東京都福祉サービス第三者評価  評価結果

７０年を超える長い歴史を持つ園であり、設立以来一貫した理念のもとで保育を行っている。カリキュラム等の具体的な取り組みにつなげる部分では、指針の改定等の社会の変化に合わせた調整を行っており、現在の全体的な計画も新指針を反映する形で作り込まれている。職員には入職時の研修で確認する他、毎月の会議やカリキュラム策定時の話し合いの中でも、繰り返し確認している。職員数が６０名近い大規模園でもあり、理念方針等の基本事項の共有には日々徹底した取り組みを行っている。

毎年度見学者の数が多くなっているが、園の案内と資料をもとにした説明を通して園の方針や保育内容を丁寧に伝えるようにしている。入園時には園のしおりをもとに説明を行うが、しおりの内容は保護者にとって必要と思われる情報を網羅するため５０ページを超えており、園の概要と沿革、理念、具体的保育内容、行事、食と食育、健康管理、安全管理等について詳細な記述がある。また、園便りやクラス便り等を通して、園の取り組みを都度伝えることで理解を得られるように努めている。

法人姉妹園との間で「結びの会」を持ち、経営層だけでなく階層・職域別の会議も行い情報連携を徹底している。本園の園長が理事長を兼任しており、園内で現場職員とのコミュニケーションも取っていることから、現場の課題に対しても迅速な判断ができることが強みになっている。園内では、園長・副園長・主任・副主任といった階層構造を取ることで、指示系統を明確化している。会議についても案件に応じた各種の会議を設定し、計画的に開催することで効率良く意思決定と情報共有ができるようにしている。

保護者の意見要望等は日々の対応の中から把握しており、その内容は記録として整理されている。また、行事の際にはアンケートを実施し、その結果をもとにした話し合いも行っている。内容に応じて乳幼児部会や保育部会等でも検討を行っており、主任が取りまとめたものをもとに年度末の振り返り会議につなげている。また、Ｑ＆Ａ対応の機能を持つスマホアプリ等も活用しており、保護者の意向把握には力を入れて取り組むこととしている。

地域のニーズや利用者の動向、行政情報等の運営に関連する各種の情報は、園長と主任が中心となって、園長会や主任会、地域関係機関との会合、地課課題に関する連絡会、研修会等に参加することで把握しており、法人の結びの会でも情報交換を行っている。また、園の歴史が長いことから地域との関係も深く、地元情報も随時得られる強みがある。財務面は経営層を中心としたメンバーで共有し、理事会レベルで協議されている。事業計画ではこれらの情報をもとに、年度方針と課題を設定する仕組みになっている。

現園長は２００２年度から理事長を務めているため、法人全体の状況を把握しており、姉妹園を含めた事業の全体像については方向性が示されている。中長期的な課題も具体化されており、コロナ禍をきっかけにしたＩＣＴ化の推進や、園舎建て替えに向けた取り組み等が挙げられている。一方で、園内の実務面については園長就任が本年度であるため、年度末近くに実践を踏まえて見通しを示すこととしている。そのため園内にも積極的に入り、現場の声を丁寧に聞き取ることに力を入れている。

入職時には就業規則等の各種規程類に関する説明を受ける機会があり、育成会職員の心構えや保育指導基準、叱る時にやってはいけない１０ヶ条、ＮＧ用語集等が新人研修用テキストとしてまとめられている。また、育成会職員の心構えには、法人職員として守るべきことや規範、倫理等について記述があり、年度初めの会議でも読み合わせを行う等、確認のための取り組みがある。関連する研修にも参加し、園内での共有ができるようにしている。

要望への対応については把握する手段を数多く設定し、都度必要な対応ができるよう連携の仕組みも取っている。また、要望内容を整理して年度末の会議で課題設定につなげる等、改善のための仕組みもある。苦情についても第三者委員を含む解決制度を用意し、保護者への周知も図っている。虐待防止については、法人のマニュアルを基本として実践的な対応を学ぶと共に、区のガイドブック等も活用して関係機関との連携等を確認している。職員の心構えにも関連事項を掲載し、周知と意識付けを図っている。

