東京都福祉サービス第三者評価  評価結果





評価結果基本情報

評価年度 令和3年度
サービス名称 多機能型事業所(就労移行支援、就労継続支援B型)
法人名称 社会福祉法人おあしす福祉会
事業所名称 ピアワーク・オアシス
評価機関名称 一般社団法人 地域ケア総合評価機構(令和4年3月31日までの評価機関)

コメント

利用者調査においては、利用者一人ひとりについて採用する方式を事業所と検討し、結果的に全員に対してアンケート方式とした。第三者評価の目的・意義等に関してわかりやすく説明した文書を作成し、アンケート用紙とともに配布した。配布は事業所を通じておこない、回収は返信用封筒で直接評価機関に送っていただいた。


(内容)
 Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像
 Ⅱ 全体の評価講評
 Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み
 Ⅳ 利用者調査結果
 Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)
 Ⅵ サービス提供のプロセス項目


公益財団法人東京都福祉保健財団
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Ⅰ 事業者の理念・方針、期待する職員像

1 理念・方針  (関連 カテゴリー1 リーダーシップと意思決定)
  事業者が大切にしている考え(事業者の理念・ビジョン・使命など)

1)障害があっても、無くても、一人一人が社会の成員として認められ、かけがえのない役割を持ち、  自己実現できる地域社会を目指す(ソーシャルインクルージョン)。  そのために、医療・福祉関係分野を超えて、広く、多くの市民、団体、機関等と連携・協働していく。 2)利用者を一人の人間として尊重し、多面的・包括的に見つめ、利用者の障害だけでなく、ストレングスに  着目した支援・事業を実施する。 3)医療モデルから脱却し、利用者本人の真のニーズ・希望に基づいた、リカヴァリー・エンパワメントモデルを  実践し、利用者のリカヴァリー促進に寄与する。  その支援は、利用者が自分の権利・人生・生活は自ら自分の手で守り、そのコントロールの主体は自分自身である  という意識を取り戻せるように行なっていく。 4)利用者にとっては、当事業所を利用することで、地域の中で生きていくたくましさを獲得していただくとともに、  共に幸せを希求する当事者同士の支え合い・育みあい・労りあいを大切にしていけるような支援、事業、関わりを行う。 5)職員も、地域の中で共に幸せを希求する者として、利用者、職員との支え合い・育みあい・労りあいを大切にする。

 
2 期待する職員像  (関連 カテゴリー5 職員と組織の能力向上)
  (1)職員に求めている人材像や役割

○利用者の真のニーズや興味・関心、志向する生活に耳と目と心を傾け、自分の主観やエゴを利用者に押しつけない職員。 ○ソーシャルインクルージョンの理念を理解し、実践できる職員。 ○自分の考えや思いを、正確かつ簡潔に記録、発言でき、状況報告等の再現性が確実にできる職員。 ○利用者の世話をするのでなく、代行するのでもなく、利用者や集団のストレングスが発揮できるように関わることができる職員。 ○自分自身をきちんと見つめ、自己に向き合っていく努力ができる職員。 ○同僚や利用者と協力・共同し、支え合い、共に働き・考え、その成長や発展を共に喜び合うことができる職員。  さらには、地域の様々な人と連携し、協働するためのコミュニケーション力を持つ職員。

 
(2)職員に期待すること(職員に持って欲しい使命感)

○職員は利用者が当事業所を利用するにあたり、まず信頼される存在であってほしい。 ○職員は、利用者が安心でき、自分自身を信頼することができるために、どのような支援を必要とするのかを 常に考え続けてほしい。 ○職員は何事も自ら一人で解決する事を目指すのでなく、同僚の職員と共に考え、共に悩みながら、様々なことを 解決する力を培ってもらいたい。 ○職員は利用者のストレングスに着目するべきで、できないこと、気づかないことを指摘するのが仕事ではないことに 気づけるようになってほしい。 ○利用者の工賃アップのためにもっと具体化を図ってほしい。 ○法人内研修以外に、自ら、自発的・自主的に研修や勉強をもっと積極的にして、自己研鑽に励んで欲しい。 ○他障害とは違う、精神に障害を持つことについて、利用者、家族、地域、社会に対し、自分自身がどう考え、 どうあるべきかについて、問題意識を持ち、もっと議論や考察をし、地域に対して具体的なアクションを 起こせるようになって欲しい。

 


Ⅱ 全体の評価講評

全体の評価講評

特に良いと思う点
1 個別支援計画作成は、職員全員が関わり、利用者一人ひとりの希望や要望を反映している

事業所では、職員全員が利用者の個別支援計画の策定に関わり、仮案を作成している。利用者とは半年に1回、家族とは年に1回の面談を設けている。利用者の納得と合意を得て個別支援計画書を作成し実践している。モニタリングも利用者の意向とずれがないように確認している。今回の利用者アンケートでは「個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか」の項目で、95%が「はい」と回答している。多機能型事業所として、就労移行支援や就労継続支援B型それぞれの利用者にあった計画を作成し実践している。
2 地元の住民や企業などと協働して、地域に根ざした活動をおこない「ピアワーク・オアシス」が地域に広く周知できている

白い3階建てビルの入り口には木工の看板猫と手書き案内掲示があり、階段をあがれば2階に「木のおもちゃの店」がある。チラシを配っているため地域の方もお客さんになっている。利用者のイラストから生まれた「缶バッジ」をはじめ、ここにしかない製品づくりをめざしている。木工事業をとおして取引先や、おもちゃの委託販売をしている企業から、清掃事業に依頼があったり、地域との交流が広がった。地元の会社と共同で被災地支援活動もおこなっている。事業所が取り組んでいる活動を地域に広く周知できている。
3 日々の記録も含めたあらゆるアセスメント情報を集め、利用者のニーズ、課題、希望を尊重した支援の実践につなげるよう努めている

職員は利用者の情報を把握するために、「利用申込書」「アセスメントシート」「ニーズ調査」などを作成して、さまざまな情報を得ている。また、個別支援計画は、サービスの当て込みではなく、アセスメント情報から課題を抽出している。日々の利用者の様子は、「利用者個別の記録」や「日報」に記録し、重要なアセスメント情報の1つと考えている。計画に対して記述できるよう職員教育にも努めている。記録の研修では「書き方のマニュアル」を作成し、指導職員が日ごろから確認するなど、管理体制を整えている。

さらなる改善が望まれる点
1 マニュアル類を目次一覧として作成し、更新予定などを年間計画に位置付けて、職員教育とともに更新できる仕組みを改善してほしい

マニュアルの点検については毎月の「所内会議」でおこなっているが、年間の研修計画に組み込み、職員教育とともに見直し、更新していく仕組みを構築してはどうか。事業所には「事故発生時対応」「防犯対策」「苦情対応」「感染症対応」などのマニュアルを整備しているが、年に1回の見直しや3年に1回の見直しでよいものなど、マニュアルごとに更新計画が必要かと思われる。研修資料として「記録の書き方」があった。マニュアルとして正式に活用することも検討してほしい。職員間で話し合い、新たなマニュアルの作成もぜひ検討されたい。
2 いつまでに何を実行するのか、具体的な達成数値・パーセンテージを明記した年間の事業計画を策定されたい

木工事業は、利用者と共に収支状況を把握し、品質の向上や売り上げアップをはかってきた。コロナ禍ということもあり、様々なイベントの中止や店舗フェアの一時的な中止をよぎなくされた。インターネットショッピングの業者変更はおこなったが、製品の魅力を発信するには、ホームページの整備も必要である。委託販売の拡充など見直しをはかり、販売促進を図りたいと課題にしている。それらの目標課題を年間の事業計画に位置付け、いつまでに何を実行するのか、具体的な達成数値・パーセンテージを明記した計画を策定されたい。
3 多機能型事業所として、就労継支援B型(木工事業など3事業)と就労移行、就労定着支援があるため、職員の連携に工夫を検討している

多機能型事業所として、「就労継続支援B型」「就労移行支援」「就労定着支援」の3つの機能がある。「就労継続支援B型」では、木工事業、清掃事業、弁当を配達するバイク便事業をおこなっている。これらの事業を運営していくうえで職員間の連携や相談等の連携に工夫が必要と思っている。バイク便事業は、利用者の行動を直接みることができないため、配達先との情報交換は欠かせない。また、職員が活動先に外出してしまうことで、職員間の情報交換の工夫も今後の課題となっている。

