて、養護(生命の保持・情緒の安定)と教育(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の各領域を考慮して作成している
  標準項目2 指導計画は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化に即して、作成、見直しをしている
  標準項目3 個別的な計画が必要な子どもに対し、子どもの状況(年齢・発達の状況など)に応じて、個別的な計画の作成、見直しをしている
  標準項目4 指導計画を保護者にわかりやすく説明している
  標準項目5 指導計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  評価項目3 子どもに関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 子ども一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 指導計画に沿った具体的な保育内容と、その結果子どもの状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 子どもの状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 指導計画の内容や個人の記録を、保育を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、子どもや保護者の状況に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
遊びに向かう興味・関心、生活の中での子どもの姿をとらえ、計画に落とし込めている

保育における計画は、実際の子どもの姿をもとに保育者が予測する見通しであり、保育を豊かに展開させていく上での道しるべである。園では、その時々の子どもの興味・関心、ブームとなっていることがらを保育者が拾い上げ、柔軟な計画に落とし込んでいる。これが日々の遊びの発展や、中長期的に継続する遊びが展開される「プロジェクト型保育」の実施につながっているほか、園内掲示によって保護者の保育理解にも役立てている。保育の記録では、写真を用いて子どもの姿を記録する「ドキュメンテーション」などの活用も進んでいる。

計画の柔軟な運用により、保育の中で「今」の子どもの興味関心にフォーカスできている

園の保育計画は、「トピックウェブ型」という、分かりやすく追記・修正も容易な書式である。この柔軟な計画設定により、良い意味で計画に縛られすぎることなく、子どもの興味関心から出発する保育が展開できている。計画はあくまで保育者側の予測・見通しとして活用しながらも、子どもの予想外の姿に対応して常に修正し、保育者は現在の子どもの姿・興味関心を拾い上げられるように心掛けている。この計画を見直すことは、すなわち保育の振り返りでもあり、当月の計画を修正していくうちに、自然と次月の計画へとつながっていく点も有用である。

ICTの活用により、検索性、閲覧性に優れた個別記録を整備し、保育に生かしている

各種記録のうち、保育日誌と0・1・2歳児の連絡帳記載事項については、全てクラウド上に入力・保存されており、各園児ごとの個別記録として簡単に取り出すことが可能である。特に保育日誌など、デイリーの記録が取り出しやすい形で整備されていることは、計画策定上の手がかりとなるだけでなく、子ども理解にもつながるものである。別のソフトを用いて制作しているドキュメンテーションなどは、これらに紐づいていないものもあるが、将来的に統合することができれば、育ちの記録を一元的に管理し、さらなる子ども理解へとつながるのではないか。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 子ども一人ひとりの発達の状態に応じた保育を行っている 実施状況
  標準項目1 発達の過程や生活環境などにより、子ども一人ひとりの全体的な姿を把握したうえで保育を行っている
  標準項目2 子どもが主体的に周囲の人・もの・ことに興味や関心を持ち、働きかけることができるよう、環境を工夫している
  標準項目3 子ども同士が年齢や文化・習慣の違いなどを認め合い、互いを尊重する心が育つよう配慮している
  標準項目4 特別な配慮が必要な子ども(障害のある子どもを含む)の保育にあたっては、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう援助している
  標準項目5 発達の過程で生じる子ども同士のトラブル(けんか・かみつき等)に対し、子どもの気持ちを尊重した対応をしている
  標準項目6 【5歳児の定員を設けている保育所のみ】 小学校教育への円滑な接続に向け、小学校と連携をとって、援助している
講評
柔軟な異年齢保育によって、発達の多様さに配慮した保育が実現できている

発達の個人差が大きい幼児期において、子ども一人ひとりの状態に応じた保育環境を実現するために、2歳児~5歳児までのクラスでは異年齢保育を実施している。子どもの発達・成長は決して一直線ではなく、行ったり来たりを繰り返しながら、長期的な視野で見守るものである。異年齢で多様な子どもたちが過ごすこと、年齢で輪切りにしない「戻ることができる」環境は、子どもに安心感をもたらし、日々の生活への意欲を生む。また保育者もそうした異年齢保育環境の意図や良さを存分に自覚し、環境設定や声掛けにつなげることができている。