地域子育て支援事業として行事への招待があり、バザー、納涼会、運動会、獅子舞、保育展等の多くの機会を作っている。また、身体測定や手形取り等も、地域を対象に毎月実施している。地域との交流も多く、近隣地域の祭礼への協力や落語会等の会場提供等も行っている。地域からの参加も多く定着した活動になっているが、本年度はコロナ禍で中止も多くなっている。しかし、地域ニーズも高いことから、感染症対策の徹底と内容の見直し等を行いながら、状況に応じて可能な範囲で実施を継続している。

事業全体の運営に関するリスクの評価は、理事会や法人２園合同の結びの会等で検討されており、本園の園舎建て替えを含む中期的な計画等にもつなげられている。現場での具体的な取り組みについても、両園の振り返りの会議の結果等をもとに結びの会で共有できるようにしている。ＢＣＰ（事業継続計画）についても、法人レベルでの取り組みが必要として東社協版を基本に作り込みを行い、大規模広域災害レベルを想定した備蓄品の確保や災害時の連絡方法、職員体制等について確認している。

園内の安全管理に関する取り組みは、各分野に応じたマニュアルを基本に進められており、担当者を中心に見直しの作業も行われている。ガイドラインの変更や他園の事例等をもとに修正を加えた場合は、会議等で園全体への周知を図っている。特に感染症対応では区との情報連携も密に行い、必要な対策が迅速にできるようにしている。また、環境委員会を設置して保育環境の整備を行っているが、この活動の中でも安全面についての検証があり、結果を職員と共有して改善につなげている。

園内の情報管理は法人規程に沿って行うこととしており、個人情報保護規定や文書管理規定等をもとに、適切な保管管理ができるようにしている。事務的作業を中心にデジタル化が行われており、情報管理は紙媒体とデジタルデータを併用する形になっている。現在園児データ等も総合的な管理システムへの移行を行っており、ネットワーク上のシステムで一元管理できるようになる予定である。園内での個人情報の取り扱いについては重要事項説明書に明記し、保護者の同意も確認している。

職員体制が安定していることから採用数も多くはないが、園の規模が大きいことから常にゆとりを持った体制の維持が重要であり、計画的な採用活動を展開している。業界全体で人手不足の状況にあるため、採用活動では養成校等への働きかけや、ＷＥＢを活用した求人を行うと共に、実習生への働きかけや非常勤職員からの正規職採用等も行い、実績につなげている。採用試験では面接の他に作文やピアノ等も状況に応じて実施し、園として求める人材が確保できるようにしている。

処遇改善に伴うキャリアアップ研修への参加を行っており、職員の職位や職域、経験に応じて専門的な研修に参加できるようにしている。また、現在法人独自の形式によるキャリアパスの構築にも取り組んでおり、姉妹園と合同の結びの会で詳細を詰めている。今後、これをもとにした育成の仕組みが整うことで、法人として標準化された階層研修等も実施できるようになると思われる。職員規模が大きいことから、各職員が組織内での自身の立ち位置を明確に掴むためにも、早期の実施が期待される。

職員の育成については園全体の研修計画が基本となっており、個々の職員に応じた育成支援は年２回の面談が中心になっている。ここで職員の希望や課題等を確認し、参加する研修の指定等につなげている。現状では育成指導に関する個別の記録が自己報告書のみとなっており、複数年にわたる職員個々の取り組みが時系列で確認できない等の課題も感じられる。今後、新体制のもとで仕組みの強化も図られることが期待されているため、この点についても順次工夫が取り入れられると思われる。

区のＷＥＢサイト内の園の紹介では、園長からの挨拶として保育目標と広い園庭で樹木に囲まれた静かな環境であることを伝えている。園の特色には、乳児は「家庭的な雰囲気の中で、のびのびと健やかに、一人ひとりの成長を大切にした保育を行っていきます」、幼児は「たくさんの友だちをつくり遊びを通して、思いやりの気持ち、頑張り通す心を育てます」と掲載している。区のＷＥＢサイトの「保育園の子育て一覧表」には、園で行っている地域子育て支援の情報も提供している。

園の前に設置されている掲示板には園の方針や目標が掲示され、ルビの入った毎月の園便り、園児の作品の掲示もしており、園の取り組みが伝わりやすいものとなっている。パンフレットは園の概要の他、園の特色としているリズム指導やサッカー指導、食育、季節の行事や伝承行事等に、子どもが取り組んでいる写真を載せて紹介している。特に食育については、旬の食材を使ってアイデア豊かなメニューとなっていることを説明すると共に、野菜の栽培や料理保育、魚の解体ショー等の取り組みも伝え、食育も大切にしていることが伝わる内容となっている。