Ⅲ 事業者が特に力を入れている取り組み

1 ★ 木のおもちゃを被災地に贈る活動は、障害者と被災地の交流を深め被災者を励ましている

東日本大震災以降、活動の一環として、福島、宮城、岩手の「被災地の子どもたちとその家族に笑顔を届けたい」という思いから木のおもちゃを贈る活動を10年以上続けている。おもちゃに作成した利用者名を記載し、お礼や感謝の手紙が利用者に直接届き、交流している。被災地の仮設住宅の住民をはじめ、関係者からの喜びと嬉しさが直接利用者に伝わり、利用者自身のやりがいや生きがい喜びとなって活動の強い確信につながっている。また2019年からは熊本地震の被災地の子どもたちに届け、喜ばれている。被災地への貢献は利用者の誇りとなっている。
関連評価項目(地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている)
2 ★ 話し合いの場を多く設け「事業所運営」と「利用者支援」についてチームワークを促進

利用者が参加するミーティングとして「月例ミーティング」が月に1回、毎日の始業時と終業時にもミーティングをしている。職員だけの「スタッフミーティング」は事業別と全体でおこない、「所内会議」も月に1回おこなっている。法人主催の「総括研究会」は年に2回開催し、全職員の参加をうながしている。これらの話し合いの場を多く設けることで、「事業所運営」と「利用者支援」についてチームワークが促進できている。必要に応じてミニカンファレスや学習もおこない、利用者の理解や事例検討もすすめており、利用者支援の実践につなげている。
関連評価項目(組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる)
3 ★ 障害があっても地域社会の一員として生活し、共生社会の実現に向けて取り組んでいる

事業所の法人である、おあしす福祉会の理念は「障害の有無にかかわらず、誰もがその人らしく暮らせる豊かな社会づくりに努めます。障害を持つ人々が『地域社会の中で、ひとりの市民として認められ、相応に役割がもてる』ような地域社会をつくっていくためのネットワークの構築に努めます」としている。その理念を実践するために積極的に地域の方々とのふれあいや交流などを位置付けている。また、被災地との交流を深めることで、利用者や職員の生きがいや喜びにもつながっている。
関連評価項目(利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている)

Ⅳ 利用者調査結果

調査概要
調査対象:現在の利用している就労移行支援5名と、就労継続支援B型24名を対象とした。
平均年齢は50.3歳、平均利用期間は、5年11か月である。

調査方法:アンケート方式  
事業所と相談し、全員をアンケート調査とした。就労移行支援と就労継続支援B型の利用者にそれぞれ事業所がアンケート用紙を配布した。利用者が直接、評価事業所に郵送した。

利用者総数 29人
アンケートや聞き取りを行った人数 29人
有効回答者数 21人
回答者割合(%) 72.4%
就労移行支援 利用者総数: 5人
共通評価項目による調査対象者数: 5人
共通評価項目による調査の有効回答者数: 4人
利用者総数に対する回答者割合(%): 80.0%
就労継続支援B型 利用者総数: 24人
共通評価項目による調査対象者数: 24人
共通評価項目による調査の有効回答者数: 17人
利用者総数に対する回答者割合(%): 70.8%

総括
今回の利用者調査で回答したのは全体で、利用者本人15名、本人が家族や介護者と相談しながらが1名、無回答5名であった。各設問において最も「はい」の数値が高かったのは、問24.「個別の計画時に、利用者の状況や要望を聞かれているか」で、約95%であった。共通評価項目の13項目のうち、「はい」の回答が80%以上だったのは5項目あった。最も「はい」の数値が低かったのは、問27.「外部の苦情窓口(行政や第三者委員会等)にも相談できることを伝えられているか」で約38%である。 総合的な満足度としては、「大変満足」が約19%、「満足」が約52.4%、「どちらともいえない」が約14.3%、「大変不満」が約4.8%、「無回答」が約9.5%であった。総合的な自由意見では、「なにかあっても、丁寧に優しく接してくれているので安心できる。」や「工賃の出る委託業務を紹介してくれて、とても感謝しています。社会勉強になっています。」などのコメントの一方で、「コロナ禍で仕方ないと思いますが、通所時間や退所時間が余裕なので少し窮屈に感じます。」や「もっとスタッフの数がいればよいと思う。」、「バス停から遠い。」などのコメントがあった。

利用者調査結果
    4~17は選択式の質問のため、該当項目のみ掲載しています。
1.利用者は困ったときに支援を受けているか
はい 16人  どちらともいえない 4人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」約76%、「どちらともいえない」約19%、「いいえ」約5%である。 自由意見の中に「親切に相談してくれる」「困りごとの内容による」などのコメントがある。
2.事業所の設備は安心して使えるか
はい 16人  どちらともいえない 3人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」約76%、「どちらともいえない」約14%、「いいえ」約10%である。 自由意見の中に「ロッカーも個人で使える」などがある。
3.利用者同士の交流など、仲間との関わりは楽しいか
はい 10人  どちらともいえない 8人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
「はい」約48%、「どちらともいえない」約38%、「いいえ」約10%、「無回答・非該当」約5%である。 自由意見の中に「いろいろな人がいるため、全員とは仲良くできない」などがある。
11.【就労移行支援】
事業所での活動が就労に向けた知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 3人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」約75%、「いいえ」約25%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
12.【就労移行支援】
職場見学・職場実習等の、事業所外での体験は充実しているか
はい 3人  どちらともいえない 0人  いいえ 0人  無回答・非該当 1人 
「はい」約75%、「無回答・非該当」約25%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
13.【就労移行支援】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 3人  どちらともいえない 1人  いいえ 0人  無回答・非該当 0人 
「はい」約75%、「どちらともいえない」約25%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
16.【就労継続支援B型】
事業所での活動が働くうえでの知識の習得や能力の向上に役立っているか
はい 10人  どちらともいえない 5人  いいえ 2人  無回答・非該当 0人 
「はい」約59%、「どちらともいえない」約29%、「いいえ」約12%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
17.【就労継続支援B型】
工賃等の支払いのしくみは、わかりやすく説明されているか
はい 9人  どちらともいえない 5人  いいえ 2人  無回答・非該当 1人 
「はい」約53%、「どちらともいえない」約29%、「いいえ」約12%、「無回答・非該当」約6%である。 自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
18.事業所内の清掃、整理整頓は行き届いているか
はい 13人  どちらともいえない 4人  いいえ 2人  無回答・非該当 2人 
「はい」約62%、「どちらともいえない」約19%、「いいえ」・「無回答・非該当」がそれぞれ約10%である。 自由意見の中に「いつも掃除しているのできれいだと思います」などがある。
19.職員の接遇・態度は適切か
はい 15人  どちらともいえない 3人  いいえ 1人  無回答・非該当 2人 
「はい」約71%、「どちらともいえない」約14%、「いいえ」約5%、「無回答・非該当」約10%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
20.病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか
はい 17人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
「はい」約81%、「どちらともいえない」約10%、「いいえ」・「無回答・非該当」がそれぞれ約5%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
21.利用者同士のトラブルに関する対応は信頼できるか
はい 10人  どちらともいえない 6人  いいえ 2人  無回答・非該当 3人 
「はい」約48%、「どちらともいえない」約29%、「いいえ」約10%、「無回答・非該当」約14%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
22.利用者の気持ちを尊重した対応がされているか
はい 18人  どちらともいえない 1人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
「はい」約86%、「どちらともいえない」・「いいえ」・「無回答・非該当」がそれぞれ約5%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
23.利用者のプライバシーは守られているか
はい 17人  どちらともいえない 2人  いいえ 1人  無回答・非該当 1人 
「はい」約81%、「どちらともいえない」約10%、「いいえ」「無回答、非該当」各約5%である。自由意見の中で、「先に職員に泣きついた利用者側の肩を持つ傾向がある」(どちらともいなえいを選択)などのコメントがあった。
24.個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか
はい 20人  どちらともいえない 0人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」約95%、「いいえ」約5%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
25.サービス内容や計画に関する職員の説明はわかりやすいか
はい 17人  どちらともいえない 3人  いいえ 1人  無回答・非該当 0人 
「はい」約81%、「どちらともいえない」約14%、「いいえ」約5%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
26.利用者の不満や要望は対応されているか
はい 12人  どちらともいえない 5人  いいえ 1人  無回答・非該当 3人 
「はい」約57%、「どちらともいえない」約24%、「いいえ」約5%、「無回答・非該当」約14%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。
27.外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか
はい 8人  どちらともいえない 9人  いいえ 1人  無回答・非該当 3人 
「はい」約38%、「どちらともいえない」約43%、「いいえ」約5%、「無回答・非該当」約14%である。自由意見の中で、本人回答のコメントはなかった。