主体性を尊重した関わり、時間設定によって、子どもが自分のペースで生活できている

多くの子どもが一緒に過ごす異年齢保育の空間ではあるが、一人ひとりの生活リズムに合わせて少人数のユニットで生活することにより、それぞれの子どもが個性を発揮することができている。また、昼食の時間や午睡への移行時など、時間の幅を広く設定し、保育者も必要時以外は声かけは控えるよう徹底している。遊びから生活、生活から遊びへ、といった切り替えをそれぞれの園児が自分のペースで切り替えることができているので、子どもが「時間に追われる」ようなことなく、自分たちで必要性を判断し、生活することができている。

職員は子どもの人と関わる力が育つように子どもの視点にたち環境を工夫している

園の保育者は、あくまで子どもの視点から子どもの存在を理解することに努め、職員間の連携により、子どもたち同士で問題解決ができるようになるよう導いている。例えば、子ども同士のトラブルに対しても、大人が正義をジャッジすることは避け、その理由を引き出すなどして仲介することに徹している。話ができる子どもに対しては「ハットの部屋」という、落ち着いて話ができるテーブルを用意し、自分たちで話し合うよう促している。こうした保育者の関わりによって、子ども同士でトラブルを解決する姿も見られるようになっている。

  評価項目2 子どもの生活が安定するよう、子ども一人ひとりの生活のリズムに配慮した保育を行っている 実施状況
  標準項目1 登園時に、家庭での子どもの様子を保護者に確認している
  標準項目2 発達の状態に応じ、食事・排せつなどの基本的な生活習慣の大切さを伝え、身につくよう援助している
  標準項目3 休息(昼寝を含む)の長さや時間帯は子どもの状況に配慮している
  標準項目4 降園時に、その日の子どもの状況を保護者一人ひとりに直接伝えている
講評
生活習慣の面で、乳幼児期を通じて、個々の発達に合わせた関わりが一貫している

生活習慣の確立は乳幼児期の重要なテーマであるが、子ども自らが必要性を感じたうえで、見通しをもって自ら生活リズムをつくっていけることが望ましい。これは一朝一日に身につくものではなく、就学までの長い園生活の中で積み重ねて身に着けていくものである。園では特に0~2歳児から個々の発達に合わせた関わりを重視しており、排せつや食事のタイミングなどについても、子ども自身にたずね、職員が一方的に無理強いすることのない関わりによって、生活習慣を積み重ねていくことを心掛けている。

午睡などの休息も子ども自身が主体的に決められるようにしている

午睡は発達上必要な休息時間ではあるが、特に幼児期以降においては、発達の個人差に留意して子ども自身が選択できることが望ましい。園では4歳児クラスから午睡は選択制であり、保育者も個別に対応している。子ども自ら、その日の体力を理解し、見通したうえで休息を取るのか、取らないのかを選択することを尊重している。この午睡の選択制は各家庭ごとの生活リズムの違いにも配慮しながら進めることができている。今後は、ちょっとした時間に心身を休めることができるコーナー・環境を充実させる中で、ゆったりとした生活がより浸透してくるだろう。

乳児期からの生活習慣の積み重ねが、自立的な生活を送る幼児の姿に結実している

「自分でやってみること」が十分に尊重され、大人に見守られて育ってきた園の幼児は、実に堂々と、のびのびと毎日を生きている。こうした園の幼児、特に年長児の自立的な生活姿勢を見ると、生活の習慣が確立することで生活面が安定し、自分をコントロールしながら生活することが確かに結実していることが分かる。乳幼児期を通じて、生活習慣について「子どもが自ら選び取る」環境はもちろん、保育者の関わり方が園全体で一貫していることが大きい。保育理念の浸透や、自由闊達な語り合いを重視した職員研修もこれを大いに下支えしているとみられる。