見学希望の問い合わせには、随時対応している。見学者には園の案内のパンフレットを渡し、見学者用のマニュアルに沿ってわかりやすく説明している。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響から、園内の案内はせずに窓越しから見学してもらい、見えない部分は写真を見せて知らせている。目標や特色についてはパンフレットに掲載されている写真を見てもらい、具体的な保育活動を通して説明している。出産を迎える保護者に向けた園の見学も行っており、ＳＩＤＳの予防や離乳食についても伝えている。

園のしおりには重要事項や園のルールについて詳しく記載されており、入園前面接時に各家庭に配布している。説明は園のしおりの内容をわかりやすくまとめ、プロジェクターを用いて伝えている。子どもの活動の様子の映像も見てもらい、広い園庭や周辺の緑豊かな公園で遊ぶ様子、食育活動、講師を招いた活動等、園の特色が伝わるものとなっている。保健に関することでは、園と連携して健康管理を行っていくことを説明する他、園医からも健康面についてのプリントを配布していることで、新入児の保護者にとって安心感につながるものとなっている。

入園までの生活状況については、０歳児・１歳児・２歳児以上の各書式があり、保護者が記入したものに沿って確認している。入園前面接では、園長・副園長・保育士・看護師・栄養士が、それぞれの専門的な立場から保護者の個別事情や意向を聞いてアドバイスを行い、安心して園生活が送れるようにしている。子どもが家庭で愛着の持っている物の持参希望に応じたり、家庭で使っていた乳首と同じ物を用意する等、スムーズに園生活が始められるよう配慮している。

入園前面接では、慣れ保育の必要性を伝えると共に、保護者の就労状況に配慮していることも説明している。時間の取れる保護者の場合には、食事の進み具合や保護者の不安に対応しながら慣れ保育を進めている。今年度は新型コロナウイルス感染症の対策として登園自粛があったため、登園予定の３日前からの慣れ保育を実施し、子どもの状態によってはすぐに通常保育をしていく対応も行っている。自粛期間中に登園していない家庭には定期的に電話をして子どもの様子を聴いたり、保護者の不安にも答えたりして登園後の保護者との信頼関係につなげている。

全体的な計画では、理念・方針・目標に基づいて養護と教育が一体になるよう作成している。作成した全体的な計画は各クラスの保育室に置き、年間指導計画や月間指導計画、乳児の個人別指導計画を作成する際に確認している。各領域を考慮して立案した年間計画をもとに月間指導計画を立てており、乳児の個人別月間指導計画も個別の発達や生活状況を考え作成している。幼児の月間指導計画については先月を振り返り、子どもの実態に基づき具体的な活動につながるようにしている。

発達の記録については、０歳児・１歳児・２歳児では毎月記録し、３歳児から５歳児は入園後１ヶ月と８月・１２月・３月に記入する他、特記事項があればその都度記載している。特別に配慮が必要な子どもは、毎月記録している。発達の記録は子ども一人ひとりの育ちの確認となっており、指導計画に反映させて日々の保育に活かしている。０歳児から２歳児は、個別の日誌に子どもの姿を記録している。３歳児から５歳児はクラスの全体日誌となっているが、個別で必要事項のある場合も記録するようにしている。

子どもに関することを職員間で共有していくため、乳児部会・幼児部会・保育部会・発達部会・給食部会で系統的に話し合いを行っている。各部会で出された子どもや家庭状況での課題、気になること等は月２回の全体での職員会議や、毎週実施しているミーティングで周知している。現在は全体での職員会議は三密を避けるため行わず、リーダー会の開催となっている。パート職員については書面で子どもに関する情報を伝え、確認後は各パート職員が押印している。書類の電子化も進めており、さらに情報共有をしやすくなるようにしている。