Ⅴ 組織マネジメント項目(カテゴリー1~5、7、8)

※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー1  リーダーシップと意思決定
  サブカテゴリー1  事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)を周知している 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、職員の理解が深まるような取り組みを行っている
  標準項目2 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)について、利用者本人や家族等の理解が深まるような取り組みを行っている
  評価項目2 経営層(運営管理者含む)は自らの役割と責任を職員に対して表明し、事業所をリードしている 実施状況
  標準項目1 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任を職員に伝えている
  標準項目2 経営層は、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けて、自らの役割と責任に基づいて職員が取り組むべき方向性を提示し、リーダーシップを発揮している
  評価項目3 重要な案件について、経営層(運営管理者含む)は実情を踏まえて意思決定し、その内容を関係者に周知している 実施状況
  標準項目1 重要な案件の検討や決定の手順があらかじめ決まっている
  標準項目2 重要な意思決定に関し、その内容と決定経緯について職員に周知している
  標準項目3 利用者等に対し、重要な案件に関する決定事項について、必要に応じてその内容と決定経緯を伝えている
講評
法人・事業所の理念を倫理綱領や事業計画に明示し、職員、利用者、家族に周知している

倫理綱領には「誰もがかけがえのない存在であるために」の法人の基本理念を明示し、順守すべき7項目の基本原則も記述している。毎年の事業計画の策定では理念にもとづき具体化し、年2回開催の全職員参加による総括研究会で理念にそって総括と課題を明らかにしている。利用者や家族には契約時に重要事項説明書で説明している。職員一人ひとりの育成計画や面接をとおして理念をふりかえり意識づけをしている。理念や事業計画書は2階事務室前に掲示し見えるようにしている。

全職員で事業計画を策定し、管理者は方向性を示しリーダーシップを発揮している

経営層の役割と分担は、就業規則や法人業務分担表に明示しており職員に徹底している。事業計画策定時には管理職のみで計画を作成するのでなく、全職員が討議に参加するよう努めている。そして、管理者は職員個々の意見を吸い上げ、リーダーシップを発揮している。事業計画は全職員に配布し、事業所にも「共有ファイル」として設置し、いつでも閲覧できるようしている。毎月の所内会議で、月次報告として「施設運営報告」を確認しているが、事業計画と連動させて「見える化」にするなど、所内会議の議事録でも進捗を確認する仕組みも検討されたい。

重要な案件についてミーティングやお知らせを配布し利用者・家族等に内容を伝えている

法人の組織機構と諸会議を整備し、日常の組織運営をおこなっている。重要な案件については、どの会議で何を決定していくか定めた「決裁規程」にそって確認している。内容は毎週の管理職会議を経て管理者が職員に報告している。欠席者には、管理者が資料を配布し責任をもって伝えている。決定経過を記録した議事録も整備保管している。利用者には月例ミーティングで重要な案件を報告している。家族等に直近ではコロナ陽性者の発生と行事の中止、休所日程など重要事項と判断したものなどを「お知らせ」として作成し配布した。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー2  事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
  サブカテゴリー1  事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している
  評価項目1 事業所を取り巻く環境について情報を把握・検討し、課題を抽出している 実施状況
  標準項目1 利用者アンケートなど、事業所側からの働きかけにより利用者の意向について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目2 事業所運営に対する職員の意向を把握・検討している
  標準項目3 地域の福祉の現状について情報を収集し、ニーズを把握している
  標準項目4 福祉事業全体の動向(行政や業界などの動き)について情報を収集し、課題やニーズを把握している
  標準項目5 事業所の経営状況を把握・検討している
  標準項目6 把握したニーズ等や検討内容を踏まえ、事業所として対応すべき課題を抽出している
  サブカテゴリー2  実践的な計画策定に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画及び単年度計画を策定している 実施状況
  標準項目1 課題をふまえ、事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた中・長期計画を策定している
  標準項目2 中・長期計画をふまえた単年度計画を策定している
  標準項目3 策定している計画に合わせた予算編成を行っている
  評価項目2 着実な計画の実行に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していること(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目標、達成度合いを測る指標を明示している
  標準項目2 計画推進にあたり、進捗状況を確認し(半期・月単位など)、必要に応じて見直しをしながら取り組んでいる
講評
区内の多機能型事業所としての動向や利用者の流れなど取り巻く環境の把握に努めている

江東区障害福祉計画策定委員会に理事長が参加、管理責任者が区の障害者自立支援協議会の部会に参加している。区内の障害者福祉施設などの中では「多機能型事業所」が減少していたり、「就労継続支援A型」事業の需要が高まっているなどの動向がある。また地域的には「水害対策」も課題になっているなど、さまざまな情報を把握している。福祉事業全体の動向把握のため、区の事業者連絡会、事業所の全国連絡会にも加盟している。得た情報は事業所の運営に活用したり、全国連絡会の団体機関紙は閲覧できるようにしている。

10年間の法人中長期計画を策定し、2ヶ月に1回「検討会」を開催している

2020年9月に法人中長期計画案を作成し10年間にわたる計画となっている。「法人中長期計画検討会」も2ヶ月に1回開催し、管理者も参加している。法人が作成している中長期計画では当事業所の計画に反映できる内容が明確に掲載がない様子であった。できれば事業計画は中長期計画と連動したものを作成されたい。予算編成は事業計画をうらづけるものとして作成している。今後の清掃事業の再編や移行支援事業について課題がある。コロナ禍のため当初の予定どおりにいかない状況もあり収入等の見通しや事業計画の具体化について課題と認識している。

事業計画の進捗と目標の到達は、数値やパーセンテージなど更なる明示を

月次の「施設運営報告」は管理者が作成し、毎月の管理職会議で目標の到達と分析、課題と対策を検討している。その内容を所内会議で全職員に報告している。事業計画は年2回開催の全職員参加の総括研究会で、検討と見直をしている。月次報告では、「経営面」と「実績」や「アクシデント報告」「クレーム報告」などの利用者支援について明示しているが、事業計画の内容を見ると、目標の達成数値やパーセンテージなど明確になっていなかった。毎月の所内会議で「月次報告」確認の際は、年間事業計画と照合しながら検討を進める仕組みを構築してほしい。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー3  経営における社会的責任
  サブカテゴリー1  社会人・福祉サービス事業者として守るべきことを明確にし、その達成に取り組んでいる
  評価項目1 社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理などを周知し、遵守されるよう取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 全職員に対して、社会人・福祉サービスに従事する者として守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などを周知し、理解が深まるように取り組んでいる
  標準項目2 全職員に対して、守るべき法・規範・倫理(個人の尊厳を含む)などが遵守されるように取り組み、定期的に確認している。
  サブカテゴリー2  利用者の権利擁護のために、組織的な取り組みを行っている
  評価項目1 利用者の意向(意見・要望・苦情)を多様な方法で把握し、迅速に対応する体制を整えている 実施状況
  標準項目1 苦情解決制度を利用できることや事業者以外の相談先を遠慮なく利用できることを、利用者に伝えている
  標準項目2 利用者の意向(意見・要望・苦情)に対し、組織的に速やかに対応する仕組みがある
  評価項目2 虐待に対し組織的な防止対策と対応をしている 実施状況
  標準項目1 利用者の気持ちを傷つけるような職員の言動、虐待が行われることのないよう、職員が相互に日常の言動を振り返り、組織的に防止対策を徹底している
  標準項目2 虐待を受けている疑いのある利用者の情報を得たときや、虐待の事実を把握した際には、組織として関係機関と連携しながら対応する体制を整えている
  サブカテゴリー3  地域の福祉に役立つ取り組みを行っている
  評価項目1 透明性を高め、地域との関係づくりに向けて取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 透明性を高めるために、事業所の活動内容を開示するなど開かれた組織となるよう取り組んでいる
  標準項目2 ボランティア、実習生及び見学・体験する小・中学生などの受け入れ体制を整備している
  評価項目2 地域の福祉ニーズにもとづき、地域貢献の取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 地域の福祉ニーズにもとづき、事業所の機能や専門性をいかした地域貢献の取り組みをしている
  標準項目2 事業所が地域の一員としての役割を果たすため、地域関係機関のネットワーク(事業者連絡会、施設長会など)に参画している
  標準項目3 地域ネットワーク内での共通課題について、協働できる体制を整えて、取り組んでいる
講評
虐待防止委員会の開催や規定を作成し、フローチャートに基づき組織的に対応している