  評価項目3 日常の保育を通して、子どもの生活や遊びが豊かに展開されるよう工夫している 実施状況
  標準項目1 子どもの自主性、自発性を尊重し、遊びこめる時間と空間の配慮をしている
  標準項目2 子どもが、集団活動に主体的に関われるよう援助している
  標準項目3 子ども一人ひとりの状況に応じて、子どもが言葉による伝え合いを楽しみ、言葉に対する感覚を養えるよう配慮している
  標準項目4 子どもが様々な表現を楽しめるようにしている
  標準項目5 戸外・園外活動には、季節の移り変わりなどを感じとることができるような視点を取り入れている
  標準項目6 生活や遊びを通して、子どもがきまりの大切さに気付き、自分の気持ちを調整する力を育てられるよう、配慮している
講評
子どもが主体的に取り組む「遊び」をしっかりと園活動の中心に据えている

乳幼児期は、子どもが自発的に参加し、熱中し、創意工夫しようとする総合的な活動=遊びを通じて、物事へ向かう意欲や、やり抜こうとする力、多少の失敗にもめげないレリジエンスなどを育んでいくことを通じ、就学意向の学びに向かう力の醸成につなげ、豊かな人生の土台を作る大切な時期である。園では、多様な遊びを選ぶことができるコーナー保育、遊びの中長期的な持続を生むプロジェクト保育などに注力している。子どもが主体的に取り組む「遊び」をしっかりと中心に据え、その充実・発展について常に余念の無い保育者の姿勢が評価できる。

遊び空間として豊かなコーナー保育を展開し、常時見直しつつ発展させている

園では、子どもがさまざまな遊びから選ぶことができるコーナー保育に力を入れている。乳児期からも遊びを選ぶことができる環境を用意し、幼児期では実際にさまざまな遊びを自分なりに選び、没頭する姿が多く見られる。子どもが夢中になって遊べているのには、コーナーごとに保育者の担当グループをつくり、常に振り返り・改善を図っていることが大きい。付箋紙や子どもの姿をベースとして記録している保育計画を活用した話し合いなどによって、コーナー環境を見直すことが上手く仕組み化されている。子どもの興味・関心に柔軟に応えられる環境である。

失敗する権利を保障できているプロジェクト型の活動が、保育に深みを生んでいる

5~6人程度の少人数の年長児によるプロジェクト型の保育に取り組んでおり、中長期的な遊びの継続や、より主体的に熱中して参加する子どもの姿を生み出している。子どもたちは、誕生日会で自分たちのやりたいことを話し合い、意思決定をし、実際に取り組んでいく。この全過程において、保育者は過度な介入をすることは避け、大人から見た成功・失敗で判断することのないように心掛けている。子どもが「失敗する権利」を保障できているということであり、大人から成否で判断されないことは、子どもが闊達に自己発揮するための下地になっている。

  評価項目4 日常の保育に変化と潤いを持たせるよう、行事等を実施している 実施状況
  標準項目1 行事等の実施にあたり、子どもが興味や関心を持ち、自ら進んで取り組めるよう工夫している
  標準項目2 みんなで協力し、やり遂げることの喜びを味わえるような行事等を実施している
  標準項目3 子どもが意欲的に行事等に取り組めるよう、行事等の準備・実施にあたり、保護者の理解や協力を得るための工夫をしている
講評
多様な行事を日常の保育の延長として実施し、子どもが成長する機会をつくっている

毎月の誕生会、運動会、お泊り保育、発表会、読み語りの会(ハットナラ)など極めて多様な行事を、子どもと職員が楽しみながら一体的に作り上げている姿がみられる園である。全ての園行事は日常の保育の延長線上と位置づけられている。そのため、本番の出来不出来にウェイトを置くのではなく、行事に向かうまでのプロセスの中に子どもの成長を見出すという姿勢が徹底している。園では、多くの行事で子どもたちが話し合いながら自分ごととして参加し、目標に向かって協力し合う姿が生まれるよう努めている。

行事が保護者や地域の人も巻き込んだつながりをつくり、地域に活気を生んでいる

園行事の意図・ねらいについては、園だよりや日々の写真付きの活動レポートによって保護者に伝えており、これら園行事が活発な様子は保護者からも定評がある。また、保護者による「父母の会」が存在し、この会が中心に園の活動や行事にも保護者が参画し、ともに楽しむ姿が大いに見られる。父母の会の主催で園周辺のお散歩マップを作ったり、行事の際に地域の住民を招き、ともに交流するといった場面もある。園行事が、いち保育園の行事という枠から飛び出し、地域の中において活気あるイベントとして根付き始めている。