子どもの全体的な姿を把握していくため、児童票に記載している発達の記録、乳児クラスでの個人別指導計画の記録も確認している。家庭との連絡事項を確認していくため引き継ぎ連絡票や連絡帳、個人面談記録等の他、保護者との直接の口頭でのやり取りでも状況を確認している。子どもの全体的な姿を把握した上で保育環境を考え、子ども一人ひとりに応じた援助を行っている。子どもの誕生日には手作りのリボンを付けて園全体でお祝いできるようにする他、特別な日として食事やケーキのろうそくを吹き消す等、一人ひとりを大切に考えた取り組みがある。

毎月の発達部会では、特別な配慮が必要な子どもの現状や区の巡回指導を受けてのアドバイス等を確認し合い、その内容を全体に周知している。配慮の必要な子どもの理解を深めるため、外部研修や園内研修も行っている。配慮の必要な子への援助に関する講師の講演をＤＶＤに収めて、全職員で視聴して共通理解を深めることで、子どもとの関わりや援助につなげている。また、特別な配慮の必要な子どもにとってどんな環境が必要なのかを全員で話し合い、他の子どもと一緒に過ごす環境と共に落ち着くことができる環境も作っている。

子ども同士のトラブルについては、子どもの思いに寄り添い、発達の過程を把握した上でその子にとって必要な言葉がけや対応を行っている。また、友達とのトラブルで気持ちが収まらないでいる際には、事務室に設定している畳のコーナーで子ども自身が気持ちの切り替えができるよう配慮している。畳のコーナーには、行動の切り替えが苦手だったり、集団のざわつきが苦手な子も落ち着きを取り戻すことができるような玩具を準備している。子ども自身からの発信で畳のコーナーを使うこともあり、安心できる場となっている。

今年度は新型コロナウイルス感染症の予防対策として、登園時には保護者に口頭で体温及び体調を確認すると共に、「健康チェックカード」にも体温や体調を毎日保護者に記入してもらっている。乳児クラスは連絡帳で、家庭での生活の様子も確認している。早番の担当保育士は保護者と確認した子どもの状態を各クラスに伝え、家庭と園生活との連続性に配慮した保育につなげている。降園時には、子どもの体調の変化等で保護者に伝えることがあれば、担任が遅番の担当保育士に「申し送り表」へ記載して伝える等、確実に伝えられるよう連携している。

排泄の自立に向け、１歳児クラスから個人の発達状況に合わせてトイレでの排泄を促している。着脱は、排泄時や食後の着替えをする機会にズボンに足を入れることから始め、徐々にはこうとする意識を持てるような声かけを行って、子どもの意欲を大切にしている。スプーンから箸への移行は４歳児進級後に、個々の様子を見て使用している。日常の生活の中で一人ひとりの発達に合わせて援助しながら、家庭とも連携できるように「トイレットトレーニング」「箸の持ち方」「お箸のマスター」等のお知らせを配布している。

休息については家庭での生活リズムを把握した上で、個々に応じた入眠の時間となるよう配慮している。また、早朝からの登園で目覚めきれていない子には、布団を敷いて身体を休めるようにしている。０歳児クラスでは、一人ひとりのリズムに合わせて睡眠を取れるようにしている。どのクラスでも目覚めた後の遊びのスペースを用意しており、静的な遊びをできるような玩具も準備している。５歳児は１月頃より個々に合わせて休息の時間を短縮していき、しだいに横になっての休息をなくしていくが、スペースは用意しておき必要に応じて休めるようにしている。

各クラスでは子どもの発達を捉えた興味や関心のある遊具を各コーナーに設定し、子どもが好きな遊びを継続できるようにしている。コーナーの設定にあたっては子どもの動線を考え、パーテーションや棚で区切って絨毯を敷く等、落ち着いてじっくり遊ぶことができるようにしている。子どもの遊びの様子から、玩具の入れ替えも適宜行っている。園では環境委員を設置して、各クラスの遊具の入れ替えがしやすいよう整理を行ったり、年度末に各クラスから出た意見を取りまとめ、玩具の購入や手作り玩具を作成する等充実を図っている。

子どもが自由な発想で創作できるように廃材ワゴンを用意しており、作りたいものに応じて廃材を選べるようにしている。子どもの声を聞き、イメージに合うような廃材も準備している。また、音楽を聞いて身体表現を自由に楽しめるよう、好きな楽曲も用意している。５歳児クラスは鼓笛隊や和太鼓の活動を例年取り入れているが、小さい頃から年長児が取り組む姿に憧れていたこともあり、皆が積極的に取り組む姿が見られている。年下のクラスの子どもも真似をして太鼓のリズム打ちを楽しむ等、小さい頃より太鼓のリズムに親しむ体験となっている。