法人で「権利擁護・虐待防止委員会」を3ヶ月に1回開催している。法人作成の「職員倫理綱領」と「権利擁護・虐待防止対応規程」を策定している。虐待に関する情報があった場合には、フローチャートに沿って対応している。年に2回開催の「合同職員会議」において全職員が参加し、権利擁護・虐待防止の学習会をおこなっている。虐待の疑いを発見した際は、第一発見者が管理者に報告し、管理者は理事長へ、また行政にも報告する仕組みとなっている。年間の研修・学習会計画には「虐待防止」や「倫理」、「理念教育」の位置づけなどもぜひ明示されたい。

苦情解決について、契約時の説明だけでなく、定期的にお知らせするなど工夫をされたい

重要事項説明書に「第三者委員を設置している」とあるが名前や連絡先の明示がなく、「事業所の窓口に申し出る」と記述があるが、利用者側としては申し出にくいので、改善が求められる。職員が受け付けた場合、「苦情受付経過記録書」に、対応・解決策・結果などを記述し、管理者に報告している。その後は、法人作成の「苦情対応規定」に沿って組織的に対応している。今回の利用者アンケートでは「外部の苦情窓口の事を伝えられているか」の問いで「知っている」が38%と低かった。契約時の説明だけでなく定期的にお知らせするなど工夫があるとよい。

「木のおもちゃ」を通して、地域の住民や企業と共同し、被災地へ支援を続けている

区の社会福祉協議会の行事でつながった地元企業と就労継続支援B型事業とで、2019年から、熊本地震の被災地に「木のおもちゃ」を贈る活動に取り組んでいる。企業の職員に木工を教えるため、利用者が講師となっていたり、交流を広げている。また、区内在住の東日本大震災の被災者である福島の人々とも交流があり、一緒に熊本県内の保育所に「木のおもちゃ」を贈る活動にも取り組むなど、積極的に地域とともに協働しながら実践していることがうかがえた。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー4  リスクマネジメント
  サブカテゴリー1  リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる
  評価項目1 事業所としてリスクマネジメントに取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所が目指していることの実現を阻害する恐れのあるリスク(事故、感染症、侵入、災害、経営環境の変化など)を洗い出し、どのリスクに対策を講じるかについて優先順位をつけている ×
  標準項目2 優先順位の高さに応じて、リスクに対し必要な対策をとっている ×
  標準項目3 災害や深刻な事故等に遭遇した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定している ×
  標準項目4 リスクに対する必要な対策や事業継続計画について、職員、利用者、関係機関などに周知し、理解して対応できるように取り組んでいる ×
  標準項目5 事故、感染症、侵入、災害などが発生したときは、要因及び対応を分析し、再発防止と対策の見直しに取り組んでいる
  サブカテゴリー2  事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている
  評価項目1 事業所の情報管理を適切に行い活用できるようにしている 実施状況
  標準項目1 情報の収集、利用、保管、廃棄について規程・ルールを定め、職員(実習生やボランティアを含む)が理解し遵守するための取り組みを行っている
  標準項目2 収集した情報は、必要な人が必要なときに活用できるように整理・管理している
  標準項目3 情報の重要性や機密性を踏まえ、アクセス権限を設定するほか、情報漏えい防止のための対策をとっている
  標準項目4 事業所で扱っている個人情報については、「個人情報保護法」の趣旨を踏まえ、利用目的の明示及び開示請求への対応を含む規程・体制を整備している
講評
法人で「リスクマネージメント委員会」を定期開催し、各事業所の教訓化としている

ヒヤリハットや事故報告についてリスクマネージメント委員会を定期開催し集約と分析を行い対応策をたてている。日常の安全管理は「リスクマネージメント規程」に定め、事故が発生した場合はすみやかに所定の報告用紙にそって発生の状況、対応や再発防止を報告する。リスクマネージャーと管理者はコメントを加え全体への共有をはかっている。月ごとの「事故・ヒヤリハット報告リスト」に発生したことをすべて記述し、必要であれば「事故報告書」を作成する仕組みとなっている。さらに年間集計を作成し、傾向と対策を打ち出している。

利用者の記録の情報開示や保管期間については重要事項説明書に明示している

個々の利用者の面接記録や支援計画と経過記録などの情報は個人ごとのファイルにまとめ、事務所の棚で管理している。支援する職員はこれらの記録物をいつでも閲覧することができる。利用者自身も「サービス提供記録」は、申し出があれば閲覧できることを重要事項説明書で明示している。利用者記録は契約終了後、5年間の保管としている。しかしながら、関係者が記録の開示を申し出た際の決まりごとについては、重要事項説明書になかったため、別用紙の検討も含め規定されたい。

事業計画に重要課題やリスクの優先順位を位置付けたり、BCP作成の検討をすすめたい

事業計画に、具体的な重要課題の明示とその工程を盛り込んだり、目標数値を掲げるなどさらなる工夫が求められる。また、リスクにおいては経営層の頭の中では①新型コロナ対策、②活動中のケガ、③移動時の事故があるとのこと。優先順位とその対策を詳細に明示されたい。一方で、法人作成のBCPについては「作成担当者」を決めたことや、作成にあたり「業者」への見積りをしたところで止まっている。経営層も含め全職員の課題として認識しており、障害者支援事業に係わる他の団体の情報もリサーチするなどBCP作成に向けて検討している。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー5  職員と組織の能力向上
  サブカテゴリー1  事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り組んでいる
  評価項目1 事業所が目指していることの実現に必要な人材構成にしている 実施状況
  標準項目1 事業所が求める人材の確保ができるよう工夫している
  標準項目2 事業所が求める人材、事業所の状況を踏まえ、育成や将来の人材構成を見据えた異動や配置に取り組んでいる
  評価項目2 事業所の求める人材像に基づき人材育成計画を策定している 実施状況
  標準項目1 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)が職員に分かりやすく周知されている ×
  標準項目2 事業所が求める職責または職務内容に応じた長期的な展望(キャリアパス)と連動した事業所の人材育成計画を策定している ×
  評価項目3 事業所の求める人材像を踏まえた職員の育成に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 勤務形態に関わらず、職員にさまざまな方法で研修等を実施している
  標準項目2 職員一人ひとりの意向や経験等に基づき、個人別の育成(研修)計画を策定している
  標準項目3 職員一人ひとりの育成の成果を確認し、個人別の育成(研修)計画へ反映している
  標準項目4 指導を担当する職員に対して、自らの役割を理解してより良い指導ができるよう組織的に支援を行っている
  評価項目4 職員の定着に向け、職員の意欲向上に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 事業所の特性を踏まえ、職員の育成・評価と処遇(賃金、昇進・昇格等)・称賛などを連動させている
  標準項目2 就業状況(勤務時間や休暇取得、職場環境・健康・ストレスなど)を把握し、安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる
  標準項目3 職員の意識を把握し、意欲と働きがいの向上に取り組んでいる
  標準項目4 職員間の良好な人間関係構築のための取り組みを行っている
  サブカテゴリー2  組織力の向上に取り組んでいる
  評価項目1 組織力の向上に向け、組織としての学びとチームワークの促進に取り組んでいる 実施状況
  標準項目1 職員一人ひとりが学んだ研修内容を、レポートや発表等を通じて共有化している
  標準項目2 職員一人ひとりの日頃の気づきや工夫について、互いに話し合い、サービスの質の向上や業務改善に活かす仕組みを設けている
  標準項目3 目標達成や課題解決に向けて、チームでの活動が効果的に進むよう取り組んでいる
講評
ステップアップシート(自己目標管理シート)で課題を明確にし職員育成をしている