行事の意味や内容を常に見直し、新たな行事も設定するなど創意工夫にあふれている

本番の見栄え、出来栄えではなくその過程を重視し、行事に取り組む子どもの思いを第一に取り入れていくため、毎年、毎月、毎週……常にその内容は変化していく。それを支えているのは「なぜその行事をやるのか?」という意義を常に見直し、変化することを恐れない保育者たちの熱意と創意工夫である。近年では、イタリアのレッジョ・エミリア現地研修からヒントを得て、絵本の読み語りとワークショップの会「ハットナラ」をスタートさせた。行事において、楽しみながら新しいものを生み出す保育者たちの進取の姿勢が評価できる。

  評価項目5 保育時間の長い子どもが落ち着いて過ごせるような配慮をしている 実施状況
  標準項目1 保育時間の長い子どもが安心し、くつろげる環境になるよう配慮をしている
  標準項目2 保育時間が長くなる中で、保育形態の変化がある場合でも、子どもが楽しく過ごせるよう配慮をしている
講評
園で過ごす時間が長い子どもにも、家庭のように落ち着いた空間で保育している

園で過ごす時間が長い子や、延長保育を利用する園児の場合においては、特にこうした生活リズムの違いからの配慮も必要である。園では、こうした子どもたちのため、延長保育の時間では家庭のように落ち着いた空間での保育を心掛けている。例えば、1Fの保育室に用意した幼児向けの玩具で遊んだり、絵本コーナーでゆっくりと絵本を読み過ごしている。近年、延長ニーズが減ってきたことを生かし、保育者との間で個別と個別の関わりでゆったり過ごすことにより、保育時間の長い子どもが落ち着いて家庭に帰っていけるよう心掛けている。

日常から異年齢で過ごしていることで、子どもが延長保育においても自己発揮できている

園の延長保育の時間帯については、1Fの保育室などで合同保育的に過ごすシーンが多い。基本的に2歳児以上は日常的に異年齢保育の環境で過ごしているため、この延長の時間帯においても、子どもは年齢の壁がなくさまざまな年代の子どもの中で自己を発揮することができている。子どもにとっては、さまざまな遅番職員、多様な大人とかかわることができる機会としてとらえることもできる。保育者は、子どもが帰って人数が減ってくる時間帯では、子どもが寂しさを感じないで過ごせるような配慮をするなどしている。

  評価項目6 子どもが楽しく安心して食べることができる食事を提供している 実施状況
  標準項目1 子どもが楽しく、落ち着いて食事をとれるような雰囲気作りに配慮している
  標準項目2 メニューや味付けなどに工夫を凝らしている
  標準項目3 子どもの体調(食物アレルギーを含む)や文化の違いに応じた食事を提供している                                                                                        
  標準項目4 食についての関心を深めるための取り組み(食材の栽培や子どもの調理活動等)を行っている
講評
食べる量を子ども自ら選ぶセミバイキング方式が浸透、給食メニューの改善も進む

園の食事では、子ども自ら食べる量を選ぶセミバイキング方式をとっている。園児は乳児の時期から丁寧に適量をたずね自分の申告した量についてはなるべく食べきるという体験を積み重ねており、幼児期ではこれがしっかりと浸透している姿が見られる。年長児になると、重要な役割の一つとして配膳当番を交代で任され、食事というシーンの中で子どもの大きなやりがいを生んでいる。他に、近年では調理スタッフが保育者と共に配膳に入ったり、子どもの声を直接聞く体制へと変更したこともあり、給食メニューそのものの改善も重ねている。

子どもの多様な食育体験が保育者の見守りによってさらに豊かになっている

「食育」といったかたちで時間を設けて設定するものだけではなく、園内では実にさまざまなシーンで食への関わりがあり、その体験がきわめて多様で豊かである。5歳児になると少人数のグループで料理(カレーからの発展形)を実際につくっていく。ここでもあくまで主役は子どもであり、子どもが自ら調理方法を調べ、自分たちで進めていけるように見守っていく。保育者もメンバーの一人として、その過程において子どもたちが感じ、取り組んだことを記録しつつ多くを学んでいる。この姿勢こそが園の食育体験をいっそう豊かなものにしている。