園庭には桜の木や四季折々の実りを見ることができる他、プランターでの野菜の栽培も行っている。近隣の公園には桜並木や池があり、子どもたちが動植物を観察したり触れたりすることが身近にできる環境がある。近隣には園の農園もあり、野菜の生育観察や収穫体験をして自然に触れる機会も作っている。園内にも、子どもがいつでも見られる場所に虫やザリガニを飼育したり、自然物を使った装飾をしたり、季節の様子がわかる写真を掲示したりして、子どもたちが自然を身近に感じられるよう工夫している。

今年度は新型コロナウイルス感染症の影響から行事が縮小されているが、今までと同様に子どもたちが主体的に取り組めるようにしている。５歳児クラスの「お楽しみ会」では、子どもが得意なものを発表する場として、子どもたちがどんなことをやりたいかを事前に話し合い、運動や製作、遊戯を発表している。保育者は発表までの過程の中で子どもの発想を最大限活かせるようサポートしていることで、子どもたちの意欲的な姿へとつながっている。その他の行事についても同様の進め方となっており、行事後もさらに継続的な遊びが展開されている。

園の目標として「最後までやり通す子ども」を掲げており、子どもの生活や遊びの中で保育者にサポートされながらもやり通す力を育んでいる。行事でも、子どもが考えて進めていく過程を大切に、やり遂げた気持ちを味わう体験となっている。運動会に向けた４・５歳児の運動遊びの取り組みでは、園庭で運動遊具をサーキット状に設定し、子どものやってみようとする意欲を引き出しながら、できるようになる喜びを味わえることを大切にしている。５歳児クラスの太鼓の取り組みでは、皆と気持ちを一つにして達成感を味わっている。

年度当初には年間行事予定を保護者に配布し、行事前には園便りや手紙を渡して内容をわかりやすく伝えている。配布した園便りや手紙では、新型コロナウイルス感染症の影響により、変更になった内容について詳しく説明している。父母会の幹事会でも、行事の内容や協力について説明している。子どもが行事に向けて取り組む過程は写真に撮り、ドキュメンテーションを作成して保護者に伝えている。毎日の子どもの遊びの様子を書くボードでも行事に取り組む姿を丁寧に伝え、行事を通して子どもの成長が保護者に伝わるものとなっている。

保育時間の長い子どもが安心してゆったり過ごすことができるように、乳児クラスは０・１歳児、１・２歳児が合同となり、日中の遊びから変わりなく過ごすことができるようにしている。幼児は同年齢の２クラスがで合同で遊んでいるが、３歳児クラスは人数に応じて合同にせずにゆったり遊べるようにしている。個々のペースに合わせてカーペットや布団で休めるスペースを作っており、早朝保育等で目覚めきれていない子が休息を取れるよう対応している。

保育時間が長くなる中でも、子どもが自分の好きな遊びを見つけて遊ぶことができるように、日中同様にコーナー遊びを設定している。また、子どもの年齢を考えた遊具や手作りの玩具を定期的に見直すため、各クラスからの代表で構成される環境委員が中心となって選定や整理を行っている。年齢に応じた材料や素材を用意した製作コーナーも設ける等、様々な遊びができるよう整備しており子どもが楽しく過ごせる工夫となっている。

新型コロナウイルス感染症の予防として、１テーブルの人数を制限したり、年齢に応じて食事を２部制にしたり等、密にならない対策をしている。その上で子どもたちが楽しく食べることの工夫として、気候の良い季節には園庭やテラスでの会食を行っている。例年であればバイキングでの会食を行っているが、今年度は盛り付けを工夫する等、子どもが楽しく食べられるようにしている。誕生会の日にも盛り付けを工夫し、生花を飾ってお祝いの雰囲気を感じられるよう配慮している。