年度初めにステップアップシート(自己目標管理シート)を作成している。「法人事業計画」と「事業所計画」「個別の成長や課題」においてそれぞれの目標を書き込むシートとなっている。年に3回の面接をおこないながら職員育成をしている。また「技能・技術に関する能力」について、「自己評価」や「判定」をしていく様式となっており、「対象理解」「支援の在り方」「チームワーク」についてチェックしている。できれば、職員のレベルに合わせた研修や学習会を盛り込むなど、さらなる「個別の育成計画」としての検討も必要かと思われる。

日頃の気づきを共有しながら、利用者支援と業務改善をすすめるため有効な会議運営を

毎日の利用者の様子は、「申し送りノート」「個別の記録」「実績・支援内容・日報」に記録している。日頃の記録や気づきから、話し合いが必要な場合は、所内会議のなかで「ミニカンファレス」などを開催している。スタッフミーティングの議事録報告に記載がなかったが、「職場づくり」「業務改善」などについての職員からの自由意見や、事業計画に対する毎月の確認の月次報告についての職員意見なども、議事録に連動させ、網羅するような内容にするなど、さらなる工夫も考えられる。職員の自由意見などを業務改善に活かす仕組みづくりを検討されたい。

人事考課制度と法人全体の職員教育を連動させ、体系的な「キャリアパス」の構築を

事業所では職員面談やスキルチェック、人事考課制度、研修計画、個人の目標などの仕組みがある。法人全体の課題ともいえるが、体系的な研修計画と職員個人の目標を連動させた「育成計画」の仕組みづくりが求められる。人事考課と「キャリアパス」は別のものと考え、入社して数年後、数十年後にどのようなキャリアを積み上げ、どう人生を歩んでいくのか目安となる「キャリアパス」のイメージがあるとよいかと思われる。法人内にグループホームや地域活動支援センター、 指定相談支援事業などもあるためぜひ「キャリアパス」の構築を検討されたい。


※実施あり:、実施なし:×、非該当:-  
カテゴリー7  事業所の重要課題に対する組織的な活動
  サブカテゴリー1  事業所の重要課題に対して、目標設定・取り組み・結果の検証・次期の事業活動等への反映を行っている
  評価項目1 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その1)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 2020年1月の新型コロナ発生の影響で各活動そものが予定通りおこなえないと予測したものの、同年4月の事業計画書の作成段階では想定しづらい状況であった。利用者の安全確保を優先するため活動によっては一部停止、時間短縮、制限を設けていく必要があり、またコロナがおさまり通常の活動に戻った時のことを想定し、感染予防をおこないながら事業再開のための準備をおこなうことを重点課題とした。取り組みとしては、①各ミーティングの開催と、「サロン」という新たな企画が屯坐したため、代わりに利用者への安否・健康確認のための電話かけの実施をおこなう、②法人としての取り組みでもあるが、利用者アンケートで利用者の意向を聞く、の大きく2つに取り組んだ。取り組みの結果としては、①利用者が通所する予定の曜日には、1日2回の連絡により相談を受けるなど在宅支援ができた。②アンケートは、当事業所で83%の回収であった。また利用者の回答では多くの意見があつまり、個別面接と少人数でのミーティングの開催を急きょ計画に盛り込んだ。次年度の2021年度の計画では、利用日数の減少に伴う活動グループの再編成、少人数でのミーティングの方法などを課題としている。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定したが、その達成に向けて取り組みが行われていなかった
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行っていなかった(目標設定を行っていなかった場合を含む)
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させていない
【講評】
通常は、「清掃事業部」「木工事業部」「就労移行」の活動ごとのミーティングと「全体ミーティング」で構成している。2020年度は新型コロナのため、活動自体、ミーティングができるのかどうか想定がつかない状況であった。そこで、利用者の安全確保をしつつ、活動の一部停止、時間短縮、在宅での自粛期間の場合は、利用者の安否や健康管理に努めることを重点課題としたが、具体的な取り組み内容の設定に至らなかった。できれば事業計画に重点課題を位置付け、具体的な方法、達成目標などの数値化を設定しておくと振り返りで到達度を測ることができたかと思われる。副次的効果として、利用者アンケートの実施結果から「個別面接と少人数でのミーティングの開催」の希望が多く、急きょ計画に盛り込み、取り組みを追加している。途中追加の課題は計画の改訂版を作成することも検討されたい。振り返りとしては、次年度の事業計画にも想定できる範囲でのコロナ対策、利用者対応を引き続きおこなう予定としているが、2020年度で取り組んだ内容をさらに重要課題に位置付けるのであれば詳細に工程を設定することや、他の視点から、別件の重要事項を「新たな課題として」位置付けて取り組むのもよい。 
  評価項目2 事業所の理念・基本方針の実現を図る上での重要課題について、前年度具体的な目標を設定して取り組み、結果を検証して、今年度以降の改善につなげている(その2)
前年度の重要課題に対する組織的な活動(評価機関によるまとめ) 3つの事業である「清掃事業部」「木工事業部」「就労移行」という活動内容に分かれていることから、職員が外出したりすることで、利用者情報の共有、検討、支援方針を決める機会について再構築することを重点課題とし、職員の精神的負担を軽減していくこととした。取り組みとしては、①終業時のミーティングの開催、②月に1回の職員全体会議において「利用者の動向の多角的理解」と「支援方針」の確認をする場を設ける、③ケース検討会議を開催する、の3つを具体的な取り組みとした。取り組みの結果として①終業時のミ―ティングは予定通り実施できた、②月に1回の職員全体会はコロナ禍のため取りやめ、週1回の管理職による少人数会議に変更し、各フロア、活動現場の情報を管理職がまとめ、また職員全体へ情報の共有、伝達するという目的とし達成できた。③ケース検討会議は毎月開催したかったが、3~4事例しかできなかった。振り返りとしては、コロナ禍で感染対策を取りつつ段階的な情報収集と、全職員への情報提供、共有ができたものの、一方で新規事業などの検討やコロナ収束後も継続的におこなう事業の展望について、全体の討議に至らなかったため、2021年の事業計画の継続課題とした。
評語
目標の設定と取り組み 具体的な目標を設定したが、その達成に向けて取り組みが行われていなかった
取り組みの検証 目標達成に向けた取り組みについて、検証を行っていなかった(目標設定を行っていなかった場合を含む)
検証結果の反映 次期の事業活動や事業計画へ、検証結果を反映させていない
【講評】
職員はお互いの仕事内容や利用者情報について、活動担当以外の状況を知る機会が少ない。職員が個々に精神的な負担もあったことから事業所全体で情報共有できる仕組みを構築することを重点課題としたが、具体的な取り組みを明示できていなかった。毎年、職員が全員参加で「事業計画」、「事業報告」を作成しているが、できればこの重要課題を文章化し事業計画に盛り込むとよい。取り組み結果として、月1回の職場全体会議がコロナで中止になったので急きょ管理職の会議に変更している。事業計画の見直しは年2回の法人の職場全体会議で確認している。また、所内会議については毎月開催することができなかったため、事業計画の半期のまとめを作成して全職員に配布している。振り返りとして経営層は、「ケース会議の開催の仕組みづくり」や「新規事業の検討」、「コロナ禍を想定した継続する事業」について課題を反映させたとしているが、次年度の事業計画に位置付ける際は「重要度」や「優先順位」を検討し、時系列で「いつまでに何を取り組むのか」の見える化を明示されたい。また、職員全体で共有した旨を所内会議の議事録に盛り込むなど明確にすることも検討されたい。 

Ⅵ サービス提供のプロセス項目(カテゴリー6)

カテゴリー6 サービス提供のプロセス
  サブカテゴリー1 サービス情報の提供
  評価項目1 利用希望者等に対してサービスの情報を提供している 実施状況
  標準項目1 利用希望者等が入手できる媒体で、事業所の情報を提供している
  標準項目2 利用希望者等の特性を考慮し、提供する情報の表記や内容をわかりやすいものにしている
  標準項目3 事業所の情報を、行政や関係機関等に提供している
  標準項目4 利用希望者等の問い合わせや見学の要望があった場合には、個別の状況に応じて対応している
講評
ピアワーク・オアシスの事業所情報を様々な方法で発信している