園内だけではなく地域の人を招いたものなど、多様で豊かな食育体験がある

園内の食育においては、毎年、プランターで野菜を育てて食べることや、クッキング保育などさまざまに取り組んでいるが、近年では、近隣の魚屋による「魚解体ショー」など、地域の人を招いた食育体験も積極的に取り入れている。園児が過密にならないよう、園内で「映像中継」しながら実施するなど、ICTの活用によって、感染症対策と両立させながら実施できている。こうした多様で豊かな食育体験の工夫を通じ、園児はリアルな「食」に触れ、感じ、食べるという体験を積み重ねることができている。

  評価項目7 子どもが心身の健康を維持できるよう援助している 実施状況
  標準項目1 子どもが自分の健康や安全に関心を持ち、病気やけがを予防・防止できるように援助している
  標準項目2 医療的なケアが必要な子どもに、専門機関等との連携に基づく対応をしている
  標準項目3 保護者と連携をとって、子ども一人ひとりの健康維持に向けた取り組み(乳幼児突然死症候群の予防を含む)を行っている
講評
サーキット運動は、チャレンジ意欲や運動能力の向上と危険を回避する力を培っている

園の特徴でもあるサーキット運動は、心と体のバランスが良くなることを目的として開園当初から続けられている。コースは、はしごやボックス等を組み合わせて作られ、乳児の頃から取り組み、チャレンジする気持ちや乗り越えた喜びを体験しながら、バランス感覚や身のこなし方を覚える。それは確実に怪我防止に繋がっている。また、本園のシンボルでもあるツリーハウスへの階段は垂直で高さもあるが、子どもが自分で登れるか否かを判断し、チャレンジしているという。サーキットは、子どもが自分の力を知り、危険を見分ける力をつける活動となっている。

子ども、保護者への保健指導や保育活動は健康の増進に役立っている

園は、乳幼児期の病気や怪我について分かりやすくまとめた「保健のしおり」を配布して、保護者と情報を共有している。しおりには、発熱、目、鼻、耳、咳、排便、嘔吐という体の部位毎や症状別に注意点や対応が記されているので、家庭で使って欲しい。園では、看護師が中心となり、子どもに歯磨きや手洗い等の健康指導をしたり、講師によるヨガ教室では、体を温めたり、体を柔らかくして体感を鍛えることで、免疫力を高める効果があったり、イライラをコントロールできる力もつくという。園の心と体のバランスをとる活動は、健康を増進させている。

配慮が必要な子には専門機関からのアドバイスを受けて個別の支援をしている

園医による定期的な内科・歯科健診や発達について専門機関への相談を受けることができる。0歳児の内科健診は毎月、1歳以上は年2回、歯科健診は年1回行われ、成長の状況を診てもらえる。また、発達に気になる園児がいた場合は、区からの巡回相談を年に1~2回受け、支援の方法についてアドバイスが受けられる。園では、異年齢で活動することが多いので、保育者は必然的に自分の担当だけではなく、全員を見ているので、気になる園児の行動については、保育者間で共有することで、支援しやすい環境になっている。

  評価項目8 保護者が安心して子育てをすることができるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 保護者には、子育てや就労等の個々の事情に配慮して支援を行っている
  標準項目2 保護者同士が交流できる機会を設けている
  標準項目3 保護者と職員の信頼関係が深まるような取り組みをしている
  標準項目4 子どもの発達や育児などについて、保護者との共通認識を得る取り組みを行っている
  標準項目5 保護者の養育力向上のため、園の保育の活動への参加を促している
講評
保育活動の過程が分かるプチドキュメンテーションは保護者との共通認識に役立っている