給食のメニューには旬の食材を使い、出汁を使った薄味での調理を行い、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供できるよう配膳している。月に１・２回テーマ献立の日を作り、子どもたちが食事により興味を持って食べられるようにしている。テーマ献立には物語や世界の料理、郷土の料理、カミカミメニュー等がある。保護者に配布している献立表には物語メニューの絵本が紹介されている他、どんな料理が出てくるのか親子で楽しみにできるように世界の料理や郷土の料理について地図や国旗を伝え、より関心を持って食べられるようにしている。

園の農園やプランターで野菜を育て、子どもが生育や収穫に関わって野菜に興味が持てるようにしている。農園で収穫したジャガイモを子どもが洗い、ポテトチップにしてもらって食べたり、プランターで育てたカブをカブの絵本と同じように抜く体験をして楽しんでいる。命あるものをいただくことで食べ物を大切にする心が育つよう、魚の解体ショーも行っている。５歳児クラスは毎日の給食を三色食品群に分類し、食べ物と体の関係を知る機会となっている。様々な食育の活動を通して、子どもたちの食への意欲を高めている。

園内では、紙芝居や絵本等の教材を用いて衛生指導や安全指導を行っている。特に今年度は手洗いや咳エチケット、ソーシャルディスタンスについての紙芝居を使い、感染症予防についてわかりやすく伝えている。また、手洗いをきちんとできるようにするため、練習スタンプを用いて視覚的にわかるようにしている。防災教育では瓦礫に見立てたペットボトルのキャップの上を、素足と新聞で作ったスリッパで歩き違いを感じる等、身を守ることを伝えている。避難訓練では室内の安全な場所にマークを付け、０歳児からその場所に避難することを促している。

看護師と保育士が連携してＳＩＤＳの予防を徹底したり、嘔吐処理やアドレナリン自己注射薬の使用法についての研修を毎年受けたり、ビデオを視聴する等して理解を深め、実践演習をして備えている。全職員は救急救命講習を受けており、応急手当ての対応が行えるようにしている。今年度は園で作成した新型コロナウイルス感染症対応マニュアルを活用し、園医と相談して感染予防を徹底した保育環境となるよう努めている。子どものケガについては、情報共有だけではなく発生についての集計も行い、防止策を職員間で確認している。

新入児の懇談会では看護師からＳＩＤＳについて説明しており、危険性を低くする留意点や家庭でできる対策、園で気をつけていること等をわかりやすく伝えている。感染症については、園のしおりで罹りやすい感染症について知らせ、園内で発症した場合はその都度掲示やアプリの連絡帳で配信している。保健便りでは感染症情報を提供する他、その時期に気を付けたい健康管理について載せている。今年度は新型コロナウイルス感染症に関する情報をこまめに掲載し、感染リスクを抑えるための園の対応や家庭でできる対策を伝えている。

保護者の就労状況や家庭の状況に応じて保育時間を決定しているが、急な残業や保護者の事情にも柔軟に対応して、保育時間の延長を行っている。日頃の保護者からの質問や相談には連絡帳や連絡票で対応したり、担任が直接保護者に伝えられるようにしている。今年度の個人面談は、子育ての悩みや家庭での不安なことがあれば随時行うことをメールで配信して知らせ、希望する保護者のみで開催した。送迎時にもできるだけ保護者とコミュニュケーションを図ることを重点に置き、対応できるよう配慮している。

日々の子どもの姿や活動の取り組みを伝えるため、写真を撮ってドキュメンテーションで伝えている。今年度は感染症対策として運動会を４・５歳児のみで行い、各家庭から１名のみの参加となったため、動画配信を行って参加できなかった家族も視聴できるようにしている。幼児クラスのお楽しみ会は子どものみで行ったためにその発表の様子や、乳児クラスの日常の様子等もＤＶＤに収めて各家庭に配布している。保護者に子どもの活動の様子を視聴してもらうことで、成長の様子を感じてもらう機会となっている。

１歳児のクラス便りには、好奇心からいたずらを盛んにやる時期や、自己主張が強くなるいやいや期について掲載しており、成長の表れであることやこの時期の大人の関わり方について丁寧に伝えている。５歳児クラスでは小学校就学前までに身に付けたい１０の生活習慣を伝える等、各クラスのお便りにより、保護者が育児の見通しを立てられる内容となっている。乳児の連絡帳や毎日の遊びを伝える連絡ボードでも成長の様子を伝えているが、一人ひとりの子どもの写真を撮り、連絡帳や幼児の出席ブックに添付していることも保護者の安心感につながっている。