事業所の情報は、法人である社会福祉法人おあしす福祉会のホームページ、東京都の福祉ナビ、とうきょう会議東部マップ、パンフレットで発信している。2年前からはツイッターで事業所の活動の様子や周辺地域でのできごとなどをリアルタイムに発信している。パンフレットはより視覚的にわかりやすい写真の掲載と事業所の様子を簡潔に表現できる文章にするなどの改編を検討している。また、ホームページのタイムリーな更新が必要と判断している。ホームページの更新は、法人の広報部門が担当している。

パンフレットは、より分かりやすいように表記を簡易にするなどの工夫をしている

法人の名称である「おあしす」を(お)お互いが (あ)安心して (し)しあわせを手にできる (す)すてきな町に として法人の柱を明記している。事業所として「はたらきたい」「日中ゆっくりできる場所がほしい」「どんなサービスを利用すればいいか相談したい」「自立に向けて生活する場所がほしい」を支援することを紹介している。法人全体で、被災地支援事業を継続的におこなっていることも紹介している。ピアワーク・オアシスについては、清掃事業、バイク便事業、木工事業、就労移行支援事業をおこなっていることなどを記載している。

サービス利用に向けて、指定相談支援事業所などと連携しておこなっている

ピアワーク・オアシスを「見学したい」「利用を考えたい」という方については、受付窓口の担当者を決めて迅速かつ丁寧に対応している。特に事業所について具体的なイメージがない方については、その方を支援している指定相談支援事業所の相談支援専門員や地域の保健所の保健師などと連携して情報交換や時には同行してもらい対応している。


  サブカテゴリー2 サービスの開始・終了時の対応
  評価項目1 サービスの開始にあたり利用者等に説明し、同意を得ている 実施状況
  標準項目1 サービスの開始にあたり、基本的ルール、重要事項等を利用者の状況に応じて説明している
  標準項目2 サービス内容や利用者負担金等について、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目3 サービスに関する説明の際に、利用者や家族等の意向を確認し、記録化している
  評価項目2 サービスの開始及び終了の際に、環境変化に対応できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 サービス開始時に、利用者の支援に必要な個別事情や要望を決められた書式に記録し、把握している
  標準項目2 利用開始直後には、利用者の不安やストレスが軽減されるように支援を行っている
  標準項目3 サービス利用前の生活をふまえた支援を行っている
  標準項目4 サービスの終了時には、利用者の不安を軽減し、支援の継続性に配慮した支援を行っている
講評
事業所は、4種類の「利用申込書」を用意しあらゆる情報を集めている

利用申込書には、本人用、家族用、担当医用、その他の申し込み者用の4種類を作成している。今まで職業に就いたことがあるか、ある場合は会社名や職種など、これまでの生活歴、相談などで利用している他の機関、作業所でどんなことを希望するか、今まで不自由に感じたこと、などを記入してもらっている。場合によっては職員が聞き取りをおこない、利用者の全体像を把握し利用につなげている。担当医からは、病名や服薬内容、病状、薬物以外の治療内容、病歴、症状と留意点、今後の治療方針などを記載してもらい支援に活かしている。

利用開始に際し、特定相談支援事業所との情報交換・連携を重視している

利用者の生活全般を把握し、障害サービスの支援を担っている特定相談支援事業所との連携や情報交換は重要である。相談支援専門員が作成する「サービス等利用計画」に基づき、事業所が個別支援計画を作成しているが、情報の交換に消極的な特定相談支援事業所もあり、電話のみの連絡の場合がある。一方で相談支援専門員が事業所に来所して面接をおこない、その後の情報交換を定期的におこなう場合もある。今後、事業所としては相談支援専門員と対等な関係で、利用者に対する「ひとつの支援チーム」となるための工夫が必要であると考えている。


  サブカテゴリー3 個別状況に応じた計画策定・記録
  評価項目1 定められた手順に従ってアセスメントを行い、利用者の課題を個別のサービス場面ごとに明示している 実施状況
  標準項目1 利用者の心身状況や生活状況等を、組織が定めた統一した様式によって記録し、把握している
  標準項目2 利用者一人ひとりのニーズや課題を明示する手続きを定め、記録している
  標準項目3 アセスメントの定期的見直しの時期と手順を定めている
  評価項目2 利用者等の希望と関係者の意見を取り入れた個別の支援計画を作成している 実施状況
  標準項目1 計画は、利用者の希望を尊重して作成、見直しをしている
  標準項目2 計画は、見直しの時期・手順等の基準を定めたうえで、必要に応じて見直している
  標準項目3 計画を緊急に変更する場合のしくみを整備している
  評価項目3 利用者に関する記録が行われ、管理体制を確立している 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりに関する必要な情報を記載するしくみがある
  標準項目2 計画に沿った具体的な支援内容と、その結果利用者の状態がどのように推移したのかについて具体的に記録している
  評価項目4 利用者の状況等に関する情報を職員間で共有化している 実施状況
  標準項目1 計画の内容や個人の記録を、支援を担当する職員すべてが共有し、活用している
  標準項目2 申し送り・引継ぎ等により、利用者に変化があった場合の情報を職員間で共有化している
講評
半年に1回、「ニーズ調査」をおこない、利用者の希望や要望などを把握している

計画策定にあたっては、「ニーズ調査」をおこなっている。その内容は、日常生活、仕事・教育、対人関係など7項目となっている。それぞれの項目ごとについて、「私の今の状況」「これからどうなりたいか?」など、きめこまかい調査をしている。今回の利用者アンケートで、「個別の計画作成時に、利用者の状況や要望を聞かれているか」の問いで、「はい」が21名中20名であり、満足度が高い結果であった。半年に1回の「ニーズ調査」をおこなうことで、利用者の希望・要望が個別支援計画作成に繋がっていることがうかがえる。

「職業準備性」を確認するため本人と支援者が共有するツールを使用している

就労支援の利用者には、「職業準備性チェックリスト」を用いて、自己評価・職員評価をおこなっている。具体的な項目は50項目あり、「身だしなみを整えることができる」「挨拶・返事ができる」「なぜ就職したいかが明確になっている」などのチェック項目があり、200点満点で評価している。この共通のツールで「就職に向け、今、どの段階にあるのか」「課題は何か」を見出している。利用者自身も納得しながら、次の目標を設定し、職員も支援に活かしている。

記録のマニュアルを作成し、支援経過記録などの書き方について勉強会を開いている

支援経過記録などの記録はSOAP(主観的データ、客観的データ、アセスメント、プラン)方式を基本にして、主観と客観が混同しないように整理し記述している。日常的には指導職員が記録をチェックしている。また、所内職員会議で勉強会を開いている。勉強会では、利用者の言動や様子を書くだけで終わらせないことや、対応で不十分だった点や支援課題をきちんと記録することなどを確認し合っている。支援の意図、アセスメントや考察、支援課題などが読み取れることが大切と考え、記録を充実させることで利用者支援につなげるよう努めている。


  サブカテゴリー4 サービスの実施
  評価項目1 個別の支援計画等に基づいて、利用者の望む自立した生活を送れるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 個別の支援計画に基づいて支援を行っている
  標準項目2 利用者一人ひとりに合わせて、コミュニケーションのとり方を工夫している
  標準項目3 自立した生活を送るために、利用者一人ひとりが必要とする情報を、提供している
  標準項目4 周囲の人との関係づくりについての支援を行っている
講評
個別支援計画に基づき、支援した内容は「利用実績・支援内容 日報」等に記述している

個別の支援計画は、利用者の要望等を聞き、職員全員で確認し作成している。その計画に基づいて支援した内容は、「利用実績・支援内容 日報」「個人の記録」に記述している。「実績・日報」については、就労継続支援B型、就労移行支援に様式を分けている。利用開始・終了時間、利用サービス内容・特記事項を書き込むようになっている。ほかにも所内会議では「ミニカンファレンス」などを開催し、支援の状況を確認し、計画に反映している。