園からの日々のプチドキュメンテーションやフォトレター等で日々の保育の様子が保護者に発信され、園と保護者の情報共有が図られている。園の特徴であるプロジェクト型保育は、その結果に至るまでの経過が大切であり、それを保護者に伝えたいと園は考えており、ドキュメンテーションという形で発信されている。例えば、年長になるとグループで誕生会の運営企画を行っているが、子ども同士が企画段階で意見を出し合ったり調整したり、本番前の準備や反省会などが一連に纏められ、葛藤や協同など子どもが成長していく過程が分かりやすい。

保護者と園が支え合う父母の会は、ご近所マップを作るなど地域づくりに貢献している

園の考え方に共感している父母の会は、保育園と支え合う関係を作りたいと、役員を中心に様々なイベントを企画している。その内容は、主体的に作成した規約に従ったもので、園の研修に参加して、保育の理念を深く理解したり、父母の会独自に講師を招き子育てを学んだりしている。またマジックショーを開催したり、園から1キロ以内にある公園やお店等をまとめた冊子「ご近所マップ」を作製して広報するなど、保護者の得意な事を活かしている。保育理念「みんなでみんなをみていく」を具現化した園づくりになっている。

保護者の就労状況に応じた保育時間やICTの活用が保護者の負担軽減になっている

園には、保護者の就労形態に合わせた延長保育や土曜保育の体制がある。本園は、7時15分から20時15分まで開園しており、保護者の就労状況について園と面談を行い、利用可能な時間が決められる。土曜保育は、勤務証明書の提出により登録され、利用可能となる。また、利用は園に導入されているICTツールを使い、利用したい日を登録できる。ICTツールは、行事の出欠やアンケートにも活用され、保護者は通勤時間や帰宅後等、可能な時間に登録することが出来、保護者の安心と負担の軽減になっている。

  評価項目9 地域との連携のもとに子どもの生活の幅を広げるための取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 地域資源を活用し、子どもが多様な体験や交流ができるような機会を確保している
  標準項目2 園の行事に地域の人の参加を呼び掛けたり、地域の行事に参加する等、子どもが職員以外の人と交流できる機会を確保している
講評
読み語りイベントは地域からの参加を前提に開催され、地域を繋いでいる

「ハットナラ」と称した、園を中心にして、地域からの参加と園からの発信されるイベントを開催し、保育園の社会的価値を高めている。ハットナラは、読み語りイベントとして企画され、園から読み語りや地域の学生やボランティア団体などが参加し、楽器演奏やお話などを在園児はもちろん地域の子ども達にも見せてくれる行事である。園は、これまで3回行っているハットナラを地域と連携した行事の中心とし、園の理念でもある、みんなでみんなをみていく園づくりを進め、その社会的価値を高めようとしている。

地域の子育て家庭やボランティアが集まり、「みんなでみんなをみる」地域になっている

園は、地域の大人と一緒に地域の子育て家庭全体を見ていき、保育園はその中心的な役割を担いたいと考えている。そのために園では、一時保育、キッズヨガ、育児講座、ハットクラブ(遊びのクラブ)等々、地域の子育て家庭が本園を利用できるように多くの事業を取り揃えている。本園を卒園した小学生がボランティアとして園で活動体験しており、毎年、数名がやってきている。この活動が長年続いており、園の周りには園と一緒に地域の子育て家庭を支える大人が増え、法人の理念が叶えられている。

近隣の学校や商店街との関わりを持ち、多くの大人と関わる機会をつくっている

園は、地域の大人と子ども達が関われる活動を企画している。カレー作りプロジェクトでは、地域の商店に買い物に行ったり、食堂の食卓に飾る花が枯れてしまったときには、近隣の花屋に自分たちで買いにいくという。また、園と隣接している高校の生徒が音楽やダンスのボランティアとして定期的に園児と関わっている。大人と子ども、子ども同士、大人同士の関係性の再構築を創設理念として掲げている本園は、人と人が関わるきっかけや機会を沢山作り、その理念の実現に向かっている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 子どものプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 子どもに関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、保護者の同意を得るようにしている
  標準項目2 子どもの羞恥心に配慮した保育を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、子どもの権利を守り、子どもの意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の保育の中で子ども一人ひとりを尊重している
  標準項目2 子どもと保護者の価値観や生活習慣に配慮した保育を行っている
  標準項目3 虐待防止や育児困難家庭への支援に向けて、職員の勉強会・研修会を実施し理解を深めている
講評
個人情報の取り扱いについてルール化した上で、入園時に了承を得ている