園では、近隣の高齢者施設の利用者と関わったり、子どもたちから手作りの物や歌のプレゼントを例年行っているが、今年度は中止となっている。近隣で働く人やお店への感謝訪問も毎年行っているが、今年度は代表の子どもが訪問している。地域の人との交流では、お年寄りを敬う気持ちや働く人への感謝の気持ちが育つような取り組みを心がけている。バス会社の訪問ではバスを試乗させてもらったり、お米屋さんでは脱穀の様子を見せてもらう等、園ではできない体験を重ねている。

毎年園のバザーや納涼会、もちつき、獅子舞、ひな祭り等の行事へ地域の人を招いており、関わりを持っている。また、小学校の運動会への参加や、区の主催する催し物に園として出店しており、園児にはチラシの配布を通して地域とつながりが持てるようにしている。催し物には卒園児も多数参加しているため、卒園児と在園児との交流の機会にもなっている。今年度は全て中止となっているが、今後も園内外の行事や催し物等で地域の人との交流ができるように計画を考えている。

園のしおりには、「一人ひとりの子どもが安心して健やかに保育園での生活が送れるよう、園児及び保護者・家庭にかかわる個人情報を常に適切に取り扱い個人情報プライバシーの保護に努めます」と記載し、保護者へ説明している。その他、区のＷＥＢサイトへの子どもの写真の掲載について等の使用目的を別紙で伝え、全家庭から「写真掲載の確認書」で可否を確認している。日常生活においては、子どもの人格を尊重することを基本としていて、言葉かけや関わり、排泄や着替え等、羞恥心に配慮した保育を行っている。

園の方針は毎週一回全職員で唱和し、保育の中で子ども一人ひとりを尊重した保育が実現できることを目指している。年度初めには「職員の心構え」の冊子や保育者が子どもにかける言葉のＮＧ集、叱る時にやってはいけない１０カ条等の読み合わせを行い、子どもにかける言葉や態度が適切に行われているか確認している。さらに、保育指導基準を用いて子どもの尊厳の尊重、保育者の態度や服装、保護者に対する接し方、外国人との接し方を年２回チェックを行い、保育者自身が倫理観を持って保育にあたれることへの確認となっている。

園児に対する虐待防止を図ることと子どもの人権の保護、健全な育成を目的とした虐待防止規定を法人で定めている。この規定には虐待防止対応体制について記しており、職員がこの規定に基づいて虐待防止の対応を行っている。虐待や育児困難な家庭があった場合は、関係機関と速やかな連携を取っている。家庭支援センターから見守りが必要な家庭への連絡が入った場合は、区との連携も図って情報交換を行い対応にあたれるようにしている。

全ての業務内容についてはマニュアルに網羅されており、皆で確認して業務の標準化を図っている。マニュアルの内容は保育計画、保育業務(園児)、保育業務(保護者)、保育活動、保育行事、特別事業、危機管理、保健、給食、職員の分類となっている。職員の項目には法人としての「職員の心構え」があり、園の目指す保育や職員像について示している。今年度は新たに新型コロナウイルス感染症対応マニュアルも追加している。各クラスにはマニュアルを設置しており、業務の確認や振り返りができるよう常に活用している。

マニュアルの各項目の内容については毎年見直しを行い、常により良い保育となるようにしている。各行事を行った際は反省に基づいて職員間で検討や提案を行い、次年度に活かしている。保護者には懇談会や父母会の幹事会で、意見や提案を聴く機会を持っている。毎年運動会やお遊戯会等の行事の実施後には保護者にアンケートを取り、意見を聴くようにしている。今年度は新型コロナウイルス感染症の予防対策として行事のライブ配信を行った他、ＷＥＢアンケートも実施して意見や感想を集めている。

職員が新しい情報や学びが得られるように、園内外の研修の機会を作っている。今年度の外部研修は新型コロナウイルス感染症の影響から縮小されているが、リモートでの研修も進めている。外部研修で学んだことは職員間で報告を行い、園内研修へと発展させて職員間で共有できるシステムを構築している。子どものことや保育環境については、園内に各種の部会を設けて話し合いの機会を保障する等、常に子どもにとって最善の保育が行えるようにしている。