一人ひとりの生活背景に配慮して、利用者に合った情報を提供するよう努めている

利用者の個別の状況として、「単身生活」「生活保護」「生計を担っている」など様々な生活背景がある。職員は一人ひとりに合わせた利用者にとって必要な情報を提供していくよう努めている。例えば、最近では利用者が友人から「携帯電話の名義貸し」と思われる誘いを受けたという情報があり、職員が利用者に同行して、「消費者センター」を紹介し、相談に立ち会ったりしている。また、利用者全員に情報の提供が必要と思われることについては、朝夕のミーテングでインフォメーションしている。ポスター等も掲示している。

  評価項目2 利用者が主体性を持って、充実した時間を過ごせる場になるような取り組みを行っている 実施状況
  標準項目1 利用者一人ひとりの意向をもとに、その人らしさが発揮できる場を用意している
  標準項目2 事業所内のきまりごとについては、利用者等の意向を反映させて作成・見直しをしている
  標準項目3 室内は、採光、換気、清潔性等に配慮して、過ごしやすい環境となるようにしている
  標準項目4 【食事の提供を行っている事業所のみ】 利用者の希望を反映し、食事時間が楽しいひとときになるよう工夫している -
講評
被災地支援を通して現地の事業所との連帯や作業のやりがいを感じ取ることができている

2011年3月11日の東日本大震災以降、利用者支援の一環として被災地支援活動の取り組みを継続している。利用者の「自分たちにも何かできることがないか」という声をあげたことから始まっている。様々な支援の中で事業所では、被災地の子供たちに「木のおもちゃ」を送る活動をおこなっている。おもちゃを作った利用者の名前を書きそえることで、被災地からの手紙や電話が直接名指しで来ており、利用者の作業意欲を高める原動力となっている。また、区内にいる被災者との共同作業や地元企業との協働では、利用者が講師として社会参加をしている。

作業工程は利用者主体で、人数、体調などを踏まえて選ぶような仕組みとなっている

作業工程は、利用者主体で「その日の参加者の人数」「体調」などを踏まえて、自分たちで役割分担を検討し選ぶような仕組みとなっている。例えば、清掃活動において「洗濯」「トイレ清掃」「感染防止エプロンづくり」など作業工程に応じて、自分たちで話し合い取り決めている。職員は、作業に関することを日々のミーティング、月例ミーティングを通して、利用者の意向を聞き、活動に反映させ支援している。

  評価項目3 利用者が健康を維持できるよう支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者の健康状態に注意するとともに、利用者の相談に応じている
  標準項目2 健康状態についての情報を、必要に応じて家族や医療機関等から得ている
  標準項目3 通院、服薬、バランスの良い食事の摂取等についての助言や支援を行っている
  標準項目4 利用者の体調変化(発作等の急変を含む)に速やかに対応できる体制を整えている
  標準項目5 【利用者の薬を預ることのある事業所のみ】 服薬の誤りがないようチェック体制を整えている -
講評
担当医師から「紹介状」で情報を得たり、家族等からも健康の情報を得ている

ピアワーク・オアシスは、対象とする主たる障害種別を精神障害者としている。利用者は何らかの精神疾患があり、治療を受けている場合がある。利用開始に際しては必ず担当医から「ご照会状」をもらい、診断名、服薬内容、病状、留意点、今後の治療方針などの情報を得ている。また、家族からも「利用申し込み」を通して情報を得たり、面談で家庭での様子や症状、服薬状況などの情報を得ている。利用者の高齢化に伴い、腰痛、膝痛、糖尿病、視力低下などあり、精神疾患以外の病気や症状を訴える利用者が増えてきている。

常に利用者の健康状態を把握し、通院や服薬状況に関して対応している

日常の関わりの中で職員の気づきにより、多剤・大量の薬が処方されている利用者がいること、その副作用に悩まされている場合がある。副作用による辛さがあると思われる場合には、医療機関への受診の支援もおこなっている。また、法人の理事長が精神科医であり必要に応じて「セカンドオピニオン」も受けることができるようにしている。在宅で訪問看護を受けている利用者もおり、必要に応じて職員が「薬カレンダー」を作って、看護師と情報交換をしながら支援に努めている。

  評価項目4 利用者の意向を尊重しつつ、個別状況に応じて家族等と協力して利用者の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 家族等との協力については、利用者本人の意向を尊重した対応をしている
  標準項目2 必要に応じて、利用者の日常の様子や施設の現況等を、家族等に知らせている
  標準項目3 必要に応じて家族等から利用者・家族についての情報を得て、利用者への支援に活かしている
講評
利用者の了承を得て家族への連絡をしているが、了解を得られない場合の課題がある

基本的に家族との連絡や面接が必要な時は利用者の了解を得ている。利用者の支援をおこなう上で、特定相談支援事業所や保健所から情報を得たり、意見交換等をする時も利用者の了解を得ている。利用者から了解が得られないこともあるが、命に関わるなど緊急性が高いと判断した場合は、家族に連絡したり、保健所などの公的機関と相談し対応を判断している。家族からは、「関係性の悪化」「金銭管理」「将来についての不安」など様々な相談がある。家族とは定期的な面談だけでなく、必要な時に連絡を取り合える関係を構築したいと職員は課題としている。

全体の様子は「おあしす通信」で、個別の様子は、面談、家庭訪問等で伝えている

家族は「利用者の最大の支援者」と考え、家族の不安・悩み・葛藤等にも細やかな支援をおこなうとしている。家族が元気でなければ、利用者も元気になれないと考えている。利用者の希望や目標の実現に対し、家族と職員が協力・共同の立場で関わることが望ましいと考えている。その実現のために年一回以上は家族面談をおこなっている。必要であれば「家庭訪問」もおこなっている。また、家族から問い合わせなどあった場合はその都度対応している。その他、法人で発行している「おあしす通信」でも各事業所の取り組みなどを知らせている。

  評価項目5 利用者が地域社会の一員として生活するための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が地域の情報を得られるよう支援を行っている
  標準項目2 利用者が地域の資源を利用し、多様な社会参加ができるよう支援を行っている
講評
新型コロナや地域で起こっている特殊詐欺などの情報提供をしている

事業所内には、新聞や区報などが自由に閲覧できるようにしている。新型コロナウイルス感染予防のためのワクチン接種に関する情報については、利用者一人ひとりにあった情報を提供している。また、地域で起こっている特殊詐欺として、悪質な不動産販売業者に関する情報などを提供し、注意喚起している。木工部門では、日常的に5分間の話の場を設け、必要と思われる情報をインフォメーションしている。清掃部門の利用者には、活動の「行きと帰り」の場をもって情報提供に努めている。

「木のおもちゃのお店おあしす」として木工を販売し、地域との交流の場にもなっている

事業所では木工細工を作製している。事業所内に「木のおもちゃのお店おあしす」を開店している。地域住民がお客として訪れることも多く、交流の場にもなっている。お店を宣伝するためにチラシを作り、利用者と一緒に職員が地域にポスティングなどをおこなっている。商店街にチラシを置いてもらったり、これらの活動を通してピアワーク・オアシスの存在と障害者支援の事業所であることが認知されてきている。

地域の中で「作品展」の運営や、相撲部屋との交流に利用者の参加をつなげたい

今、コロナ禍のため地域との交流の機会が減ってきているが、それ以前から、地域のイベントや交流の場に利用者の参加がつながらない状況にあった。その改善のために事業所は、地域の情報を意識的にもっと利用者に情報提供することや日常の活動に地域の方々が参加できる場を設けることを考えている。今年度は、「アートパラ深川」というイベントに職員が実行委員として参加し、運営などに利用者が活躍できる場の提供を考えている。近所に相撲部屋があり、部屋との交流も検討課題に上がっている。

  評価項目10 【就労移行支援】就労に向けて、必要な知識の習得や能力向上のための訓練等の支援を行っている 実施状況
  標準項目1 利用者が働く意欲を持てるような取り組みを行っている
  標準項目2 サービス期間内に就労に結びつくことができるよう工夫している
  標準項目3 生活リズムや社会人としてのマナーの習得等の就労に向けた支援を行っている
  標準項目4 就労に向けた職場見学や実習等、実際に職場にふれる機会をとりいれた支援を行っている
  標準項目5 就労支援機関と密接な連携をとり、利用者が力を発揮できる就労先に結びつくよう支援を行っている
  標準項目6 就労後も利用者一人ひとりに応じて職場定着等の支援を行っている
講評
「企業実習一覧」を作成し、就職活動は利用者の意向を尊重しながら支援している