保護者を含めた園の内外への発信について、ブログや学会や保育雑誌等での研究発表など比較的多く取り組んでいる園であるが、その分、写真情報をはじめとした個人情報の取り扱いについても明確にルール化して取り組んでいる。基本的に、入園時に写真や個人情報についての方針を提示し、必ずすべての家庭の了承を得ている。保育の発信について熱心に取り組み、少しでも多くの保護者に園の考えや子どもの姿を伝えながら、しっかりと子どものプライバシーの保護と両立し得ている点が評価できる。

子どもの意思を尊重した保育を進め、子どもの権利を学ぶことにも注力している

園の活動全てにおいて貫徹することであるが、子どもが主体であり、子ども自らが選択するということを重視し、子どもの権利尊重に取り組んでいる。こうした子どもの権利を学ぶ園内研修に法人と連携して取り組んできたが、近年ではこれを発展させ、SDGsやOECDの研究などの理解にも園をあげて取り組んでいる。園では、保育者はもちろんのこと、子ども同士の関係においても、他者への権利を尊重することを幼児期から育んでもらいたいという思いがあり、SDGsの係を設置し、新たに取り組み始めているところである。

職員は、虐待防止や育児困難家庭支援について学び、園には支援する体制がある

園には、虐待防止や育児困難家庭への理解や支援方法について学ぶ機会がある。園の研修計画は、職員の経験年数や役割として園から指定される研修と自らが学びたい事を選択する研修など、毎年、1人3つの研修が計画される。虐待防止や育児困難については、入職後、早い段階で、区の研修を受講したり、定期的に全職員が受講している。また、園の体制としては、全職員で全園児を見守っているので、気になった事は全職員で共有しやすい。園内で収集した情報は園長や主任が子ども家庭支援センター等と情報を共有し、必要に応じた支援体制が取られる。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうか定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や保護者等からの意見や提案、子どもの様子を反映するようにしている
講評
本園には、保育の基礎となる創設理念が職員に浸透し、考え方の基準となっている

本園の保育は、創始理念を揺るぎない土台として進められている。本園に入職した職員は、まず、「種の会コンセプトブック」について説明されるが、本園に就職を希望する学生は、実習段階でも園の方針を学び、それに共感して就職希望する者も多いという。コンセプトブックには、子どもを育てる考え方から、それを実現させる環境、責任について記され、全ての保育活動に置いての基本の考え方となり、全保育者が共有している。もし、保育者が迷ったときには、この基本に立ち返って考え直したり、保育者間で話し合ったりする時の基準になっている。

本園は、職員のスキルアップと園全体の保育向上に繋がる教育の機会が充実している

本園の業務標準化の仕組みは、理念に関するコンセプトブックや保育現場で必要になるアレルギーや怪我等の対応マニュアル等からその手順等の標準化を図っているが、更に教育の仕組みが充実している。新人を教育する担当者は入職2~3年目の職員であり、学んだ事を後輩に伝えることで、教える側も更に力が着くという。保育現場においても子どもへの声のかけ方や見守り方等、新人と先輩で振り返りが行われている。また、、新人からベテランまでが分け隔てなく参加する一円会議は、理念を基に、保育を振り返り、語り合う機会となっている。

法人創設理念の下、子どもが主体的に活動できる環境を職員が学び合っている

法人内の関東地区4園で、公開保育を行い、保育環境を高め合っている。法人は、子どもの立場を尊重し、子ども同士や大人と子どもの関係性を創造するという創始理念の下、保育を常に研究している。時には、自園だけでは結論が出ない事もあり、その様な時は、公開保育で姉妹園の職員に保育環境を見てもらい、感想や意見から改善案を再検討するという仕組みがある。公開保育は、年3~4回開催され、1日保育活動や環境の視察後、姉妹園の職員と自園の管理職やクラス担当者とフィードバックが行われ、自園、姉妹園の保育環境の向上となっている。