支援の大まかな流れとして、利用者は支援者と共に「セルフアセスメント」など自己分析し、個別支援計画に反映させている。職業準備プログラムとして、「事務トレーニング」「ビジネスマナー」などへの参加や履歴書などの応募書類の作成を進めている。企業実習一覧にある企業や東京しごと財団の企業体験実習先、障害者委託訓練などから訓練先を検討し、実習先を決定し実習を体験している。実習や就職活動は、支援者の判断ではなく利用者の意向を尊重し支援している。

ハローワークと連携しながら就労支援をおこなっている

利用者の利用状況にもよるが、ハローワークの「雇用トータルサポーター」とは必要に応じて、おおむね週一回は連絡をとり合っている。また、必要に応じてハローワークへ利用者との同行や関係機関との連絡会議への参加など連携しながら支援をおこなっている。就労希望者には、適切な就業環境と障害者に対する配慮ある職場を提供するよう努めている。

就労後の支援において多機能事業として「就労定着支援事業」との連携に力を入れている

就職した利用者に対しては、職場に定着し生き生きと働き続けられるように、多機能事業所の中に「就労定着支援」があるため連携して支援している。就職後、職場になじめなかったり、人間関係で悩み、つまずく利用者もいる。個別に相談にのることや、職場の担当者と情報の交換や協同して支援をおこない、就労の定着に努めている。今、コロナ禍のためなかなか開催することが厳し状況ではあるが、小グループでのOB会開催を4月におこなった。OB会では、元気に働いている姿や悩みを出し合う場として重要と位置付けている。

  評価項目12 【就労継続支援B型】就労の機会の提供や、知識の習得及び能力向上のための支援を行っている 実施状況
  標準項目1 自発的に働きたいと思えるような取り組みを行っている
  標準項目2 働くうえで、利用者一人ひとりが十分に力を発揮できるよう支援を行っている
  標準項目3 工賃等のしくみについて、利用者に公表し、わかりやすく説明している
  標準項目4 受注先の開拓等を行い、安定した作業の機会を確保できるよう工夫している
  標準項目5 商品開発、販路拡大、設備投資等、工賃アップの取り組みを行っている
講評
木工事業では「木のおもちゃ」や「缶バッジ」など利用者のアイディアを取り入れている

木工事業部では「木のおもちゃ」を作成し販売している。また、被災地支援としても贈り喜ばれている。利用者からのアイディアや要求も取り入れて作製している。例えば、「ハンドオルゴール」「カスタネット」「オートマタ」など種類は豊富である。利用者からアイディアについて提案があった場合、形の検討、材料は何にするか、大きさなどを出し合いデザイン化している。最近は、利用者が描いたイラストを缶バッチにして商品化した。

自主製作品のネット通販先の拡大や、ホームページの再整備を今後の課題としている

自主製作品について、法人ホームページ、ツイッターでの宣伝をおこなっていたり、商品を置かせてもらう先との委託契約の締結をすすめている。しかし現在はコロナ禍の為、地域のイベントが中止になっている。そのためインターネット販売に力を入れ始めている。インターネット販売で、今後の売り上げの比重が高くなると思われる。ネット通販は手数料などのことも検討が必要である。販路拡大は、利用者の工賃アップにつながり、木のおもちゃ作りのやりがいにも直結する。事業所では、ネット通販先の拡大や、ホームページの再整備を今後の課題としている。

清掃事業部では定期的に「お客様アンケート」を実施している

清掃事業部では、法人内の事業所清掃と外部清掃をおこなっている。外部清掃は、介護の専門学校、病院、ヘルパー事業所などを4人一組でおこなっている。外部清掃をおこなっている事業所には毎年「お客様アンケート」を実施している。アンケートで出された結果や要望等を利用者と共有し、それそれが改善に向けた取り組みを主体的に考え清掃事業に活かしている。


  サブカテゴリー5 プライバシーの保護等個人の尊厳の尊重
  評価項目1 利用者のプライバシー保護を徹底している 実施状況
  標準項目1 利用者に関する情報(事項)を外部とやりとりする必要が生じた場合には、利用者の同意を得るようにしている
  標準項目2 個人の所有物や個人宛文書の取り扱い等、日常の支援の中で、利用者のプライバシーに配慮した支援を行っている
  標準項目3 利用者の羞恥心に配慮した支援を行っている
  評価項目2 サービスの実施にあたり、利用者の権利を守り、個人の意思を尊重している 実施状況
  標準項目1 日常の支援にあたっては、個人の意思を尊重している(利用者が「ノー」と言える機会を設けている)
  標準項目2 利用者一人ひとりの価値観や生活習慣に配慮した支援を行っている
講評
利用者に関する情報を外部とやり取りする場合は、利用者の了解を得ている

利用者の支援のためには、主治医、保健所の担当の保健師、相談支援専門員、訪問看護師などと必要に応じて情報や意見交換が必要である。それらは個人情報であり利用者の承諾が前提となる。事業所では、契約時にその必要性を説明し「個人情報に関する同意書」に署名してもらっている。しかし利用中に、外部との情報の交換が必要な場合においてもその都度、利用者に説明し、毎回、同意を得ている。

利用者に対する言葉使いや意見箱の設置だけでなく、「意思の尊重について」の検討を

利用者が意見や要望が表出できるよう「意見箱」の設置、利用者に対して職員が「命令する形はとっていない」としている。しかし、利用者の意思の尊重を引き出すためには、直接の聞き取りや面談を設けたり、日頃の職員の言葉使いに関しては、意思を引き出せるような具体的な「言葉かけ」、「目線」など接遇の基本形をマニュアル化し、職員教育が必要ではないか。利用者が「選択できる」「嫌だと言える」状況づくり、意思の尊重を訴えて来た際の基本的な対応、さらに個別対応の手順書の作成で、統一した支援ができるよう検討をもう一歩すすめてほしい。


  サブカテゴリー6 事業所業務の標準化
  評価項目1 手引書等を整備し、事業所業務の標準化を図るための取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 手引書(基準書、手順書、マニュアル)等で、事業所が提供しているサービスの基本事項や手順等を明確にしている
  標準項目2 提供しているサービスが定められた基本事項や手順等に沿っているかどうかを定期的に点検・見直しをしている
  標準項目3 職員は、わからないことが起きた際や業務点検の手段として、日常的に手引書等を活用している
  評価項目2 サービスの向上をめざして、事業所の標準的な業務水準を見直す取り組みをしている 実施状況
  標準項目1 提供しているサービスの基本事項や手順等は改変の時期や見直しの基準が定められている ×
  標準項目2 提供しているサービスの基本事項や手順等の見直しにあたり、職員や利用者等からの意見や提案を反映するようにしている ×
講評
法人作成のマニュアルを事業所用に改編し、所内会議等で見直ししている

「事故発生時対応」「防犯対策」「苦情対応」「感染症対応」などのマニュアルを整備している。「記録の書き方」については、研修資料で作成しているが正式なマニュアルとして活用してはどうか。マニュアルの点検については毎月の「所内会議」でおこなっているとのことだが、できれば、年間の研修計画に組み込み、職員教育とともに見直し、更新していく仕組みを構築されたい。また支援に必要な「接遇」や法的にも必要な「虐待防止」など新たなマニュアルも職員間で話し合い、検討されたい。マニュアルを一覧にして、更新時期を明確にする必要がある。

利用者個別の「こだわり」や「禁句・禁忌事項」などを明文化し、職員スキルの統一を

事業所では必要に応じて「スタッフミーティング」や「所内会議」で意見交換等をおこない支援方法の見直しをおこなっている。また「ミニカンファレンス」もおこない利用者の支援について検討している。その際に見直すべき内容として利用者個別の「こだわり」や「禁句・禁忌事項」などが明文化してあれば、職員の支援におけるスキルの統一が図れるのではないか。個別の手順書は「利用者の理解」とともに「具体的な支援方法」でもあるので、面談等で利用者から「この支援方法でよいのかどうか」の意見や提案を確認しながら更新していく仕組みを期待する。